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バッハ:無伴奏チェロ組曲 - 清水靖晃 SAXOPHONETTES


バッハ:無伴奏チェロ組曲 - 清水靖晃 SAXOPHONETTES




 [ 一 言 寸 評 ]

"響き"だけでも楽しめる
バッハの名曲


★★★☆☆ 気楽に聴ける度
★★★★★ 楽曲名作度
★★★★★ 空間奥行き度
★★★☆☆ 癒し度
★★★★☆ オーディオ興奮度
 サックスで聴く、バッハの無伴奏チェロ組曲です。

発売当時は、CMにもよく使用されていましたので、ご存知の方も多いかと思います。

バッハの名作 『無伴奏チェロ組曲』 を、サックスで演奏しているのですが
・・・それだけではなく、組曲ごとにユニークな収録場所を採用し、それぞれに異なった "響き" が堪能できる。   ・・・という "仕立て" になっています。

 自動車に例えると、「特別限定色、アルミホイール・ナビ付きフル装備」  ・・みたいな感じで、食指をそそるCDではありますが
純粋に、 『バッハを聴く・愉しむ・味わう』 という観点からでも、初心者から食通まで、十二分に楽しめる、味わい深い内容となっています。

 [ オーディオファンは・・ ]

 わたしの知る限りでは、最も残響時間の長いCDの一つです。

組曲4番の収録場所は、釜石鉱山花崗岩地下空洞
広さ約300㎡約7mの天井高があります。

同5番は、イタリアはパドヴァの"ヴィラ・コンタリーニ"という、17世紀頃の貴族の離宮です。
アウディトリオという、3回まで吹き抜けの部屋(?)で収録されています。

6番は、同じく"パラッツオ・パパファーヴァ"
こちらもイタリア貴族の邸宅で、収録場所の広さは250㎡
丸天井のしつらえで、その高さは12mといいます。

 ここまでくると、もう 「何をか云わんや」 です。
見ためと香りだけで、ご飯が食べられるような「おかず」というものがありますが
このCDの場合は、ホールの残響だけでも、一皿のディナーです。

 優れたシステムで再生すると、ただの六畳間が、突然広大なホールになりますが
オーディオの素人さんを、スピーカーの前に座らせて
「どうだ スゴイダロウ」
 ・・・とやるのは、あまり良い趣味とはいえませんので、やめておきましょう。

ただ、そうしたくなってしまうような魅力を持つ CDではあります。
(ちなみに、個人的に最も 「スゴイダロウ」 をやりたくなるのは、14トラック目です。)


 [ 音楽ファンは・・ ]

『低音の時間差攻撃』 に、注目です。

無伴奏チェロ組曲には・・・
ベースを構成する低音部と、旋律に相当する部分が、一つの楽器で奏でられるよう
 「低音を時間差にして埋め込んでいる部分」 が、多数あります。
(後で調べてみましたが、専門的には『分散和音』というそうです。)

ただでさえ、聴きどころとなる 『分散和音』 ですが
このCDでは、非常に残響時間の長い収録場所を選択しているために・・

楽譜の上では、時間的に重なることのない音符のひとつひとつが
ホールの残響の中で重ねられ、混ぜ合わせた上で、耳に届いて来ます


バッハが遠い昔にこしらえた、「時間差低音の 仕掛け」は、現代にいたっても色褪せることはありません。
何度でも、何回でも、一生かけて愉しむことができます。
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