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タイムドメイン・ミニ


「タイムドメイン・ミニ」を使ってみた

「タイムドメイン・ミニ」外観 「タイムドメイン」 について

「タイムドメイン」 の製品は、なかなか思い切ったアプローチで 「正確な波形再生」 を追求しようとしているところがあり、、独自性を感じさせるユニークなメーカーです。

富士通テンの「イクリプス」 も、似たコンセプトとなっています

「タイムドメイン」のアンプは、「四十七研究所」のアンプと、コンセプト的に似通った部分があるということらしいですが、言われてみれば確かに ・・・という感じです。

「タイムドメイン・ミニ」 は、富士通製パソコンの同梱スピーカーとして採用されていた経緯があり、それなりに市場に数も出回っています。

「音がよい」だの、「たいしたこと無い」だの、評価も様々なようですが、実際のところどんなものなのでしょう?
実際に入手して聴いてみました。


「タイムドメイン・ミニ」 を購入したきっかけ

「タイムドメイン・ミニ」 は、パソコンの音声用スピーカに ・・と思い、中古の品を購入しました。

低域は 「そこそこ」 で構わないから、 「見えるような音場」 と、 「反応の速い音」 がほんのすこしでも感じられれば、この価格帯の製品としては儲けものかもしれない・・・と、期待しながらの購入でした。

「タイムドメイン・ミニ」 を聴いてみて

一言で言うと、「パソコン用途としてのアクティブスピーカー」 としては悪くはないと思います。

少し中域にもやもやしたところもあり、もう少し音の抜けが良くあって欲しいと、思わせる部分もありますが、
これは吸音材を取り替えることで、かなり改善することができます。

ただ、 「タイムドメイン理論」 の目指す方向性から考えると、コスト的な制約のために、すこし理論倒れになってもいるかな? ・・とも感じました。

卵形状のエンクロージアはバッフル面積が極小となり、 「見えるような音場再生」 には、最適な形状のはずなのですが、
実際のところ、 「本当に見えるような音場」 なるものは、優秀な製動力を持つアンプや、強力な磁気回路を持つ俊敏なスピーカーユニットなどが、すべて揃って初めて成立するものであって、しかもそれなりにコストがかかってしまうものです。

この価格帯の製品では、そういったコスト的制約というものは、いかんともしがたいようで、結局のところ、「よくある立方体形状のスピーカーよりは、音の定位が判りやすく、明瞭な感じとなっています」という程度に感じました。

ちなみに、 「タイムドメイン・ミニ」 に比較すると、低音の再生能力は劣りますが、 「音の品位」 という観点から見ると、ライバル製品である 「SONY SRS-Z1」 に一日の長があります。

 【 補足 】
このインプレは、富士通製 「タイムドメインmini」 のインプレです。
「タイムドメインmini」 には、富士通製のOEM版 (パソコン同梱品) とタイムドメイン製の二つがありますが、同じタイムドメインminiでも、使用しているパーツに差異があるため双方の音質には違いがあると言う話も耳にします。

「タイムドメイン・ミニ」 は、好みが分かれる?

「タイムドメイン」 のコンセプトは、「みせかけの迫力のある音」よりは、より正確な再現性を志向しています。
そのために、 「それがどのような低音であれ、より低い音域が再生できればそれで良し」 ・・とする向きには、はじめからオススメできるものではありません。

このあたりは、常日頃聴く音楽の好みや、音に対する主観に左右されますので、「良い・悪い」だけで語るのは、とても難しいものです。

「タイムドメイン・ミニ」 の優れた点に着目して「これ、いいね」という人と、不得手な点が気になって 「ぜんぜん、ダメじゃん」 という人が、それぞれ両方いても無理もありません。(そんな音の傾向です)

ひとつの目安としては、自分の持っている音楽ソフトの 「アコースティック度」 が高く、 「エレキ度・ディストーション度」 が低い人ほど、 「タイムドメイン」 の再生音を好む確率が高いと言えるのではないでしょうか?

エレキギターよりもアコースティックギターの響きが好き、コードで繋がったベースよりもウッドベースが聴きたい。 そして、打ち込み系の音楽は、あまり聴きません。
 ・・・という方は、 「タイムドメイン」 の製品に向いているかもしれません。

また、これ見よがしに大音量でカーオーディオを鳴り響かせている自動車などは、 「量感はたっぷりあるけれども、こもって膨らんだ低音」 になっていることが多いですが、そういった 「ブーミーな低音」を好む方には、間違ってもオススメすることはできないと思います。

タイムドメイン理論」 という言葉の 「一人歩き」

「タイムドメイン」 のコンセプトや、目指している再生音の方向性というものは、もともと非常に独自性を有していました。
開発者である由井氏がタイムドメイン社を立ち上げるより以前、ONKYOで担当したオールホーンスピーカー 「GS-1」 は、それこそ 「早すぎたスピーカー」 とさえ言われたものです。

しかしながら、 「オーディオ界」 というものも、随分と移り変わってきています。
優れた手法はすぐに模倣され、それが次の 「当たり前」 になっていきます。

「地を這う重低音」 という表現が、いささか死言となりつつある現代のオーディオでは、
「ハイスピードな音」 、 「位相の揃った音」 、 「奥行き表現」 、 「空気感・音場の再現」 といった表現が飛び交うようになり、
タイムドメインのコンセプトである、 「音楽信号の波形を、時間軸上において正確な再現する」 というのも、 「オーディオ製品にとっては、当たり前のように要求される要素のひとつ」 というような時代になって参りました。

少なくとも、 「正弦波をオクターブごとに再生・チェックして、結果的にワイドレンジでフラットな再生ができていれば、それで良し」 としているオーディオメーカーなど、すでにどこにも存在しないのです。

タイムドメイン社とはアプローチ方法が異なっていても、 「目指しているところは、ほぼ同様」 というオーディオ製品はそれなりにありますし、下手をすると、 「タイムドメイン製品」 よりも 「タイムドメイン的な音」 を実現しているのではないか? ・・と思ってしまうような、他のオーディオメーカーの製品もあります。

「タイムドメイン理論」 という言葉は、消費者に対し、オーディオ製品を 「タイムドメイン理論を採用している製品」 と、 「それ以外の製品」 に分けて考えてしまうように、仕向けかねない部分があり、現在となっては、いささか言葉が一人歩きしてしまっているような感じも否めません。

ただ、一昔前までは 「タイムドメイン」 が、 「それ」 と 「それ以外」 に分けられるだけの、独自性のあるコンセプトを有していたというのも、あながち間違いとは言えませんから、タイムドメインに非があるわけではありません。

言葉が独り歩きしているのは、コスト的に制約の厳しいエントリー用途の製品であったとしても、 「○○理論」 なるものを採用すれば、劇的に優れた製品であるだろう。・・・と、過剰な期待をしてしまいがちな消費者に負う部分が多いのでないか・・と、思うのです。



タイムドメイン・ミニの楽しみ方

(画像は、「タイムドメインmini改 Tuned by 四十朗」 です)


「タイムドメイン・ミニ」 は、コンセプトとしては大変優れた製品ですが、世界的大規模な家電メーカーではないことから、資本力や会社規模の大きさが、そのままパーツの選択に反映されている感があります。

大手メーカーは、 「専用開発品」 や 「それなりにコストのかかったパーツ」 を組み込みながらも、中小メーカーには真似のできない低価格で製品化することが、本当に上手いものですが、
こういった 「規模の経済」 を利用した、大手メーカにしかできないことを、タイムドメイン社が開発した製品に求めるのは、酷なものかもしれません。

そのようなわけで、タイムドメイン・ミニは、コンセプト的には優れている部分はあるものの、コスト的な制約が、足を引っ張っているような部分も見て取れることもあり、どこかガジェット的な、ホビー製品的なところが拭いきれません。


ただ、このようなコスト面で妥協せざるを得なかった部分を、改造することで補ってあげると、それなりに 「基本コンセプトの良さ」 が結実し、魅力的な部分が引き立ってきます。

現状で、中古品としての 「タイムドメイン・ミニ」 は、豊富に出回っているようですので、低価格で入手することができるようであれば、失敗を恐れずに改造して楽しむには 「優れた素材」 だと思います。

とはいっても、アンプをすげ替えたりスピーカーユニットを交換するのは大変そうだし費用も掛かるから・・・という方がほとんどではない? とも思います。

その場合は、吸音材だけでも交換してみてはどうか? ・・と、思います。
とりあえずこれだけでも、 「中域のもやもや」 が解消でき、それなりに聴けるようになり、音楽が楽しめるようになります。

■ この記事には、続きがあります →  「タイムドメイン・ミニの吸音材を交換

■ 「タイムドメインmini改造」 の概要 →    「「タイムドメインmini改造概要」

■ ライカル線を使用したケーブル →   Dockケーブルの「moon and tide」

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