ダマスカス風の積層鋼材を、『ダマスカス鋼』と称して良いのか?
大手刃物メーカーの貝印は、一部例外はあるものの、『ダマスカス鋼』という名称を基本的に使用しておらず、『ダマスカス模様』と称しています。
つまり、ダマスカス模様の積層鋼材はデザインであり、模様であるという立場を崩していません。
商品名に
「ダマスカス」は入っているものの、安易に
「ダマスカス鋼」とは呼ばないところは、一定の評価ができるところです。
貝印は刃物業界における大手メーカーですので、当たり前と言ってしまえばそれまでですが、他の刃物メーカーもこの姿勢を大いに見習うべきでしょう。
繰り返しになりますが、
外観をダマスカス鋼に似せた積層鋼材は、本来のダマスカス鋼とは、似て非なるものです。
外観が似ているからといって、ダマスカス鋼と呼称するのは間違っており、消費者に誤解を与えかねない問題行為です。
同様に、そのような鋼材を使用した包丁を、ダマスカス包丁と称して販売するのは、一種の虚偽表示となりかねず、
『偽物』を販売していると非難されかねません。
(一般的な包丁に対し)「ダマスカスだから、切れ味が良い」というのも、よく見かける売り文句ですが、
これは、景品表示法 第5条第1号の「優良誤認表示の禁止」に抵触する可能性があります
「事実に相違して、競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示す」
という項目に該当する恐れがあり…、さらに、
「不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれ」
…にも相当する懸念があります。
刃物業界の法令遵守は?
刃物業界(特に販売業者)は、このようなコンプライアンス(法令遵守)に対し、かなり疎い傾向があります。
今までそれで通ってきたため、問題意識を何ら感じていないのでしょう。
ちなみに・・・、
【 お知らせ 】
この項目は、「ダマスカス包丁の真実」の書籍化にともない、非公開としています。
全文は拙著「ダマスカス包丁の真実」にてお読み下さい。
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ダマスカスの呼称が、まかりとおる原因
この項目も非公開です。
全文は拙著「ダマスカス包丁の真実」にてご覧ください。
刃物メーカーは、このままダマスカスの呼称を続けて良いのか?
源虎徹
ダマスカス鋼
牛刀
ここで重要なのは、商標被害や権利侵害を訴える人が誰もおらず、消費者側も何もクレームを付けてこないからといって、「ダマスカス」という呼称で販売を継続して良いのか?ということです。
「やったことは間違っていたかもしれないが、誰も迷惑していない。だから問題はない」という理論はおかしいですし、
「偽物を販売したかもしれないが、買う方も、本物とは違うと判った上で購入している」…というのは、犯罪者にありがちな道理であり、通るものではありません。
安易なダマスカス呼称は、(売り上げのためとはいえ)あまりにも倫理を欠いていると言わざるを得ず、まともな企業体のすることではありません。
「刃物用鋼材に詳しくない
消費者の無知につけ込み、偽物を販売している」と非難された場合、何と言葉を返すのでしょうか?
昭和の時代ならいざしらず、現代は企業の
コンプライアンス(法令遵守)が問われる時代です。
自社イメージの毀損につながる前に、早急にダマスカスの呼称を改めた方が賢明と思われます。
「スウェーデン鋼」呼称問題
よく似たケースとして、『スウェーデン鋼』を取り上げてみましょう。
「
スウェーデン鋼」という呼び方も、現代では誤解を招きかねない表現となっています。
大手包丁製造メーカーの一つである「Misono(ミソノ)」と、老舗包丁販売業者である「日本橋木屋」は、長年販売していた「
スウェーデン鋼」という名称の包丁を、「
EU鋼」に変更しています。
使用鋼材の組成は、従来のものとは一切変わっていませんが、鉄鋼会社の合併に伴い、工場がスウェーデンからオーストリアへと変わったことがきっかけとなりました。
社内より「
スウェーデン鋼の呼称のままで大丈夫か?」との声が上がり、商品名を『EU鋼』へと変更したとのことです。
日本橋木屋の方からは、「2017年春以降に順次変更した」と、伺っています。
ミソノの方からは、「木屋さんはデパートでも販売しているので、誤解を招かないよう表記を変えた。食品産地偽装問題が契機となった」と、聞いています。
このように、
コンプライアンス重視の姿勢を積極的に見せている会社は、(包丁業界においては)どちらかというと稀有な存在です。
なぜなら現状においても、未だに「スウェーデン鋼」の名称を使っている会社が多く、このようにコストをかけてまで名称変更したケースは稀だからです。
ミソノと日本橋木屋は、個人的に好きなメーカー・業者の一つです。
商品の名称や販売時の表現に誠実さが感じられる会社は、製造・販売している製品にも一定の矜持が感じられるものです。
そのような包丁は買うに値しますし、大切に長く扱う価値があるというものです。
下記に、わたしが使っているミソノ製造・日本橋木屋販売の包丁を挙げておきます。(よろしければご覧ください)
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