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ダマスカスよりコスパが良い包丁は?

最終更新日: 作者:月寅次郎

関孫六10000CL

ダマスカス包丁よりも価格は安く、切れ味が優れる包丁は?

関孫六ダマスカスと、関孫六10000CLを比較

ダマスカス包丁は、よくコストパフォーマンスが悪いと言われますが、実際のところどうなのでしょう?

具体的に、貝印の関孫六プレミアムシリーズの、「ダマスカス」と、「10000CL」を取り上げて、価格と鋼材を比較してみましょう(価格は三徳包丁のメーカー標準価格です。2022年確認済)

商品名 標準小売価格 切刃鋼材
関孫六 ダマスカス 13,200円 V金10号
関孫六 10000CL 11,000円 コバルトスペシャル

関孫六
10000CL

興味深いことに、ダマスカスと10000CLでは、鋼材グレードと商品価格の逆転現象が起こっています。
10000CLの方が、グレードの高い鋼材を使用しているのに価格が低いのです
(標準小売価格で2,200円の差が生じています)

これは、「10000CL」の方が、戦略的な価格設定になっている可能性も否定できませんが、端的に言ってしまうと、「ダマスカス」の方が、積層模様の装飾にコストがかかっているため、商品価格を高くせざるを得ないのです

もしも、ダマスカス模様の積層材を、SUS410のような一般的なステンレス鋼材に変更し、VG10の三枚合わせ包丁に仕立てれば、機能的にはほぼ同一で、より価格訴求力のある包丁となるでしょう。

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関孫六
ダマスカス

【 補足 】
コバルトスペシャル」と「V金10号」は、どちらも武生特殊鋼材のオリジナル刃物鋼です。コバルトスペシャルの方が上位グレードであり、V金10号は次点となります。

これは個人的な感想ですが、コバルトスペシャルの方に明確な優位性を感じます。コバルトスペシャルはステンレス鋼でありながらも研ぎ味がハガネに近く、刃の「かかり具合」も良好な特徴を示します。
また、比較的容易に精緻な刃を付けることができます。
これは、炭化物の微細球状化の具合が良い鋼材の特徴です。

一方のVG10はというと、耐摩耗性に性能を振った感じが無きにしもあらずです。
刃持ちの良さについては評価に値しますがが、「刃がかりの良さ」については、コバルトスペシャルの後塵を拝する感が否めません。
砥石に対するかかりも良いとは言えず、表面で滑りがちなため、刃付けに時間を要するタイプの鋼材です(※5)

切刃鋼材だけで包丁を評価するものではありませんが、それでも鋼材の良し悪しは、切れ味と刃持ちの良さを左右する重要な要素です。
外観よりも中身、見た目よりも切れ味優先というならば、この2つの包丁を比較した場合、10000CLの方を評価せざるをえません。

ダマスカス包丁は、魅力的な外観によって『切れ味が非常に優秀」というイメージが付いていますが、切れ味を左右するのは側面材ではありません。あくまでも切刃を担う芯材の方なのです。

今回は関孫六10000CLを取り上げましたが、ダマスカス包丁よりも低廉な価格で、切れ味が優秀な包丁はいくらでもあります。これはあくまでも、一つの例でしかありません。

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このページでは「ダマスカス」と「10000CL」だけを比較していますが、関孫六プレミアシリーズ全5本の包丁を比較・ランキングするとどうなるか?については、下のリンク先をご覧ください(下の画像をタップしてもOKです)

関孫六プレミアシリーズ、おすすめ包丁ランキング

関孫六ダマスカス

※5
砥石に対してツルツル滑りがちで、刃がかかりにくい鋼材は、食材に対する刃がかりも良くない傾向にあります。
このような鋼材は、仕上げ砥石を使って番手を上げると、紙の場合は滑らかに切れるため、切れ味が良くなったように思えますが、実際に食材で試してみると、表面で滑りがちで、切り込む際に一瞬のためらいや、『刃の逃げ』が感じられたりします。

研いだ直後は、その差もさほどではありませんが、少し使って刃が落ち着いてきた頃に、自ずと違いが現れます。

刃持ちの良さとはまた異なる、「刃がかりの良さ」というやつです。
この特性が良好な刃物は、躊躇なく切り込めますので、まさに「触れなば切れん」といった感触が得られます。

関孫六10000CLは どんな包丁?

個人的にも、10000CLを購入しております
実際に使ってみましたが、ステンレス系としては珍しく、砥ぎ味が非常によいです。

わたしはハガネ(炭素鋼)特有の「刃がかり」の良い刃が好きですので、ステンレス系の包丁はおしなべて低評価になることが多いのですが、珍しく高く評価したい包丁となりました。

ハンドルや口金も、さまざまな握り方に対応できるように、よく考慮された形状になっており、「和食の握り方を判っている人がデザインした」…という感じが伝わってくる包丁です。

関孫六10000CL
上の画像は購入直後の、手を加えていない状態の10000CLです。

数年の間、この状態で使用しましたが、使うにつれて「これはなかなか、できの良い包丁だぞ」というのが伝わってきましたので、手を入れてより美しく仕上げています。

関孫六10000CL
こちらが、わたくしこと月寅次郎が手を加えた、「関孫六10000CL(カスタム品)」です。

基本的な形状には手を加えていません。
元々のできが良いため、手を入れる必要性が感じられないのです。

具体的なカスタムポイントは…、
  • 口金部分の研磨、鏡面化
  • ハンドルの漆塗り
…の2点です。

鏡面仕上げも漆塗りも、技術的に難しいものではありませんが、口金とハンドルの境目の部分を、きれいに仕上げ分けるのには丁寧が作業が必要です。

カスタム工程の詳細は、下記ページで公開しています(よろしければご覧ください)

● 関連ページ:関孫六10000CLのカスタム

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