おすすめのダマスカス包丁を選ぶ - 包丁マニアの裏話


いろいろ判ったうえでの、あえてのダマスカス包丁選び

包丁・裏話

 ● ご注意ください
このページでは、おすすめのダマスカス包丁を紹介する上で、「おすすめできない例」も併せて紹介しています

どういった製品は避けた方が良いのか、その根拠は何なのか、きちんと把握することで、包丁に対する理解が深まり、おのずと質の高い包丁を選べるようになるからです

ただ、丁寧に解説しようと熱が入るあまり、業界的には口外が憚られるような、「あんなことや、こんなこと」も書いてしまいました
裏話的な内容も多々ありますが、包丁選びの参考にしてください
(ダメな理由の根拠については、調べることで検証可能なように工夫して解説しています)

デメリットを理解した上で使う分には問題ありません

これまでのページでは、主にダマスカス包丁のデメリットについて述べてきました

しかしながら、デメリットを理解したうえで、「包丁として格好良いのだから、やっぱりダマスカス包丁が欲しい!」という方も、多数おられると思います

実際のところ、どのような包丁を選ぶかは、その方の自由です
コスパ最高ではなかったとしても、その分外観が良い点を評価すれば、(その人にとっては)ダマスカス包丁は素晴らしい包丁となりえます

自動車の世界では、実用的な効能よりも、見た目を重視したドレスアップパーツが多数販売されており、それが立派に一つの市場として成立しています

包丁の世界でも、外観を魅力的に見せるために特化した包丁があったとしても、別におかしくはありません

購入するなら、自社生産で、良心的な造りのダマスカス包丁を

それでは、実際に「ダマスカス包丁」を購入する場合は、どれを選んだらよいのでしょうか?

個人的には、貝印藤次郎の製品を推したいと思います
なぜこの大手二社を挙げたかというと、つくりが良心的で、自社工場で製造している比率が高いからです

製造のすべてを他社に外注し、包丁を自社生産していない会社も多数存在する

ヤクセル 曜
69層鋼包丁

小規模包丁メーカーの中には、鋼材メーカーから「ダマスカス模様の積層材」を仕入れ、貝印のような大手刃物メーカーに焼き入れや刃付の工程を外注し、自社では何らの製造加工も手がけていない会社もあります

あえてメーカー名は出しませんが、そのような会社は、公式サイトの会社概要にも本社と営業所しか記載がなく、工場の所在が全く確認できません
つまり、包丁の企画・開発(デザイン)をしているだけで、自社では全く製造していないのです
「人の褌(ふんどし)で相撲を取る」とは、まさにこのことでしょう

このように、製造を外注に任せきりのメーカーは、アピール可能な自社保有技術がありません。社の屋台骨を支えるような、優秀な技能社員(職人)集団も皆無です。結果的に「37層、69層、101層」という具合に、積層の枚数を前面に押し出して売り込むほかありません

 文章の途中ですが、補足説明です
左上の画像は、ヤクセルの69層鋼包丁「曜」ですが、ここに書いてある文章とは、まったく関係ありません
文章にも「69層」とありますが、単なる偶然です。たまたまです。意図はありません

ハイ、まったく関係ありません。無いと言ったら無いのです。ゼッタイです

 (つづきです) …アピールポイントがあまりに無いため、「鎌倉時代より700年続く刃物の町で作っています」といった宣伝文句を使うありさまです。 これでは、町(にある他の会社)で作っており、自社製造していないと自分で明言しているようなものです
そう、「当社は、〇〇年の創業以来、〇〇年間包丁を作り続けています」とは、間違っても言えないのです(歴史も無ければ、自分で作ってもいないためです)

言い方を変えると、積層枚数を堂々と商品名に入れているダマスカス包丁は、すべて避けた方が無難です
製造過程における外注比率が高くなればなるほど、包丁の原価が高くなるため、コスパの良い包丁など望むべくもないからです
結果的に、見た目を派手にして消費者の購買意欲をそそり、高級ブランド路線の販売戦略をとるよりほかにありません

少なくとも、包丁の何たるかを熟知している良識あるメーカーは、(たとえそうすれば売り上げが伸びることが分かっていたとしても)商品名に積層枚数を入れ込んでアピールするというのは、恥ずかしくてできないものなのです

積層枚数の多さを競ったところで、屁の突っ張りにもならないことは、包丁の作り手側が、最もよくわかっているからです

包丁メーカーが、きちんと自社工場を有しており、高い技能を有する技術系職員を多数雇用していることは、「包丁選びにおける一つの重要指標」となり得ます

興味のある方は、包丁メーカーの公式Webサイトを探して、会社概要のページを調べてみてください

どこのメーカーとは申しませんが、本社と営業所しか記載がなく、工場名が一切見当たらない会社は、自社生産比率の極めて低いメーカーです
もはやメーカーと呼ぶことすらはばかられます。包丁企画会社とか、包丁デザイン会社と呼ぶべきでしょう
ちなみに、「関孫六ブランド」で有名な貝印は、国内外に複数の工場があり、他社の包丁の製造加工も請け負っています。あの有名なヘンケルスですら、一部の加工工程を貝印に委託しているくらいです
藤次郎も自社保有の立派な工場があり、工場の一般見学も可能です


つまり、低価格で高品質なコスパの高い包丁を手に入れたい場合は、自社工場を有しており、スケールメリットを生かせるような大手メーカーの包丁を選ぶと良いのです これが、冒頭で貝印と藤次郎を上げた理由です

貝印 関孫六ダマスカス

関孫六ダマスカス

貝印 関孫六
ダマスカス

貝印の「関孫六 ダマスカス」は、仕上げもきれいで、尻金付きの立派な造りこみです
口金は一体型で、ハンドルはNC制御の切削マシンを使用した内部くり抜き構造になっています(「本通し構造」よりも製造難易度が高い構造です)
全体的に質の高い完成度でありながら、価格も適度に抑えられており、良心的な作りになっています
家庭用として使うダマスカス包丁としては、充分おすすめに値します

このモデルは、コントラストが強めに出る酸化処理ではなく、さりげなく模様を浮き立たせてるブラスト仕上げになっており、酸化処理よりも模様の耐久性に分があります
また、いたずらに積層枚数の数で勝負していない点も、高評価のポイントです

一言で言うと、ダマスカス包丁ではあるものの、派手な模様を出すことだけに注力せず、包丁としての機能がなおざりになっていない点が、評価に値します

さらに細かいことを言うと、良心的な包丁メーカー全体に共通することですが、包丁の厚みの抜き方(鋤き方)に手抜きがありません
貝印の包丁は、安価なモデルでもそれなりに整った形状をしていますし、高級モデルでは、かなり入念に刃の厚みを整えています

刃の峰からエッジにかけ、切削加工して厚みを整えるのは、包丁の刃の抜け具合を左右する非常に重要な要素です
この部分は、コストがかかる割には説明してもわかりづらいため、メーカー側もあまりアピールしませんし、一般消費者側も全く注意を払いません
後述している、たちの悪い「おすすめ包丁まとめサイト」においても、「刃の抜け具合」という独自の視点で解説してるライターは、一人も見当たりません
(当サイトの執筆者は、それなりに包丁にこだわりを持っているため、「刃の抜け具合」が気に入らなければ、砥石を使って自分で刃を研ぎ抜いています

このように、たとえコストがかかろうとも、包丁の抜けの良さに対して手を抜かないメーカーは、良識のある優良メーカーだと言えます
そういう意味では、関孫六ブランドの貝印は、非常によくやっていると思います(手抜きが見られません)

刃の抜け具合がよろしくない、ダマスカス包丁の例

パール金属
ダマスカス包丁
毘雄 67層

どこのメーカーとは申しませんが、67層構造を謳った低価格のダマスカス包丁を製造しているメーカーがあります(金属加工で有名な新潟県某市に所在のある、大手鍋製造メーカーです)
この67層ダマスカスは、通常サイズの三徳包丁にも関わらず、背厚が2.X㎜もあるのです(一般的な三徳包丁の背厚は、2.0㎜程度が多いです)

こちらのページで、模様を優先させると、切り抜けが悪くなると書きましたが、それはまさにこのことです

これだけの刃厚があると、新鮮な大根を切る場合などに、メリメリと音がして割れることがあります
鉈のように、包丁の厚みで食材が左右に押し広げられ、切れるより先に割れてしまうのです

当然ながら、刃で押し広げられた切断面は、組織も潰れますし、なにより刃を押し下げる抵抗が大きく、余計な力が必要です(体感的な切れ味も悪く感じます)

 文章の途中ですが、またまた補足説明です
左上の画像は「パール金属の67層ダマスカス包丁」ですが、ここに書いてある文章とは、なんら関係がありません

文章では背厚の厚い包丁を「切り抜けが悪い」とこき下ろしていますが、決して画像の商品の事を言っているのではありません(無関係です)

ハイ、まったく関係ありません。無いと言ったら無いのです。ゼッタイです
背厚が実際何ミリなのかは、販売ページの商品説明を読めばわかりますが、ゼッタイに確認しないでください。(お願いします)

 (つづきです) … わたしがダマスカス包丁を基本的におすすめしないのは、このような模様を優先して切れ味を二の次にする包丁が、世の中に多数溢れているからです

ちなみに、刃厚の成形に最も手を抜いている包丁は、100均ショップで販売されている包丁です
刃を鋤くという工程で最大限に手を抜くと、包丁はここまで安くすることができるという見本のような包丁です(当然ながら、刃の抜けの良さなど、願うべくもありません)

藤次郎プロ - プロの名は伊達ではありません

藤次郎プロ
ニッケルダマスカス

藤次郎プロの製品も、やや高価ではありますが(ダマスカス包丁の中では)おすすめできる一本です
オールステンレス包丁でもありますので、オールステンレスのメリットとデメリットを良く判っておられる本職の方(もしくは玄人の方)のための包丁です(グローバルのディンプル加工のハンドルに比べると、格段に汚れが溜まりにくく、洗浄しやすい形状になっています)

価格が少々高めですが、前述の刃の抜き具合なども、手抜かりのない入念なものとなっており、仕事で包丁を使う方でも充分納得のいくことでしょう

藤次郎は、顧客に対するアフターサービスの一環として、「ダマスカス模様出し」を、「刀身の仕上げ直し」サービスの一環として、有料で提供しています

長年の使用や研ぎおろしによって、模様が薄くなったダマスカス包丁を、メーカーのアフターサービスで回復させることができるのです
刃面の磨きなおしや、商標ロゴの入れ直し、アゴや峰の丸め処理、本刃付なども併せて依頼することが可能です

このような充実したアフターサービスは、製品の品質に自信を持っており、なおかつ優秀な技能職人を社内に多数抱えているからこそできる技です(包丁を外注生産している会社には、ひっくり返っても真似ができません

同じ藤次郎の「粉末ハイス鋼割込」に比較すると、ステンレス中空ハンドルとダマスカス側面材にコストがかかっているため、コスパで分が悪いのは否めませんが、それを理解したうえで購入する方にとっては、長く使える愛刀となることでしょう

「おすすめ包丁」の、まとめサイトには気を付けましょう

話が飛びますが、営利目的のキュレーションサイトや、まとめサイトの包丁解説ページも、ダマスカス包丁を持ち上げるばかりで、本当に酷いです(文章のリライト転載や画像のパクリを平気でやっているところもありますので、倫理観も求める方がおかしいのかもしれません)

あの手のまとめページは、「その道のプロライターが執筆している」ことになっているようですが、非常に怪しいです(そもそも、ライター名を検索してもなかなか本人がヒットしません。「本人は、実在するのか?」と勘繰りたくなるレベルです。知名度が非常に低い、「自称」料理研究家なのかもしれません)

オールステンレス
グローバル


オールステンレスの包丁を評して、「刃身と柄が一体型のオールステンレスで衛生的!」と安易なおすすめ文句を垂れている時点で、かなり底が浅いことが判ります(そのような受け売りの能書きしか書けないのです)

そのような専門知識の乏しい「自称」専門ライターは、ダマスカス包丁のデメリットを知らずに、究極至極の包丁だと思い込んで執筆しているケースも多々見られます(もしくは、知っての上で購買行動を起こさせるために、メリットしか語らないかのどちらかです)

さらに、「おすすめの包丁15選!」といったページを見ると、おすすめの根拠が全く明らかにされておらず、ただのamazon売れ筋順ランキングのコピペだったりします
DeNAのキュレーションサイトが社会問題化して以来、少しはましになるかと思いましたが、依然として酷い状態です

ダマスカス包丁に限らず、包丁を購入検討中の方は、当サイトの他のページも併読して、自分の用途に合った最適な包丁選びのヒントを見つけてください。(下に、主だった解説ページのリンクを設けました)

内容的にマニアックに踏み込んだものや、一部の売れ筋商品を手厳しく批判したものもあり、あくまでも個人的な意見ではありますが、それほど間違ったことは書いていないつもりです