関孫六10000CL 口金の形状が秀逸で、親指がピタリと決まる


10000CLの一体型口金は、一般的なものと一味違う

「ここに親指を当てて握ってみろ!」と言わんばかりの良形状

関孫六10000CLは、一体口金ではありますが、よくある形状とは異なり、刃体と口金の接続部分に平面が取り入れられています
一体口金であるというだけで、かなり高コストの仕上げなのですが、さらに一歩踏み込んで、使う人のことを考えられた、絶妙な形状になっています

一体口金・包丁

関孫六4000CLのインプレでも言及していますが、10000CLの口金は、平面部分の角度が素晴らしく、親指の腹の上半分が刃面に、下半分が口金にピタリと沿うような、絶妙な角度になっています
口金や刃面に指を当てずに、グリップのみを握る方も多いとは思いますが、和食の板前さんなどは、グリップのやや前側を握ることもよくあります
具体的に言うと、人差し指を伸ばして峰に乗せ、親指の腹は刃面をホールド、中指はアゴのカーブに沿わせて握る …という持ち方です(親指と人差し指で、刃を挟むようにして握る持ち方もあります)

包丁の持ち方

このような持ち方をする場合、10000CLは、親指のホールドが実にピタリと決まるのです

このような形状の一体口金が採用されているのは、関孫六のラインナップのなかでも、この10000CLと10000STのみです
同じ関孫六プレミアシリーズ内でも、ダマスカス、15000ST、10000CCは、アールの付いた一体型口金で、よくある形状となっています

そもそも『一体口金』とは?

一体口金というのは、刃体と口金を一体構造に仕上げたものであり、それぞれを溶接結合させた後に、溶接ビードを削り落とし、平滑に研磨することで仕上げています
一般的な一体口金は、この切削研磨工程の加工性を上げるために、接合部分を一定のアール(円弧)形状としています

アール形状が採用されやすいのは、回転工具であるグラインダーを当てるだけで、自動的に円弧形状が形成され、結果として加工性が上がるためです

とはいえ、『一体口金』自体は、かなり手間のかかる高コストな構造で、高価格帯の包丁には採用されることが多いものです(金属加工の技術が上がることで可能になった、現代的な口金とも言えるでしょう)

一体口金にするだけで、どれだけ製品価格が上がってしまうのかは、関孫六の「くじゃく」と「べにふじ」を比較するとよく判ります
この2つの包丁は、鋼材、刃付、柄の仕様がほぼ同一で、口金の仕様のみが異なります

「くじゃく」は『一体口金』、「べにふじ」は『合わせ口金』仕様となっています
この違いだけで、商品価格は(定価で)3000円以上の差が生じます。一体口金は、口金と刃に隙間が無く、水分や異物の入り込む余地がないという素晴らしい構造ですが、同時にコストのかかるものでもあります

そもそも、刃体と口金を溶接するだけでも、溶接時の熱で刃の『焼き』が戻る懸念が出てきます。確実に溶接して一定の強度を持たせながらも、なおかつ刃体の熱を逃がすというのは、かなり繊細な熱管理が求められるところです

「合わせ口金」であれば、まだ個人の設備でも製造可能なのですが、「一体口金」になると、そこそこの工作機械と設備が必要となり、必要人員も、溶接・切削・研磨と、それぞれの行程の専門職人が必要となります。金属製中空モナカハンドルと同様に、施設設備の充実した刃物メーカーでなければ、手を出しづらい現代的な構造と言えるでしょう

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