家庭用の「おすすめ包丁」とは?(限定予算で、最良の切れ味を)


家庭用の「おすすめの包丁」というからには、「手頃に買える価格で、切れ味が良く、それほど錆に気を使わなくて済む」という3つの条件を満たさなくてはなりません(さらに研ぎやすい事も重要です)

定価1万円を超える高級包丁であれば、おすすめしたい包丁は数多くありますが、「手頃な価格で」という条件が加わると、とたんに難しくなります

ここでは、一般家庭でのごく普通の調理を想定し、「限られた予算で、切れ味を優先させたい場合、おすすめの包丁は?」という視点で考察し、具体的な実例を挙げて解説してみました

当ページでは、「家庭用包丁として、限られたコストで最良のものはどれか?」という観点から解説しています
包丁にある程度の金額を支払っても構わない(その分良い包丁が欲しい)」という場合は、こちらの 包丁おすすめランキング(人気の包丁=おすすめではない理由) を参考にしてください

関孫六プレミアシリーズの包丁・全種類を、ランキング形式にして解説しています
玉虫色の評論にはしていません。ダメなものはダメと手厳しく切り捨てました
順位の基準についてですが、見た目よりも中身で評価しています(外観重視の場合は逆の順位になると考えてください)

家庭用のおすすめ包丁とは?

 家庭用の「おすすめ包丁」とは?(限定予算で、最良の切れ味を) - 目次

  1. 硬度を「最強」にすると家庭では扱いづらい

  2. ステンレス包丁のジレンマ - 切れ味を良くすると、錆びやすくなり価格も上がる

  3. ステンレス刃物鋼材の名称と硬度、特徴

  4. 炭素鋼と同等の切れ味を、ステンレス鋼材で出そうとすると、価格が3倍になる

  5. 炭素鋼が安価でよく切れるのなら、サビさえ防げば最強になる

  6. 炭素鋼とステンレスの、メリットだけを一体化させた包丁とは?

  7. 良コスパの利器材、切れ味の手打ち鍛造

  8. 炭素鋼複合材の包丁を販売しているメーカーは、極めて少ない

  9. 現在入手可能な炭素鋼複合材の包丁は?

  10. 炭素鋼複合材の包丁の例(関孫六4000CL)の感想


包丁の販売業者が決して言わないことを、書いてみましょう

 はじめに・・・

包丁の販売業者は、その包丁の「メリット」しか語りません
優れている点のみを説明し、デメリットについては説明しないのです(売れなくなるので)

このページでは、売れ筋包丁のデメリットについても、本気で切り込んでみました
包丁の販売に携わる方、本当にゴメンナサイ

硬度を「最強」にすると、家庭では扱いづらい

ZDP189の包丁
ツインセルマックス
MD67

ZDP189に代表される粉末冶金法で作られた鋼材(粉末ハイス鋼)は、刃物マニア向けの包丁としては最強かもしれませんが、間違っても一般家庭用とは言えません(包丁マニア、もしくは本職の方のための包丁です)

左の商品は、ツヴァイリングのツインセルマックスMD67で、金属製の包丁としては最強クラスの硬度を誇ります
60人前のローストビーフを、そこそこのスピードで、時間内に切り分けなくてはならない」といったような、質だけでなく量も要求される調理作業に従事される方にとっては、必要な一本かもしれません

そのような作業に携わる方は、切っている途中で刃が終わってしまっても、調理作業を止めて包丁を研ぐわけにもいかないので、(たとえ研ぐ作業が大変であっても)このような高硬度の包丁を使わざるを得ないのです(でなければ、あらかじめ包丁を数本用意しておくかの、どちらかです)

ちなみに、「白紙1号水本焼」は、和食の職人用包丁としては最強ですし、製造する鍛冶職人の立場から見ても、「究極至極の包丁」です。ですがこれも、家庭で使う包丁ではありません(和食を極めた本職さん用の包丁です)

また、硬度だけで考えると、セラミック包丁が最強になってしまうのですが、高硬度と引き換えに低靭性であるため、材質的に脆く衝撃に弱いです。そういう意味ではむしろ脆弱とも言えるでしょう

高硬度の包丁は、刃先が潰れにくい分だけ刃が持ちますが、それと引き換えに靭性が低くなるために、刃が脆くなるというデメリットがあります(刃欠けが生じやすい)
刃が欠けやすい」だけでなく、「やたらと研ぎにくい」、「価格が高額」という三つのデメリットがあるのです
もちろん、それらをすべて理解したうえで、包丁の扱いに習熟した方が購入する分には、全く問題ありません(包丁としては素晴らしい性能を持っています)
とはいえ、一般的な家庭用の包丁としては、万人におすすめできないのも事実です

オールステンレス包丁は、滑る・冷たい・凹みに汚れがたまる

オールステンレス
グローバル製

「オールステンレス包丁」は、グローバル製が有名です(左の画像)
オールステンレスの包丁は、継ぎ目が一切ありませんので、衛生的には優れている印象を受けますが、逆に言うとそれだけであり、握った際のフィット感が犠牲になっています。また、水濡れ時に滑り易いという弱点もあります。

グローバルのステンレス包丁には、滑り対策としてディンプル加工が施されていますが、半球状のくぼみの部分に汚れが溜ってしまうという困った一面も持っています
毎日確実に洗浄して、滅菌処理まで行う食品工場などで使う分にはメリットが生きますが、家庭用包丁としては、「ハンドルにコストのかかった包丁」でしかありません

握り手の部分が、滑らず手になじみ、確実にフィットするというのは、包丁における実に重要な要素です(うっかり手を滑らせて下に落とすと、大怪我の恐れもあるのです)

昔は、オールステンレス包丁というものが存在しませんでしたので、柄がステンレスというだけで、現代的な包丁のような気がして、それで購入してしまう方が多いようですが、ステンレスハンドルにすることで、本当に使いやすい包丁と成り得るのでしょうか?

自転車のハンドルや、ゴルフクラブのグリップが、金属むき出しのままであったとしたら、どのような使い心地になるか、想像してみると良いと思います

ダマスカス包丁 - 装飾にコストのかかった外観重視の包丁

ダマスカス包丁
ツヴァイリング
ボブ・クレーマー

ダマスカス包丁」は、見た目的には最強っぽいのですが、装飾用積層鋼材を側面材に使用しているだけで、構造的には普通の三枚合わせの包丁となんら変わりません
外観にやたらとコストがかかっていて価格も高めですので、家庭用としては論外です
左の商品は、ナイフデザイナーとして有名なボブ・クレーマーがデザインしたダマスカス包丁です
中二病を患っている方に対しては最強の訴求力を持ちますが、その日の食費をやり繰りしている家庭の主婦に対しては、なんらの攻撃力も持ちえないという悲しい面を持っています

● 関連ページ:ダマスカス包丁は、本当におすすめなのか?

こうしてみると、特定の方向に突出した特色を持つ包丁は、一般家庭用としてはデメリットの方が大きく出てしまう事がわかります

家庭用の包丁としては、やはりある程度の性能バランスが必要なのです

ステンレス包丁のジレンマ - 切れ味を良くすると、錆びやすくなり価格も上がる


「個性的で突出した性能の包丁は、家庭用としては使いづらい」ということならば、「ごく普通のステンレス包丁が、実は一番良いのではないか?」と思いたくなります

だがここで、ステンレス包丁特有の二律背反が出てきます

ステンレス系刃物鋼材の特徴として・・・
切れ味を良くするために含有炭素量を上げると、耐蝕性が悪くなり、ステンレスなのに錆が出やすくなるのです
さらに、価格面を加味すると…、
「高い耐蝕性と高度な切れ味、低廉な価格、この三条件をすべて満たすステンレス鋼材は、現状では存在しない」・・・ということになります

ステンレス刃物鋼材の名称と硬度、特徴

420J2は、ステンレス系刃物用鋼材としては価格が低廉で、耐蝕性も優秀ですが、(刃物としては)硬度を高くすることができず、包丁としては刃持ち(エッジホールディング性能)が悪すぎます
刃物用鋼材ではあるのですが、実際包丁にはあまり使用されていません
(包丁用鋼材としては柔らかめのため、まな板の上で叩くと刃が潰れて切れ味が落ちやすいのです。皮を剥くだけなら刃も潰れにくいですので、安物の果物ナイフなどにはよく使われています)
 ■ 420J2鋼材のミニナイフを使用した感想(Kershaw Ace 1710)

12C27AUS-6などのステンレス鋼材ですと、HRC硬度は55~58あたりになり、価格的に手頃で、耐蝕性も良く、包丁として「使えるレベル」になります。ある意味「硬すぎなくて使いやすい」部分もありますが、別の見方をすると凡庸にも思えます
(以下のリンクは、ほぼ同等の硬度の鋼材を使用した刃物のインプレです)

 ■ X50CrMoV15鋼材(と推定される)ヘンケルスの小包丁を使った感想

 ■ X55CrMo14鋼材(と推定される)ヴィクトリノックスのペティナイフを使った感想

 ■ 420HCのガーバー製ナイフをアウトドアで3か月連続使用した感想

 ■ 12C27Cのナイフ(オピネル)をカスタムした例

ミソノ440
440AAUS-8あたりの鋼材になると、HRC硬度も58前後となり、価格、耐蝕性、切れ味のバランスが取れてきて、いわゆる「一般的に使い良い包丁」になります。すべてが及第点に達していますが、突出したところもないため、どこにも「最強」的な要素はありません
とはいえ、最もバランスが取れていると言うこともでき、(最強ではありませんが)「普通の家庭用包丁として優等生」です。最もおすすめできるかもしれません

左の包丁は、洋食調理人用の包丁メーカーとして高い人気を誇る、ミソノの「440」です
(440Aか、それとも440Cなのか、公表されていないので厳密には分かりませんが、おそらく440C鋼材を使用しているものと思われます)

440CATS34銀三クラスになると、硬度も60近くまで持っていくことができ、切れ味的にはかなり高くはなるのですが、その分価格も高くなってしまい、痛し痒しです
(とはいえこのクラスになると、充分「いい包丁」ということができます)

VG10
藤次郎
DPコバルト割込
近年人気の「VG10」は、硬度も60前後出ますし、刃持ちが良いのは判るのですが、研ぎ上げ直後の「ここ一発の切れ味」で勝負するタイプではありません。
左に掲載しているのは、VG10鋼材を使用している、藤次郎のDPコバルト割込包丁です

大量の食材を処理する業務用包丁としては良いのですが、価格も高めですし、少なくとも「家庭用の最強」ではありません
(個人的な印象ですが、VG10はどちらかというとナイフに適正のある鋼材であり、包丁に使用する場合は、VG1の方が向いている気がします)
ちなみに、藤次郎の包丁名に「DP」と入っているのは「脱炭防止処理」のことで、割り込んだ芯材から、側面材に炭素の移動を防止する処置のことです(脱炭がおきると、炭素量が減って硬度が落ちるため)
同様に「コバルト」とあるのは、VG10がコバルト含有の鋼材であるからでしょう

 ■ V金10号(VG10)のペティナイフを使用した感想

関孫六
10000CL
コバルトスペシャルは、炭素鋼を彷彿とさせる高度な切れ味があり、個人的にも愛用していますが、鋼材としてマイナーであり、包丁に仕立てているメーカー自体が少なく、価格もそこそこします

左の商品「関孫六 10000CL」は、コバルトスペシャルを使用している数少ない包丁の一つです
またこれは実体験ですが、コバルトスペシャルの包丁を水滴の付いたまま放置しておいたら、先端に薄く錆が浮いていたことがあります(切れ味と耐蝕性はトレードオフになりやすいという好例です)

 ■ コバルトスペシャルの関孫六10000CLを使用した感想

ここでは具体的に鋼材名を挙げてみましたが、包丁の商品説明でそのものズバリの鋼材名が明記されていることは、意外に少ないです
クロムモリブデン鋼や、モリブデンバナジウム鋼など、「包括的な名称」で表示されていることがほとんどです(要は、刃物用ステンレス鋼材と言っているのと、なんら変わりません)

大手メーカーであるほどこの傾向が強いのですが、小規模メーカーの場合は逆のパターンが多く、積極的に鋼材名を表記している場合があります
ブランド力で真っ向勝負しても、太刀打ちできないため、「この鋼材で、この価格」というマーケティング戦略を取っているわけです。言い換えると、それ以外に勝負できるポイントが無いとも言えます

ちなみに同じ刃物でも、趣味性の高いナイフの場合は、具体的な鋼材名を明示することが普通となっており、その影響でしょうか、ナイフメーカーが製造販売する包丁は、鋼材名まで明らかにされていることが多いようです


炭素鋼と同等の切れ味を、ステンレス鋼材で出そうとすると、価格が3倍になる

結局のところ、炭素鋼と同程度の切れ味をステンレス系鋼材で出そうとするのは、かなり至難の業です

高硬度に仕上げ、耐摩耗性を高めて、刃持ちを良くすることはできるのですが、「微細なざらざら感のない、のっぺりした刃」になりやすいです。 研ぎ上げた際の一発の切れ味では、どうしても炭素鋼に太刀打ちできません(一旦切り込んでしまえは、さほど変わりませんが、切り込む際の「刃のかかり」の時点で差が出ます)

そこをさらになんとかしようと、改良を重ねると、今度は耐蝕性が悪くなり、えらく高額なステンレス鋼材になってしまうのです
そういう意味では、ステンレス包丁は、「どこでバランスを取るか」であり、ある意味「妥協の求められる包丁」です

具体例を上げると、コバルトスペシャル鋼材は、関孫六10000CL、15000STに使用されていますが、どちらも三徳包丁で1万円を超す価格です。炭素鋼複合材の関孫六4000CLに比較すると3~4倍程度の価格差があります

仕上げの違いもありますので一概に比較できませんが、炭素鋼は比較的安価な鋼材です
炭素鋼と同程度の切れ味をステンレス鋼で出そうとすると、価格差は2倍では収まらず、3倍程度になって、なおかつ耐蝕性が悪化してしまうのです

炭素鋼が安価でよく切れるのなら、サビさえ防げば最強になる

長くなりましたので、ここまでの解説を、一旦まとめてみましょう
  • ステンレス包丁で低価格のものは、切れ味が今ひとつである

  • ステンレス包丁で炭素鋼と同等の切れ味を求めると、価格が高額になり、耐蝕性も悪くなってくる

  • 結果的に、ステンレス包丁を選ぶ際は、どこかで妥協する必要がある

それでは炭素鋼は、どうなのでしょうか?

白紙鋼の包丁
(炭素鋼)


青紙鋼の包丁
(炭素鋼)

日本刀の例を持ち出すまでもなく、炭素鋼(ハガネ)は素晴らしい切れ味を持っています
耐蝕性に難がありますが、刃のかかりが良く、研ぎやすく、なおかつ(大量生産すれば)かなりの低価格で作ることができます

サビさえ防いでしまえば、炭素鋼の包丁は、まさに最強です

和食の職人さんは、炭素鋼(ハガネ)の和包丁を日々手入れして使いますので、サビが浮く余地はないのですが、一般家庭では「手入が必要」というだけで敬遠されがちなのも事実です

ステンレス包丁が主流になってしまった現代では、家庭用の炭素鋼の包丁は、製造する刃物メーカーが少なくなってきました

左に挙げている包丁は、白紙鋼や青紙鋼など、炭素鋼として高い品質を誇る安来鋼を使用した製品です
ハガネの包丁は、低価格でも切れ味が良い」という例として挙げています

安来鋼は、「ヤスキハガネ」と読み、島根県安来市の日立金属で製造されている鋼材のブランド名です(登録商標となっています)
具体的な鋼材名としては、青紙スーパー青紙1号青紙2号白紙1号白紙2号あたりが有名です

価格を見ると判りますが、包丁としては決して高いものではありません(むしろ安いです)
ですが、ステンレス鋼で炭素鋼の切れ味に負けないものを作ろうとすると、非常に難しいのです

炭素鋼とステンレスの、メリットだけを一体化させた包丁とは?

この炭素鋼の弱点である「錆やすさ」ですが、完全解決することは難しいにしても、実用上問題ない程度まで解決することは可能です

切刃のみを炭素鋼にして、その両側面をステンレス材で挟んでしまえば、「刃先は切れ味がよく、刃先以外は錆に強い」という、いいとこ取りの素晴らしい特性に仕上がります
これがいわゆる、「炭素鋼複合材」です

複合材はクラッド材とも呼ばれ、異種金属を接合して一体化させたものです
 貝印は、炭素鋼の複合材を、「ハガネ三層鋼」、もしくは「複合三層鋼」と呼んでいます

切れ味の良い炭素鋼と、錆びにくいステンレス材の良いところのみを活かした、素晴らしい利器材と言えるでしょう

これはある意味、包丁の理想形でもあります

炭素鋼複合材(クラッド材の包丁)

ネガティブな要因があるとすれば、「刃の先端(エッジ部分)が錆びやすい」というだけですので、使用後の水滴さえ拭っておけば、刃体全体が錆びやすい包丁と比べると、断然扱いやすくなります

特に、刃と柄のつなぎ目の部分は、水分が侵入して腐食しやすく、包丁の寿命を縮める一因となりますが、炭素鋼複合材は、この部分がステンレスで覆われているため、耐久性に富んでおり、安心して長く使うことができます

良コスパの利器材、切れ味の手打ち鍛造

炭素鋼とステンレスの複合材は、基本的に工場で生産されます。金属表面を酸化させずに接合するのは、大掛かりな無酸化炉が必要となり、個人レベルの設備投資しかできない鍛冶屋さんでは、到底真似ができません

このような工場で圧延接合した複合材は、「利器材」と呼ばれ、同じ複合材でも手打ち鍛造で鍛接したものとは区別されます
(手打ち鍛造の場合は「ハガネ」と「軟鉄」の鍛接(沸かし付け)となります

 利器材について
「利器材」は日本の鋼材メーカーの得意技のひとつです
炭素鋼複合材も利器材の一つですが、他にも、炭素量の異なるステンレス鋼材同士を接合し、「ステンレス切刃 + ステンレス側面材」の利器材の包丁も数多く販売されています(むしろこちらが主流です)

逆に、西洋刃物メーカーの場合は、基本的に「一枚ものの単層刃体」となっています
利器材は、「割り込み」や「三枚合わせ」といった日本独自の刃物文化を、工場生産可能なように発展させた技術であり、和の刃物文化を現代的に昇華させたものと言ってよいでしょう

さてこの利器材ですが、なぜか刃物の販売業界では軽視されることが多いのです

特に、手打ち鍛造包丁を販売している業者さんは、「手打ち鍛造品」を持ち上げるために、「利器材を使用せず、手打ちにこだわって包丁を作っています」といった能書きを垂れたりします
はっきり言ってしまうと、利器材を貶めているのは「利益率の高い高額な包丁を売ることしか考えていない業者さん」に多いです
利器材には利器材の良さがあります。それは、工場生産であるがゆえにコスパが良く、品質のばらつきも少ないということです

「ハガネの手打ち鍛造包丁」が素晴らしいことは否定しませんし、むしろ肯定するものですが、「ハガネの手打ち」は、お値段が高すぎるのが難点です
何しろ「熟練の職人さんが、一本一本心を込めて手打ち鍛造している」のですから、人件費がかかってしょうがないのです

ワタシもそういう包丁を愛用していますので、手打ち鍛造品の価値はよく判っているつもりです。 実際に、薄刃包丁で大根の桂むきをしていると「これに優るものはないなぁ~」と、しみじみと感じます
ですが一般家庭で、どれだけの方が、大根の桂むきをするでしょうか?
魚を一匹丸ごと購入し、家庭で三枚におろすようなことも減りましたので、出刃包丁や柳刃包丁を使う方も減ってきています

そう、手打ち鍛造包丁というのは、和食の職人さんにとっては素晴らしい価値がありますが、価格の高さやメンテナンスの面倒さを考慮すると、あまり一般家庭向きではありません (良さが判る人だけが使えば良いのです)

包丁 手打ち鍛造品

そういう意味では、「ハガネの手打ち鍛造品」に迫る切れ味を、「極めて低価格」で実現し、一般家庭で使いやすいように「側面を錆びにくくした」というのは、ある意味包丁の理想形に近く、安くて良い包丁の筆頭だと言って差し支えないでしょう

見た目はどこにでもありそうな包丁で、外観も地味なため、今ひとつ人気が出ず、あまり売れていませんが、これほど過小評価されている包丁もないと思います
家庭用としては、「最強の包丁」と言ってよいのではないでしょうか?

V金10号の包丁で喜んでいる方は、このような、炭素鋼複合材の切れ味を一度試してみると、「刃がかりの良さ」に驚かれることでしょう

炭素鋼複合材の包丁を販売しているメーカーは、極めて少ない

現在、炭素鋼複合材の包丁を販売しているのは、貝印(Kai)のみです
他の有名刃物メーカーも調査してみましたが、大手包丁メーカーでは見当たりませんでした

藤次郎は、青紙や白紙など、安来ハガネの炭素鋼を使用した和包丁は作っていますが、炭素鋼とステンレスを合わせた複合材は見当たりません
ヴェルダンの下村工業グローバルの吉田金属、そしてヘンケルス・ツヴァイリングは、ステンレスの包丁ばかりで、そもそも炭素鋼の包丁自体がありません

いくら優れた包丁でも、その良さが消費者に伝わらなければ人気が出ることもなく、商品として売れません
売れない包丁は、他のメーカーも真似して商品化しませんので、現状では大手の貝印が作っているのみです

ちなみに、個人規模の鍛冶屋さんで同様の利器材を仕入れて和包丁に仕立てている例なら数例あるのですが、小規模経営のため価格が手打ち鍛造包丁と同等レベルになっており、高額な包丁のため、(当ページの趣旨から考えても)もろ手を上げておすすめすることができません

現在入手可能な炭素鋼複合材の包丁は?

一般的に流通している炭素鋼複合材の包丁は、現状では以下の3種類のみです

関孫六
10000CC


関孫六 10000CCは、「関孫六プレミアシリーズ」という位置づけで、仕上げにも相当のコストがかかっており、決して安い包丁ではありません
ただ、「仕上げの良い包丁を使う喜び」というのもありますので、予算が許す方にはおすすめできると思います

● 関連ページ:第2位は炭素鋼ハイブリッドの「関孫六10000CC」

10000CC以外に、ハガネとステンを合わせた利器材を採用している包丁としては、「関孫六・安土」と「関孫六・桃山」があります

関孫六 安土
「関孫六 安土」は樹脂グリップですが、刃体の下半分はブラスト加工されており、刃体だけを見ると旧製品の4000CLとそっくりです
推測ではありますが、グリップ以外は4000CLとほぼ同じ製品なのではないかと思います

ハンドル材が樹脂製ですので、見た目の高級感はありませんが、逆に口金を設ける必要もないため、その分商品価格を抑えることに成功しています

三徳包丁の場合、実売価格は2500円程度となっており、実質3000円以下で購入できる包丁としては、最強の切れ味(最強の包丁)ではないかと思います

関孫六 桃山
また、「関孫六 桃山」の方は、10000CCとよく似た感じの、刃紋の浮き出た刃体が採用されています
刃紋が波打っているといっても、手打ち鍛造ではないでしょうが、クラッド材でこの外観に仕上げられるというのは、(鋼材メーカーが優れているのかもしれませんが)すばらしい技術力だと思います
「桃山」は、ありていに言ってしまえば、口金を省いた廉価版10000CCといった感じです
桃山は、ハンドル材が積層強化木ですので、安土よりも見栄えがします
三徳包丁の場合、実売価格は4000円前後ですので、こちらも5000円以下で買える包丁としては最強クラスと言って良いでしょう。少なくとも、同価格帯のステンレス包丁では、太刀打ちできない切れ味を出すことができます(価格は2020年2月に調査)

わたしが使っている炭素鋼複合材の包丁は、旧製品の関孫六4000CLというもので、既に生産終了となっており、現在入手が困難です
それでは、4000CLを実際に使った感想はどのようなものなのか、詳しく解説してみましょう

【 お願い 】
当サイトのコンテンツをパクらないでください

某ゲーム系ユーチューバーの方が、「関孫六 安土」のインプレ動画をYouTubeに掲げていますが、動画コンテンツの内容は、ネギを切る実演をしながらこのページの要旨をかいつまんで説明してるだけです
(おそらく、当ページを読んで「安土」を購入したのでしょう)

はっきり言ってしまうと、コンテンツのパクリです
このような著作権を侵害する行為は、おやめください

著作権違反に対しては、厳正に対処しています

パクリサイトに画像使用料を請求し、費用をきっちり回収した実例
該当する動画は、「コストパフォーマンス最強の包丁はこれだ!やっぱ炭素鋼!」にて動画検索すれば確認可能です

炭素鋼複合材の包丁の例(関孫六4000CL)の感想

関孫六4000CL

刃付の精度

刃付は、必要にして充分であり、極端に高いレベルを求めない限り、箱出しでそのまま使えます

小刃には砥石の跡がかなり残っているのですが、拡大鏡でよく見ると、小刃の先端のみが平滑に仕上がっています
おそらく、先端の部分のみ湿式の研磨をかけているか、皮砥を当てるかしているのでしょう、肉眼では判別できませんが、そこだけはギザギザが残っておらず綺麗に仕上がった刃になっています
コストを掛けずに切れ味を出せるよう、上手に仕上げているという印象でした

研ぎ上げると、パリンパリンの刃が付く

三枚合わせの利器材(クラッド材)ですから、おそらく圧延ロールをかけて伸ばしています
まちがっても手打ちの鍛造品ではありません
にもかかわらず、研ぎ上げると非常に鋭い刃が付きます

家には、手打ち鍛造の和包丁(水野鍛錬所製、青紙二号の薄刃)があり、さすがにそれには一歩譲りますが、価格的には約3倍の開きがある10000CLと、いい勝負ができそうな良い刃が付きます
これまで、「利器材は、大量生産品の安物」というイメージがありましたが、そのイメージを完全に覆してくれました

ハガネにも、SK120といった手頃なものから青紙スーパーまで、さまざまな鋼材があります。この4000CLに使用されているハガネの種類は公表されておりませんし、炭素量の割合も判りません。

ただ、研いだ際の砥石のかかり具合からすると、ある程度のクロム含有があるようです
実際、茄子やネギ、アボカドなどを切っても刃先のエッジ部分がほとんど変色しないところを見ると、そこそこクロム成分を入れているのでしょう(クロム含有の少ない白紙鋼などは、表面に酸化被膜ができやすく、包丁を濡らさずにこれらの食材を切ると、如実に色が変わります)

仕上げは価格相応

高価格帯の包丁ではありませんので、製品価格の上昇につながるようなコストのかかる仕上げは省かれており、価格相応の仕上げとなっています

商品毎、製造ロット毎の当たり外れもあるかとは思いますが、わたしが購入した製品には、口金部分にグラインダーを当ててしまった跡が残っていました
この部分は、ブレードの両側から軟ステンレスを挟んだクラシカルな『合わせ口金』となっていますが、この切削整形、もしくは研磨時に生じたものでしょう

貝印関孫六4000CL仕上げ

また、アゴのカーブ部分も、バリが残っているとまでは言いませんが、鋭角にエッジが立っており、断面のグラインダー跡も残っています。また、ブレードと積層強化木の合わせが甘く、(画像に写っているように)口金の後ろに小さな隙間が生じています。

補足:これはペティナイフですので、アゴ近辺の仕上げ具合は、機能にさほど影響がありません
とはいえ、大きめの包丁ですと、アゴのカーブ部分に中指を差し込んで持つ時もありますので(和食の持ち方かな?)、アゴ近辺がどのように作られているかは、ホールド感を左右する重要なポイントです

具体的にいうと、アゴのカーブの付け方(カーブ半径)、口金からアゴにかけての断面を研磨して整えているか否か、そして断面のアールの付け方(面取りの状態) …などです
ここの仕上がりが丁寧であれば、それだけで「高いやつや~!手間をかけて、きれいに仕上げてある!」と感激したくなるところです
同じ貝印でも、関孫六10000CLなどは、アゴ近辺の作り込みが実によくできていて、カーブの角度といい、親指にぴたりと沿うような口金の角度といい、使い手のことがよく考えられているということが、握る度に手から伝わってきます(高いだけのことはあります)

関孫六4000CLブレード

ブレードの峰と口金の繋がり具合も、もう少しなだらかであればよいのですが、今ひとつの感じです
この4000CLは刃物店で購入したものではなく、古物商から入手しましたので、もしかするとアウトレット品を掴まされのたかもしれません。とはいえ、この程度の瑕疵であれば、自分でカスタムを兼ねて修正できるので、さほど気になるほどではありません

関孫六4000CL 総評

このように、「関孫六 4000CLペティーナイフ」は、いささか仕上げの甘いところも見受けられますが、コストをかけにくい普及価格帯の製品としては、すばらしい切れ味を持っており、クラッド材でよくここまで引き出せるものだと感心します
価格に対する切れ味のコストパフォーマンスで考えれば、非常に高い価値を持った包丁だと思います

現在では4000CLは廃番となりましたが、炭素鋼のクラッド材を使用した包丁は、今でも販売されています
炭素鋼(ハガネ)ハガネは手入れを怠れば錆びますので、主婦層からは敬遠されがちで人気も低く、商売的な旨味も少ないかも知れませんが、後継機種や、似た造りの包丁の販売を続けているのは、貝印のすばらしいところだと思います(関孫六の「安土」、「桃山」、「10000CC」などが該当します)