包丁の柄をDIY交換(自作積層グリップ)


修理対象は、昔に買った関孫六(三徳包丁)


物置を整理していたら、昔使っていた包丁が出てきました
1990年頃に購入した、ハガネの三徳包丁です
メーカーは貝印で、関孫六ブランドなのですが、商品名までは判りません
刃面に「鋼牛」という刻印があるので、仮に「鋼牛(こうぎゅう)」と呼ぶことにしましょう

昔の包丁

確かホームセンターで買ったもので、価格は数千円程度だった覚えがあります
包丁としての構成は、ハガネの一枚物で、口金はなく、「本通し」ではない「背通し」になっています。また、柄の素材は、積層強化木のようです。
コストのかからない造りで仕上げながらも、ハガネ鋼材を使用して高い切れ味を担保し、安さと切れ味を両立させた、コストパフォーマンスの高い包丁といった感じです

包丁の錆

見たところ、各所に錆が浮いており、軽い柄腐れを起こしていたものの、手直しすればまだまだ使えそうに思えました

柄腐れ・包丁
柄の内部で鋼材が腐食することで、柄を押し広げ、隙間が生じています
柄が取れるほど腐食が進行しているわけではなく、このまま使用できそうな強度はあるのですが、今のうちに柄を交換しておきたいと思います


背通し
これが『背通し』です (ピントがズレててスミマセン)
本通しとは異なり、包丁の鋼材が、柄の『背』にしか通っていません
今ではあまり見かけない構成になりましたが、以前は、『本通し』に比べると、『背通し』の方が少し価格を落として販売されていました

修理前に、一旦砥いでみて、刃の傾向を確認

切刃を確認したところ、自分で砥いだ痕跡が見て取れました
刃の根元から中央あたりまでは良いのですが、切っ先のあたりの研ぎ角がいささか狭角になっており、刃角が安定していません

約30年前の自分自身が、下手くそなりに砥いでいたという感じで、なにやら微笑ましく思えます

砥石に当ててみて、刃の硬度や切れ味を確認してみました

第一印象は、「昔ながらのハガネの包丁!」という感じです

砥石に当てると、盛大にバリが出て、すぐに刃が付きます
「瞬間で刃が付く」というと言い過ぎですが、自分の所有する刃物の中では、最速で刃が付きました(バリの出方も随一です)

昔は、セラミック系の高性能な砥石があまり普及しておらず、「赤レンガ」と呼ばれる赤土色の砥石(キングデラックスの#1000番など)が一般的でしたので、刃物メーカーも、普通の砥石で楽に研げるような硬度設定にしていたのでしょう

あまりに楽に研げてしまうのに最初は驚きましたが、「そういえば、昔の刃物は、こんな感じだったな」と思い出し、久しぶりに味わう感触に懐かしさを禁じえませんでした

パリンパリンのいい刃が付いた。これは良いものだ

研ぎ上がった刃を触ってみると、パリンパリンした感触が伝わってきます
ステンレス系の刃物ですと、刃先の角度だけで切り込んでいくような、「のぺっ」とした感覚がありますが、ハガネは刃先に超硬微粒子が付着しているような、そんな「かかりの良さ」と、シャキィーンとした鋭い感触の両方があります

おそらく硬度はそれほど高くはないものと思わます
手持ちの刃物でハガネのものといえば、水野鍛錬所の手打ち鍛造薄刃包丁と、関孫六4000CLがありますが、それらよりも、明らかに柔らかい感触です(青紙2号の手打ち鍛造と比較して柔らかいのは、当たり前といえば当たり前ですが)

それでも、柔らかいのにこれだけの刃がついてしまうということが、実に驚きです(それがハガネの良いところでもあります)


少し話がずれますが・・・
刃物の世界では、「炭素量が多くて硬度が高い方が、良い刃物」…という短絡的な考え方があり、「青紙スーパー>青紙1号>青紙2号」のように思われているところがあります(この順番で炭素量が多く、高い硬度が出せる)
はっきり言って、青紙スーパーを使って鍛造包丁を製造しているところが、「青紙スーパーだから最強!」みたいな触れ込みで売っているのがいけないのだと思うのです

ワタシが思うに、「硬すぎると、正直言って、使いにくいよね!!」…なのです
大事なことなので強調しておきます 「硬すぎる包丁は、使いにくいぞ!」 …なのです

使いにくいというのは…、硬すぎるから粘りがなくて、刃が欠けやすい。折れの可能性が高まる。研ぐのが大変、安い砥石だとなおさら研げない、簡易シャープナーだと内蔵砥石がへたりやすく、研げなくなるのが早くなる。高価なセラミック砥石でないと楽に研げない。なんと言っても、「硬度の高い包丁は、商品価格が跳ね上がる(削って包丁の形に整えるのが大変でコストがかかるから)」 …などなどです


話を戻しましょう
この「鋼牛」を砥いだ時、改めて「柔らかいのに切れる包丁は、サイコー!!」と感じました

研いだ時の感触からすると、あまり刃持ちする方ではないように思えましたが、これだけ良い刃が付いてくれると、研ぐ回数が増えることくらいなんでもありません。むしろ「素晴らしい刃が、簡単に付けられるというのは、なんと価値のあることなのか!」と思います。こまめに研いで、常にフレッシュな刃先で使用する価値があるというものです

刃体に力を加えてみて、鋼材の粘り(しなやかさ)を見てみましたが、そこそこしなります
カチカチの剛体ではなく、フィレナイフのようなしなやかさが感じられます
しっかり粘る刃体ですので、折れや欠けにも強いでしょう

近年は、ガチガチに硬い仕立ての刃物が多く、個人的にも「なんだかなぁ~?」と、疑問に思うことも多かったのですが、こういった、こまめに研いで使うことを前提とした、柔らかくて粘りがあって切れ味の良い刃物というのは、あまり見かけなくなりました

昔と異なり、「自分で研ぐ」ということが一般的でなくなってからは、「ガチガチで刃持ちは良いけれど、実に研ぎにくい」そんな刃物が増えている感じです

こういう、柔らかくて研ぎやすく、なおかつ切れ味極上の刃は、今となっては希少な存在かもしれません
「これは、しっかり修理して、使えるようにしなければ」と、改めて感じました


包丁の柄をDIYで交換

柄の「かしめピン」を、ドリルで揉む

腐食の状態は、根本周辺が最も激しくなっています
中子までボロボロに腐食していると、強度が不足して、修理自体が難しくなります
中子(柄の部分の鋼材)がどれだけ残っているかは、柄を分解してみないことにはわかりません
おそらく大丈夫だとは思いますが、まずは柄の分解をしてみることにしました



まず、刃引きを行って刃を丸めたあと、刃に養生を行います(怪我防止のため)

次に、かしめピンをドリルで揉んで穴を開け、取り外します
かしめピン内部の太さが不明のため、細めのドリルから初めて、徐々に穴径広げて様子を見ました

ドリルは通るものの、ピンは外れそうで外れず、試行錯誤しながら外しました

包丁の柄を分解



ようやく分解できました
錆はかなりひどいように見えますが、中子に穴が空くほどではありません



リューターに荒目の回転砥石をつけて、錆を除去します
あらかた落としたあとは、ゴム砥石に変えて、さらに丁寧に錆取りを行います



中子だけでなく、刃面の錆もあらかた落としました

包丁の柄を自分で作る

まな板シートを切って積層

本当は、マイカルタやエボナイトなど、しっかりしたナイフ用専用ハンドル材を使いたかったのですが、刃物の柄を自分で作るのは初めてです
ぶっつけ本番でいきなりやっても、たいてい失敗して後で後悔しますので、今回は手近にある安価な材料を使い、練習がてらグリップを自作することにしました

使用したのは、使わなくなった樹脂製のシートまな板です
2mm厚のシートまな板をカットし、積層することで、グリップの形に仕上げようと思います

あくまでも、「練習用の仮ハンドル」ですので、「かしめ」によるグリップの完全固定は行わず、後で取り外せるような構成にしました


【 使用材料 】
 ● 2mm厚のシートまな板(ポリエチレン製)
 ● 両雌ねじスペーサー (ジュラコン製)外径5Φ 長さ10mm、M2.6、ピッチ0.45
 ● 六角穴付皿ボルト (ステンレス製) 2.5mm×8mm




内径の異なる穴を、中心をずらさずに開ける必要があり、皿ネジが面一になるように、「皿もみ」もせねばなりません、丁寧に作業をする必要があり、慎重に作業しました

本来ならばボール盤を使用して、正確に垂直な穴を開けたいところですが、手持ちドリルしかありません。手作業なので、ろくな精度は出てないと思いますが、なるだけ中心がズレないように気を使いながら、垂直になるように穴を開けました



今回使用したスペーサーと皿ボルトです
ボルト自体が小さめのため、六角レンチも1.5mmというかなり小さいものを使用します
ネジ穴を舐めやすいので、低トルクでやさしく締める必要があります


「仮合わせ」にまでこぎつけました
グリップは、同一形状に切断したものを重ねているだけですので、まだ角ばったままの状態です



内部は、このようになっています
中子に開いている穴の内径を、5mmで統一するため、真ん中の穴以外はドリルで広げています



カッターで大まかに角を落とし、荒く形を整えた、「自作積層グリップ」

ホルツ錆チェンジャー

グリップがおおよそ完成したところで、中子の錆防止対策です
ゴム砥石でかなり錆を落としましたが、ピンホール状の腐食になっている箇所は、完全には錆が取り切れていませんし、そこから再度錆が広がっていく原因になります

ホルツの錆チェンジャーを使用して、ピンホール腐食の部分を黒錆に転換し、腐食防止とすることにしました



画像は、サビチェンジャーを塗布して完全乾燥したものです(約8時間経過)

塗った直後は半透明の白色なのですが、あれよあれよという間に、真っ黒に変わっていきます(決して黒色塗料を塗ったわけではありません)
ホルツの錆チェンジャーはラテックスが入っているため、乾燥後は薄くゴムを引いたような質感になります
また、厚塗りするとその部分が引かずに、盛り上がったままに仕上がりますので、薄塗りが適していると感じました



この状態で、一旦グリップを合わせてみました
まだ荒削りな部分もありますが、特に手に当たるような部分も無く、握り心地は上々です
触った感触や、滑りにくさも、まずまずの及第点という感じです

重心は、グリップと柄の境目のところになっており、ほぼ理想的な重心位置だと思います
樹脂グリップのおかげで、グリップが軽くなり、重心が先に移動したのでは?と思いましたが、それほどでもないようです

改めて、この状態で重量を計測してみましたが、125gです(おぉ、軽い!!)
三徳包丁としては、そこそこ軽量に仕上がっています
サイズも計測してみましたが、刃渡りは標準的な16.5cm、厚みは最大のところで1.9mmでした

まだまだ、磨き足りない部分は多々残っていますし、あくまでも仮のグリップですので、外観もしょぼいのですが、このまま刃付けしてしまえば、そのまま使用できそうです



自作積層グリップを上から見たところです


今はこの状態で、作業ストップ中です
この後は、刃体を磨いて見栄えを良くするのと同時に、グリップをもう少し磨いてきれいに仕上げ、一旦刃付けして、実際に使ってみようと思います

一通り使ってみて、グリップの状態を確認した後は、将来的にエボナイトのハンドル材を購入して、見栄え良く仕上げることを計画中です




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