Kershaw Ace 1710 軽量ナイフ


重量25gの超軽量は、ウルトラライト登山やロングトレイルで役立った


一言インプレ
  • 25gの重量は、ロングトレイルやバックパックの長期旅行でも苦にならない
  • 使いやすいドロップポイント形状、刃は厚みが薄めで「抜け」が良い
  • グリップはザイテル素材、チェッカリング仕上げで滑りにくい
  • カーショウブランド、製造は貝印


Kershaw Ace 1710 の特徴

長期縦走やロングトレイルなどで実使用

このナイフは、登山時に携行するナイフとして、軽量であることを最優先に考え、さまざまなナイフの重量を比較検討の上で購入したものです
ちなみに、登山用ナイフであるペツル「スパサ」の重量は43gです

グリップはザイテル樹脂であり、刃の厚みも薄手であるため、重量軽減に寄与しています。実測重量は25gで、このサイズのナイフとしては、かなり軽い部類ではないかと思います

個人的には、登山時の軽調理用、および非常用途として、ザックの中に忍ばせて使っています
このナイフは残念ながら廃番となっており、在庫分のみの販売となっているようです

調理用に使ってみた

下は、実際に使用した時の画像です(オートルートでのトレッキングにて

オートルートは、フランスのシャモニーからスイスのツェルマットまでのロングトレイルであり、移動距離が200km、累積標高が1万2千メートル、11回の峠越えがあり、悪天停滞日なしで計算しても14日かかります
技術的な難易度が求められるルートではありませんが、テントを使って全行程を一度に歩く場合は、すべてのギアに、軽くて堅牢であることが求められます
この時は、要所要所でウルトラライト系のギアを使用し、ツェルトを使用することで、背負重量を18kgほどに収めました

カーショウ・エース1710の25gという軽さも、実にありがたいものでしたが、それと引き換えに刃渡りは約6cmと短めであり、調理に使う際はもう少し長さが欲しいところではありました
ただ、山ではそんなことは言っていられません。軽量であることを優先するため、利便性を妥協するのは致し方ありません


ここでは、パン、チーズ、ソーセージ、パプリカなどをカットし、夕食にしています
刃渡りが短いため、パンを一度に切り分けることができず、二度に分けて刃を入れる必要がありましたが、さして大きな問題ではありません

ブレード形状はよくあるドロップポイントですが、このような作業にも向いており、薄手のブレードは、食材に対する「切り抜け」も良好です
また、フラットな刃面は、バターなどを塗る際にも応用が利きます(鎬が出ているナイフだと難儀します)
さらに、グリップ付け根部分に設けられている窪みがよくできており、人差し指の第一関節が気持ちよく収まります
チェッカリング仕上げ(ダイヤ状の表面模様)も非常に有効で、グリップの厚みに乏しい割には、とても良好なホールド感があり、鋼材がややチープであることを除けば、申し分のない作りだと思います



このKershaw Ace 1710は、あくまでも登山時の非常用、及び軽調理用として使っているので、実際にキャンプなどでそこそこの調理をする場合は、使い勝手の良いガーバーのフィレナイフなどを持っていくことが多いです

とはいえ、軽量なナイフというのは、(使わないかもしれない場合にも)携行時の重量負担が少ない、かさばらないという良さがあります
そういう意味では、登山用途以外にでも、「バックパッキングでの長期旅行」や、「非常用持ち出し袋に入れておく刃物」としても、たいへん有用だと思います

携帯が苦にならない小型軽量ナイフは、非常時に有効

幸いなことに、本当に非常用、緊急用として使用した経験はありません

登山時に想定されうる緊急・非常用途としては…
怪我をした際に衣服を切って患部を露出させる、もしくは、衣類を裂いて、止血帯や包帯、三角巾、当て木を縛る布の代用にする …などでしょうか?(包帯や止血帯などの救急用品を、予め携行しておくのが一番ではありますが)

他には、細引きを切ったり、箸を紛失した際に、落木などを削って箸を作る …などはありそうです
他には、アルミ製の飲料缶を切り開いてローソクランタンを作ったり、ペットボトルを切ってコップにしたりと、そういうこともこなせるでしょう
そういえば、実際に西表島で本当に箸を落として作った覚えがあります。また、スイスでは「モンカフェ」のような一杯ドリップ用コーヒーが売っておらず、現地でペットボトルを切断して、簡易コーヒードリッパーを作ったことがあります


他には、テント内からの非常脱出が考えられます

大雪山トムラウシ縦走をした際に、就寝時に熊が出たときのために、枕元にこのナイフを置いて寝たことがあります(まちがっても熊との戦闘用ではなく、テント生地を内側から切り裂いて出るための、緊急脱出用です。本当に熊が出るとは思っていないので、あえて言うなら安眠用です)
ヒサゴ沼や白雲岳の野営地は、そこそこ標高があるので、そこまで熊が上がってくることは考えにくいです。理由は、まず熊の食料となるものが自生しておらず、そして、熊が身を隠せるような木々も無いためです
より標高の低い山であれば、幾分懸念も出てきますが、森林限界を超える標高まで登ってしまえば、出現確率がぐっと下がりますので、必要以上に怖がる必要はありません(とはいえ、入山時と下山時は樹林帯に入りますので、それなりに配慮しましょう)


法令的にも携行しやすい

刃渡りの実測値が5.8センチ、刃体の長さも6センチですので、銃刀法の取締対象には該当せず、そういう意味でも携帯しやすいナイフです
銃刀法の取締対象は刃体の長さが6センチを超える刃物、折りたたみナイフの場合は刃渡り8センチを超えるものとなります。ただ、軽犯罪法においては、刃物寸法の大小にかかわらず、正当な理由の有無が取締におけるポイントとなりますので、きちんとした理由が必要となります
重量的にも法令的にも携帯しやすいナイフではありますが、法律に違反しないよう気をつけましょう


使用鋼材

使用鋼材については公表されていないようですが、420J2ステンレスと表示しているサイトもあります。個人的な推測ですが、刃の持ち具合や、砥石での砥げ具合、価格などから総合的に推測するに、おそらくSUS420J2で間違いないと思います
SUS420J2は、刃物用ステンレス鋼材としては廉価で、高硬度の鋼材に比較すると整形や切削・研磨が容易なため、加工コストが抑えられ、安価な刃物商品によく使用されています

パンやソーセージ、玉ねぎなど、食材を切る分には何ら問題はありませんが、硬度がそれほど高くないため、刃持ちはそれなりです
まちがってもバトニングなどはしない方が賢明です。刃も薄いので簡単に刃が潰れると思います(そのような用途に使う人はいないと思いますが、少なくともブッシュクラフト向けではありません)



砥いだ感触

鋼材が柔らかめなだけに、砥石に当てた感触も独特です
柔らかめのカエリが出るのですが、カエリを取ろうと刃を裏返して磨ぐと、カエリが曲がって反対側にきてしまうことがありました
(ステンレス系の刃物を研ぐ際に、「カエリがペラペラして、いつまでもカエリが取れない」と表現されのは、このような状況のことですね)

やたらと硬度の高い刃物は、研ぐのに難儀することがありますが、こういった硬度が低めのステンレス鋼材も、別な意味での砥ぎにくさがあります
ガシガシと力を入れて磨ぐのではなく、弱めの力加減で、切刃の状態を指先の感覚でよく確認しながら、繊細に砥ぎあげる必要があると感じました

とはいえ、丁寧に刃付を行うと、きちんとした刃が付きます
ただ、そもそもブレード自体が小さく、刃の先端に行くに従って、砥石との接触がピンポイントになるため、均一な角度に仕上げるのが難しく、試行錯誤して研ぎ上げました

そのような感じで、やや繊細な刃付が必要な方かもしれませんが、きちんと研げる方であれば、さして問題ではありません
書き漏れましたが、箱出し時の切れ味は充分なものがあり、初めて使った時の印象は、「さすが貝印、包丁で手慣れてるだけに、刃付が上手いなぁ」というものでした

Kershaw Ace 1710 諸元

  • サイズ:全長14cm ブレード長約6.2cm 刃渡り5.8cm 刃厚2mm 重量25g
  • 鋼材:420J2ステンレス
  • グリップ:ザイテル(デュポン製ポリアミド樹脂)、チェッカリング仕上げ

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