登山に使える軽量ナイフ「Kershaw Ace 1710」


登山やロングトレイルでも負担にならない、軽量25g


一言インプレ
  • ウルトラライト登山やバックパック旅行にぴったりの超軽量ナイフ
  • 使いやすいドロップポイント形状、刃は厚みが薄めで「抜け」が良い
  • グリップはザイテル素材、チェッカリング仕上げで滑りにくい
  • カーショウブランド、製造は貝印で品質もしっかり
軽量ナイフ Kershaw Ace 1710

「登山に使える」と書きましたが、あくまでも「脚だけで登る山登り」の場合です
(要は、登山時の簡易調理用途に適しているという意味です)

アルパインの場合は、波刃付きナイフの方が、ザイルの切断に適しています
また、グローブをした状態でブレードを開けるよう、大きめのサムホールがあることも重要で、ハーネスに装着できるよう、カラビナ用のホールがあるとさらに使いやすいです
ペツルのスパサ は、このような条件を満たしており、ビレイ(確保)が必要なレベルの登山の場合に適しています ちなみに、ペツル「スパサ」の重量は43gです


Kershaw Ace 1710 の特徴

縦走登山やロングトレイルなどで実使用

このナイフは、登山時の携行ナイフとして、軽量性とある程度の刃渡りがあることをポイントに、さまざまなナイフと比較検討の上、購入しました

グリップはザイテル樹脂であり、刃の厚みも薄手であるため、重量軽減に寄与しています。実測重量は25gで、このサイズのナイフとしては、かなり軽い部類ではないかと思います

個人的には、主に登山時の軽調理用として使っていますが、昼食がパンやおにぎりなどで、実際には食材を切る必要がない時も多いです。そういう場合は、最初からエマージェンシーパックに入れ、「非常用ナイフ」として携行しています

後立山縦走表銀座大雪山縦走オートルートなど、日数が長めの登山で、ザックの重量を軽くしたい場合は、必ずこのナイフを使っています
ちなみに、後立山のルートは、栂池~小蓮華山~白馬岳~唐松岳~五竜岳~鹿島槍ヶ岳~爺が岳~鳴沢岳~赤沢岳~スバリ岳~針ノ木岳~蓮華岳~針ノ木雪渓と、長めのコース取りです
表銀座は、燕岳~大天井岳~槍ヶ岳~北穂高岳~奥穂高岳~上高地と、至って普通のルート
大雪山縦走は、層雲峡~黒岳~北海岳~忠別岳~五色岳~化雲岳~ヒサゴ沼~トムラウシ山~ヒサゴ沼~化雲岳~天人峡 …という、トムラウシ折返しルートを取りました
オートルートは、シャモニー~ツエルマットまでのフルウォークスルーです(16泊17日、水平距離200km、累積獲得標高12,000m)

登山で使えそうな「軽量ナイフ」と比較してみた

Kershaw Ace1710が生産終了ですので、同様のコンセプトのナイフはないものか、探してみました
Kershaw Ace1710は、刃渡り5.8cmで、重量25gです
このサイズはかなりギリギリで、食材を切る場合は、5.5cmあたりが最低ラインかなと思います
それ以下になってしまうと、調理時の使い勝手が悪くなります(パッケージ開封用としては使えます)

ナイフ名称 刃渡り 重量 刃厚 鋼材
Kershaw Ace1710 5.8cm 25g 2mm 420J2
ガーバー LST 46009 5.7cm 35g 2.5mm 420HC
Gサカイ プレッピー(カーボン柄) 5.5cm 17.8g 2mm VG10
ガーバー ウルトラライトLST 4.0cm 16g 不明 420HC
表は、刃渡りの大きな順に並べています

ガーバー LST は、刃厚が2.5mmありますので、玉ねぎや人参に切り込むのには、やや厚めです。また、重量もその分重めになっています
ある意味ナイフらしいとも言えますが、木を叩き切ったりする必要がないのであれば、過剰な刃厚は、食材の切り抜けが悪くなるだけです(あくまでも調理用として見た場合です)
鋼材は、ガーバーが良く使用している420HCですね。同じ鋼材を使用したガーバー製フィレナイフを使用していますが、さまざまな意味でバランスの取れた鋼材で、突出して性能があるわけではありませんが、低コストのナイフ用としては実にいい鋼材だと思います

ガーバー ウルトラライトLST の方は、薄手のブレードですので、重量も軽く、食材への切込みが楽で、使い勝手が良いでしょう
ただ、プレッピーは、グリップの表面仕上げが平滑になっていますので、チェッカリングが入っているガーバーのものと比較すると、幾分滑りやすく感じるかもしれません(おそらく、重量最優先なのでしょう。実際軽いです。鋼材も、硬度が高めで、耐摩耗性に優れたV金10号が使用されています)

ガーバー ウルトラライトLST の場合は、刃渡りがぐっと小さくなりますので、山では調理せず、もっぱら アルファ米 や、 ソル・レオーネのインスタント食材 などで済ませる人に向いています(刃渡りが5センチ以下になると、食材は切る用途としては、少々短いと思います)

Kershaw Ace1710をキャンプで使った様子

下は、実際に使用した時の画像です(オートルートでのトレッキングにて

オートルートは、フランスのシャモニーからスイスのツェルマットまでのロングトレイルであり、移動距離が200km、累積標高が1万2千メートルです。11回の峠越えがあり、悪天停滞日なしで計算しても14日かかります
技術的な難易度が求められるルートではありませんが、テントを使って全行程を一度に歩く場合は、すべてのギアに、軽くて堅牢であることが求められます
この時は、要所要所でウルトラライト系のギアを使用し、ツェルトを使用することで、背負重量を18kgほどに収めました

カーショウ・エース1710の25gという軽さも、実にありがたいものでしたが、それと引き換えに刃渡りは約6cmと短めであり、調理に使う際はもう少し長さが欲しいところではありました
ただ、山ではそんなことは言っていられません。軽量であることを優先するため、利便性を妥協するのは致し方ありません

Kershaw Ace 1710を使って簡単な調理をする
ここでは、パン、チーズ、ソーセージ、パプリカなどをカットし、夕食にしています
刃渡りが短いため、パンを一度に切り分けることができず、二度に分けて刃を入れる必要がありましたが、さして大きな問題ではありません

ブレード形状は一般的なドロップポイントですが、このようなシンプルな形状が最も使いやすく、薄手のブレードは、食材に対する「切り抜け」も良好です
また、フラットな刃面は、バターなどを塗る際にも応用が利きます(「しのぎ」が出ているナイフだと難儀します)
さらに、グリップ付け根部分に設けられている窪みがよくできており、人差し指の第一関節が気持ちよく収まります
ハンドルのチェッカリング仕上げ(ダイヤ状の表面模様)も非常に有効で、グリップの厚みに乏しい割には、とても良好なホールド感があり、鋼材がややチープであることを除けば、申し分のない作りだと思います

Kershaw Ace 1710でキャンプ料理

この Kershaw Ace 1710は、あくまでも登山時の非常用、及び簡易調理用として使っているので、実際にキャンプなどでそこそこの料理をする場合は、使い勝手の良いガーバーのフィレナイフなどを持っていくことが多いです

とはいえ、軽量なナイフというのは、(使わないかもしれない場合にも)携行時の重量負担が少ない、かさばらないという良さがあります
そういう意味では、登山用途以外にでも、「バックパッキングでの長期旅行」や、「非常用持ち出し袋に入れておく刃物」としても、たいへん有用だと思います

小型軽量ナイフは、非常時に有効(災害時の防災袋にも)

幸いなことに、本当に非常用、緊急用として使用した経験はありません

登山時に想定されうる緊急・非常用途としては…
怪我をした際に衣服を切って患部を露出させる、もしくは、衣類を裂いて、止血帯や包帯、三角巾、当て木を縛る布の代用にする …などでしょうか?(包帯や止血帯などの救急用品を、予め携行しておくのが一番ではありますが)

他には、細引きを切ったり、箸を紛失した際に、落木などを削って箸を作る …などはありそうです
他には、アルミ製の飲料缶を切り開いてローソクランタンを作ったり、ペットボトルを切ってコップにしたりと、そういうこともこなせるでしょう


そういえば、実際に西表島の南風見田~船浮ルートを歩いていた時、最終日に箸をなくしてしまい、落ちている枝で作ったことがあります
手の日焼けが酷いですが、これは海の近くで数ヶ月間の滞在型キャンプをやって、釣りを楽しんでいたためです ナイフで箸を作る

また、スイスでは「モンカフェ」のような一杯ドリップ用コーヒーが売っていなかったので
ペットボトルと箸を加工し、ありあわせの材料でコーヒードリッパーを作ったこともあります
ペットボトルでコーヒードリッパーを作る

他の用途としては、(ほとんどないとは思いますが)テント内からの非常脱出に使えます

大雪山トムラウシ縦走をした際の話ですが、就寝時に熊が出たときのために、枕元にこのナイフを置いて寝たことがあります(まちがっても熊との戦闘用ではなく、テント生地を内側から切り裂いて出るための、緊急脱出用です。本当に熊が出るとは思っていないので、あえて言うなら安眠用です)
ヒサゴ沼や白雲岳の野営地は、そこそこ標高があるので、そこまで熊が上がってくることは考えにくいです。理由は、まず熊の食料となるものが自生しておらず、そして、熊が身を隠せるような木々も無いためです
より標高の低い山であれば、幾分懸念も出てきますが、森林限界を超える標高まで登ってしまえば、出現確率がぐっと下がりますので、必要以上に怖がる必要はありません(とはいえ、入山時と下山時は樹林帯に入りますので、それなりに配慮しましょう)


法令的にも携行しやすい

刃渡りの実測値が5.8センチ、刃体の長さも6センチですので、銃刀法の取締対象には該当せず、そういう意味でも携帯しやすいナイフです
銃刀法の取締対象は刃体の長さが6センチを超える刃物、折りたたみナイフの場合は刃渡り8センチを超えるものとなります。ただ、軽犯罪法においては、刃物寸法の大小にかかわらず、正当な理由の有無が取締におけるポイントとなりますので、きちんとした理由が必要となります
重量的にも法令的にも携帯しやすいナイフではありますが、法律に違反しないよう気をつけましょう


使用鋼材

使用鋼材については公表されていないようですが、420J2ステンレスと表示しているサイトもあります。個人的な推測ですが、刃の持ち具合や、砥石での砥げ具合、価格などから総合的に推測するに、おそらくSUS420J2で間違いないと思います
SUS420J2は、刃物用ステンレス鋼材としては廉価で、高硬度の鋼材に比較すると整形や切削・研磨が容易なため、加工コストが抑えられ、安価な刃物商品によく使用されています

パンやソーセージ、玉ねぎなど、食材を切る分には何ら問題はありませんが、硬度がそれほど高くないため、刃持ちはそれなりです
まちがってもバトニングなどはしない方が賢明です。刃も薄いので簡単に刃が潰れると思います(そのような用途に使う人はいないと思いますが、少なくともブッシュクラフト向けではありません)

登山に使えるナイフ「カーショウ1710」

砥いだ感触

鋼材が柔らかめなだけに、砥石に当てた感触も独特です
柔らかめのカエリが出るのですが、カエリを取ろうと刃を裏返して磨ぐと、カエリが曲がって反対側にきてしまうことがありました
(ステンレス系の刃物を研ぐ際に、「カエリがペラペラして、いつまでもカエリが取れない」と表現されのは、このような状況のことですね)

やたらと硬度の高い刃物は、研ぐのに難儀することがありますが、こういった硬度が低めのステンレス鋼材も、別な意味での砥ぎにくさがあります
ガシガシと力を入れて磨ぐのではなく、弱めの力加減で、切刃の状態を指先の感覚でよく確認しながら、繊細に砥ぎあげる必要があると感じました

とはいえ、丁寧に刃付を行うと、きちんとした刃が付きます
ただ、そもそもブレード自体が小さく、刃の先端に行くに従って、砥石との接触がピンポイントになるため、均一な角度に仕上げるのが難しく、試行錯誤して研ぎ上げました

そのような感じで、やや繊細な刃付が必要な方かもしれませんが、きちんと研げる方であれば、さして問題ではありません
書き漏れましたが、箱出し時の切れ味は充分なものがあり、初めて使った時の印象は、「さすが貝印、包丁で手慣れてるだけに、刃付が上手いなぁ」というものでした

Kershaw Ace 1710 諸元

  • サイズ:全長14cm ブレード長約6.2cm 刃渡り5.8cm 刃厚2mm 重量25g
  • 鋼材:420J2ステンレス
  • グリップ:ザイテル(デュポン製ポリアミド樹脂)、チェッカリング仕上げ

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