ピンを抜く
半分ほどピンを打ち出した後、バイスプライヤーを使ってピンを抜き取ります
ピンポンチの長さに余裕があり、そのまま叩き出せる場合は、そのまま叩き出しても構いません
ただ、画像のように、叩き出すための工具に長さ的な余裕がなく、ピンが抜けるまで叩き込めない場合は、飛び出た頭の部分を掴んで引き抜くしかありません
今回は、ピンが半分出た状態から、バイスプライヤー(別名
ロッキングプライヤー
)
で挟んで抜き取りましたが、しっかりロックを掛けた状態で挟んで、「なんとか抜けそう…」という手応えでしたので、滑って抜けてしまわないよう、少しづつ丁寧に抜き取りました
ピンを抜いてしまえば、ブレードは完全にフリーの状態になりますので、あとはブレードを取り外すだけです(よほど固い状態になっていなければ、指で摘んで抜き取れます)
プライヤーやラジオペンチでは抜けないのか?
同様の抜き取り作業を、プライヤーやラジオペンチで行うのは、かなり難しいと思います
これらの工具では、たいした力はかけられませんので、滑って抜けない場合が多いのです
八割程度抜いた状態なら、
プライヤーや
ラジオペンチなどでもなんとかなるかもしれませんが、オピネルの個体差や、それまでの使用状況、ピンの固着具合にもよりますので、一概に言えません
ちなみに、バイスプライヤーほどの嵌合力は出せませんが、
ネジザウルス
のような、ピンの頭部をしっかりホールド可能な工具なら、プライヤーやラジオペンチよりも、いくらかましだと思います
ピンが抜けない原因は、何か?
いくら叩き込んでも、ピンが微動だにしない場合
1. ピンを抜く方向が逆
2. ピンポンチを使わずにセンターポンチを使用している。そのため、却って抜き取り抵抗が増している
ピンを、2~3割程度叩き出した状態で抜こうとしたが、抜けない場合
1. 叩き出し量が少なすぎるため、抜き取り抵抗が高すぎる
2. プライヤーやラジオペンチなど、さして力のかけられない挟み工具で抜こうとしている
オピネルのカシメピンは、圧入と言って差し支えない程度の高い圧力で打ち込まれています
この部分は、フォールディングナイフの要(かなめ)なのですから、簡単にガタが来るようなヤワな作りにはなっていません
ですので、ピンの頭を少し出した程度で、簡単に抜ける方がおかしいのです
その程度で抜けるのであれば、「
圧入」ではなく、単なる「
挿入」です
ピンの叩き出し量が8割を超えれば、プライヤーなどでも抜ける可能性が高まります
面倒臭がらずに、ピンの叩き出し量を増やすか、外れるまで叩き出すことに注力するのが賢明です
そちらの方が作業が早く終わり、楽で確実です。ピンのダメージも少なくすみますので、再利用できる可能性が高まります
圧入パーツを外すというのは、通常であれば、当金を当ててパーツが外れる寸前まで叩きだすか、専用プーラーなどで押し出して外すものです
通常の掴み工具で、挟んで抜こうとしても、抜けるものではないのです(ほぼ全量叩き出した場合を除く)
圧入パーツの取り外しは、整備に慣れた人でも、そこそこ苦労する場合があります。もともと簡単な作業ではないのだということを理解して望むとよいでしょう
(ピンの抜けない原因については、前のページでも解説していますので、合わせてご参照ください)
ニッパーを使って、釘抜きの要領で抜くのは、大間違い
ニッパーを使用して、「釘抜き」の要領でピンを抜いている方もおられるようですが、これは絶対にやめたほうが良いです
ピンに斜めに力が加わりますので、垂直に抜きとることができず、
ピンを曲げてしまう恐れがあります
そもそも釘抜きは、抜いた釘を再使用することを考慮した構造になっていないため、抜いた釘はかなりの確率で曲がります
抜いたピンを再利用しない、もしくは、ピンが曲がっても構わないという場合は、こういった方法を用いても良いですが、分別のある大人の方は、避けた方が無難です
曲がってしまったピンは、真っすぐにしなければ、組み付ける際に挿入できませんし、きちんと元の直線に戻すのは至難の業です
バイスプライヤーについて
バイスプライヤーは、ロッピングプライヤーとも呼ばれ、バイス(万力)というだけあって、強力な力で挟んだ状態で、そのままロックをかけることができます。このため、ピンを安全かつ確実に抜き取ることが可能です
これまで、車やバイクの整備などでも、ネジ溝が潰れた場合は、いつもバイスプライヤーで挟んで外していました(それくらい強力な挟む力を出すことができます)。高価なショックドライバーや、よくあるネジ溝用摩擦増強剤も持ってはいますが、低頭ネジや皿ネジなどで挟むことができない場合を除いて、バイスプライヤーの方が、早くて確実でした
六角のボルトやナットも、これで挟めばたいてい回して外すことができます。(ただ、嵌合力が強いため、ナットやボルトの面に噛み跡が付く場合があります) コストやスペースの問題で、レンチを一揃い持つのを避けたい場合に、バイスグリップを一本持っておくというのは、賢い選択かもしれません
バイスプライヤーのトリビア
映画「グラン・トリノ」の中で、クリント・イーストウッドが、「この3つが、(整備初心者にとっての)おすすめ工具」だとして、バイスプライヤーとWD-40(アメリカの浸透潤滑剤、日本ではKURE 5-56)、ダクトテープを挙げています
整備をやってる人からすると、実にニヤニヤしたくなるセリフですが、日本語字幕では単に「レンチ」としか訳されていないところが、実に残念です(そのくらい知名度が低い)
ちなみに、バイスプライヤーの元祖の会社は、「バイスグリップ」という商標名を持っています、そのため「バイスグリップ」という商品名が付いている製品は、本家本元の製品です(パチモノを除く)