月寅次郎のサイト

オピネルのブレード形状について

最終更新日: 作者:月寅次郎

どうしてポイント(ブレード先端)が上がっているのか?

オピネルの標準ブレードは、形状がトレーリングポイントに近く、ポイント(ブレードの先端)がかなり高めです

オピネル ブレード形状

大雑把に言うと、スキナー(狩猟時の皮剥ぎナイフ)に近い形状でもありますが、狩猟用途でオピネルを使う人はほとんどおられないでしょう(獲物の血や油脂が付着しがちですので、シースナイフを使用するのが一般的です)

実際のところ、食材を切る用途においては、一般的なドロップポイントの方が刃渡りの長さをフルに活用でき、使いやすいものです
ところが、オピネルのようにポイントが反り上がっていると、先端の方はあまり使いでがなく、刃渡りを十分に使うことができません
No.10サイズの刃渡りは10センチですが、実質的な刃渡りサイズは(リカッソが無いことも相まって)9センチ程度と思った方が良いのです

※ ブレード先端を活用しにくいというだけで、ピクニックナイフとして使いにくいとか、そういう意味ではありません
※ ちなみに、オピネルのラインナップには「ガーデンナイフ」というものもあり、こちらはドロップポイントに近いブレード形状です

先が反り上がっている理由 - オピネルの弱点を克服するため

では、どうしてわざわざこのような形をしているのだろう、と疑問に思うのですが、おそらくこれは、『サヴォア打ち(コンコン)で刃を出した際に、刃先を摘んで開きやすくするため』 であると思われます

サヴォア打ちを考量したハンドル形状

オピネルのハンドルは、柄尻の下部が突き出ている独特の形状をしています

なぜこのような形状になっているかというと、柄尻を打ち付けて刃を出す際のために、わざわざ突き出させているのです(柄尻を出すことで、指が当たることを防いでいます)

オピネルのブレードは、この特徴的なハンドルに、刃の形状を合わせています

反った刃の先端が飛び出ることで、てこの原理が有効に働く

「サヴォア打ち」で刃を出した後は、刃をつまんで引き出しますが、ここで「刃の先端の反り」が有効に働きます
刃の先端が反りかえっているため、刃の先の先まで外側に出てくるのです

一般的なドロップポイントの場合は、こうはいきません
刃の開度がわずかな場合は、刃の先端はまだハンドルの中に納まっており、ネイルマーク周辺しかつまむことができません

一方オピネルの場合は、刃の先端を指先でつまむことができますので、刃の長さをフルに使って、てこの原理を有効に効かせ、少ない力で刃を開くことが可能です
ハンドルの小口が水分を含んで膨張し、刃の開閉が固くなっている場合には、先端が反ったブレード形状のおかげで、刃が出しやすくなるわけです

このオピネルブレードの先端の反りの理由について、きちんと言及したサイトはあまり見かけません
もしかすると、きちんと解説してあるのは、わたしのサイトが初かもしれません(ちなみに、サヴォア打ちをきちんと和訳して解説したのも当サイトが初だと思います)

あくまでも、オピネル使って30年の人の「個人的な推測」ではあるのですが、ほぼ間違いないのではと思います

ナイフには、用途に合わせて多様な形状がありますが、オピネルブレードの先端が反り上っている理由としては、最も納得できるものだと思います

刃を横に寝かせて使う場合

刃先の反った部分は実質的には使えない(掴むための形状)と書きましたが、例外的に、「刃を横に寝かせて使う場合」には、有効に働きます

これは、前述のスキナー(革剥ぎ)でも同様ですが、バゲット(フランスパン)の横側を裂いて、サンドイッチ用に仕立てる場合や、魚を三枚におろす場合など、横に寝かせて使う分には使えるのです

フランスパンの横っ腹に深く切れ目を入れる場合、ポイントが下がったナイフですと、先端の尖った部分で切り込んでいくしかないのですが、オピネルのような先端の反ったブレードですと、反り上がった部分で切り込んでいきやすく、なかなか使いやすいです

魚の場合ですと、背骨と肉の間に刃を差し込んで、刃を滑らせるようにして身を削いでいき、三枚おろしにする場合にも有効に働きます(ただこの場合は、フィレナイフの方が反りのカーブがなだらかで、使える刃の長さも長くなるため、こちらの方がより最適な形状です)

このように、刃を横に寝かせてナイフを使用する場合は、刃の先端に反りがあった方が使いやすくなります
まな板の上でナイフを縦向きに使う場合は、あまり使い出のない「反り」の部分ですが、横に寝かせて使う場合や、二つに切り分けずに切り込みだけを入れる場合には、有効に働くのです


オピネルでバゲットサンドを作るときは、これを思い出して、刃のカーブを上手に使ってパンに切れ込みを入れてみてください

Mirror finished Opinel
柄の断面が映り込む、鏡面のオピネル
鏡面になってスマホが映り込むオピネル

「オピネル 鏡面仕上げ」を、最後までお読みいただき、ありがとうございました


目次に戻る:オピネルのまとめ