オピネルのオイル漬けは、木材表面加工として常識はずれ


木材表面加工として、オイル漬けは考えられない施工方法

木材の表面加工において、乾性油を主体としたワニスを用いてオイルフィニッシュするというのは、定番の仕上げ方法の一つです
ですがこれは、原則として、薄く塗った後に拭き取って乾燥させたり、オイルを含ませた布で刷り込んで仕上げるものです

一度に厚塗りするのはもっての外で、薄塗りと乾燥を繰り返して仕上げることが重要です
厚塗りしてしまうと、木材に浸透した深部の状態がなかなか安定せず、表面のみが乾燥して、ろくな仕上がりにならないのです

「オイル漬け」が、厚塗りよりもさらに悪い、最悪の施工であることは言うまでもないでしょう
なぜにこのような愚行を行うのか? そもそも一体、誰が初めたのか? …と、本当に思います

ナイフのハンドル制作工程から見ても、二重の意味でありえない

ナイフのハンドル材において、耐水性が高い素材としては、「マイカルタ」「G10」「スタビライズドウッド」等が挙げられます

いずれも、フェノール樹脂などを浸透させて硬化させた素材なのですが、「マイカルタ」は、キャンバス地やリネン布、紙などを基材とし、「G10」はグラスファイバーを基材としています(一種のFRPとも言えます)
スタビライズドウッドは、木材(角材)が基材なのですが、これは深部まで均一に浸透させるため、真空中の容器に入れて、樹脂浸透・硬化させています

1:浸透させる場合は、二液硬化型である必要がある

これらのハンドル材はいずれも、「基材」に対して「樹脂」を浸透させていますが、共通するのは、二液硬化型樹脂を使用しているところです
つまり、硬化の際に空気中の酸素に依存していないのです

これは、深部まで均一に完全硬化させるためには、不可欠な要素です
アマニ油のような、酸化によって乾燥するタイプの液体を、厚みのある木材に長時間浸透させるというのは、ナイフ制作の見地からすると、ありえないことです

表面への塗布、拭き取りと乾燥を繰り返すのであれば、オイルフィニッシュという仕上げになりますが、長時間ドブ漬けにするのは、言語道断としか言いようがありません

2:浸透硬化後の形状加工がセオリー、形状加工後の深部浸透は、ありえない

また、これらの素材は、角材や板材の状態で浸透を行い、硬化して形状に狂いが生じなくなった後、ハンドル形状に切削加工されるのが普通です

ハンドル形に整形した後に液体浸透させると、せっかく精度良く削り出した寸法が、大きく歪んでしまう可能性があります。それは実に愚かしい行為です

このように、ナイフ制作の視点から、「オピネルのオイル漬け」を見た場合…
「乾燥に酸素が必要なオイルを浸透させている」(深部の乾燥が難しい)ということと
「形状加工後に浸透を行っている」(浸透によって寸法が狂う)という、二重の意味でありえない行為になります

油漬けの一体どこが「オピネルの儀式」で、「定番カスタム」なのでしょうか? 開いた口が塞がりません

今回はナイフハンドル材の例として、浸透硬化型の素材を挙げましたが、「ナチュラルウッド」も未だに使用されています
メーカー製品に採用されることは少なくなりましたが、個人制作のナイフにおいては、未だに「ナチュラルウッド」が使われることも多いものです

ナチュラルウッドのハンドル材の場合は、形状加工後にオイルフィニッシュするのが定番ですが、この場合は、油を薄く塗布して拭き取り、乾燥させることを繰り返して仕上げられます
直接オイルに漬け込んでしまうと、油が吸収されることによって板材が反ったり、膨張して寸法が合わなくなるばかりでなく、深部に浸透した油のおかげで長期に渡ってハンドル材が安定せず、さまざまな弊害を引き起こします

当然ながら、ナイフ制作に携わる方で、そのような誤った処理をする人はおりません

ピカピカにカスタムしたオピネル

「オピネルのオイル漬け(油漬け)」のまとめ

このように、「オピネルのオイル漬け」は、やってはいけないメンテナンスです

1:発想自体が安易であり、2:そもそも効果が期待できず、3:不具合の原因となりかねず、4:木材の表面仕上げとして間違っており、5:ナイフハンドル制作の観点からも、誤った施工です

オピネルは、良くも悪くも伝統刃物ですので、設計も昔のままになっており、決して耐水性が高いナイフではありません

ですが、 柄の部分に水分がかからないようにして使えば、快適に使用できますし、それでも吸湿してしまい、刃が出にくくなった場合は、 柄の先端を固いものにコンコンと打ち付けて刃先を出し、ブレードを指で摘んで開けば良いだけです

それで充分です。オピネルはそういうものなのです
そうやって100年以上、変わらずにやってきたのです

少なくとも80年代の頃は、オイル漬けなどしている人は皆無でしたし、それでも皆、問題なくオピネルを使っていました

「油漬け」というのは、おそらく近年流行りだしたのだろうとは思いますが、安易なカスタムは、オピネル本来の性能を損ないます
どうしても何か対策をしたいのであれば、上記で説明したように、木工用の蜜蝋ワックスを薄く塗り込んでやればよいのです


オピネルは柄が木製ですので、他にはない風情があり、お洒落で個性的なナイフです
あまり加工しすぎると、木の質感が失われ、却ってチープな感じになってしまうこともあります。できれば、オピネル本来の良さを尊重して、大切に使いましょう

ナイフの選択についてですが、もしも水場で使うことが多いようであれば、最初からオピネルではなく、より耐水性が高く、使用後にザブザブ洗えるようなナイフを選択すべきです

実際わたしも、釣りで魚をさばく際や、キャンプの場合はガーバーのフィレナイフ(ゴム引き樹脂ハンドルのシースナイフ)を使っています
重量の軽さを優先したい場合は、登山用ナイフとしてカーショウ1710を使用しています(実測25gの軽量ナイフです)


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