ピカールの粒度と研磨素材


ピカールの粒子サイズと研磨剤の材質は?


商品名 粒子
サイズ
材質 備考
ピカール液 アルミナ 缶入・液体
ピカールケアー アルミナ チューブ入・クリーム状
ピカール
ネリ
10μ アルミナと
シリカ混合
缶入・半練り
ピカール
ラビングコンパウンド
15μ シリカ 缶入・半練り

μ=ミクロン=マイクロメートル=μm

ピカールを、どう使い分けるのが効果的か?

ピカール液とピカールケアーの使い分け

ピカール液とピカールケアーは、使用されている研磨剤の粒度と材質が同じです、違いがあるのは、缶入り、チューブ入りという形態もありますが、それは製品の粘度に応じた最適な容器を使用している結果であり、注目すべきなのは、「研磨剤の粘度」です

ピカール液は、「液」というだけあってやや粘度のある液体です。分散用の基材に対する研磨剤の割合もも相対的に少なく、研磨剤含有量は20%となっています

一方のピカールケアーは、クリーム状のため、研磨剤の割合が大きくなり、こちらは研磨剤25%となっています
双方ともに、中に入っている研磨剤は同じですので、同じレベルの研磨が可能ですが、ピカールケアーの方が、より粘度が高いため、少量のみ押し出して使いやすく、より小さな面積を磨きたい場合に適しています
一方のピカール液は、ウエスに液体を取って、より大きな面積を磨くことに適しています
つまり、指輪やアクセサリーなど、小物を磨きたい場合はピカールケアーを、ある程度の大きな面積を磨きたい場合には、ピカール液を使用するのが最適です(そのため、ピカール液には、内容量300gのものや、5000gの大容量の製品も販売されています)

ピカール液(ピカールケアー)と、ピカールネリの使い分け

前述のように、ピカール液とピカールケアーは研磨粒子が同じであり、磨く面積によって使い分けます
それでは、ピカールネリについてはどうでしょうか?

ピカールネリは、ピカール液とピカールケアーに比較して、粒子サイズが大きいため、切削効率が高くなります。その分だけ傷取り能力も高くなりますが、仕上がりの光沢具合は、ピカール液に一歩譲るかたちになります
それでも10ミクロンというのは、粒度で言うと#2000番程度であり、一般的な耐水ぺーパーでは、最も目の細かい部類にあたります(厳密に言うと、10ミクロンは、#2000~#1500番の中間あたりになると思います)


ピカール液とピカールケアーは、粒子がかなり微細なため、金属表面の酸化膜を剥ぎ取って、光沢を出すことには向いていますが、凹凸のある表面をならす用途には、あまり適していません(もっと目の粗いものを使用したほうが効率的です)
ちなみに、3ミクロンというのは、番手で言うと#5000番あたりに相当します。粒度的には、もはや「削る」とはいえず、「磨いて鏡面を出す」という領域です

番手や粒度を言葉で表現するのは難しいですが、ピカール液、ピカールケアーは、非常に目の細かい鏡面磨き用、ピカールネリは、一般的な磨き用・軽微な傷消し用、と考えて良いでしょう

ある程度の深さまで切削して凹凸をならしたり、深い傷を判らなくしたい場合には、より目の粗い研磨紙などを使用して、一旦大きな凹凸を取り去ってから、これらの製品を使用した方が、効率良く作業できます

適切な研磨を行うには…


「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」といいますが、研磨においてもまさにその通りです

これから磨こうとする対象素材の、「硬度、表面の平滑度、傷の有無、傷の深さ」…などを知ると同時に、使用する研磨剤の、「硬度、粒度、伸びの良さ、素材適性」…などを把握する必要があります
そうすることで、対象素材と研磨剤の相性がよくわかり、失敗が避けられます

研磨剤を使用するにあたって重要なのは
  1. 研磨剤と、研磨される材質との間に、適切な硬度差があること
  2. 研磨粒子の粒度(大きさ)が、研磨される素材の平滑度に合っていること
・・・です

1:適切な硬度差(削るほうが硬く、削られる方が軟らかいこと)

研磨剤の方が硬くなければ、そもそも削ることすらできません
つまり、研磨剤の粒子の硬度と、削られる方の素材の硬さを、(だいたいでよいので)把握しておくということが重要です(もしくは、その素材専用の研磨剤を使用する)

たとえば、ピカールラビングコンパウンドは、粒度が15ミクロンと大きめのため、深く削ることができ、高い切削効率を持っています
しかし、研磨粒子がシリカ(※1)のため、自動車塗装面の傷取りなどには適していますが、硬度の高い刃物用鋼材などに使用する場合は、双方の硬度差があまり生じないため、研磨効率が悪い場合があります

ちなみに、ピカール液ピカールケアーに使用されているアルミナ(AL2O3)は、酸化アルミニウムのことであり、モース硬度9と、硬度の高い材質です
鉱物としてはルビー、サファイア、コランダムとして産出されます。焼結させたものはセラミックとして利用されており、白色のセラミック系砥石も、このアルミナを固めて作られています

アルミや銅など軟らかい金属を磨く場合には、酸化カルシウムやシリカなどが、研磨剤としては適切でしょうし、金や銀、白金などの、さらに軟らかい金属に対しては、酸化鉄などを使用した研磨剤が、硬度的には合っていると言えるでしょう
個人的には、硬度の出ている刃物用鋼材を磨くことが多いため、研磨剤にアルミナが使用されているかどうかというのを、購入時に確認するようにしています
※1:『シリカ』、SiO2(二酸化ケイ素)、モース硬度は7程度

まとめ:
研磨剤は、素材にあったものを使用する。切削対象と研磨剤の間に、適切な硬度差が必要です
硬度差がないと削れませんし、差がありすぎるのも、研磨粒子が深く食い込みすぎてよろしくない場合があります。硬度差がありすぎる場合は、柔らかい布を使用して、軽めに磨くなどの注意が必要です(ピカール液でヘッドライトのプラスチックカバーを磨く場合など)

関連ページ:さまざまなコンパウンドを使用して鏡面に仕上げる(アルミニウムシリケートの研磨剤を、焼入れ後のハガネに使用して、ほとんど削れなかった事例など)

2:素材の平滑度に応じ、適切な粒度の研磨剤を使用する

研磨対象の素材に、深い傷が全面に入っていたり、腐食が酷いなどの場合には、数ミクロンサイズの研磨剤では、「プールの水をスプーンで汲み出すような行為」になる場合があります
これでは、いくらやっても埒が明きません

ピカール液ピカールケアーなど、細かい粒子を使用した研磨剤は、使いようによっては鏡面に持っていくこともできますが、それはあくまでも、鏡面の手前の状態、つまり下準備が適切に行われた状態であることが大前提です

どんな酷い状態でも、ピカールさえ使えば、魔法のようにピカピカになるわけではありません
少なくとも、深く溝状に入った傷は、いくら磨いても取り去ることは難しく、傷の状態に応じた粒度の研磨剤を使用しなければ、非常に効率の悪い作業となります

まとめ:傷の状態、平滑度の状態に応じて、最適な粒度の研磨剤(もしくは耐水ペーパー、ベルトサンダー等)を使用しましょう



「ピカールとブルーマジックを磨き比べてみました~!」…というのは愚の骨頂

個人のブロクなどで…、「ピカールをブルーマジックを磨き比べてみました~」、「さて、どちらの方がピカピカになるでしょうか~」などとやっているのを目にすることがありますが、ああいうのは、いかがなものかと思います
見ていてこちらが情けなくなります。バルカン人なら「非論理的だ」と、言い放ちたくなるところです。小学生の自由研究ではあるまいし、もう少し大人のアプローチで攻めていただきたいものです

前述の説明にある通り、重要なのは、研磨粒子の粒度と研磨素材です
これら2つが、研磨における決定的な要素になります(後は、研磨粒子を分散させているベース材くらいしかありません)

ちなみに、ピカール液もブルーマジックも、研磨粒子はアルミナですので同じです
研磨剤の平均粒子サイズは、ピカール液が3ミクロン、ブルーマジックは5ミクロンです
ピカール液のほうが粒度が小さいから優れている。 …というわけではありません

粒度が小さくなればなるほど、一度に研磨できる深さが浅くなります。ちなみに、1ミクロン以下になると本当にわずかしか削れません

5ミクロンの方が、3ミクロンの粒子よりも切削効率は良いですが、相対的に荒い面に仕上がります
逆に、3ミクロンの方が、5ミクロンの粒子よりも細かく研磨することはできますが、その分浅くしか削れないため、切削効率は劣ります
(実際は、数ミクロン程度の差異でしかないので、これらの相違は顕著に感じられるものではありません。目視でさほど違いが判らない程度と言っても、あながち間違いではありません)

このように、粒度の大小に優劣はありません。比較すること自体に意味がありません
サンドペーパーの1000番と1200番は、どちらが優れているか比較するようなものです
また、おろし金の荒目と細目や、ノコギリの縦引きと横引きについて、優劣をつけるようなもので、このような比較は、まさしく愚の骨頂です。

極上の鏡面に仕上げたいという場合は、大きな粒度から初めて、徐々に粒度を小さくし、最終的に2ミクロン以下の研磨剤で仕上げればよいのです(人間の目には、5ミクロン程度の平滑度でも、充分鏡面に映ります)
そのような、番手を上げていく過程において、最適な粒度の研磨剤を、それぞれの状況に応じて使用すれば良いだけです

補足:研磨剤やコンパウンドには、粒度と材質が明記されていない事も多い

研磨剤には、真鍮・ステンレス用などと、対象素材は書かれているものの、粒度と研磨粒子の素材が記載されていないものもあります(どちらかというと、記載されていないことのほうが多いです)

とはいえ、最適な研磨を行うためには、やはり粒子サイズと素材材質は把握しておきたいものです
検索してもわからない場合は、製造メーカーに問い合わせる事も、一つの手段です
その場合は、製造メーカーの迷惑にならないよう、敬意を払って適切な問い合わせに努めましょう

青棒、白棒、赤棒はどうか?

個々の製造メーカーや商品によって違いはありますが、一般的には…

 青棒: 5ミクロン程度(#3000番相当)、酸化クロム
 白棒:15ミクロン程度(#1200番相当)、酸化アルミニウム(アルミナ)、
 赤棒:50ミクロン程度(# 300番相当)、二酸化珪素(トリポリ)

…といったものが多いです。粒度については、メーカーによって多少の差異があるとは思いますが、研磨素材については、これらが使用されていることが多いです(※1)
白棒の白色は、アルミナ特有の色で、セラミック包丁やセラミック製のシャープナーは、この白い色がそのまま出ています。さらに、酸化クロムの緑色は、顔料として黒板などに使用されています

また、それぞれの材質に応じて、均一に加工しやすい粒子サイズがあるため、粒子の大きさでいうと、青棒<白棒<赤棒となっており、この順番は基本的に不動です

そのため、「5ミクロンの赤棒」や「50ミクロンの青棒」といった商品は、まずお目にかかることができません

※1:柔らかい貴金属を研磨するための「ベンガラ(酸化鉄)」も、赤棒と呼ばれる場合があり、混同しないよう注意が必要です
また、光陽社の「サイザー46」は、研磨剤が酸化アルミニウム(アルミナ)で、粒子サイズも平均13ミクロン程度なのですが、外観が赤褐色で、見た目が赤棒に近いです(赤棒という名称で販売されているわけではありませんが、素材と粒度の確認は重要だという良い見本かもしれません)

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