ピカールもブルーマジックも、共に鏡面仕上げ用の研磨材
個人ブロク等で、
「
ピカールとブルーマジックを、比較してみました~」
「
さて、どちらの方が、よりピカピカになるでしょうか~」
…というように、磨き比べているのを見ることがありますが、ああいうのは、いかがなものかと思います。
見ていてこちらが情けなくなります。あまりに非論理的です。
小学生の自由研究ではあるまいし、もう少し科学的なアプローチで攻めていただきたいものです。
研磨粒子はどちらもアルミナ、粒子サイズがわずかに異なる
研磨において重要なのは、研磨粒子の粒度(平均粒子サイズ・番手)と材質(硬度)です
これら2つが、研磨における決定的な要素となります。
他には、研磨粒子を分散させているベース材などが挙げられますが、あくまでも副次的なものであり、本質的な要素とはなりえません。
青棒などの固形研磨材においては、「バフの乗り」の良し悪しなど、ベース材の優劣で使いやすさに差が出る場合がありますが、どちらかというと些末な要素でしかありません。
ちなみに、
ピカール液もブルーマジックも、研磨粒子はアルミナですので硬度は同じです。
研磨材の平均粒子サイズは、ピカール液が3ミクロン、ブルーマジックは5ミクロンです。
ピカール液のほうが粒度が小さいから優れている。 …というわけではありません。
粒度が小さくなればなるほど、研磨できる深さが浅くなります。
ちなみに、1ミクロン以下になると本当にわずかしか削れません。
あえて比較するとどうなるか?
5ミクロンの方が、3ミクロンの粒子よりも
切削効率は良いですが、相対的に荒い面に仕上がります。
逆に、3ミクロンの方が、5ミクロンの粒子よりも、
きめの細かい研磨ができますが、その分浅くしか削れませんので、
切削効率は劣ります。
つまり理論上は、
ブルーマジックの方が切削効率に優れ、ピカールの方は仕上げ面の目の細かさにおいて優れている、…ということになります。
双方にメリットとデメリットがありますので、どちらもどちらです。
これらはあくまでも、「理論上はそうなります」という話です。
ピカールとブルーマジックは、数ミクロン程度の差異しかありませんので、切削効率や仕上げ面の目の細かさの違いは、顕著に感じられるものではありません。
目視や体感では、さほど違いが感じられない程度と言っても、あながち間違いではありません。
どちらも鏡面に仕上げるための研磨材であり、最終仕上げ用のコンパウンドですので、当然といえば当然です。
ちなみに、15ミクロンと5ミクロンの違いであれば、確実に差を感じ取ることができます(切削効率や、仕上がり面の目の細かさの違いが、如実に現れます)
下地の状態次第では、これらの差異は逆転することもある
また、さらに突っ込んだ話をすると、
研磨する際の下地の状態にも左右されます。
表面がわずかにくすんだ程度の良状態なら、酸化皮膜を磨き取るだけですみますので、
より粒子の細かいピカールの方が、きれいな仕上がりが期待できます。
ですが、素材表面に細かなスクラッチ傷が入っている状態であれば、
より切削力のあるブルーマジックの方が、傷消し効果が高いため、結果的に良い状態に仕上がる場合があります(目の細かいコンパウンドでは、深めの傷が取り切れないため)
このように、
ワークの表面状態に合わせ、最適な粒度(番手)を使い分けることが重要です。
ワークの素材と硬度(焼入れの有無)、現状の表面状態(傷の有無)、そういった条件を無視して、双方を磨き比べるのは、意味がないだけでなく愚かな行為です(
恥ずかしいのでやめましょう。)
(「ワーク」とは、研磨される方の「物、パーツ」などを指す用語です)
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※ 商品ページを見ると判りますが、気軽に買える手頃なお値段です。
粒度(番手)の大小に優劣はありません
このように、
ピカールと
ブルーマジックを比較するのは、
2000番のサンドペーパーと
1800番のサンドペーパーの優劣を比べるようなものです。
研磨粒子の素材が同じで、番手がわずかに違うのみであれば、その違いはわざわざ実験をしなくても分かろうというものです。
このような比較は、まさしく愚の骨頂と言わざるを得ません。
同じ番手の研磨材でも、材質の違いを比較するというのであれば、有意な情報となります。
炭化ケイ素とアルミナを比べると、炭化ケイ素は粒子の角が立っているため、ワークに食い込みやすいですが、アルミナの粒子は丸みがあるため、当たりが柔らかく、はっきりとした違いを感じます。
研磨材は、ワーク(磨く対象)の
硬度や平滑度に応じ、最適なものを、状況に合わせて使用しましょう。
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※ ブルーマジックは、ピカールと比較すると、値段的に少々高いです。
ではなぜ筆者は、安価なピカールをあまり使わずに、ブルーマジックの方を多用しているかというと、下地を出した状態からだと、ブルーマジックの方が目が粗いため、下の番手から繋がりやすいからです。
これは、前の工程で付いた研ぎ目を消すのが楽だという意味です。ブルーマジックの切削力の高さ、傷取り能力の高さを買っているわけです。
そしてさらに、ブルーマジックの後工程として、ウィルソン超微粒子を使うため、この段階で番手を大きく引き上げる必要がないからでもあります(ウィルソン超微粒子については後述)
鏡面仕上げの実例
画像はDIYで包丁を鏡面にしたものです。
(手順・方法については、
包丁の鏡面仕上げをご覧ください)
ピカールでも
ブルーマジックでも、適切な研磨作業を行えば、この程度の
鏡面に仕上げることは十分可能です。全く問題ありません。
下地を丁寧に仕上げ、鏡面にする下準備さえ整っていれば、さほど難しくはない作業なのです。
実は、下地を整える作業の方が、手間暇がかかって難しく、
この作業の精度次第で、最終的な鏡面の完成度に大きな差が生じます。
最終工程は、ウィルソン超微粒子で仕上げる
先程の包丁を仕上げる際には、
最終工程に、ウィルソン超微粒子(0.5ミクロン)を使用しています。
ブルーマジックよりもピカールよりも、さらに目の細かいコンパウンドです。
こう言っては身も蓋もありませんが、
1ミクロン以下のコンパウンドを使用するのは、自己満足の領域だと考えて良いです
(対象とする素材の硬度にもよりますが)
目視での違いが顕著に出るわけではなく、わずかに輝きの白みが増す程度です。
カメラ撮影の場合、その差異を写し取ることは困難です。その程度なのです。
とはいえ、より輝きが増してくるのも確かです。この違いを「さして変わらない」と捉えるか、「確かに違う」と捉えるかは、その人が
どこまでこだわるかにかかってきます。
もちろん、
最高の輝きが欲しい!と思う方は、ぜひ試してみて下さい。
下地の良し悪しで、すべてが決まる
鏡面仕上げにおいては、最終工程に使用するコンパウンドの番手を上げることにやっきになるよりも、
鏡面の下地を良い状態に仕上げることの方が重要です。
下地さえしっかり出ていれば、5ミクロンのブルーマジックでも、鏡面といえる状態まで難なく持っていくことができます。
それより上の、2ミクロン以下のレベルになると、
すでに鏡面として仕上がっている表面の平滑度を上げ、光の反射率をさらに高くする。…といった領域に入ってきます。
(あくまでも、そこそこ硬度の出ている金属表面に施工する場合の話です)
重要なのは、鏡面用コンパウンドに何を使うかよりも、その
前段階をどう処理するかです。
前段階の処理の方が難易度が高く、時間も手間もかかります。
ちなみに
筆者が下地用として多用しているのは、Holtsのラビングコンパウンド(MH112)です。
平均粒径サイズは50ミクロンと粗めですが、磨き込んでいくとあら不思議、そこそこの目の細かさに仕上がります。
磨き始めはしっかりしたザラザラ感が感じられ、傷取り力が高いことが判りますが、次第に粒子が解砕して小さくなり、ザラザラ感が薄くなっていくのが、指先の感触として伝わってきます。
この、
磨き始めの傷取り力の高さと、磨き終わり時の粒子の目の細かさが、Holts ラビングコンパウンドの魅力です。
(別の言い方をすると、ワイドレンジに磨くことができるということです)
プロクソンのミニルーターで磨く場合は、
光陽社のサイザー46を使いますが、手磨きの場合は、いつもこのHolts ラビングコンパウンドを使っています。
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