関孫六の「おすすめ包丁」


関孫六のおすすめ包丁 ベストの一本はどれか?

包丁・おすすめ
以前、「関孫六・プレミアシリーズのおすすめ包丁ランキング」というページを作りました

一部の包丁販売業者からは、「それ書いちゃダメ!」と言われかねない思い切った内容であったため、消費者側の方々には大変好評を博しました(…と、思いたいです)

その際、プレミアシリーズではない普通の関孫六の包丁は、あまりに数が多いため除外したのですが、今回改めて取り上げてみることにいたしました

題して、プレミアシリーズ以外の「関孫六の、おすすめ包丁は?」です
まずは、関孫六の包丁のラインナップを、一覧表にして見てみましょう

関孫六の包丁 全12種類(一覧表)

関孫六の包丁(全12種類の一覧)
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
わかたけ 無し 樹脂 中通し ステン刃物鋼 単層 2420
ほのか 口輪 樹脂 中通し ステン刃物鋼 単層 3630
いまよう 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 単層 4840
べにふじ 合わせ 強化木 本通し 高炭素MVステン 単層 6050
くじゃく 一体 強化木 本通し 高炭素MVステン 単層 9350
匠創 - 金属 オールステン 高炭素ステン 単層 4950
萌黄 無し 樹脂 中通し 高炭素ステン 3枚合 3630
口輪 樹脂 中通し 高炭素ステン 3枚合 4840
青藤 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 3枚合 7150
木蓮 一体 強化木 本通し 高炭素ステン 3枚合 9350
安土 無し 樹脂 中通し 炭素鋼複合材 3枚合 3850
桃山 無し 強化木 本通し 炭素鋼複合材 3枚合 6050
※ 価格は三徳包丁のもので、貝印が公式に定めた税込標準小売価格です(調査年月:2020年11月)
※ 店頭小売価格や通販サイトの実売価格とは異なります
※ プレミアシリーズ、および、金寿・銀寿等の和包丁を除外し、一般的な洋包丁のみを取り上げています


はい、こちらが関孫六の包丁、全12種類です
数がありすぎて、どこをどう見てよいのか、よく分からないと思います

それではまず、包丁マニアならではの視点で、「わたしなら、この包丁は選ばない」という包丁を、理由を挙げながら一つづつ除外していきましょう
そうして最後に残ったのが、「関孫六のなかで最もおすすめできる包丁」となります

※ 上記の一覧表は、貝印公式サイトの情報を元に、一本一本調べてまとめたものです(転載・コピーを禁止します)

ちなみに、公式サイトで確認する場合は、このページが最も分かりやすいです
貝印オンラインストアではなく、貝印製品情報ページの方になります
(ダマスカスのようなプレミアシリーズから、コスパの高いノーマルシリーズ、金寿・銀寿のような和包丁まで1ページにまとまっています)

「おすすめ」しづらい包丁を除外してみよう

わたしなら、まず買わない包丁 -1- 「ほのか」と「茜」

「ほのか」と「茜」
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
ほのか 口輪 樹脂 中通し ステン刃物鋼 単層 3630
口輪 樹脂 中通し 高炭素ステン 3枚合 4840

ほのか


根拠:口金状の外観に仕立てているだけ。実は「イミテーション」

そもそも、ハンドルが樹脂素材なので、口金を付ける必要性がありません

口金付きの方が見た目の高級感が出るものです。しかし、口金を付けるとその分コストがかかり、製品価格が跳ね上がります
それなら「口金」ではなく、整形したステンレス板材を嵌めてしまえば口金に見えるだろう。 …という意図が見え隠れして浅ましいのです

この項目を書くにあたって実製品を確認したのですが、薄い円筒形状の板金を、樹脂ハンドルに被せているだけでした
外観を似せたイミテーションの口金など、子供だましもいいところです
わたしなら、まず買いません

下に茜の画像を掲載していますが、もしも、店頭で「ほのか」か「茜」を見かけたら、ぜひ手にとってブレードの付け根部分を確認してみて下さい

「金属の輪っかを嵌めただけ」というのが、よく分かると思います(公式画像では判別できません
包丁・関孫六

【 総評 】
口輪は製品価格を押し上げているだけのアクセサリーパーツ。樹脂ハンドルには無意味

コスパが今一つの包丁 -2- くじゃく・木蓮

「くじゃく」と「木蓮」
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
べにふじ 合わせ 強化木 本通し 高炭素MVステン 単層 6050
くじゃく 一体 強化木 本通し 高炭素MVステン 単層 9350
- - - - - 価格差 3300
青藤 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 3枚合 7150
木蓮 一体 強化木 本通し 高炭素ステン 3枚合 9350
- - - - - 価格差 2200

くじゃく

木蓮
理由:一体型の口金を採用しているため、(他の部分が同じにもかかわらず)製品価格がやたらと高くなっている

上の比較表を見ていただくと判ると思いますが、ハンドルや刃物鋼材など、他の部分はすべて同じにもかかわらず、一体型口金にするだけで価格が数千円以上も上昇してしまうのです

「それでも一体型口金がいい!」という方は、逆にこの2本のどちらかを選ぶと良いでしょう
ここでは、「コスパの良い包丁ではない」という理由で、おすすめから除外したいと思います

また、一体型口金付きの包丁が欲しいのであれば、思い切って関孫六プレミアシリーズの包丁を視野に入れるべきでしょう

鋼材の質や刃のテーパーの付け方、エッジ部の面取りなど、あらゆる面で高クオリティの包丁であれば、一体口金でもおかしくない。 …というより、そちらの方が相応しいというものです

ちなみに関孫六プレミアシリーズは、どの製品もすべて一体型口金となっており、各部の仕上げも高級感あふれるものとなっています

【 総評 】
この価格帯の包丁に一体型口金を合わせるのは、いたずらに製品価格を押し上げるだけ
悪いとは言わないが、機能的には合わせ口金でも充分

個人的には、あまり使いたくない包丁 -3- 匠創

匠創
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
匠創 - 金属 オールステン 高炭素ステン 単層 4950

匠創
理由:オールステンレス包丁は、手に握った時のフィット感が今一つのため

匠創はオールステンレス包丁で、ハンドル部分まで金属でできています
継ぎ目のない一体型金属ハンドルがどうしても必要な場合を除いて、あまりお勧めできるものではありません

見た目がモダンで格好良いという人も一定数おられるので、必ずしも否定するものではありませんが
毎日の洗い物で手肌が荒れがちな主婦の方は特に、使わない方が無難です
少なくとも、わたしはあまり使いたいとは思いません

指先が荒れていると、乾燥してしっとり感が無くなり、ツルツル・カサカサで滑りやすくなりますが
そのような指で、同じく滑りやすい金属製のハンドルを握るのは、非常に相性が悪いわけです
そもそも、肌が荒れてなくても金属製ハンドルは滑りやすいものです。手を滑らせて、足元に包丁を落とすと危険極まりないのは言うまでもありません

他にも、気温が低い時期に冷たく感じるとか、滑り止め用のディンプル(凹み)に汚れが溜まるなど、オールステンレス包丁には、さまざまなデメリットがあります

すべて書くと長くなりますので、詳細はこちらの別ページにまとめておきました(オールステン包丁は、滑る・冷たい…)
オールステン包丁の購入を検討中の方は、買う前にご一読をおすすめします(承知の上であえて買うのは良いですが、知らずに買うと、後で後悔しかねません)

【 総評 】
金属ハンドルは、触感が冷たく、水濡れ時に滑りやすい
グリップ感を向上させるためのディンプル状の凹みは、汚れが溜まりやすい

グレードが最も低いので、割り切って使うしかない -4- 「わかたけ」

「わかたけ」
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
わかたけ 無し 樹脂 中通し ステン刃物鋼 単層 2420

わかたけ
理由:含有炭素量が中程度のため、刃持ちが良い方ではない

「わかたけ」の鋼材表記は、「ステンレス刃物鋼」となっています

つまり、ハイカーボンではないステンレス刃物鋼であるために除外したというのが理由です
ハイカーボンは、言い換えれば高炭素です。含有炭素量が高ければ、焼き入れ後の硬度を高くすることができます
当然ながら、高硬度の刃物はそれだけ鋭いエッジを作ることができ、切れ味や刃持ちに影響します

ハイカーボン(高炭素)ではないステンレス刃物鋼となると、中炭素系のマルテンサイト系ステンレス鋼が該当します。含有炭素量が0.3~0.5%程度の焼き入れ可能なステンレス刃物鋼です
(鋼材規格名を挙げると、SUS420J2、もしくは420HCクラスの鋼材になるでしょう)

もちろん中炭素鋼でもしっかりと刃付すれば、それなりに「きちんと切れる包丁」に仕上がります
ただ、あまり刃持ちがよろしくないので、積極的におすすめしづらいということもできるのです

念のために書いておきますが、決して切れ味が悪いということはありません
同程度の中炭素鋼を使用した低価格の包丁でも、充分な切れ味を出すことができます(リンク先は、低価格包丁の切れ味テストです)

【 総評 】
コストダウンが鋼材の質にまで及んでおり、ここまで低グレードになると、諸手を挙げておすすめしにくい

【 補足 】
ここでは、「家庭で包丁を普通に使う場合」を想定して、おすすめの可否を(独断で)決めていますが、もしも「積極的に包丁を研ぐ練習をしたい」という場合は、逆に「わかたけ」を使うのも有りです

刃持ちがほどほどの分だけ、研ぐ回数が多くなり、研ぎの腕が身に付きやすいです
なにしろ、関孫六で最も価格の低い包丁ですので、「研ぎ減り」や「研ぎ傷」などに気を使わず、思い切ってさまざまな研ぎ方に挑戦することができます

硬度が高くない分だけ、サクッと刃が付くので、「研ぎ」に対する包丁側の反応が良いので、練習にはぴったりです

このようなあまり硬度の高くない鋼材を研ぐ場合は、返りを取る際に、反対側に返りが出てしまうこともありますが、そういった細かいところを指先で感じながら研げるようになってくれば、包丁研ぎの腕も一段上がるというものです

「わかたけ」のような低価格の刃物で包丁研ぎを練習し、ある程度の技術を身に着けた後で、より高級な包丁を入手しても、決して遅くはありません。(いえむしろ、そうすべきだと思います)

関孫六・おすすめの包丁(一次選考通過分)

ここまでのところで、「わたしなら、買わない包丁」として挙げたのは…
  • 口金部分が口輪パイプの、「ほのか」と「茜」
  • 一体型口金でコスト高の、「くじゃく」と「木蓮」
  • オールステンレスの、「匠創」
  • 鋼材炭素量が低めの、「わかたけ」です
これらを一覧表から除外して、表を作りなおしてみましょう

関孫六・おすすめの包丁(一次選考通過分)
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
いまよう 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 単層 4840
べにふじ 合わせ 強化木 本通し 高炭素MVステン 単層 6050
萌黄 無し 樹脂 中通し 高炭素ステン 3枚合 3630
青藤 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 3枚合 7150
安土 無し 樹脂 中通し 炭素鋼複合材 3枚合 3850
桃山 無し 強化木 本通し 炭素鋼複合材 3枚合 6050
12本あった包丁が6本となり、かなり整理されてきました
だいぶ、判りやすくなりましたね!

この中からさらに絞っていって、最もおすすめの包丁を見つけていきましょう

ハガネとステンは、さすがに同列には扱えない

切れ味の「冴え」を味わうなら、「安土」か「桃山」だが…

安土

桃山
上の表を大きく二つに分けると、切り刃鋼材がステンレスのものと、炭素鋼とに分けられます

ここで切れ味を最重要視するのであれば、どうしても「安土」と「桃山」がおすすめになってしまいます

この2本は炭素鋼複合材でできており、「ステンレス刃物」とはジャンルが異なります。切り刃が炭素鋼(ハガネ)、側面がステンレスで覆われているという、ある意味反則級の包丁です

どちらかというとマイナーなクラッド材なのですが、切り刃が炭素鋼なので、刃のかかりが良く、この価格帯では切れ味に確実な優位性があります

はっきり言ってしまうと、ハガネを使った包丁と、ステンレスの包丁とを同列に扱うべきではありません
そのくらい、明確な差異があるからです

範囲を「ステンレス包丁」に限定してみる

実際のところ、包丁を使った後は「水気を拭かずに、そのまま放置」という使い方をされている方も多いと思います

使用後の包丁は、水が付いたままの状態で、包丁差しに入れる使い方の場合は、「安土」と「桃山」は、あまりおすすめできるものではありません

そのためこのページでは、「安土」と「桃山」を一旦除外して考えたいと思います

「いえ、わたしは、包丁は拭く派です。丁寧に扱う方です」 ・・・という方は、
こちらのページをご参照ください
上記のページでは、「炭素鋼複合材の包丁は、切れ味が良くておすすめ」という視点で解説しています

【 総評 】
ハガネの包丁は切れ味に優位性があるが、包丁を拭かない人にはおすすめしづらい

包丁を食洗器で洗う場合は?

包丁を拭く、拭かないの話が出たところで、食洗器対応についても言及しておきましょう

関孫六の包丁で食洗器対応とされているのは、匠創、茜、ほのか、わかたけ、萌黄の5本です
プレミアシリーズの10000STを含めると6本になります

これらの包丁の共通点を洗い出すと判りますが、要は、オールステンレス包丁と樹脂ハンドルの包丁が食洗器対応となっています
言い換えると、積層強化木ハンドルの包丁は、食洗器非対応です

包丁を食洗器で洗浄すると、流水で刃が暴れ、刃先がラックと擦れることで刃の痛みが早まる恐れがあるため、あまりおすすめできませんが、「それでも食洗器で包丁も洗いたい!」という方も、一定数おられると思います

そういう方は、上記の樹脂ハンドル、もしくはオールステンレス包丁の中から選びましょう(それ以外にありません)

関孫六・おすすめの包丁(二次選考通過分)

改めて、先ほどの安土と桃山を除外し、表を作りなおしてみましょう

関孫六・おすすめの包丁(二次選考通過分)
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
いまよう 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 単層 4840
べにふじ 合わせ 強化木 本通し 高炭素MVステン 6050
萌黄 無し 樹脂 中通し 高炭素ステン 3枚合 3630
青藤 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 7150
4本の包丁が残りました

大きく分けると、単層ブレードを採用している「いまよう」、「べにふじ」・・・
刃体が「三枚合わせ」になっている、「萌黄」、「青藤」です

単層と、三枚合わせは、どちらを選ぶべきか?

ここで大きな疑問が出てきます
単層と、三枚合わせの包丁は、どちらを選ぶべきでしょうか?

表を見る限りでは、単層の方が安く、三枚合わせの方が比較的価格設定が高くなっています
それだけのメリットや価値が、三枚合わせ鋼材にはあるというわけでしょうか?

ここで、鋼材以外の部分が似通っている、「べにふじ」と「青藤」を比較してみましょう

関孫六 「べにふじ」と「青藤」の比較表
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
べにふじ 合わせ 強化木 本通し 高炭素MVステン 単層 6050
青藤 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 3枚合 7150
- - - - - 価格差 1100

べにふじ

青藤
両者ともに口金は、「合わせ口金」で、同一の仕様です

青藤の「背通し」に比べ、べにふじは「本通し」になっており、ハンドル構造については「べにふじ」のほうが高グレードです
刃物鋼材についても、青藤のハイカーボンステンレスと比較して、「べにふじ」には「ハイカーボンMVステンレス」が奢られており、(それにどれだけの違いがあるのかはさておいて)べにふじの方が鋼材のグレードが高くなっています

にもかかわらず、価格で比較すると、べにふじの方が1100円も安いのです

これでは、青藤の3枚合わせブレードに、それなりのメリットが無ければ、わざわざ青藤を選ぶ意味がありません
「3枚合わせ」でないことに目をつぶれば、べにふじの方が、他の部分のグレードが高く、しかも安いからです

「三枚合わせ」の是非について、刃物マニア目線で語りだすと長くなりますので割愛しますが、わたしから言わせると、(このクラスの包丁であれば)単層で充分です
少なくとも、一般の方が体感できるほどの大きな違いはありません
(炭素鋼複合材の場合は別です。あれは3枚に合わせるだけの価値があります)

なぜ単層で充分なのかは、こちらのページ(現在製作中です。ごめんなさい)をご覧いただくとして、ここで3枚合わせの包丁を表から除外してみます

【 総評 】
中価格帯の3枚合わせ鋼材は、コストに見合うだけの価値を見い出しにくい
単層ブレードで低コストに仕上げた方が、コスパが良くなり、価格的メリットが大きい

それでは改めて、最後に残った包丁を見てみましょう

関孫六・おすすめの包丁(最終選考分)

最後に残ったのは、「いまよう」と「べにふじ」

関孫六・おすすめの包丁(最終選考通過分)
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
いまよう 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 単層 4840
べにふじ 合わせ 強化木 本通し 高炭素MVステン 単層 6050

いまよう

べにふじ
最後に残ったのは、「いまよう」と「べにふじ」の2本です

どちらも家庭で扱いやすい、おすすめのステンレス包丁と言えるでしょう
奇をてらったところが一つもなく、質実剛健で確実な造りになっています

さてここで注目すべきは、鋼材の違いです。「MV」の有り/無しです

べにふじの鋼材には「MV」の表記があります。Mはモリブデン、Vはバナジウムの事でしょう
刃物鋼に詳しい方にはおなじみかもしれませんが、言ってみればこれは、「モリブデンバナジウム鋼」と表現することができます

一方のいまようの鋼材にはMVの文字がありません

とはいえ、ハイカーボン(高炭素)のステンレス刃物鋼ですので、ある程度のモリブデンは含有されているはずです(全く入っていないことは考えにくく、少なくとも0.1~0.2%の含有は有ると推測されます)

おそらく、「いまよう」に使用されている鋼材は、AISI(米国鉄鋼協会)規格で言うところの440Aに相当する、高炭素系のマルテンサイト系ステンレス鋼と思われます

モリブデンバナジウム鋼だから、切れ味が良い!」…といった、安易な文言を目にすることも多いと思いますが、お気を付けください(メーカーのコピーをそのまま転載しているだけです。刃物鋼材は、そんなに安易に語れるものではありません)
巷に溢れる、転載と引用のみで構成された「おすすめ包丁のサイト」は、たいていこの調子ですので信用に値しません

「本当に分かって書いているのか?」と思う事しきりですが、あのたぐいは「買わせてしまえば、あとは野となれ山となれ」という、営利目的で書かれた、消費者購買誘導型の量産ページです(言ってみれば、ネットのゴミです)

くれぐれも、鵜呑みにしないようお気を付けください(間違っても使う側の事を親身に考えて書かれたものではなく、専門的な経験と知見をもとに構成されたページでもありません)

モリブデンバナジウム鋼か、ハイカーボンステンレス鋼か?

モリブデンは耐摩耗性と耐食性の向上に寄与します。バナジュウム(V)は、鋼材組織を微細化にするとともに靭性を高めます

それだけ聞くと、モリブデンバナジウム鋼の方が優れているように感じるかもしれません
そう思われる方は、そのままMV鋼のべにふじを選択しても構いませんが、はっきり言うと、どちらでも良いのです
(どちらが優れているかではなく、お互いにメリットとデメリットがあるのです)

この「いまよう」と「べにふじ」の違いで言うと、さほど大きな違いではありませんが、敢えて言うなら「甘切れ」か、「堅切れ」かの違いです

甘切れと、堅切れ、どちらを選ぶ?

例えると、甘切れの包丁は、「汚れやすいが、一度の洗濯で真っ白に戻る衣類」です
一方の堅切れの包丁は、「汚れにくいものの、その分汚れも落ちにくい衣類」です

どちらもどちらなのです

前者は、洗濯の回数は増えますが、簡単・確実に元の白さに戻ります
後者は、洗濯の回数は少なくて済むのですが、汚れも落ちにくいので、洗濯時の手間がかかります

このように、どちらもメリットとデメリットがあり、一概にどちらが優れているとは言いにくいのです

敢えて言うならば、後者の方がより高い硬度を出せますので、相対的に鋭いエッジを付けることが可能です
ただこれは、先ほどの例えで表現すると、「洗い立ての白さに若干の相違がある」というだけであり、この2者の比較でいうと、それほど大きなものではありません
どう研ぐかの方が、よほど大きな差が出るでしょうし、差が感じられるのは研ぎたての時くらいで、使っているうちにすぐに判らなくなる程度です

さらに、値段に関しては後者の方が確実に高価格です。コスパで比較するならば前者の方が優れています

結論 - 「いまよう」と「べにふじ」

改めて、まとめてみましょう
  • コスパを優先するなら、「いまよう」
  • シャープナーで包丁を研ぐ人は、「いまよう」
  • 包丁を定期的に研ぎに出す場合は「べにふじ」
  • 自分で包丁を研ぐ場合は、どちらでも良い
敢えて言うなら、砥石での研ぎに慣れていない人は「いまよう」がおすすめで、慣れている人なら「べにふじ」が良いでしょう

あくまでも相対的な違いであり、絶対的なものではありませんが、べにふじの方が耐摩耗性が高い分だけ、砥石研削性が悪く、刃付時の難削性があります

あくまでも比較した場合に、いまようの方が刃が付きやすいというだけです

砥石で研ぐ場合は、「程度の差」と済ませられる程度です
ただ、シャープナーで研ぐ場合は、研磨粒子の角が丸くなれば、極端に切削性が落ちますので、いまようを選択した方が無難でしょう

【 総評 】
「いまよう」と「べにふじ」は、どちらもおすすめ(外観と価格で選んでもよい)
敢えて分けるなら、砥石で包丁を研ぐ人は「べにふじ」、そうでなければ「いまよう」

包丁マニアは、どちらを選ぶ?

個人的に「いまよう」と「べにふじ」のどちらか一本を選べと言われたら、おそらく「べにふじ」を選択すると思います

なぜかというと、「いまよう」も「べにふじ」も、積層強化木ハンドルである点は同じなのですが、「いまよう」がありふれたな「黒色ハンドル」なのに対し、「べにふじ」は木の風合いを感じさせるハンドルが採用されており、見た目の質感が良く感じられるからです

同様の茶色系のハンドルは、くじゃく、べにふじ、木蓮、青藤に採用されており、低価格帯の包丁との差別化を図られています

刃物鋼材に関しては、サクッと刃が付く「いまよう」の方が、(ステンレスの包丁としては)好みに近いかなとも思いますが、このあたりは正直言ってどちらでも良いです

どちらの鋼材でも、しっかり刃付を行えば良質の切れ味を出せますし、刃持ちの差は扱い方の方が大きく出ます
価格差もあるところですが、実売価格で見てみると、それほど大きな差ではありません

その時の価格と、見た目の好みで決めても良いと思います(そのくらい、どちらも良い包丁です)

包丁マニアの推測、具体的な鋼材名

「いまよう」は武生の「V金2」、「べにふじ」は「V金5」か?

間違いを恐れずに推測するならば、いまようの鋼材は武生の「V金2」、べにふじは同じく「V金5」と思われます

関孫六の包丁には、武生特殊鋼材の鋼材が多数採用されており、プレミアムシリーズにおいては、VG10とコバルトスペシャルが使用されていることが確認されています

このことから、ノーマルシリーズにおいても、同様に武生の鋼材を採用していると考えるのが妥当です
武生特殊鋼材のオリジナル刃物鋼の中で、ハイカーボンステンレス鋼でこの価格帯となると、V金2が相当します(V金1は、もう少し上の価格帯になります)
同様に、この価格帯のモリブデンバナジウム鋼となると、V金5が相当します

※ これは、いち包丁マニアによる推測です。安易に言いふらさないでください(転載禁止です。リンクはOKです)

こう明記しておかないと、安易なユーチューバーが、「いまようの鋼材は、武生のV金2!」などど声高に言い出すのが目に見えるので、警鐘のために記載しています。同様の事例が実際にあったためです(お目汚しをお詫びします)
この結論にたどり着くまでには、かなりの時間とそれなりの知見を要しています。繰り返しになりますが、コピー・転載など、著作権の侵害行為はおやめください

「V金2」は、炭素量0.6~0.7、クロム量が13~15、モリブデンは0.1~0.2、焼き入れ硬度HRC58以上のバランスの取れた鋼材です

「V金5」は、炭素量0.7~0.8、クロム量は同じで13~15、モリブデンは0.2~0.4、バナジウム0.1~0.2で、焼き入れ硬度HRC59以上となっています
こちらも非常に扱いやすい、ウェルバランスの鋼材となっています

どちらも熱間鍛錬された、均質性が高く不純物の少ない鋼材です
硬すぎず柔らかすぎず、適度な塩梅に調整された質の高い刃物鋼材で、甲乙つけがたいところです

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