関孫六の「おすすめ包丁」は?

最終更新日: 著者:月寅次郎
包丁・おすすめ
以前、「関孫六・プレミアシリーズのおすすめ包丁ランキング」というページを作りました

一部の包丁販売業者からは、「それ書いちゃダメ!」と言われかねない思い切った内容であったため、消費者側の方々には大変好評を博しました(…と、思いたいです)

その際、プレミアシリーズではない普通の関孫六の包丁は、あまりに数が多いため除外したのですが、今回改めて取り上げてみることにいたしました

題して、プレミアシリーズ以外の「関孫六の、おすすめ包丁は?」です
まずは、関孫六の包丁のラインナップを、一覧表にして比較してみましょう

関孫六のおすすめ包丁 ベストの一本はどれか?(ページ1)

関孫六の包丁 全12種類(比較一覧)

関孫六の包丁(全12種類の比較)
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
わかたけ 無し PP樹脂 中通し ステン刃物鋼 単層 2420
ほのか 口輪 POM樹脂 中通し ステン刃物鋼 単層 3630
いまよう 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 単層 4840
べにふじ 合わせ 強化木 本通し 高炭素MVステン 単層 6050
くじゃく 一体 強化木 本通し 高炭素MVステン 単層 9350
匠創 - 金属 オールステン 高炭素ステン 単層 4950
萌黄 無し PP樹脂 中通し 高炭素ステン 3枚合 3630
口輪 POM樹脂 中通し 高炭素ステン 3枚合 4840
青藤 合わせ 強化木 背通し 高炭素ステン 3枚合 7150
木蓮 一体 強化木 本通し 高炭素ステン 3枚合 9350
安土 無し PP樹脂 中通し 炭素鋼複合材 3枚合 3850
桃山 無し 強化木 本通し 炭素鋼複合材 3枚合 6050
※ 価格は三徳包丁のもので、貝印が公式に定めた税込標準小売価格です(調査年月:2021年4月)
※ 店頭小売価格や通販サイトの実売価格とは異なります
※ プレミアシリーズ、および、金寿・銀寿等の和包丁を除外し、一般的な洋包丁のみを取り上げています


はい、こちらが関孫六の包丁、全12種類です
数がありすぎて、どこをどう見てよいのか、よく分からないと思います

それではまず、包丁マニアならではの視点で、「わたしなら、この包丁は選ばない」という包丁を、理由を挙げながら一つづつ除外していきましょう
そうして最後に残ったのが、「関孫六のなかで最もおすすめできる包丁」となります

追記:詳しく解説しているうちに、かなりの長文になってしまいました。大抵の人は、最後のおすすめ包丁にたどり着く前に、途中で読むのを投げ出すと思います。 …なので下に目次を作りました。気になった包丁の項目をクリックして、直接ジャンプしてお読み下さい

関孫六のおすすめ包丁 - 目次

  1. 「わかたけ」「ほのか」- 高炭素ですらない
  2. 「茜」- 口金がイミテーション
  3. 「匠創」- オールステンゆえのデメリット
  4. 1次選考通過分
  5. 「安土」「桃山」- 切れ味は良いが…
  6. 2次選考通過分
  7. 鋼材グレード順に並べてみよう
  8. 「萌黄」- 樹脂ハンドルの功罪
  9. 「くじゃく」「木蓮」- コスパが中途半端
  10. 関孫六のおすすめ(最終選考)
  11. 「いまよう」- 単層ブレードのベストバランス
  12. 「べにふじ」「青藤」- 中堅グレード王道ど真ん中
  13. 評価を終えて - あとがき

※ 上記の一覧表は、貝印公式サイトの情報を元に、一本一本調べてまとめたものです
また、当ページ(および当サイト)の内容は、わたしの刃物に関する経験と知識を元にしたもので、時間と手間をかけて確認した情報も含まれています。無断転載やコピーなど、コタツ記事への流用を一切禁止します。換骨奪胎してYouTubeで自説のように語るのもおやめ下さい。某ゲーム系ユーチューバーには警告を行いました

ちなみに、商品情報を確認する場合は、公式サイトのこのページが最も分かりやすい です
貝印オンラインストアではなく、貝印製品情報ページの方になります
(ダマスカスのようなプレミアシリーズから、コスパの高いノーマルシリーズ、金寿・銀寿のような和包丁まで1ページにまとまっています)

「おすすめ」しづらい包丁を、一つづつ除外してみよう

「わかたけ」「ほのか」 - 鋼材グレードが低く、炭素量も低い

「わかたけ」と「ほのか」
名称 口金 ハンドル 構造 刃物鋼材 ブレード 公式価格
わかたけ 無し PP樹脂 中通し ステン刃物鋼 単層 2420
ほのか 口輪 POM樹脂 中通し ステン刃物鋼 単層 3630

わかたけ
理由:含有炭素量が中程度のため、刃持ちが良い方ではない

「わかたけ」と「ほのか」の鋼材表記(材料の欄)は、「ステンレス刃物鋼」となっています 刃の側面の表示を見ると、「ほのか」は「Molybdenum Vanadium Stainless Steel」となっていますが、「わかたけ」は「Stainless Steel」という簡素な表記になっています

いずれにしろ他の関孫六の包丁と比較すると、「わかたけ」が最も炭素量が低く、「ほのか」が次に低いのは明白です
つまり、炭素含有量が低いので除外したというのが理由です

ハイカーボンは、言い換えれば高炭素です。含有炭素量が高ければ、焼き入れ後の硬度を高くすることができます
当然ながら、高硬度の刃物はそれだけ鋭いエッジを作ることができ、切れ味や刃持ちに影響します (硬度の高さだけで刃物を判断するのは早計であり、炭化物をどれだけ球状微細化できるかも重要な要素なのですが、さすがにある程度の硬度が出ていないと、包丁としてはおすすめしづらいです)

関孫六 わかたけ

「関孫六 ほのか」の評価ポイント

関孫六 ほのか

「ほのか」が、「わかたけ」に対して優れているのは…
  1. 鋼材グレードが若干高い
  2. 口輪が付いており、見栄えがする
  3. 樹脂ハンドルの素材がPOM(ポリアセタール)である
 …の3点です

ほのか
「1」の鋼材グレードについては、さほど気にする必用はありません
誰もが体感できるほどの差は、あまりないからです
研いた直後の切れ味や使用感では、差はほとんど感じられないと思います 砥石に当てている時に、研ぎ味の差として僅かに感じられる程度のものでしょう

「2」の「口輪付き」については、関孫六 茜のページでも詳しく言及していますが、これは機能的な差異を生むパーツではありません
天然木を使用していた時代の包丁なら違いも出ようというものですが、ほのかは樹脂ハンドルですので、そもそも口金(口輪)を付ける必要がありません
「見た目が良くなる」と受け取る人にはメリットとなり得ますが、「製品価格を押し上げてるだけ」と感じる人にはデメリット要素です どう受け取めるかは、その人次第です

「3」のハンドル素材がPOM樹脂という点ですが、ここが意外に隠れた評価ポイントです
PP樹脂(ポリプロピレン)も、POM樹脂(ポリアセタール)も、新品の状態では外見上の違いはほとんどありません

ですがPP樹脂は、比較的柔らかい素材であり、耐候性についても今ひとつです
そのため、買った直後は良いのですが、何年か使い込んでくると「やれ」が出てきて安物感を醸し出してきます
価格を重視するならPP樹脂に分がありますが、使い続けても白化しにくく、堅牢なままでいられるのはPOM樹脂の方です
包丁選びにおいて、樹脂ハンドルの素材まで言及するのは、当サイトくらいのものだと思いますが、これはかなり重要なポイントです

樹脂ハンドルに使用される素材と特徴については、樹脂ハンドルはどれも同じではない をご覧ください
PP、POM、ABS、エラストマーなど、ヘンケルスが使用している4種類の樹脂を取り上げ、包丁マニア目線で詳しく解説しました

「わかたけ」「ほのか」の鋼材は何か?

ステンレス刃物鋼(焼入れ可能なマルテンサイト系ステンレス鋼)は、含有炭素量によってハイカーボン(高炭素)のものと、中炭素のものとに分けられます
この2つの境は、おおよそ0.6%となっており、これより上がハイカーボン、下がミドルカーボンとされています

貝印も具体的な鋼材名まで教えてくれませんが、わかたけの刃体材料の表記が、刃面上はステンレススチールにも関わらず、箱書きには「ハイカーボン」の表記があったりと、統一性がないところからしても、含有炭素量が0.6%前後、HRC硬度が56前後の鋼材ではないかと思われます
つまり、ハイカーボンと呼称可能な下限ぎりぎりのあたりの炭素量であると推測されます

また、貝印によると、「『ほのか』の方が『わかたけ』よりも鋼材グレードが上」とのことですので、「ほのか」の鋼材は愛知製鋼のAUS6M、「わかたけ」はAUS6、もしくは他社の同等グレード鋼材ではないかと睨んでいます (あくまでも個人的な推測ではありますが、鋼材のグレードで言うとこのあたりに落ち着くはずです)

AUS6とAUS6Mは、どちらも炭素量は0.55~0.65%となっており、ハイカーボンの下限であると同時にミドルカーボンの上限と言える炭素量です。「わかたけ」がAUS4である可能性も考えたのですが、AUS4の炭素量は0.40~0.45%であるため、さすがにこれをハイカーボンとは言い切るのは無理があります
低価格な刃物鋼としてはSUS420J2も挙げられますが、ここまでグレードを落とすと刃持ちがよろしくありません。
(当初「わかたけ」は、炭素量の低いSUS420J2であると考えたのですが、包丁である以上は、最低限HRC55以上の硬度は欲しいところです。貝印も420J2鋼材の包丁に「関孫六」の名は与えないと思いますので、この可能性は低いと考えます)



AUS6は決して高級鋼材というわけではありませんが、炭素量が高くないことから逆に錆には強いという特性を持ち、しっかりと刃付すれば「きちんと切れる包丁」に仕上がります

ただ、他の包丁と比べてしまうと、相対的に低グレードになってしまうため、刃持ちの良さではどうしても分が悪くなってしまいます。そのため積極的におすすめしづらいということで、ここでは「おすすめ」から外したいと思います

念のために書いておきますが、決して切れ味が悪いというわけではありません
同程度の中炭素鋼を使用した低価格の包丁でも、充分な切れ味を出すことができます(リンク先は、低価格包丁の切れ味テストです)

【 評価・わかたけ、ほのか 】
コストダウンが鋼材の質にまで及んでおり、ここまで低グレードになると、諸手を挙げておすすめしにくい
(決して悪い包丁というわけではないですよ)

 ● おすすめ包丁の目次 に戻る

【 補足 】
ここでは、「家庭で包丁を普通に使う場合」を想定して、おすすめの可否を(独断で)決めていますが、もしも「積極的に包丁を研ぐ練習をしたい」という場合は、逆に「わかたけ」や「ほのか」を使うのも有りです

刃持ちがほどほどの分だけ、研ぐスパンが短くなり、研ぎの腕が身に付きやすいです
なにしろ、関孫六で最も価格の低い包丁ですので、「研ぎ減り」や「研ぎ傷」などに気を使わず、思い切ってさまざまな研ぎ方に挑戦することができます

硬度が高くない分だけ、サクッと刃が付くので、「研ぎ」に対する包丁側の反応が良いので、練習にはぴったりです

このようなあまり硬度の高くない鋼材を研ぐ場合は、返りを取る際に、反対側に返りが出てしまうこともありますが、そういった細かいところを指先で感じながら研げるようになってくれば、包丁研ぎの腕も一段上がるというものです

「わかたけ」のような低価格の刃物で包丁研ぎを練習し、ある程度の技術を身に着けた後で、より高級な包丁を入手しても、決して遅くはありません。(いえむしろ、そうすべきだと思います)

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