関孫六のおすすめ包丁 ベストの一本はどれか?(ページ4)
関孫六のおすすめ包丁 - 目次
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「わかたけ」「ほのか」- 高炭素ですらない
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「茜」- 口金がイミテーション
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「匠創」- オールステンゆえのデメリット
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1次選考通過分
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「安土」「桃山」- 切れ味は良いが…
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2次選考通過分
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鋼材グレード順に並べてみよう
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「萌黄」- 樹脂ハンドルの功罪
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「くじゃく」「木蓮」- コスパが中途半端
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関孫六のおすすめ(最終選考)
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「いまよう」- 単層ブレードのベストバランス
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「べにふじ」「青藤」- 中堅グレード王道ど真ん中
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評価を終えて - あとがき
ハガネとステンは、さすがに同列には扱えない
切れ味の「冴え」を味わうなら、「安土」か「桃山」だが…
前ページの「おさらい」ということで、一次選考に通過した関孫六の包丁の一覧表を再掲載してみましょう
関孫六・おすすめの包丁(一次選考通過分) |
名称 |
口金 |
ハンドル |
構造 |
刃物鋼材 |
ブレード |
公式価格 |
いまよう |
合わせ |
強化木 |
背通し |
高炭素ステン |
単層 |
4840 |
べにふじ |
合わせ |
強化木 |
本通し |
高炭素MVステン |
単層 |
6050 |
くじゃく |
一体 |
強化木 |
本通し |
高炭素MVステン |
単層 |
9350 |
萌黄 |
無し |
樹脂 |
中通し |
高炭素ステン |
3枚合 |
3630 |
青藤 |
合わせ |
強化木 |
背通し |
高炭素ステン |
3枚合 |
7150 |
木蓮 |
一体 |
強化木 |
本通し |
高炭素ステン |
3枚合 |
9350 |
安土 |
無し |
樹脂 |
中通し |
炭素鋼複合材 |
3枚合 |
3850 |
桃山 |
無し |
強化木 |
本通し |
炭素鋼複合材 |
3枚合 |
6050 |
安土
桃山
上の表を大きく二つに分けると、切刃鋼材がステンレスのものと、炭素鋼とに分けられます
ここで切れ味を最重要視するのであれば、どうしても「安土」と「桃山」がおすすめになってしまいます
この2本は炭素鋼複合材でできており、「ステンレス刃物」とはジャンルが異なります。切り刃が炭素鋼(ハガネ)、側面がステンレスで覆われているという、ある意味反則級の包丁です
どちらかというとマイナーなクラッド材なのですが、
切り刃が炭素鋼なので、刃のかかりが良く、この価格帯では
切れ味に確実な優位性があります
はっきり言ってしまうと、
ハガネを使った包丁と、ステンレスの包丁とを同列に扱うべきではありません
そのくらい、明確な差異があるからです
範囲を「ステンレス包丁」に限定してみる
実際のところ、包丁を使った後は「
水気を拭かずに、そのまま放置」という使い方をされている方も多いと思います
使用後の包丁は、水が付いたままの状態で、包丁差しに入れる使い方の場合は、「安土」と「桃山」は、あまりおすすめできるものではありません
そのためこのページでは、
「安土」と「桃山」を一旦除外して考えたいと思います
「いえ、わたしは、包丁は拭く派です。丁寧に扱う方です」 ・・・という方は、
こちらのページをご参照ください
上記のページでは、「炭素鋼複合材の包丁は、切れ味が良くておすすめ」という視点で解説しています
【 評価・安土、桃山 】
ハガネの包丁は切れ味に優位性があるが、包丁を拭かない人にはおすすめしづらい
包丁を食洗器で洗う場合は?
包丁を拭く、拭かないの話が出たところで、食洗器対応についても言及しておきましょう
関孫六の包丁で
食洗器対応とされているのは、匠創、茜、ほのか、わかたけ、萌黄の5本です
プレミアシリーズの10000STを含めると6本になります
これらの包丁の共通点を洗い出すと判りますが、要は、
オールステンレス包丁と樹脂ハンドルの包丁が食洗器対応となっています
言い換えると、
積層強化木ハンドルの包丁は、食洗器非対応です
包丁を食洗器で洗浄すると、流水で刃が暴れ、刃先がラックと擦れることで刃の痛みが早まる恐れがあるため、あまりおすすめできませんが、「それでも食洗器で包丁も洗いたい!」という方も、一定数おられると思います
そういう方は、上記の樹脂ハンドル、もしくはオールステンレス包丁の中から選びましょう(それ以外にありません)
関孫六・おすすめの包丁(二次選考通過分)
改めて、先ほどの安土と桃山を除外し、表を作りなおしてみましょう
関孫六・おすすめの包丁(二次選考通過分) |
名称 |
口金 |
ハンドル |
構造 |
刃物鋼材 |
ブレード |
公式価格 |
いまよう |
合わせ |
強化木 |
背通し |
高炭素ステン |
単層 |
4840 |
べにふじ |
合わせ |
強化木 |
本通し |
高炭素MVステン |
単層 |
6050 |
くじゃく |
一体 |
強化木 |
本通し |
高炭素MVステン |
単層 |
9350 |
萌黄 |
無し |
樹脂 |
中通し |
高炭素ステン |
3枚合 |
3630 |
青藤 |
合わせ |
強化木 |
背通し |
高炭素ステン |
3枚合 |
7150 |
木蓮 |
一体 |
強化木 |
本通し |
高炭素ステン |
3枚合 |
9350 |
6本の包丁が残りました
これらを大きく分類すると、
ブレード構造が「
単層」か「
3枚合わせ」かに分けられます
また、別の見方をすると、
刃物鋼材が、「
高炭素ステン」か、「
高炭素MVステン」かにも分けられます
ここで言う刃物鋼材とは、3枚合わせの場合は切刃の芯材を指します。貝印の公式ホームページでは、それぞれ「ハイカーボンステンレス刃物鋼」と、「ハイカーボンMVステンレス刃物鋼」と表記されています
一覧表ではスマホ画面での閲覧を考慮し、言葉を変更して文字数を切り詰めた表記にしています(文字数が多いと、画面横幅に納まらないためです)
まず、鋼材の違いに着目してみよう
鋼材(刃体が3枚合わせの場合は、芯材に使用されている刃物鋼)の違いに着目してみましょう
まず
目を引くのは鋼材名における、「MV」の有り/無しです
具体的には、貝印オンラインストアの商品ページ>商品の仕様>材質>刃体の表示になります
「べにふじ」の鋼材には「MV」の表記があります。『M』はモリブデン、『V』はバナジウムの事でしょう
刃物鋼に詳しい方にはおなじみかもしれませんが、言ってみればこれは、「
モリブデンバナジウム鋼」と表現することが可能です
一方の「いまよう」の鋼材にはMVの文字がありません
とはいえ、
ハイカーボン(高炭素)のステンレス刃物鋼ですので、ある程度のモリブデンは含有されているはずです(全く入っていないことは考えにくく、少なくとも0.1~0.2%の含有はあると推測されます
おそらく「いまよう」も、一種のモリブデンバナジウム鋼ではあるものの、含有量が多いとは言えないため、「MV」という表記を加えることができなかったものと思われます
※追記:調査の結果、これは間違いであることが判明しました。理由と結果については、この後の「貝印に確認を取ってみた」をご覧ください
個人的には、「いまよう」に使用されている鋼材は、AISI(米国鉄鋼協会)規格で言うところの440Aに相当する、高炭素系のマルテンサイト系ステンレス鋼だと推測しています
鋼材の含有炭素量が440Aに相当するというだけであって、使用鋼材が440Aだという意味ではありません。AISIの規格に当てはめるとその辺りに該当するだろうという推測です
追記:貝印に確認を取ってみました(意外な事実)
念のため、鋼材種別について貝印に確認を取ってみました
質問:「べにふじ」の刃体は「
ハイカーボンMVステンレス刃物鋼」となっており、「青藤」の刃体材料は「
ハイカーボンステンレス刃物鋼」と表記されています
両者の鋼材の違いについてご教授下さい
回答:(商品の外箱に記載の鋼材表記について、いろいろと説明があり、その後)
…これは、2つとも同じ鋼材ですね
わたし:「 …な、なんですと?」
この質問に至るまでに、いろいろと聞き取り調査を行って、
表記が同じなのに鋼材が異なる製品がいくつか存在することは聞いていました
例:「わかたけ」と「ほのか」は、同じ「ステンレス刃物鋼」表記だが、実際に使用されている鋼材は異なる
「べにふじ」と「くじゃく」も同様に、表記は同じだが、鋼材は異なる
「青藤」と「木蓮」についても同様 …と、いった具合です
…にもかかわらず、
「いまよう」と「べにふじ」に至っては、表記が別なのに、同一鋼材だと言うではありまえんか。これではもう、
表記がでたらめです
心の中の声「これでは、このページでせっかくまとめてきた『一覧表』が、意味をなさないではないかっ!!」
このページは、ホームページ作成ソフトのたぐいを使わずに、テキストエディタにHTMLを手打ちしています。テーブルタグの記述などは面倒くさいのです(ソースは見ないでください。構造化できていないので、コードが汚いです)
貝印も鋼材名までは非開示なのですが、鋼材グレードの優劣といった問い合わせには、丁寧に応じてくれるため、一点一点調査中です
調査結果がまとまりましたら、別ページを設けて解説する予定です(ここにもリンクを貼る予定です)
ちなみにプレミアシリーズ以上になると、鋼材名を表示していたりもするのですが、価格帯が異なるため、敢えて積極的にアピールしているようです(高級モデルになると「こんな高級鋼材使ってるんだよ」とアピールになるためでしょう)
さて、貝印に伺った内容を、一旦整理しておきましょう
おすすめの包丁(二次選考通過分)を、鋼材グレード順で並べると…
木蓮 = くじゃく > 青藤 = べにふじ > 萌黄 > いまよう …とのことでした
なお、MVの有り/無しについては、「表記が異なれば、別鋼材と受け取られかねない。いらぬ誤解を生むのではないでしょうか?」と指摘し、「表記は、一貫性を持って統一することが望ましいです」とお伝えしました
おそらく、そう遠くないうちに修正されることでしょう
株式会社貝印さま、ご丁寧な対応、まことにありがとうございました
改めて整理し、表を作り直した(鋼材グレード順)
関孫六・おすすめの包丁(二次選考通過分・鋼材グレードの低い順) |
名称 |
口金 |
ハンドル |
構造 |
鋼材グレード |
ブレード |
公式価格 |
いまよう |
合わせ |
強化木 |
背通し |
- |
単層 |
4840 |
萌黄 |
無し |
樹脂 |
中通し |
「いまよう」の上位 |
3枚合 |
3630 |
べにふじ |
合わせ |
強化木 |
本通し |
同じグレード |
単層 |
6050 |
青藤 |
合わせ |
強化木 |
背通し |
3枚合 |
7150 |
くじゃく |
一体 |
強化木 |
本通し |
同じグレード |
単層 |
9350 |
木蓮 |
一体 |
強化木 |
本通し |
3枚合 |
9350 |
注釈:鋼材グレードの順に並べていますが、一つ一つの差は決して大きなものではありません
HRC硬度で言うと1前後の差異であると予想されます。熟練した研ぎ師が研ぎ比べた場合に、研ぎおろしの進み具合で違いが分かるレベルです(切削力の高い砥石を使用した場合、前後するグレードなら差が判らないかもしれません)
一旦研いでしまえば、どれも一律に「切れ味優秀」になってしまいますので、その時点で切り比べても、その差を指摘できる人は少ないでしょう。(違いは刃持ちに現れますので、日数を使い込んで初めて、違いが判ってくるものです)
さて、
鋼材グレードの違いが明らかになったところで、改めてこの表の中から「おすすめの包丁」を選んでみましょう
関孫六プレミアシリーズのおすすめランキングと同様に、個人的な意見にはなりますが、それなりに明確に根拠を示して、おすすめの包丁を決めてみたいと思います
それではこれまでと同様、おすすめしにくい包丁を除外していきましょう
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