オールステンレス包丁は、滑る・冷たい・汚れが溜まる


グローバル包丁・ハンドル
オールステンレス包丁は、売れ筋の包丁です

ハンドルが金属製のためにモダンな印象があり、「今どきの包丁」という感じで高い人気を誇っています

とはいえ、ハンドルのフィット感、水濡れ時の滑りやすさ、低温時の冷たさを考えると、積極的におすすめできるものではありません

このページでは、包丁マニア目線で、オールステンレス包丁のメリットとデメリットについて解説します
包丁メーカーと包丁販売業者の方々、わたしを恨まないで下さい。全部ホントのことですので

オールステンレス包丁は、滑る・冷たい・凹みに汚れがたまる

グローバル
牛刀

「オールステンレス包丁」は、グローバル製が有名です(左の画像の包丁)

オールステンの包丁は継ぎ目がありませんので、衛生面と耐久性に優れているというイメージが強いです
ですがそれはあくまでもイメージであり、現実的にどうかと言うとまた違った話になります
また、握った際のフィット感がいま一つなのは、金属ハンドルですのでどうしようもありません
さらに、手指に冷たさを感じやすく、水濡れ時に滑り易いという弱点もあります。

グローバルの包丁には、滑り対策としてディンプル加工が施されていますが、半球状のくぼみに汚れが溜りがちだという困った一面も持っています

毎日ブラシなどで凹み部分を確実に洗浄し、滅菌処理まで行う食品工場などで使う際にはメリットが生きますが、家庭用包丁としては、「ハンドルにコストのかかった包丁」でしかありません

汚れが溜まる、ステンレスハンドルの実例1(グローバル)

下の画像は、グローバル包丁のハンドルを拡大したものですが、くぼんだ半球状の部分に汚れや食品カスが貼り付いたままになっているのが判るでしょうか?

グローバル包丁・ハンドル
汚れの目立つ箇所を4箇所矢印で示してみましたが、それ以外にも下3列は全体的に汚れが残っています

これでも清掃後の状態なのですが、こまめに清掃をしていないと、汚れが溜まって落ちにくくなるという良い見本です
ディンプルの凹みが深いため、食器洗い用のスポンジで洗うだけでは、汚れが溜まりがちです(洗浄の際には、タワシやブラシ等の毛足のあるものを推奨します)

上の状態を放置して、洗わずに使い続けるとどうなるかというと、冒頭の画像のようになります (もう一度、見てみましょう)

グローバル包丁・ハンドル
かなりひどい状態です。ディンプル(窪み)に汚れが溜まりまくっています
ディンプル部分は黒色塗装が施されていますが、調理時のさまざまな残留物が穴の内側に付着し、(清掃を怠ったおかげか)そのまま固着しています

「オールステンレス包丁は、継ぎ目がないから衛生的!」という売り文句が、いかに嘘・偽りであるかがよくわかります(少なくとも衛生的とはいい難い包丁です)

オールステン包丁が衛生的だと言えるとしたら、それは、ハンドルに溝や窪みが付いていない包丁に限定されます。溝や窪みの付いたハンドルは、むしろ非衛生的だと言うべきでしょう

汚れが溜まる、ステンレスハンドルの実例2(関孫六 匠創)

匠創・ハンドル
関孫六 匠創(旧モデル)のハンドルです
こちらは清掃後の状態ですが、凹んだ部分の内側のエッジ部分の汚れが取り切れていません

もう一つの注目ポイントは、ハンドル表面の質感です
経年と使い込みによってハンドルに小傷が入り、表面の質感がギタギタで、みっともない感じになっています

これは金属製のハンドルだからこそです

積層強化木ハンドルやPOM樹脂のハンドルは、適度に弾性があるため傷が入りにくく、入った場合でも視覚的にやれた感じに見えにくいものです
同じ樹脂でも、PP樹脂ハンドルは素材としての硬度が低いため、めくれたような傷が入って、非常に安っぽく見えます

樹脂ハンドルの種類については、ヘンケルス包丁の全モデル解説ページで取り上げています。詳しくは、こちらの 樹脂ハンドルは、どれも同じではない をご覧ください

ちなみに、(現行モデルの匠創は、ディンプルの形状が浅い菱形に改良されており、エッジが緩やかで汚れが溜まりにくいように改良されています)

● あわせて読みたい:包丁を洗わずに使い続けた結果(実例)

オールステンは、冬に冷たい

ツヴィリング
ツインフィン2

冬の朝など気温の低い状況では、冷たいステンレスハンドルは、握ることをためらわれます

だからといって緩めに握っていると、うっかり手を滑らせて、包丁を落とす可能性が高まります
足元に落とすと大怪我の恐れがあります。そういう意味でも、ハンドルが「冷たくない・滑りにくい」は、包丁の重要要素なのです

昔は、オールステンレス包丁が存在しませんでしたので、柄がステンレスというだけで、現代的な包丁のような気がして、それで購入してしまう方が多いようですが、ステンレスハンドルにすることで、本当に使いやすい包丁と成り得るのでしょうか?

自転車のハンドルやゴルフクラブのグリップが、金属むき出しのままであったとしたら、どのような使い心地になるか、想像してみると良いと思います

気温の低い時期は、ステンレスハンドルにお湯をかけて暖めてから包丁を握る調理人の方もおられます (プロの方でも、冷たいものは冷たいのです)

家庭でそのような面倒なことは、あまりしたくないものです

年中温暖な地域なら構いませんが、冬に台所に立つと寒いと感じる地域(もしくはそういう家屋)の場合は、避けたほうが無難です

肌荒れとオールステンは、相性が悪い

毎日の洗濯や皿洗いなどで、手指が荒れ気味の方は、オールステン包丁は避けた方がよいです

肌荒れした指は、乾燥してカサカサになるため、ただでさえ滑りやすいステンレスハンドルが、余計に滑りやすくなってしまうからです

また、主婦湿疹が酷く、指関節の皮膚が割れ気味の方は、包丁を強く握れませんので、余計にそうなります
しっかり握りこむと、皮膚が突っ張ってパックリと割れてしまうからです(わたしも経験があるので、よくわかります)

このような方には、軽い力で握っても、滑りにくくて安心して使える包丁がおすすめです
そう、手荒れ気味の方はオールステン包丁を避けた方が無難なのです

中高年の方も、オールステン包丁を避けた方が無難

人は、年齢が50歳に近づいてくると、指先が次第にカサカサしてくるものです
60歳を過ぎると、繊細だった指先の動きも次第に怪しくなり、「こんなに不器用だったっけ?」と、思うようになります

加齢は進むことはあっても、元に戻ることはありません

そういう意味では、指先を濡らさないと、スーパーのレジ袋が開けにくく感じるようになったら、オールステン包丁は卒業した方が無難です

握りやすくて滑りにくく、力をかけても不安感が無く、なおかつ、握った際に冷たく感じないというのは、包丁のハンドルに求められる重要な要素です 決してデザインや外観の方を優先させるべきものではありません

滑りにくいハンドルの包丁とは?

ヘンケルス
セーフグリップ
このように、高年齢の方はハンドルが滑りにくい包丁を使用し、安全面を最優先した方が良いです(周囲の家族も、少しは安心できるというものです)

具体的な例を挙げると、ヘンケルスのセーフグリップは、ハンドルがエラストマー樹脂でできており、わずかに弾力のあるムチムチした握り心地を持っています
フィット感も良く、濡れても滑りにくい点が評価できます

この包丁は高齢の親のために購入し、我が家で実際に使っていますが、低価格で扱いやすい包丁です
実際に使用した感想等は、こちらのページで解説しています

ビクトリノックス
スイスクラシック
ビクトリノックスのスイスクラシックも、滑りにくい優秀なハンドルになっています
樹脂製のハンドルなのですが、表面の質感がざらざらした仕上げになっており、一般的な積層強化木ハンドルよりも滑りにくくなっています

我が家で使っているのはペティナイフですが、使用した感想は、こちらのページで紹介しています

二本とも、どちらかというと低価格の包丁ですが、「切れ味が悪いのでは?」と疑念を持たれる場合は、こちらのページ(包丁の切れ味テスト)をご覧ください

高級オールステン包丁の折損問題について

オールステンレス包丁は、刃体と柄を溶接で繋げているため、溶着箇所周辺に部分的な脆弱性が発生しやすいです
本通し構造のように、ハンドルの中まで鋼材が通っている構造ではないので、構造的に強くないというのもあるのですが、溶接時の熱が曲者なのです

ステンレス鋼材を溶接するには1100度前後の温度が必要ですが、この1100度というのはステンレス鋼材に脆化が発生する温度でもあります

鋼材の自硬性に起因する歪みを生じやすく、歪が微細なひび割れを誘発し、徐々に広がって、ある日突然ポキンと折れてしまうことがあります(必ず起こるというわけではありません)


オールステンレス包丁の継ぎ目のない一体構造というのは、この構造的な脆弱性の上に成り立っています
このため、古くもないのに折れている包丁は、たいていこの手の高級オールステン包丁です
嘘だと思ったら、「包丁 折れる」で画像検索してみてください

包丁が折れる原因

包丁が折れるパターンは、いくつかに分類されます

長期使用に伴って中子が腐食して細くなり、柄の付け根から折れたり、ハンドルそのものが分解してしまう(ハガネの包丁に特有)

そもそもの設計や製造に問題があり、製品強度が不足気味で長期使用に耐えられない(メーカー品ではない安物包丁や、クーポンを集めてもらえる景品の包丁などに多い)

● セラミック包丁(包丁の材質としては靭性が低すぎるため、衝撃を与えるだけで折損する)

「包丁 折れる」で画像検索した場合、上記の3ケースを除外してみると、残っているのはたいてい高級オールステン包丁なのです

これを、高級オールステン包丁特有の構造的問題とすべきか、たまたま発生した製品不良(初期不良)と扱うべきかは、立場によって意見の分かれるところだとは思います(少なくとも製造メーカー側は「初期不良であり、たまたま発生した」という立場をとるでしょう

とはいえ、同様の鋼材を用いて本通しに仕立てた包丁では、同様の現象はまず発生しないというのも事実です
そのため、わたしとしては、これを「高級オールステン包丁特有の、構造的問題」だと捉えています

ちなみに、「包丁の刃体に、ステンレスハンドル材を直接溶接して製品化する」というのは、強度的な問題もあって、長年実現できませんでした
最も強度的に弱いくびれた部分を、溶接で接合してしまおうというのですから、無理もないのです
さらに言うと、溶接時の熱が切刃に伝わってしまうと、せっかくの焼入れが、意図せぬ『焼きなまし』になってしまい、本来得られるはずの硬度が鈍ってしまうという問題もありました

吉田金属はこれらの問題を技術的に解決できたとして、グローバル包丁を世に出したのですが、それが「難易度の高い技術の集合体」であることに変わりはありません
強度試験を経て、技術的に製品化できる目処が立ったというのと、実際に製造ラインに載せた時の歩留まりの数字、そして、ユーザーが実使用して問題が出るか否かは、全て別なのです
メーカーが想定し得ない「とんでもない使い方」をするユーザーというのは、一定の割合で必ず存在するからです

折れにくい本通しの刃体

一方で、構造的に堅牢とされている「本通し構造」は、鋼材が柄尻まで通っています。そのため溶接して刃体とハンドルを繋げる必要がありません
最初から「一体」なので、そのような問題が存在しないのです。このため強度や耐久性に富んでいます
(上の画像は、本通し構造の牛刀を、分解して刃体のみにした状態です)

この包丁については、こちらの 梅治作 牛刀(日本橋木屋) のページで解説しています

追記:オールステン包丁のモナカハンドル(中空ハンドル)について

調査を重ねた結果、モナカ構造のオールステン包丁であっても、ハンドル内部に中子を通した構造のモデルが徐々に増え始めていることが判明しました

これは、構造的に堅牢であるだけでなく、柄を付け根付近から充分に太くすることができ、「三角木馬ハンドル」にならないというメリットがあります

現在判明しているところでは…
現行型の関孫六 匠創および、関孫六 10000STは、ハンドルの中ほどまで中子が通っています 貝印に確認をとりましたので、間違いない情報です

また、日本未発売ではありますが、ヘンケルス MODERNISTというモデルは、「コンシールドタング構造」と公式に表示されています。「コンシールドタング」ですので、柄尻まで中子が通っているかどうかまでは判りませんが、最低でも中ほどまでは鋼材が通っているはずです

このように、高い開発力を持つ大手包丁メーカーは、オールステン包丁でも中子を通す構造を採用するようになってきました

金属モナカハンドルは、いってみれば「外骨格構造」ですが、中子を通したモナカハンドルの場合は、中子が「内骨格」として機能します
ブレードとハンドルを「溶接」で繋げる必要も無くなり、中子にハンドル部材を「ロウ付け」するだけで済みます

結果として、ハンドル付け根部分の強度が飛躍的に高まり、熱歪による折損問題も回避することが可能です(ロウ付けは母材を溶融させる必要がないため、溶接に比べ、より低温で部材を一体化させることが可能です。一体口金もロウ付けで取り付けられています)
また、細くて握りづらい「三角木馬ハンドル」から脱却することもできます

これは構造的なメリットが多く、オールステンレス包丁のハンドルとしては、「新世代タイプ」ということができます。(おそらく他の包丁メーカーも、順次この流れに乗ることでしょう)

オールステン包丁のデメリットを技術で回避 - 関孫六10000ST

関孫六10000ST
関孫六
10000ST

関孫六10000STは、高級タイプのオールステン包丁ではありますが、上記の脆弱性を構造的に回避することに成功している珍しい包丁です
コンポジット構造を採用することによって、刃物鋼への直接溶接を回避しており、溶接熱による脆化問題を解決しています

より具体的に説明しますと、切刃鋼材には「VG10」が使用されているのですが、ハンドルとの接合部(包丁の背側の鋼材)には、靭性と耐蝕性の高いステンレス鋼(SUS402J)が使用されています
このため、溶接熱による歪や微細なひびなどが、発生しにくくなっています(技ありです)

さらに言うと、この10000STには、ハンドル部分に凹みや溝などの加工がされていません
一見滑りそうに見えるハンドルですが、この部分にはビーズジョット加工が施されており、「梨地肌」で滑りにくくなっています

「ディンプル状の凹みを設けると、逆に手垢等が溜まりやすい」というデメリットを見事に解決したハンドルと言えるでしょう

ただ、見た目にはのっぺりとした何の特徴もないハンドルに見えますので、デザイン的に凡庸に見えてしまうのが悲しいところです(機能的には優れているのですが、仕方ありません)

なお、「オールステンのデメリットを、技術で回避」と書きましたが、回避できているのは、1.溶接部分の脆弱性、2.滑りやすさ、3.汚れの溜まりにくさの3点です。金属特有の冷たさについては如何ともし難いです

低価格のオールステン包丁は、逆に折れにくい

下村産業
ヴェルダン

このオールステンレス包丁の折損問題は、お手頃価格帯の製品では、ほとんど発生しません

具体的な商品名で言うと、下村産業の「ヴェルダン」、関孫六の「匠創」、ヘンケルスの「ミラノα」あたりでは、まず起こりません
これらの包丁は比較的低価格なため、中庸な硬度で靭性も充分な鋼材が採用されており、歪が「ひび」となりにくいのです(しなるものは、折れにくいという理屈です)

これらの折損問題は、吉田金属の「GLOBAL(グローバル)」や、ツヴィリングの「ツインフィン」など、硬度の高い高級オールステン包丁で、稀に発生する事例です
同じ硬度の包丁でも、一般的な「本通し構造」に仕立てれば、このような問題は発生しませんが、高硬度の刃物鋼材を溶接してオールステン包丁に仕立てると、問題が発生しやすいのです

柄のフィット感は、包丁の重要な要素の一つ

関孫六 匠創

関孫六
匠創

色々と書きましたが、ハンドルが手になじみ、滑らずにフィットするとというのは、包丁選びにおける非常に重要な要素です

刃の方は、きちんと研げはよく切れるのが普通です
大手メーカーの包丁で、よく切れないものなどありはしません(断言できるほどです)

「刃付はまあまあだけど、刃の厚みの抜き具合が今一つだな」という場合でも、研ぎに出して刃を薄く研ぎ抜いてもらえば、抜けの良い刃に後加工することもできるのです

ですがハンドルだけは、「購入後になんとかする」ということができません

オールステンレス包丁を全否定するものではありませんが、メリットとデメリットをよく理解した上で購入することをおすすめします

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