オールステンレス包丁は、滑る・冷たい・汚れが溜まる


おすすめ包丁・家庭用
オールステンレス包丁は、売れ筋の包丁です

ハンドルが金属製のためにモダンな印象があり、「今どきの包丁」という感じで高い人気を誇っています

とはいえ、ハンドルのフィット感、水濡れ時の滑りやすさ、低温時の手当たりの冷たさを考えると、積極的におすすめできるものではありません

このページでは、包丁マニア目線で、オールステンレス包丁のメリットとデメリットについて解説します
包丁メーカーと包丁販売業者の方々、わたしを恨まないで下さい。全部ホントのことですので

オールステンレス包丁は、滑る・冷たい・凹みに汚れがたまる

グローバル
牛刀



ツヴィリング
ツインフィン2

「オールステンレス包丁」は、グローバル製が有名です(左の画像)
オールステンレスの包丁は、継ぎ目がありませんので、衛生的に優れている印象を受けます
ですが、逆に言うとメリットはそれだけであり、握った際のフィット感が犠牲になっています。また、握った時に冷たさを感じやすく、水濡れ時に滑り易いという弱点もあります。

グローバルのステンレス包丁には、滑り対策としてディンプル加工が施されていますが、半球状のくぼみに汚れが溜りがちだという困った一面も持っています

毎日ブラシなどで凹み部分を確実に洗浄し、滅菌処理まで行う食品工場などで使う際にはメリットが生きますが、家庭用包丁としては、「ハンドルにコストのかかった包丁」でしかありません

包丁における重要な要素の一つは、ハンドル部分が手になじんで滑りにくく、確実にフィットして、なおかつ、握った手が冷たさを感じにくい。 と、いうことです
冬の朝など気温の低い状況では、冷たいステンレスハンドルは握ることをためらわれます
だからといって緩めに握っていると、うっかり手を滑らせて、包丁を落とす可能性が高くなります
足元に落とすと大怪我の恐れがあります。そういう意味でも、ハンドルが「冷たくない・滑りにくい」は、超重要なのです

昔は、オールステンレス包丁が存在しませんでしたので、柄がステンレスというだけで、現代的な包丁のような気がして、それで購入してしまう方が多いようですが、ステンレスハンドルにすることで、本当に使いやすい包丁と成り得るのでしょうか?

自転車のハンドルやゴルフクラブのグリップが、金属むき出しのままであったとしたら、どのような使い心地になるか、想像してみると良いと思います

指や手が荒れ気味の人は、避けた方がよい

毎日の洗濯や皿洗いなどで、手指が荒れ気味の方は、オールステン包丁は避けた方がよいです

皮膚の状態が悪いと、乾燥して滑りやすくなるため、滑りにくいハンドルの包丁の方が安心して使えるからです

また、主婦湿疹が酷く、指関節の皮膚が割れ気味の方は、包丁を強く握れませんので、余計にそうなります
しっかり握りこむと、皮膚が突っ張ってパックリと割れてしまうからです(わたしも経験があるので、よくわかります)

このような方には、軽い力で握っても、滑りにくくて安心して使える包丁がおすすめです
そう、手荒れ気味の方はオールステン包丁を避けた方が無難なのです

中高年の方も、オールステン包丁を避けた方が無難

人は、年齢が50歳に近づいてくると、指先が次第にカサカサしてくるものです
60歳を過ぎると、繊細だった指先の動きも次第に怪しくなり、「こんなに不器用だったっけ?」と、思うようになります

加齢は進むことはあっても、元に戻ることはありません

そういう意味では、指先を濡らさないと、スーパーのレジ袋が開けにくく感じるようになったら、オールステン包丁は卒業した方が無難でしょう

滑りにくいハンドルの包丁とは?

ヘンケルス
セーフグリップ
このように、高年齢の方はハンドルが滑りにくい包丁を使用し、安全面を最優先した方が良いです(周囲の家族も、少しは安心できるというものです)

具体的な例を挙げると、ヘンケルスのセーフグリップは、ハンドルがエラストマー樹脂でできており、わずかに弾力のあるムチムチした握り心地を持っています
フィット感も良く、濡れても滑りにくい点が評価できます

この包丁は高齢の親のために購入し、我が家で実際に使っていますが、低価格で扱いやすい包丁です
実際に使用した感想等は、こちらのページで解説しています

ビクトリノックス
スイスクラシック
ビクトリノックスのスイスクラシックも、滑りにくい優秀なハンドルになっています
樹脂製のハンドルなのですが、表面の質感がざらざらした仕上げになっており、一般的な積層強化木ハンドルよりも滑りにくくなっています

我が家で使っているのはペティナイフですが、使用した感想は、こちらのページで紹介しています

二本とも、どちらかというと低価格の包丁ですが、「切れ味が悪いのでは?」と疑念を持たれる場合は、こちらのページ(包丁の切れ味テスト)をご覧ください

高級オールステン包丁の折損問題について

オールステンレス包丁は、刃体と柄を溶接で繋げているため、溶着箇所周辺に部分的な脆弱性があります
本通し構造のように、ハンドルの中まで鋼材が通っている構造ではないので、構造的に強くないというのもあるのですが、溶接時の熱が曲者なのです

ステンレス鋼材を溶接するには1100度前後の温度が必要ですが、この1100度というのはステンレス鋼材に脆化が発生する温度でもあります

鋼材の自硬性に起因する歪みを生じやすく、歪が微細なひび割れを誘発し、徐々に広がって、ある日突然ポキンと折れてしまうことがあります(必ず起こるというわけではありません)


オールステンレス包丁の継ぎ目のない一体構造というのは、この構造的な脆弱性の上に成り立っています
このため、古くもないのに折れている包丁は、たいていこの手の高級オールステン包丁です
嘘だと思ったら、「包丁 折れる」で画像検索してみてください

包丁が折れる原因

包丁が折れるパターンは、いくつかに分類されます

長期使用に伴って中子が腐食して細くなり、柄の付け根から折れたり、ハンドルそのものが分解してしまう(ハガネの包丁に特有)

そもそもの設計や製造に問題があり、製品強度が不足気味で長期使用に耐えられない(メーカー品ではない安物包丁や、クーポンを集めてもらえる景品の包丁などに多い)

● セラミック包丁(包丁の材質としては靭性が低すぎるため、衝撃を与えるだけで折損する)

「包丁 折れる」で画像検索した場合、上記の3ケースを除外してみると、残っているのはたいてい高級オールステン包丁なのです

これを、高級オールステン包丁特有の構造的問題とすべきか、たまたま発生した製品不良(初期不良)と扱うべきかは、立場によって意見の分かれるところだとは思います(少なくとも製造メーカー側は「初期不良であり、たまたま発生した」という立場をとるでしょう

とはいえ、同様の鋼材を用いて本通しに仕立てた包丁では、同様の現象はまず発生しないというのも事実です
そのため、わたしとしては、これは「高級オールステン包丁特有の、構造的問題」だと捉えています

※ 関孫六10000STも、高級タイプのオールステン包丁ではありますが、上記の脆弱性を構造的に回避することに成功している珍しい包丁です
コンポジット構造によって、刃物鋼への直接溶接を回避しており、溶接熱による脆化問題を解決しています
また、峰側は靭性と耐蝕性の高いステンレス鋼ですので、歪による微細なひびなどは、発生しにくくなっています(技ありです)

低価格のオールステン包丁は、逆に折れにくい

下村産業
ヴェルダン

このオールステンレス包丁の折損問題は、お手頃価格帯の製品では、ほとんど発生しません

具体的な商品名で言うと、下村産業の「ヴェルダン」、関孫六の「匠創」、ヘンケルスの「ミラノα」あたりでは、まず起こりません
これらの包丁は比較的低価格なため、中庸な硬度で靭性も充分な鋼材が採用されており、歪が「ひび」となりにくいのです(しなるものは、折れにくいのです)

これらの折損問題は、吉田金属の「GLOBAL(グローバル)」や、ツヴィリングの「ツインフィン」など、硬度の高い高級オールステン包丁で、稀に発生する事例です
同じ硬度の包丁でも、一般的な「本通し構造」に仕立てれば、このような問題は発生しませんが、高硬度の刃物鋼材を溶接してオールステン包丁に仕立てると、問題が発生しやすいのです

柄のフィット感は、包丁の重要な要素の一つ

関孫六
匠創

色々と書きましたが、ハンドルが手になじみ、滑らずにフィットするとというのは、包丁選びにおける非常に重要な要素です

刃の方は、きちんと研げはよく切れるのが普通です
大手メーカーの包丁で、よく切れないものなどありはしません(断言できるほどです)

「刃付はまあまあだけど、刃の厚みの抜き具合が今一つだな」という場合でも、研ぎに出して刃を薄く研ぎ抜いてもらえば、抜けの良い刃に後加工することもできるのです

ですがハンドルだけは、「購入後になんとかする」ということができません

オールステンレス包丁を全否定するものではありませんが、メリットとデメリットをよく理解した上で購入することをおすすめします

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