ステンレス刃物鋼材の名称と硬度、特徴


包丁

ステンレス刃物鋼材の名称と硬度、特徴

SUS420J2は、ステンレス系刃物用鋼材としては価格が低廉で、耐蝕性も優秀ですが、(刃物鋼としては)炭素量が低いため硬度を高くできず、包丁としては刃持ち(エッジホールディング性能)が良くありません
焼き入れ後の硬度も、最大でHRC55あたりまでしか上がりません

そのため、刃物鋼ではあるのですが、大手メーカーの包丁にはあまり使用されていません
(使用されているとしたら、ローエンドクラスの包丁です)
包丁用鋼材としては柔らかめのため、まな板の上で叩くと、刃が潰れて切れ味が落ちやすいためです

低価格の果物ナイフなどにはよく使われています

 ■ 420J2鋼材のミニナイフを使用した感想(Kershaw Ace 1710)

12C27AUS-6などのステンレス鋼材ですと、HRC硬度は55~58あたりになり、価格的に手頃で、耐蝕性も良く、包丁として「使えるレベル」になります。ある意味「硬すぎなくて使いやすい」部分もありますが、別の見方をすると凡庸にも思えます
(以下のリンクは、ほぼ同等の硬度の鋼材を使用した刃物のインプレです)

 ■ X50CrMoV15鋼材(と推定される)ヘンケルスの小包丁を使った感想

 ■ X55CrMo14鋼材(と推定される)ヴィクトリノックスのペティナイフを使った感想

 ■ 420HCのガーバー製ナイフをアウトドアで3か月連続使用した感想

 ■ 12C27Cのナイフ(オピネル)をカスタムした例

ミソノ440
440AAUS-8あたりの鋼材になると、HRC硬度も58前後となり、価格、耐蝕性、切れ味のバランスが取れてきて、いわゆる「一般的に使い良い包丁」になります。すべてが及第点に達していますが、突出したところもないため、どこにも「最強」的な要素はありません
とはいえ、最もバランスが取れていると言うこともでき、(最強ではありませんが)「普通の家庭用包丁として優等生」です。最もおすすめできるかもしれません

左の包丁は、洋食調理人用の包丁メーカーとして高い人気を誇る、ミソノの「440」です
(440Aか、それとも440Cなのか、公表されていないので厳密には分かりません)

440CATS34銀三クラスになると、硬度も60近くまで持っていくことができ、切れ味的にはかなり高くはなるのですが、その分価格も高くなってしまい、痛し痒しです
(とはいえこのクラスになると、充分「いい包丁」ということができます)

VG10
藤次郎
DPコバルト割込
近年人気の「VG10」は、硬度も60前後出ますし、刃持ちが良いのは判るのですが、研ぎ上げ直後の「ここ一発の切れ味」で勝負するタイプではありません。
左に掲載しているのは、VG10鋼材を使用している、藤次郎のDPコバルト割込包丁です

大量の食材を処理する業務用包丁としては良いのですが、価格も高めですし、少なくとも「家庭用の最強」ではありません
(個人的な印象ですが、VG10はどちらかというとナイフに適正のある鋼材であり、包丁に使用する場合は、VG1の方が向いている気がします)
ちなみに、藤次郎の包丁名に「DP」と入っているのは「脱炭防止処理」のことで、割り込んだ芯材から、側面材に炭素の移動を防止する処置のことです(脱炭がおきると、炭素量が減って硬度が落ちるため)
同様に「コバルト」とあるのは、VG10がコバルト含有の鋼材であるからでしょう

 ■ V金10号(VG10)のペティナイフを使用した感想

関孫六
10000CL
コバルトスペシャルは、炭素鋼を彷彿とさせる高度な切れ味があり、個人的にも愛用していますが、鋼材としてマイナーであり、包丁に仕立てているメーカー自体が少なく、価格もそこそこします

左の商品「関孫六 10000CL」は、コバルトスペシャルを使用している数少ない包丁の一つです
またこれは実体験ですが、コバルトスペシャルの包丁を水滴の付いたまま放置しておいたら、先端に薄く錆が浮いていたことがあります(切れ味と耐蝕性はトレードオフになりやすいという好例です)

 ■ コバルトスペシャルの関孫六10000CLを使用した感想

ここでは具体的に鋼材名を挙げてみましたが、包丁の商品説明でそのものズバリの鋼材名が明記されていることは、意外に少ないです
クロムモリブデン鋼や、モリブデンバナジウム鋼など、「包括的な名称」で表示されていることがほとんどです(要は、刃物用ステンレス鋼材と言っているのと、なんら変わりません)

大手メーカーであるほどこの傾向が強いのですが、小規模メーカーの場合は逆のパターンが多く、積極的に鋼材名を表記している場合があります
ブランド力で真っ向勝負しても、太刀打ちできないため、「この鋼材で、この価格」というマーケティング戦略を取っているわけです。言い換えると、それ以外に勝負できるポイントが無いとも言えます

ちなみに同じ刃物でも、趣味性の高いナイフの場合は、具体的な鋼材名を明示することが普通となっており、その影響でしょうか、Gサカイなどのナイフメーカーが製造する包丁は、鋼材名まで明らかにされていることが多いようです

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