藤次郎のペティナイフを使ってみた


藤次郎 DPコバルト合金鋼割込 ペティナイフ 120mm


一言インプレ
  • 鋼材はV金10号をおごっており、その割にはお手頃価格(コスパが良い)
  • 安定感のある無難な作りで、質実剛健タイプ
  • 細かいアラも散見されるが、普通に使う分には問題ない
  • あくまでも中堅価格帯の実用的な製品、高級感あふれる仕上げを期待する場合は、高価格帯の製品を買うべし

藤次郎コバルト割込ペティナイフ

藤次郎 DPコバルト合金鋼割込 ペティナイフを使ってみた印象

刃付の精度

箱出し時の刃付は、しっかりしています。かなり精密な刃付がなされておりました

高額な砥石を何本も所有しているような「研ぎマニア」の人からすると、不満が出るかもしれませんが、家庭内で普通に使う分には、箱出しでそのまま充分使えるレベルだと思います

V金10号(VG10)なのにお手頃価格

V金10号は、武生特殊鋼材が開発した刃物用鋼材です
コバルトを1.3~1.8%含有していることが最大の特徴で、耐摩耗性と耐蝕性に優れており、硬度もHRCスケールで61-59程度あり、包丁やナイフなど、さまざまな刃物に採用されている優れた鋼材です

ZDP189(日立金属安来製作所)や、スーパーゴールド2(武生特殊鋼材)などの粉末ハイス系ほどではありませんが、刃物鋼材のなかでもお値段高めの材質で、『高級刃物用鋼材』といって差し支えない部類です
当然この鋼材で刃物を作ろうとすると、往々にしてお値段高めの製品に仕上がることが多いものです

にもかかわらず、この藤次郎のペティナイフは、(VG10を使っていることを考慮すると)なかなかのお手頃価格に仕上げているということができるでしょう

どちらかというと、仕上げにお金をかけるよりも、鋼材にお金をかけたという質実剛健な作りになっており、下に書いているように、実用上問題にならないていどの程度の仕上げの甘さも見て取れます
ですが、そんなことを気にするというのであれば、よりたくさんの金額を支払って、『仕上げ加工に存分にコストを掛けた高級包丁』(※1)を買えばよいのです
コストパフォーマンスという観点からすると、なかなか素晴らしいペティナイフではないかと思います

藤次郎の包丁は実用的なので、プロの料理人さんもよく使っていると言われますが、頷けるところです


藤次郎ペティナイフ

研ぎ味はやや硬めなものの、実用的な、いい刃が付きます

研いでみるとやや硬めの砥ぎ味で、なんとなく「鉄面皮」といった印象を受けましたが、それなりにいい刃が付きます

カエリの出方からも、しっかりと硬度が出ていることが伝わってきて、刃持ちも良好であろうことは容易に想像がつきます。(あまり粘る方ではなく、カチカチとした感じです)

ハガネのように「惚れ惚れするような刃が付く」といった方向性ではありませんが、これはこれで、非常に実用的な刃に仕上がります

ハガネはある意味、良くも悪くも芸術的な切れ味を持っていますが、この藤次郎のV金10号は、まさしく実務的で、業務用としてバックヤードで使うならば、最適な選択の一つではないかと思います
オープンキッチンで華々しく、というよりは、バックヤードで寡黙に仕事をこなすタフなやつ、という感じです

あまりに実用的すぎて、若干面白みに欠けるような気もしないではないですが、これで不満が出るようでしたら、「切れ味に『華』が無い」とかいうマニア的な視点になってきますので、その場合は、コバルトスペシャルを使った製品でも求めるか、ディープなハガネ(炭素鋼)の世界に入っていくしか無いかもしれません


敢えて難点を上げるならば、刃の鋼材がしっかりしている分だけ、「簡単に、さくっと刃が付く」というタイプではないというところです
研ぎにくいというほどではありませんが、決して研ぎやすいというわけでもありません

それなりの砥石を用意して、きちんと研ぐことのできる人には問題ありませんが、砥石使いが苦手な方は、もう少し研ぎやすいペティナイフを選択する方が良いかもしれません

刃体の整形に、若干の甘さが見て取れる

細かいことを言うと、刃の厚みに関して、「これは、う~む・・・」と首をかしげたくなるところが二箇所あります

まず一箇所目は、口金近辺の厚みが薄くなっているところです
「この部分、ちょっと削りすぎてる」という感じがしないでもありません

ペティナイフの刃の厚み

通常の刃は、口金付近が最も厚くなっており、刃先に行くに従って徐々に薄くなるものですが、なぜかこの藤次郎のペティナイフは、口金付近がくびれています
言い方を変えると、アゴより先の峰部にやたらと厚みがあるという感じです(ペティナイフとしては、ややぼってりしてる。‥といってもいいくらいです)

計測してみると、最も厚い部分は2mm(口金より1.5cmほど先の部分)で、くびれた部分は1.7mmとなっており、その差はわずか0.3mmしかありませんが、目視では結構目立ちます

これはおそらく、一体口金成型時の切削加工によるものでしょう
溶接ビード(溶接痕の盛り上がりのこと)を削り落として平滑にする際、グラインダーを深く当てすぎて、削りすぎているものと思われます
幸いなことに、元々の刃が厚めのため、くびれているといってもまだ充分な厚みが残っており、強度的には全く問題ありません

二点目は、峰近辺の削り込みです
おそらく、峰の角のバリを取るための研磨工程によるものでしょうが、峰近辺がかなり削り込まれており、結果的に、峰の少し下のあたりが妙に厚く感じられるのです

刃に『肩』があるみたいで、なんだか変な感じです
「妙なところが出っ張ってるな…、どうしてここが厚いの?」という感じです
これも、はっきり言ってしまうと、「削りすぎ」によるものだと思います


とはいえ、これらは細かい話ですので、さして気にする程のことではありません
商品価格を考慮すれば、「重箱の隅をつつきすぎ」なのです
「そんな細かいことを言うのであれば、定価1万円前後の、高額なペティナイフを買えばいいんだよ!」・・・なのです
包丁やペティナイフの微妙な刃の厚みなどは、全く気にしない人もたくさんおられます。ここで指摘したのは、普通の感覚であれば、あまり気付かない程度の細かい話です。決して藤次郎の包丁の作りが悪いわけではありません
ちなみに、高価格帯のペティナイフの場合は、このような細かいところまで抜かりなく仕上げているものが多いです
こういうところまできっちり精密に仕上げようとすると、やたらとコストがかかって製品価格が跳ね上がりますので、「コスパ重視の質実剛健」というスタンスの製品の場合は、これはこれで、価格を抑えながらも質を落とさないという、実にまっとうな仕上げだと思います
微細な刃の厚みまでこだわるような、包丁マニアの方の場合は、前述のように、高額なペティナイフを買えば良いのですし、もしくは自分で砥ぎ抜いて、好みの刃厚に仕立て上げれば良い。・・・そういうことなのです

追記:後日、刃を研ぎ抜いて、納得の行く厚みに修正し、ついでに鏡面仕上げにしました。
厚みを薄くしたおかげで、前述の「くびれ」も、ほぼわからない程度にまで修正できました
興味のある方は、ページ下部にリンクを設けていますので、そちらからご覧ください

柄はやや細身です

これも、やや気にしすぎかも知れませんが、柄が幾分細いように感じます
自分の手は指が長く、かなり大きい方なので余計にそう感じるのでしょう
逆に、手が小さめの女性にとっては、ちょうどよく感じるかもしれません
柄の横幅をノギスで計測してみると、12.6mmでした

ちなみに、貝印関孫六4000CLペティナイフの柄幅は13.8mmで、こちらと握り比べてみると、かなり太さが異なるように感じます、実際には1.2mmしか違わないのですが、手の感覚というのはずいぶんと小さな違いでも、敏感に感じ取るものだなと思います

柄の形状の好みは、人それぞれではありますが、手が大きいために細身の柄だと合わないという方は、刃物店で一度握ってみるなどして試したほうがよいかもしれません

120mmと150mm、どちらを選ぶか?

すでに三徳包丁か牛刀を持っていて、それに買い足して使う場合は、120mmのペティナイフが良いでしょう
一般的な三徳包丁のサイズは165mmですので、そこに150mmのペティナイフを買い足しても、あまりメリットが感じられません(似たようなサイズの包丁が増えるだけです)

逆に、一人暮らしなどの場合は、150mmのペティナイフが良いかもしれません
刃渡りが150mmあれば、ある程度の調理は可能ですし、小~中程度の食材ですと、これ一本でこなせますので使いでがあると思います

ペティナイフという形状に、どうしても慣れ親しみがない場合は、「小包丁」を使うという選択もありますが、ペティナイフ一本で何でもこなす方もおられますので、このあたりは人それぞれかもしれません




 ● 関連ページ1:藤次郎のペティナイフを鏡面に

 ● 関連ページ2:藤次郎のDPコバルト合金鋼は、本当にV金10号なのか?

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