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包丁を鏡面にする(傷だらけがピカピカに)

最終更新日: 作者:月寅次郎

藤次郎のペティナイフを鏡面仕上げに

鏡面仕上げ 包丁
鏡面仕上げにすると、包丁が文字通り鏡のようになります。映り込みがきれいです

このような仕上げは、「ミラーフィニッシュ」、もしくは「鏡面仕上げ」と言われます
手間とコストがかかる加工ですので、市販品ですと、かなりの高級品にしか施されません
言い方を変えると、安物の包丁でも鏡面に仕上げれば、高級品並みの見栄えがしますので、使っていて実に気持ちがよいです

鏡面仕上げの具体的な手順については、
DIYで包丁の鏡面仕上げ(方法・手順)
  …のページで、詳細を解説しています

注意 : 鏡面仕上げは、(DIYとしては)時間のかかる大変な作業です。安易に真似をすることは、あまりおすすめできません

包丁を鏡面にするためには、作業前は安全のために「刃引き」を行い、作業後は刃物として使えるように「刃付け」をする必要があります
この刃付けの際に、砥石の扱いに慣れていないと、鏡面に磨いた面に砥石を当てたりして、せっかくの仕上げ面が台無しになることもあります
そのため、包丁を鏡面に仕上げるには、それ相応の「研ぎの技術」も不可欠です

包丁を観賞用にする場合を除き、先に研ぎ方を練習して、確実な刃付けができるように技量を高めましょう
鏡面仕上げに挑戦するのは、「どのような包丁でも、安定して確実に研げるようになってから」でも、遅くはありません

峰とアゴをきれいに仕上げると、包丁の高級感がぐっと上がります

包丁 鏡面 峰

PROXXON
ミニルーター
No.28400

ヤナセ
フェルトバフセット

ヤナセ
青棒 鏡面仕上用
峰やアゴの断面も、角を丸めて滑らかに加工し、きれいに磨き込みました
細かい部分ではありますが、こういった細部を丁寧に仕上げると、包丁のグレードが上がって見え、使っていて実に気持ち良いです

安物の包丁は、角のバリを取っただけのものがほとんどで、峰の指当たりがキツイものです
高級品でも、少し手間をかけて丸みを付けている程度です

ここでは、なだらかなアールを付け、丹念に磨き込みましたので、一般市販品では出せない流麗な仕上がりを実現しています
口金周辺も合わせて磨き込みましたので、曲面部分にてらてらとした光沢が出ており、なかなかいい感じです

和包丁の平(ひら)を鏡面にする場合は、平面を磨くだけですので、ベルトサンダーで一気に加工することが出来ますが、峰やアゴなどの複雑な形状の部分を、アールを付けて磨き上げるのは、手作業で丁寧に磨くか、ミニルーターを使って繊細に作業するかしかありません、コスト的に合わないので、市販の包丁では決して真似のできない部分です(まさに、「自分だけの一本」になります)

ちなみに、口金周辺の磨き込みですが、口金は刃物用鋼材ではないので、刃の部分と同じように磨いていると失敗につながる場合があります
切削しやすい柔らかめのステンレスが使われているため、磨く力を弱めてあげないと、うっかり削り込みすぎたり、磨き傷が深めに入ったりしがちなのです

磨く対象となる鋼材の硬度を考慮して、それに合った磨きを行う必要があります

口金のみを鏡面に仕上げた例

口金 鏡面仕上げ

BlueMagic
メタルポリッシュ

上の画像は、木屋の牛刀をフルカスタムする際、口金の形状を整えて鏡面化したものです

この包丁は、「三枚合わせ」ではなく「一枚物」の包丁です
単層ですので、包丁の側面までしっかり硬度が出ています。刃渡りもそこそこあるため、さすがに鏡面にしようという気にはなりませんでした

ただ口金部分は手を入れる余地がありましたので、角を丸めて指あたりを良くし、鏡面仕上げにしています

興味のある方は、こちらの…
包丁のカスタム2 - 口金の鏡面仕上げ
 …のページをご覧ください

#240、#400、#800、#1500、#2000、#3000番の、7種類の番手のサンドペーパーを使い、それぞれの「磨き目」の状態を、一つ一つ撮影比較しています

番手を上げていくごとに、ペーパー目の跡が徐々に細かくなっていく様子がわかると思います

てらてらした光沢は、鏡面の愉しみのひとつ

鏡面仕上 包丁

Holtz
鏡面コンパウンド

鏡面に加工したといっても、使っているうちに微細な傷は入ってきます
そのため、このような極端にてらてらした光沢も、少しづつ曇ってはくるものですが、それでもまた磨き上げれば復活するのが良いところです(特に、一度鏡面に加工済みの場合は、下地出しまで戻って作業する必要がなく、比較的簡単な作業になります)

大抵の包丁は、長年使うとくたびれた感じが出てくるものですが、酷い腐食でも起こらない限り、いつでもピカピカの状態に戻せるというのは、「一生もの」という感じがして、実によいものです(一生物の包丁というだけでなく、鏡面仕上げの手法やノウハウ自体も、一旦身につけば、朽ちて無くならない「一生物」だと思います)

鏡面の状態が良いと、映り込み良く、光の反射もキレイです

包丁 鏡面仕上
たまたま「銘菓ひよこ」の袋があったので、映して撮影してみました
下地出しを適当にすませたので、マクロレベルでの平面度はさほどでもないのですが、それでもそこそこ映りこみが出ています

鏡面 包丁
光を反射させるとこんな感じです
根元付近が青っぽく映っていますが、これはパソコンのディスプレイが写り込んだものです(金属表面が赤色光を吸収するのでしょうか、液晶画面の白色光を反射させると、青白く映ります)

微細な凹凸は残っているのですが、完璧な鏡面にすると、逆に刃物としての重々しさが失われ、クロームメッキをかけたようなチープな質感に感じられることもあるため、包丁の鏡面仕上げとしては、この程度が実はいい塩梅なのではないかと、勝手に思ったりしています

鏡面加工前の状態 (傷だらけ)

包丁 傷
鏡面加工を施す前は、一面に傷が入った、酷いコンディションでした

包丁の扱い方を知らない人に刃物を預けると、こうなることもあるという、かなり酷い見本です
どんな扱いをすれば、こんなに酷い包丁になってしまうのかについては、リンク先にてご覧ください

購入時の状態 藤次郎 DPコバルト合金鋼 ペティナイフ

藤次郎 DPコバルト合金鋼割込

藤次郎
DPコバルト
合金鋼割込

ペティナイフ
上の画像は、鏡面にする少し前に撮影したもので、購入後に少し使用し、何度か研いだ後の状態です(包丁としては一般的な表面仕上げになっています)

この製品は、藤次郎の「旧ロゴ」のものですので、現行製品とは刃面の印字デザインが異なっています
(左の画像が現行商品です(登録の文字が消え新たなマークが加わっています)。実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)

このペティナイフは、刃の厚みがややぼってりしており、常々気になっていたため、今回磨きをかけるにあたって刃体を研ぎ抜いて、ブレードの厚みをやや薄めに仕上げています