ブライトホルン登山5(下山開始、登山時よりも慎重に!)

最終更新日: 作者:月寅次郎

ブライトホルン登山5(下山開始、登山時よりも慎重に!)

ブライトホルンを下山
たっぷりと頂上を楽しんだ後は、名残惜しくはありますが、ブライトホルンを下山します

アイゼンのベルト、ストックの締り具合などの装備確認を行ない、自分自身の状態をセルフチェックして、異常の兆候がないかを再確認し、頂上スペースを後にします

下りは緊張感が緩みがちですので、意図的に気を引きしめて降りていきます
ブライトホルンの下山
雪質の状態にもさほど変化は出ていませんが、登山者が往復を繰り返すたびにルートが徐々に掘れてきます

好ましい場合もあれば、そうでない場合もありますので、その場その場の雪面の具合と、アイゼンの効き具合を確かめながら、歩幅を小さめにしたり、かかとを蹴り込んだりして、足場と身体の安定を計ります

この日は好コンディションでしたので、さほど気を使わず、ザクザクと降りて行くことができました

ブライトホルンの登山ルート
眼下に登山者が見えてきました
下りですので、心肺的には楽ですが、調子に乗って負荷を上げると高山病を招きかねません
できるだけ心拍数を上げずにすむよう、一定のペースで着実に降りていきます

これだけの雄大な景色を見下ろしながら下山すると、ついつい景色に眼をやって足元を見ることを忘れてしまいがちです

酸素が薄めの環境に入って、すでに数時間が経過しており、ある程度の体力を使っています
こういう時は、顕著な高山病の症状が出ていなくても、集中力や判断力が鈍くなりがちです

一度、停まって写真を撮影した後に、歩き出しながらカメラをポケットに納めようとしている自分に気づきました

こういうのは、いけません
自分の集中力が散漫になってきている証拠です

その場所の危険度が高くない場合は、緊張感と集中力は、自分で意図的に維持する必要があります

危険な場所では、意識しなくても緊張して集中するものです
そういう場所では、むしろリラックスして、無駄な力が入らないように気をつけます(緊張で身体がガチガチになるとスリップしやすくなり、体力も無駄に消費します)

ガイド付きの登山であれば、ガイドさんが状況に応じて注意喚起をしてくれますが、単独登山では、自分の管理は自分でするしかありません

 ● 歩行時は歩行に集中、アイゼン、ピッケル、ストックは危険物!
 ● 歩きながらカメラを出したり、手袋の脱着、衣類ジッパーを操作しない(停止した状態で行う)
 ・・と、改めて、自分に言い聞かせました

ブライトホルン、登山者の様子
露出した岩の直下まで降りてきました
ふと前方を見ると、急斜面の雪面を直登しているパーティがいます

先程のナイフリッジ状になった稜線を行こうというのでしょうか?

見ているだけで身が引き締まる思いです
羨望の眼差して、小さくなる彼らを見送りました

ブライトホルンを下山する
取り付き点付近まで降りてきました
朝一の状態と比較して、ルートがだいぶ掘れてきているのが判ります

すり鉢状氷河の全体像は、この画像が最もよく判りますね
漏斗状になった氷河の口に近い部分には、クレバス(氷の割れ目)ができているのが判ります

画像上方の雪面には、スキーリフトの柱が並んでいるのが判ります

ブライトホルンの取り付き点まで下山

ブライトホルンの下山
取り付きに到着です

ただただ広く白い、大雪原です
雪の下は氷河が横たわっているはずですが、圧雪の深さも相当量ありますので、見た目はただの雪原にしか見えません

ブライトホルンを下山
少し歩を進めて振り返ってみました
ブライトホルンが小さくなり、カメラのフレームに収まるようになりました

ブライトホルンの南面は取り付き点からの標高差が300m少々しかなく、そういう意味では、むしろ「小さい山」とも言えるのですが、ルートが付いている様子と、そこに取り付いている登山者が豆粒のように見えることから、相対的に山が大きく感じられます

写真では、「山の大きさ」というのはなかなか伝わりにくいものですが、ブライトホルン南面は決して大きいとは言えないにもかかわらず、雄大さを感じさせる稀有な山でもあります

ブライトホルンとリスカム、カストル
かなり引き返してきました

後ろばかりを振り返りながら歩くのもなんなのですが、後ろ髪を引かれる思いというのは、このようなことを言うのでしょう
立ち止まっては、振り返りを繰り返しながら、歩を進めます

この画像では、ブライトホルンの主峰である西峰、中央峰、リスカム、ポルックス、カストルと、一連の山々がすべてフレームに収まっています
陽が高くなって順光になったため、登山前のアプローチ時とは、また少し印象が変わった感じで見えています

マッターホルンとクライン・マッターホルン
前を向くと、中央奥にマッターホルンが見えています
その左手前には、スタート・ゴール地点の、クライン・マッターホルンの姿があります

こうして重ねてみると形も似ていますし、遠近法のおかげで、大きさも同じように見えます
クライン(ミニ)とは、よく言ったものです

下山完了、ブライトホルンよ、さようなら

クライン・マッターホルン
スキーリフトの下をくぐり、クライン・マッターホルンにたどり着きました

クライン・マッターホルンに到着する少し手前から、高山病の症状が出はじめたようで、軽微な頭痛を感じるようになりました
程度は軽く、ほぼ下山も完了しており、問題視するようなものではありませんが、こういった兆候を注意深く観察することは重要です

4000m以上の環境に半日程度滞在し、なおかつ山に登って降りてきたのですから、この程度で済んでいるというのは、良い方なのかもしれません
このぐらいの標高になると、平坦な道を歩くだけで吐き気を催したり、動けなくなる人もいるものです

幸いなことに、トロッケナー・シュテークまでロープウェイを一駅降りると、頭痛はきれいに解消しました

クライン・マッターホルンのスキー場
スキー場まで戻ると、観光客やスキー客の喧騒に包まれます

スキーリフトの動くガタゴト音、スキー板が雪をかき分ける「シュゥー」という音、人々が楽しそうに会話する声
その様々な人工的な音が、「人のいる世界にまた戻ってきたのだ」ということを感じさせます


それにしても、アイゼンを付けた登山装備で、スキー場に佇んでいるというのは、なんだか不思議な気分です
なにはともあれ、無事に、下山完了しました

ブライトホルン
振り返ると、そこにブライトホルンがありました

山から降りてくると、下山し終えた際に、一抹の寂しさを覚えます

「今日の登山は、これでおしまい…」
後ろ髪をひかれるような気持ちで、アイゼンを外しました



さて、クライン・マッターホルンまで無事降りてくることができました
次のページでは、ツェルマットまでのロープウェイを、途中下車しながら降りていきます

トロッケナー・シュテーク(Trockener Steg)、シュヴァルツゼー(Schwarzsee)では、マッターホルンの間近で、思わぬ美しい景色に遭遇しました

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