ルパン三世カリオストロの城のモデルはどこか?(ページ2)
映画「ルパン三世 カリオストロの城」に登場する城のモデルは、どこなのでしょうか?
わたしが思うに、それはスイス・モントルー郊外にある、シヨン城ではないかと思うのです
1ページ目では、その根拠となる、
サヴォイア様式の城の外観、
高山に囲まれ、湖に浮かぶ城のロケーション、
地下牢(幽閉場所)の存在、
対岸に実在するローマ遺跡について解説しました
このページは、「カリオストロ城のモデルはシヨン城(仮説)」の2ページ目にあたり、主にその他の城の情報についてお伝えします
「カリオストロ城のモデルはシヨン城(仮説)」(2ページ目) 目次
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カリオストロ家の家紋を連想させる絵柄
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クラリスの脱出を阻んだ格子窓(みたいな窓)
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城の外壁に描かれたガルドローブ
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ドーム天井の部屋
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ルパンでも滑り落ちそうな、急角度の屋根
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地下からの脱出時に描かれた中庭?
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シヨン城、その他の風景
カリオストロ家の家紋を連想させる、印象的な絵柄
「城主の大広間」には歴史を感じさせるオーク材の柱があり、天井に伸びる四方の梁も、凝った造りの木造の支柱となっています
奥の壁には、印象的な文様が描かれているようですね
ちょっと拡大してみましょう
先ほどの壁の文様です
龍やペガサス、天使、鶏、鹿などさまざまな意匠が、当時のデザインで描かれています
映画に出てくる「時告ぐる高き山羊」や、カリオストロ家の家紋である「下半身が魚になった山羊」の紋章など、「そのものズバリ」はさすがにありませんが、当時を忍ばせる意匠と色使いが見て取れます
赤と金、紺と青の4色で描かれているようですが、青色は退色してかなり色褪せています
歴史を感じさせるこれらの意匠を眺めていると、「ルパン三世 カリオストロの城」の世界感が浮かんでくるようです
城内には「紋章の間」という部屋もあり、そこではヴェヴェイに派遣されたベルンの代官たちの紋章や、城主の紋章を見ることができます
わたしが訪問した際は、城の修繕との兼ね合いか、紋章の間に足を入れることはできませんでした(そのため、紋章の間の画像はありまえん。…残念)
歴史を感じさせる、大型の暖炉と柱
クラリスの脱出を阻んだ格子窓(みたいな窓)
城内の様々な場所に、印象的な格子窓があります
これは下層にある格子戸で、窓というよりは湖側に出る出入口のようです
簡単には突破(破壊)できないよう、頑丈な造りになっています
こちらは格子の入った窓です
基本的に窓は少なめで、開口面積も限られているため、暗い印象を受けます
北の幽閉塔に閉じ込められたクラリスが、窓のそばで一人椅子に座っているシーンがありますが、あの窓も斜め格子の窓でした
映画では、手榴弾をものともしない防弾ガラス製になっていましたが、こちらは普通のガラス製です
窓の左側に写っているのは暖炉です
右側のカーテン状の青い布は、湯桶の目隠し用の布になります
窓際には造りつけの椅子があるのですが、分厚い石の板でできており、実に冷たそうで、少々殺伐とした雰囲気を漂わせています
この二つの石の椅子を、一枚仕立てにして少し高さを上げれば、クラリスの脱出を阻んだ「格子の窓」に近い雰囲気になります
先ほど青い布に隠れていた沐浴用の桶が、こちらです
右奥に見えているのが、先ほどの暖炉です
城の外壁に描かれたガルドローブ(〇〇を落とすための穴)
「丸い穴の開いた不思議なベンチ」に見えますが、実はこれはトイレです
外側から見ると、壁面から箱型に張り出した(窓の無い)出窓のような形状で、専門的には「ガルドローブ」(Garderobe)と呼ばれます
穴をのぞき込むと、城の基部と湖の波打ち際が見えます(画像で白飛びしている部分が湖です)
湖に排泄物を落とす構造の、「ボットン便所」になっています
劇中では、城内に仕掛けられた「落とし穴」で、ルパンも銭形警部も地下に落とされますが、中世の城シヨン城の「落とし穴」は、排泄物用です
「人を排泄物扱いしやがって、ふーんだ」という駄洒落を効かせたセリフがありましたが、不思議な共通点ではあります
この穴には、鉄製の棒が一本嵌められていますが、これは外部からの侵入防止用と思われます
1204年のガイヤール城攻略では、ガルドローブに梯子を立て掛け、便所の穴から城内に侵入したという史実があります
それ以来、同様の侵入を防ぐため、便所の穴には侵入防止用の鉄格子が嵌めらるようになったという話が有名です 「狼の口 ヴォルフスムント」でも描かれています
外側から見ると、壁面から突き出た部分が、前述の「ガルドローブ」(トイレ)です
カリオストロの城でも、このガルドローブは描かれており、ルパンが「屋根ジャンプ」をした後、北の塔の張り出し櫓(タレット)に貼りついた際、背景の城壁に描かれています
伯爵の礼拝堂(ドーム天井の部屋)
この小部屋は、サヴォイア家専用の礼拝堂であり、他の部屋とは雰囲気がかなり異なります
アーチ状の梁で支えられたドーム型の天井が特徴的です
壁から天井にかけて描かれたフレスコ画と相まって、静謐な雰囲気を湛えています
元々は、もっと低く平坦な(普通の)天井だったそうなのですが、13世紀半ばの大がかりな改築によって、ドーム天井と張り出し窓のしつらえに整えられたということです
改築時期を考慮すると、サヴォイア家が己がために(小規模ながらも)立派な礼拝堂に仕立て直したというところでしょう
今ではこのように顔料が退色気味ですが、彩色が施された14世紀頃はさぞかし鮮やかな彩りを見せていたことでしょう(14世紀初頭に描かれたと推測されています)
映画において、クラリスが幽閉されていた北の塔は、ドーム形状の天井と幻想的な壁画が印象的でした
この礼拝堂は、壁が白い漆喰で塗られており、光も良く入るため明るい感じがしますが、もしも青みを帯びた色調であれば、クラリスの幽閉部屋(北の塔)に近い感じがしてきます
ルパンでも滑り落ちそうな、急角度の屋根
見て下さい、この屋根の傾斜のきついこと!
ルパンが城に潜入するシーンで、急傾斜の屋根を上る様子が描かれていますが、それを彷彿とさせるような傾斜角です
このえぐい角度が無ければ、胸躍るルパンの侵入シーンも生まれなかったかもしれません
この日は雲がかかっていましたが、本来この方角では、雪を被った3000m級の山々を望むことができ、映画の舞台となった、標高の高い山々に囲まれた雰囲気が味わえます
上の画像では、三差路状の「上回廊」の屋根が見て取れます
一般的な家屋敷ではありえないような複雑な構造で、侵入した外敵を多方向から迎撃するための、興味深い造りです
城の内部も複雑になっており、順路案内が無ければ、自分がどこにいるのか判らなくなるほどです
訪問当時は、ちょうどシヨン城の改修中であり、屋根瓦や壁石が新しいものに取り換えられ、本来の明るい色調に整えられていました
上回廊のイメージがつかめない場合は、漫画「狼の口 ヴォルフスムント」の第5巻、80ページ以降を読むと、イメージがつかめると思います
この漫画では「城壁上回廊」となっており、敵の侵入を防ぐため、〇〇を〇した場所になっています ネタばれ防止のため伏字にしています
ちなみに、「狼の口 ヴォルフスムント」に登場するのは、ハプスブルグ家がゴッタルド峠に設けた「関所」であり、城という扱いではありません
シヨン城は「城」という扱いですが、その果たした役割の中でも、「関所」という位置づけは大きなものを占めていました
シヨン城は、レマン湖と岸壁に挟まれた細い隘路に位置し、サヴォイア家の夏の居住地や敵対者の幽閉場所という機能も果たしましたが、イタリアやフランスへ向かう関所機能は大きなものがあり、通行料を徴収する役割も果たしていました
ハプスブルグ家とサヴォイア家という違いこそあれ、それぞれの地域の支配勢力が、地域の要衝に難攻不落な関所を設けることで、人の行き来と物資流通を掌握し、地域支配をより頑強なものにしたという意味では、かなり似通った側面を持っています
複雑に入り組んだ城の構造
屋根はスレートで葺かれています
映画では、スレート瓦の色が青色で先端が丸く加工されていない四角い形状の瓦となっています
屋根の造りでいうと、トゥーン城も似た雰囲気を持っている
屋根の造りだけで言えば、トゥーン城もカリオストロ城に近い雰囲気を持っています
トゥーン城 Wiki英語版より画像を引用
トゥーン城は、12世紀に建造されたスイス・ベルン地方の城です
屋根の傾斜角や、わずかに末広がりの円錐形状の尖塔屋根など、似かよった特徴がそこかしこに垣間見えます
特に、4つの張り出し櫓(タレット)を設けた天守については、(この年代の城の造りは、どれも似通っているということを抜きにしても)クラリスが幽閉された北の塔の雰囲気に似た印象です
地下からの脱出時に描かれた中庭?
シヨン城には中庭がいくつかあるのですが、高い場所から俯瞰的に見た中庭は、例のシーンを連想させます
そう、地下に閉じ込められていたルパンと銭形警部が、礼拝堂を通って地上の中庭に躍り出たシーンです
オートジャイロ発着場へ続く階段を上がる手前の、一瞬だけ写る光景です
映画の中では、クラリスと峰不二子が、北側の塔から見下ろす目線で描かれています
中庭の奥方向です
現実のシヨン城では、この場所に追い込まれると、進退窮まってしまうかもしれません
(そういうように造られています)
別の場所の中庭です(確か、正門から入ってすぐの場所だと記憶しています)
右手に石造りの階段が見えますが、カリオストロの城でも印象的な階段のシーンもありました
グスタフ衛視長率いる衛視達と、銭形警部の精鋭部隊がもみあいになるシーンです
シヨン城、その他の風景
天蓋付きのベッドのある部屋です。サイズからして子供用と思われます
壁の漆喰には、フレスコ画と思われる、鳥と果物と紐の絵柄が描きこまれており、居住空間であることを感じさせます
右側に見切れているのは、暖房用の熱気通し用設備です(階下で薪を焚き、暖まった空気を通すための煙突のような構造になっています
城の窓から、外を見たところです
北側を除く3方は湖のため、正門をがっちり固められてしまうと、外側からの侵入が難しく、内側からの脱出もままなりません
シヨン城から西方向の眺め
レマン湖とモントルーの街並みがきれいです
モントルーはジャズフェスティバルが世界的に有名ですが、フレディ・マーキュリーが愛した街としても知られており、現地のスタジオを買い取り7枚のアルバムを作りました
モントルーの少し奥の街「ブベイ」には、かのチャップリンが暮らした邸宅も残っており、世界的な高級住宅地でもあります
また、モントルーからローザンヌにかけてのブドウ畑は、「ラヴォー地区の葡萄畑」として世界遺産に登録されており、風光明媚なエリアでもあります
「影」が潜んでいそうな武器庫
武器庫には様々な形状のハルバードが陳列されていました
ハルバードは、槍に斧とかぎ爪を付けたような形状の長柄武器で、1315年のモルガルテンの戦いで戦術革命を起こしたとも言われています
この特徴的な武器の導入により、軽装歩兵でも重装甲の騎兵と渡り合うことができるようになり、スイス建国につながるさまざまな戦で活用されました
迷路のような場内、壁面から張り出して作られた狭い通路
大砲も展示されていました
大砲の向こう側にある大きな銃眼は、砲塔の高さとぴったりですが、ここから砲塔を出して街道を見据えたのかもしれません
カリオストロ城のモデルについては、いくつかの説がネット上でまことしやかにささやかれています
列挙すると…
1.イタリアのサン・レーオ
2.フランスのモン・サン=ミッシェル
3.リヒテンシュタイン公国のファドゥーツ城
4.ドイツのリヒテンシュタイン城
…と、なるのですが、果たして信憑性はあるのでしょうか?
次のページでは、これらの説はガセなのか本当なのか、詳しく検証してきたいと思います
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