雨天時、低温時の結露は、ツェルトの宿命か?
ツェルトは軽量であることが最大のメリットですが、ダブルウォールのテントとは異なり、構造的に結露しやすいです(そういうものだと思って使いましょう)
雨天時などで低温と高湿度が重なると、特に結露しやすくなり、ツェルトのデメリットが出やすくなります
運搬時に楽をするなら軽量のツェルト、居住時の快適性と堅牢さを求めるならダブルウォールのテントです(両方追い求めて、防水透湿性の生地を使ったシングルウォールテントを求めると、どちらの性能も、「そこそこ」で終わったりします
ここでは
実例として、スイスのアローラで雨に振られ、ツェルトで連泊した事例を挙げてみましょう
使用したツェルトは、「
ファイントラック ツエルト2ロング」です
ツェルト使用時の状況
二泊三日の行程を、山小屋を泊まり継いで歩き切ったのち、標高1500mあたりの下界に降りてきました
季節は7月なのですが、そこは緯度の高いスイスでのこと、下山時に霰(あられ)混じりの雨となり、低い気温のなか、黙々と我慢の下山となりました
また、その後も雨天が数日続くとの予報であり、キャンプ場での雨天停滞を余儀なくされました
ファイントラック
ツェルト2ロング
アライテント
スーパーライト
ツェルト1
お世辞にも快適とは言えない雨天時のツェルト内
上の画像のように、
雨が降って生地が水分を含むと、設営時にはピンと張っていたはずのツェルトも、徐々にたるんできてしまいます
「
ツェルト2ロング」は、ツェルトとしては居住性が良い方なのですが、こういう悪条件時は、やはりフライシート付きのダブルウォールのテント(いわゆる普通のテント)に、太刀打ちできません
モンベルのU.L.ドームシェルターという、ビバーク用のシングルウォールテントでも、同様の風雨停滞をしたことがありますが、「雨天時はやはり自立式テントがいいなぁ」と思います(この時の様子については後述)
U.L.ドームシェルターは生地に透湿性がなく、雨天時には結露で内側が濡れますが、自立式ドーム型ですので、生地もたるみにくく、風にも強いので、天候が荒れた時にも、そこそこ安心して寝ていられます
ツェルトにはツェルトの良いところがあるのですが、こういった悪条件での野営では、ノーマルテントの優位性をひしひしと感じます
雨が弱まったときに撮った一枚
ツェルトの結露 - 防水透湿の限界
ミレー
防水透湿ジャケット
TYPHON 50000
ミズノ
ベルグテックEX
ストームセイバー
ツェルトは、一般的なテントのようにダブルウォール構造ではありませんので、低気温と雨天が重なると、ツェルトの内側は高確率で結露します
この
ツェルト2ロングは、防水透湿生地を使用していますので、いくぶん結露は発生しにくいですが、あくまでも
「完全防水生地に比較して、結露しにくい」だけであって、完全に結露が防げるわけではありません
ゴアテックス等の防水透湿レインウエアも同様です
いくら透湿能力が優れていても、外気湿度が100%に近い状態だと、ウエア内外の湿度差による蒸散機能が著しく低下します
また、生地表面の撥水力が低下し、生地表面を水膜が覆ってしまうと、透湿能力は事実上のゼロになります
こうなると、ゴム引きカッパと同じように蒸れ蒸れになります
雨天にともなった高湿度と外気温の低さが重なると、ツェルト内の水分が飽和してしまい、結露を起こしてツェルトの内側が濡れてしまいます
中に人が入ることで、呼気による水蒸気の放出と、体温によるツェルト内温度の上昇、さらにベンチレーションの全閉などが重なると、特に顕著です
いくら高性能の透湿生地であっても、ワンウォール構造の限界というものがあるのです
結露は嫌、
雨が降っても快適に過ごしたいという方は、最初から一般的なダブルウォールのテントを使用しましょう
ツェルトというシンプルなテントは、軽量で携帯性に優れていますが、その分快適性を犠牲にしています。キャンプや山登りに快適性を求める方は、サイズにゆとりのあるダブルウォールテントを使えばよいのです
このようにツェルトの内側が濡れてしまうと、自立ドーム型ではないツェルトは、快適性が低下します
特にツェルトの場合は、軽さを優先して、あまり大きくないサイズを購入する方が多いでしょうから、
シュラフカバーや、防水透湿バッグの併用をおすすめします
ツェルトの室内空間は雨天時にどうなるか?
身体を横にして就寝しているときには、ツェルトでもさほど不便を感じません
ですが、身体を起こしてツェルト内で調理をしている時などは、天井付近の空間スペースが狭いため、風で生地が押されたときや、不意に身体を動かしてしまったときなどに、濡れたテントウォールが額や首筋に「ぺとっ」と付いたりして不快に感じることがあります
また、ドーム状のテントとは異なり、
ツェルトは天井中央部がわずかに低くなりがちです
ガイロープのテンションを上げて、ツエルトをピンと張っても限界があるというものです
そのため、
雨足がかなり強まった時などは、結露した水滴がそこに集まってきて、雫となって落ちることもありました
結露したツェルト内で、快適に過ごすには?
NANGA
オーロラライト
600DX
イスカ
ウェザーテック
インナーバッグ
結露したテントウォールに、寝袋や衣類が接触すると、当然ながら濡れてしまいます
濡れると保温性が低下し、快適性が落ちますので、とにかく濡らさないことが重要です
寝袋は防水性のあるシュラフカバーに入れるか、最初から
防水生地を使用したナンガのオーロラシリーズなどを使う必要があります(左の画像のような寝袋)
でなければ、ツェルトの真ん中で寝る必要がありますし、寝ていてもテントウォールに触れないよう気を使います
同じ画像をもう一度出しますが、上の画像でツェルトの右側に写っている青色のものは、わたしの寝袋です(中に体を入れた状態で、上半身を起こして撮影しています)
このように、防水性の担保が取れていると、テントウォールに接していてもシュラフが濡れません。そのためかなりの快適性を保つことができます
「シュラフが濡れてしまうかもしれない」という心理的負担から開放されるというのは、メンタル的にも非常に楽になるのです
万一の非常時には、衣類や寝袋の濡れ(浸水)が生死を分けます
ここでは、右側で寝て、左側に物を置き、作業スペースにしていますが、シュラフカバーが無ければ、中央にマットを置いて、そこで寝る以外に選択肢がなく、スペース効率が悪くなってしまいます
ちなみに、画像に映っているシュラフカバーは、モンベル製の「
ブリーズドライテック U.L.スリーピングバッグカバー」です(シュラフカバーとしては、かなり軽量で、透湿性が優れている割には、価格も安く、おすすめです)
ゴアテックスではありませんが、ゴアテックスは生地の重量が重く、価格も高く、シュラフカバーとしては耐水圧の面で過剰性能です。そのためあまりおすすめできません
シュラフカバーや、衣類を入れるための「防水スタッフバッグ」には、過剰な耐水圧性能は必要ありません。重量が重くなるだけです。透湿性も悪くなります(これだけで200g程度軽量化できます)
シュラフカバーには、それほど耐水圧は求められませんので、防水透湿フィルムも薄く軽いもので充分です。登山用品メーカーオリジナルの防水透湿生地の方が軽量で良いのです
雨天強風時には、ツェルト内で雨が降る
モンベル
U.L.ドームシェルター
ツェルトの内側が結露で濡れた状態で、テントウォールが強風ではためくと、結露した水滴が飛び散り、ツェルトの中で雨が降ります
この「
結露に伴う、強風時テント内降雨」については、
モンベルのU.L.ドームシェルターでも同様の経験があります
(U.L.ドームシェルターは、ワンウォール構造で透湿性のない防水生地でできています)
槍ヶ岳山荘のすぐ横、標高3000m程度の稜線上にあるテン場で、風雨で丸一日テント内にこもって停滞した時のことでした。
(雨天時に大キレットを超えるのは避けたかったので、予定を延ばして連泊したのです)
このように、これはツェルト特有の現象というよりも、
テント内が全面結露した状態で、叩きつけるような強風が吹いたら、こうなるものだと思って下さい(ツェルトの特徴というよりも、ワンウォールテントの宿命です。ダブルウォールテントでもなる時はなります)
U.L.ドームシェルターは、あくまでもシェルターという位置づけのため、居住性が良いとは言えませんが、それでもツエルトよりは快適ですし、シングルウォール構造ですので風を受けてはらむ箇所が無く、高さも低いため風にも強いです
少々吹いても(おそらく)ポールは折れないし、生地も裂けない(だろう)という安心感もあります。おかげで雨風にガンガン叩かれましたが気持ち的には楽でした
個人的には、3000m前後の稜線上ではツエルトを張る気にはなれません。風を受ける面積が大きいので、凧になって飛んでいきそうな気がします。
(やむを得ず緊急ビバークする場合は仕方ありませんが)
結露のしやすさでテント選びを迷う人がいますが、気象条件次第では、ダフルウォールでも結露する時はするし、しない時はシングルウォールでもしないのです
テントの中で雪が降るケースはこちら です
ツェルトでキャンプも、楽しいよ(アローラのキャンプ場にて)
キャンプ場から少し歩くと、この景色
設備も整っており、きれいなキャンプ場です
買い込んだ食料
天気が良ければ、ツェルトでも快適にキャンプできます
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