『 絨毯(じゅうたん) の虫 』


世界を 大海よりも広大な絨毯にたとえると

わたしたち ひとりひとりは その絨毯の上をはいずっている
「けし粒よりも小さな虫」 のようなものだ

それぞれの虫は あまりにも小さすぎるがために 絨毯全体の壮大なデザインを
自分の目に収めることができない


けれども 中には洞察力に飛んだ虫もいて その虫は…

自分自身が 単に 「絨毯に取り付いた虫」 ではなくて
自分の姿そのものが 絨毯全体のデザインの 「一部」 として組み込まれており
自分自身が 実は 「絨毯の一部」 となっていることに
 ・・・いつか 気付く

そして

絨毯全体における 基調デザインの意匠が
自分のからだの模様と同じであるということにも
 ・・・いつか 気付く


そうして虫は 限られた視野の中には決して納めることのできない
「絨毯全体の壮大なデザイン」 を
自分自身を覗き込むことによって 最終的に知ることになる


絨毯から離れ 遠くから眺めることによって
「絨毯全体のデザイン」 を把握しようとする虫もいる

それはそれで 「デザイン全体の中の小さな意匠」 を発見したりして 役に立つこともあるけれど
下手をすると 絨毯全体を視野の中に収めようとするあまり 絨毯そのものから離れすぎて わけがわからなくなることもある


だから 「絨毯全体の壮大なデザイン」 を感じたいというのであれば
「絨毯」 を見ようとするのではなく
自分自身を覗き込めばよい
自分自身を抱き取って 感じればよい

ほかならぬ この自分自身が
「絨毯の一部」 であり 「縮図」 であり
「最も小さな絨毯」 であるのだから


これが
世界を 宇宙を 森羅万象を
この世を あの世を すべてを 本質的に知覚するための
もっとも早くて もっとも確実で もっとも実証された方法だ



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