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バッハ:無伴奏チェロ組曲 - アンナー・ビルスマ


バッハ:無伴奏チェロ組曲 - アンナー・ビルスマ




 [ 一 言 寸 評 ]

世界が終わる"時"には
これを 聴いていたい


★★★★★ 楽曲名作度
★★★★★ 音が綺麗度
★★★★☆ 睡眠誘導度
★★★★☆    癒し度
★★★☆☆ オーディオ興奮度

アンナー・ビルスマによる、バッハ無伴奏チェロ組曲(全曲) 2回目の録音です。


チェリストにとって、バッハの無伴奏チェロを録音するということは
 登山家にとっての エベレスト登頂
 ヨットならば 単独無寄航世界一周
・・・みたいなものです。

 ・・・特別です
 そして 聖域です

大概のチェリストは、録音に際し
白装束に身を包み、白い"さらし"を巻き込み、脇差を携え
「失敗したら 腹を切る!」・・・みたいな覚悟で録音しています。

覚悟を決めて、息も止めて、一気に弾ききる・・・ような感じが
音からも、伝わってきます。

ですが、アンナー・ビルスマは、どうやら一般的なチェリストとは異なるようで

その、紡ぎだされる音からは
深い広葉樹の森の中で、木々の放つ香りに包まれ
静かに呼吸を保ちながら、ふくよかに弾いている感じがいたします。
長調の曲では、柔らかい毛布に包まれるような、暖かい感じがいたします

組曲1番から5番までは、スミソニアン博物館のコレクションである、ストラディバリ製のチェロ"Servais"を使用しており、深々とした響きは、この恩恵のためでもありますが

第6番組曲に入ると、音域の都合の為に、使用する楽器がチェロ・ピッコロに変り、それまでとはうって変わって、高域成分がとても瑞々しくなります。
この部分のチェロの倍音は、それまでとは また異なった味わいで
あたかも、こんこんと湧き出る岩清水 を、思わせます。

組曲の1番から5番で、白い霧と緑の苔に包まれた、深い森を散策し
6番にたどり着いたら、湧き出る透明な清水で、喉を潤す。
・・・そんな、イメージを思い起こさせる一枚です。


 [ オーディオファンは ]

システムの入れ替えや、ケーブルのテストなどで、さまざまなCDをかけ回し
細かな音の違いを聞き分けようと、何時間も耳に神経を集中させ・・・あげくに

「 あー・・・ つっかれた なぁー 」 と、感じたときに
このCDを、おもむろに取り出すと良いでしょう。

チェロのふくよかな響きが、気持ちよくあなたを包み
神経のとがった部分を、優しく癒してくれます。

「緩め」のシステムでも、充分に楽しめるCDではありますし、BGM的に聞くこともできます。
ですが、第6組曲の瑞々しい倍音だけは、トランジェントの良い、ハイスピードなシステムで、愉しんでいただきたいものです。

「チェロって やっぱりいい楽器だなー」 と、改めて感じることができますよ。





 [ アニメ・漫画ファンのための バッハ無伴奏チェロ組曲 ]
( 脱線&蛇足 書き込み )

バッハの無伴奏チェロは、アニメなどでも時折使用されています。

新世紀エヴァンゲリオンの主人公、碇シンジ君が練習しているチェロ曲がこれです。
最近では、アニメ「BLOOD+」で、美形キャラの「ハジ」が弾いています。
知っている人から云わせれば
「無伴奏チェロ組曲を、そんなに簡単に弾けるはずがないっ!」
・・・と、ツッコミを入れたくなるのですが、そこはじっと我慢しましょう。

包帯を巻いた状態の「翼手の手」で、弾けるのか?
・・・とか言うのも、やめておきましょう。

あれは、作品に、"芸術性"と"深み"を、加えたい時に使う
"ふりかけ" みたいなものですから

同じ無伴奏でも、"バッハ""コダーイ"
シーンごとに使い分けて挿入したなら
"ふりかけ"から"料理"に昇格して、喝采ものなのですが
残念ながら、そこまでには至っていないようです。

「コダーイの無伴奏」 の冒頭の部分などは
衝撃的なシーンなどで映像にかぶせると
非常に 効果的だと思うのですが・・・


ちなみに、クラシックを取り上げた有名漫画 「のだめカンタービレ」では
残念ながら、今のところ、取り上げられていません。
"のだめ"がピアニスト、"千秋"が指揮者という設定ですから
このままストーリーが進むと、ずっと出てこないかもしれません。

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