焼きリンゴ(お手軽版と本格版)

最終更新日: 作者:月寅次郎

焼きりんご

「焼きリンゴ」は、フライパンで焼くだけの、簡単熱々デザートです

秋が深まって、金木犀の香る季節になると、紅玉が店頭に並びだします。
紅玉が出回るのは、一年のうちでも限られた時期だけなので、見かけたらすかさず買って作りましょう。
(来週にしようとか考えているうちに、すぐに季節が終わります)

このページでは、簡単に作れる「焼きリンゴ(お手軽版)」と、
本格的な、「カラメルを絡めて食べる、肉厚タイプの焼きりんご
そして、「キャンプで作る焼きリンゴ」の、3つのレシピを紹介しています。

まずはお手軽レシピを試してみて下さい。
材料はリンゴとバターと砂糖だけですし、フライパンで焼くだけですので「簡単」でもあるのですが、どう『火を通す』かで、食感や味わいが大きく変わる、奥の深いメニューでもあります。
(キャンプで作る場合は、家で何度か練習してみて下さいね。)

焼きリンゴを作っていると、「秋が終わって、冬が来るなぁ」という感じがして、風情があって良いメニューです。

焼きりんご

焼きリンゴを美味しく作るコツについては、このページの末尾においしく作るポイントとして記載しています。

焼きりんご・お手軽版

焼きりんご
まずは作りやすい、「お手軽版 焼きリンゴ」から紹介しましょう

火が通りやすいように、リンゴを「1/8 x 2カット」にカットして作るタイプです。

「バターの海」とか「カラメル化させる」とか、面倒くさいことは言いません。(そういうのは、本格レシピ版の方で解説しています)

とりあえず、シンプルに火を通すだけの「簡単・お手がる版」のレシピです。

焼きりんごのレシピ(お手軽版)

レシピ(リンゴ1個の場合)
  • 紅玉 1個(1/8カット x 2)
  • バター 10g
  • 砂糖 大さじ1.5
焼きりんご
リンゴを横から半分にカットします

焼きりんご
それぞれに4回刃を入れて、「1/8カット x 2」にします。(16等分)

この割り方ですと、肉厚のゴロッとした質感を保ちながらも、そこそこ火が通りやすいです。
また、フライパンの底面積を効率良く活かせますので、普通サイズのフライパンでも作りやすいです。

横割りを入れず、薄く1/21にスライスするやり方ですと、表面積が増えるため火は通りやすくなりますが、大きめのフライパンでなければ、一度に焼き目が入れられません(フライパンに入れるとリンゴ同士が重なりあってしまい、フライパン底面に直接接触しないリンゴが出やすいためです)

焼きりんご
皮を残して芯を取ります

焼きりんご
火力を中弱火にしてバターを投入。バターが溶けたらリンゴをドカドカ投入します

焼きりんご
加熱開始直後の状態です。この段階では、艶々としたリンゴの皮目がとてもきれいです。

リンゴの色味や質感は、火が通っていくに従って変わっていきます。
これ以降の画像を参考にして、どのような質感に変化していくのか、よく確認してみて下さい。
(火の通り具合の参考になります)

焼きりんご
リンゴの表面にバターが馴染んだら、砂糖を投入します

砂糖を入れるタイミングは、あまり厳密に考える必要はありません。
火入れ開始時からリンゴの皮がしなっとする迄の間であれば、どのタイミングで投入しても大きな違いは出ません。
「手が空いたら入れる」くらいに考えておいても良いと思います。

焼きりんご
時々リンゴをひっくり返しながら、「リンゴ炒め」でも作るようなイメージで、全体的に均等に火が入るように熱を加えます

徐々に、皮目がしなっとしてきました。

焼きりんご
時々箸で押して、火の通り具合を確かめましょう
はい、この通り。「ふにょっ」とした質感に変わりました。

いい感じに、中まで火が通ってきましたね。
もう少しです。

焼きりんご
裏返してみましょう。焦げ目は、まだあまり付いていません。

この状態で、火は通り具合は8割程度といったところでしょうか。
残り2割で焦げ目を入れていきましょう。

焼きりんご
「焼き目」を付ける面を下にして、動かさずに火を入れます

焼き目を入れる工程では、動かさない事がポイントです。
焼きリンゴの焼き目は砂糖のカラメルですので、フライパンを揺するなどして動かすと、カラメルが溶けて焦げ目が薄くなります。

リンゴに腰が無くなって、「ふにゃぁ~」となってきました。
箸で押さなくても、自重で潰れている感じです。

どのくらいの焦げがついているのか、自信がない場合は、箸でつまんでリンゴをめくって、焦げ具合を確認してみて下さい。

焼きりんご
いい感じの焦げ目が付いてきましたね

上の方は少し焦げすぎた感もありますが、これはこれで一つのアクセント。そんなに悪くないと思います。(完成です)

焼きりんご
お好みでシナモンをかけて、熱々のうちに頂きましょう。


焼きリンゴ(本格版、カラメルを絡めて食べる、肉厚タイプ)

焼きりんご
本格版焼きリンゴのレシピです

作りやすさよりも美味しさを優先させるために、リンゴは肉厚にカット。
バターもたっぷり使い、芳醇な「りんごバターの香り」を立たせます。
砂糖はカラメル化させ、リンゴに絡めて頂きます。

リンゴの酸味とバターの香り、さらにカラメルと、3つのハーモニーが生み出す極上ホットデザートです。

焼きりんご(本格版)のレシピ

レシピ(リンゴ1個の場合)
  • 紅玉 1個
  • バター 18g(16~20g)
  • 砂糖 大さじ2
材料は3つでこれだけですが、お手軽版に比べると、バターと砂糖の量が少し増えています。
ブランデーもシナモンも使いません(シンプル イズ ベストです)

材料を準備

前半部分は画像が無くてスミマセン

鉄のフライパンを油返しして、一旦油をよく拭き取ります。
(スキレットやダッチオーブンなどでもOKです)

よく洗ったりんごを、1/6にカットします
(芯を取り、皮は剥かずにそのままで)

火力を中弱火にして、材料をフライパンに投入します
基本は、バター、りんご、砂糖の順で入れますが、油返しを済ませているので、バターが溶けるのを待つ必要はありません。
ドカドカ入れて良いです。バターも塊のまま入れて構いません。砂糖も一度に全量入れて良いです。
(バターがリンゴに馴染んでから砂糖を入れるのがベストでしょうが、あまり変わらないので、気にせず一度に入れて構いません。どうせ溶けます)


バターの海に泳がせながら、じっくり火を入れる

皮側は下にせず、最初は両サイドだけを焼いていきます

バターの海の中を泳がせるようにして、時々返し、ゆっくりと火を入れていきます。

蓋はせずに、焼き一辺倒で火を入れていきます

蓋をすると早く火が通り、時短にはなるのですが、「蒸しリンゴ」になってしまうため、甘みと香りを充分に引き出すことが難しいのです。(中までとろっとした質感になりにくく、水分が飛ばせないのでカラメル化もままなりません)

また、蓋をすると、刻々と移り変わるリンゴの状態が判らなくなり、状況判断も難しくなります。
(ある意味、目を瞑って感覚だけで料理するようなもので、余計に難しくなります)

色・音・香りは非常に重要は情報ですので、見て聴いて、鼻をくんくんいわせながら作りましょう。
「焼きリンゴ」は、そうする価値のあるメニューです。

皮目がしなっとしてきたら、皮側を下にして、酸味をバターに移す

焼きりんご

皮がしなっとしてきたら、皮側にも火を入れます
(皮面を下にして熱を加えます)

すると、バターの海に、リンゴの皮の赤い色素が溶け出します
(上の画像は、一旦皮目を焼いた後、向きを変えてまた側面を焼いている状態ですが、バターの海がピンク色に変化しています。これは、リンゴの皮の色素がバターに溶け出したものです)

それまでバターの香りが優勢だったところに、一気にリンゴの酸味の香りが加わってきます。

ここからは、「りんごバターの香り」の始まりです。
(この香りを鼻孔いっぱいに吸い込んで愉しんで下さい。作っている人しか味わえません)

この段階では火力をいじる必要はないと思いますが、火力が強すぎて「バター海」の泡立ちが強すぎるのであれば、少し弱めてもいいでしょう。
火力についてですが、原則として火の入り具合が進むにつれて、火力を弱める方向性で構いませんが、あまり弱めるとカラメル化が進みません(適宜判断して下さい)

このままさらに火を入れていきます。

焼きりんご

リンゴの皮がしなしなしてきたら、箸で触って感覚を確かめてみてください。
硬さで火の通り具合が判ります(見た目でも大体わかります)

りんごの身に腰が無くなり、テロテロになってくるころには、鍋底で泡立っていた水分もかなり蒸発しているはずです。

なお、水分の蒸発具合は、よく見ておきましょう!
リンゴばかりを見るのではなく、「バター海」がどう変化しているのかを見ておくのも重要ポイントです。

リンゴから出てくる水分と、熱で蒸発する水分が拮抗していれば、「バター海」の水分量はあまり変わりません。
ですが、リンゴから出てくる水分は、徐々に少なくなってくるため、「バター海」は次第に減ってきて、泡立ちも少なくなり、最後には、油滴の浮いた「カラメル海」と変貌を遂げます。

水分が無くなってくると、気化熱によって熱が奪われることが無くなり、鍋底の温度が100度を超えるようになります。
160度を超えると、バターの海に溶けていた糖分が、徐々にカラメル化を始めます

このあたりは、「観察と想像」です。

ただ見ているのではなく、鍋底の温度、リンゴ内部の火の通り具合、バター海の水分の蒸発具合、そういった各種の要素の変化をよく観察しつつ、「最終的に到達したいゴール」に向けて、正しい方向で近づいているかを判断し、細かな軌道修正をかけながら進むイメージです。

今回の「最終ゴール」は…。
リンゴの中までトロトロに火が通っていて、表面にはおいしそうな焦げ目が入り、鍋底にはリンゴ風味のバターカラメルができている。…と、いうものです。

焼きりんご
さて、バター海が消えて、油滴の浮いたカラメル海が出現しました(前の画像とよく見比べてみて下さい)

この段階に達すると…
りんごの酸味とバターの香り、カラメルの香ばしさが一体となった、得も言われぬ香りが立ち上がってきます

鼻孔の中が圧倒的至福に包まれます
このタイミングが、この料理の絶頂かもしれません。
(完成間近の状態ですが、どうかすると食べている時より幸せな気分になれるのです。そのくらい素晴らしい香りがします)

焼きりんご

ここで状況を見て、火力が強いようなら少し落とします。(水分が飛んでいるので、火力が同じだと焦げが進みやすいです)

リンゴ表面の色合いを見ながら、自分の好きな焦がし具合(色づき具合)になったら、そこで火を止めます

「素晴らしい香り」が立ちだしたら、9割5部程度完成と思って良いです。
実際には、「香りがぐんと立ちだしたら、火をやや弱めて数分火を入れ、焦がし具合を調整し、頃合いを見て火を止める」…そんな感じでしょうか?

これで、できあがりです。

焼きりんご
でき上がった『焼きりんご』です

鍋底で茶色くなっているのは、リンゴの風味の移ったカラメルです。
熱い状態だとペースト状ですが、冷えるとカチカチになるので暖かいうちに(口内火傷に注意して)食べましょう。

かしこまってお皿に盛り付けている暇はありません。
お行儀は悪いですが、鍋から直接、熱々状態で食べましょう。

「あの素晴らしい香り」は、作っている人のみが味わえる特権です。
火を止めると途端に弱まります。

器に盛り付けてしまうと、「あのドカンと爆発するような強烈な魅惑の香りは、一体どこへ消えてしまったの?」と言いたくなるかもしれません。

ですので、この料理の本当の良さは、お店では味わうことができません。
自分で作って、焼いている最中の香りを楽しみ、できたてをその場で食べるのが一番なのです。

なお、このレシピにはブランデーは入れていません。
「ブランデーはあえて加えず、リンゴそのものの香りを存分に楽しむ」というスタンスです。
シナモンも無理に加える必要はありません。

むしろ、リンゴとバターと砂糖(カラメル)というシンプルな3つの材料だけで、ここまで美味しい味と香りが楽しめるのだということを、存分に味わって欲しいと思います

焼きりんご

可能であれば、IHコンロを「保温モード」にして、鍋底が冷えないようにして食べると良いでしょう。

カラメルは常温になると、固まってカチカチになり、リンゴに絡めて食べるのが難しくなります。
カラメルを絡めて食べられるのは、温かい状態の時だけです

そうは言ってもカラメルがトロトロの状態で一気食いすると、確実に口内やけどしますので気をつけましょう。

りんごバターのホットドリンク(お掃除メニュー)

焼きりんご
焼きリンゴを作った後は、フライパンにカラメルが貼り付きます。

カチカチに固着したカラメルは洗剤で洗っても取れませんが、水にしばらく漬けておけば、徐々に溶け出してきれいに取れます。

ただ、このカラメルは結構おいしいので、洗い流すよりは、溶かして飲む方がおすすめです。
(見た目の色がアレなので、無理にはおすすめしません。少なくともおいしそうな色ではありません。)


作り方:「りんごバターのホットドリンク」(お掃除メニュー)

焼きリンゴを食べ終えた後にフライパンに、水かお湯を適量注ぐ
加熱して温め、固着したカラメルを溶かして落とす。

…これだけです。

色味はよろしくありませんが、リンゴの酸味の爽やかさとバターのコクの合わさった「りんごバターホットドリンク」の出来上がりです。

加える水の量が多すぎると薄すぎて美味しくありません。また、濃すぎるのもよろしくありません。
最初は水量を少なめにしておいて、後から水(お湯)を加えて、好みの濃さに調整してみて下さい。

これはフレンチで言うところの「デグラッセ」に相当します。

焼きリンゴを器に盛って頂く場合は、少なめの水量でデグラッセを行い、ソースのように煮詰めてから焼きリンゴに掛けて頂くのも、それはそれで素敵な趣向だと思います。


キャンプで作る焼きリンゴ

「キャンプで作る焼きリンゴ」です。
作り方は「お手軽版」と、基本的に同じです


違うのは、リンゴを薄めに切って、蓋をして早く火が通るようにしている点です。

キャンプでは手軽に簡単が一番です。
難しいことは言わずに、ドーンと作ってみんなでワイワイ食べましょう。

焼きりんご

焼きりんご
この時は、紅玉2個分を使って倍量で作りました。
分量は「焼きりんご(お手軽版)」に準じています。

切り方もかなり適当ですが、やや薄めに切ることで火の通りを良くしています。

焼きりんご
アルミホイルで蓋をして、蒸す感じにして、火が早く入るようにします。

焼きりんご
少し色が変わってきました。3割程度火が通った感じです。

焼きりんご
だいぶトロッとしてきました。5割型仕上がった感じです。

焼きりんご
8割型火が通りました。
もう少しですね。

焼きりんご
完成です。
お好みでシナモンをかけて頂きましょう。

よく見ると焦げ目の付き方にばらつきが出ていますが、これは紅玉2個分を一度に作ったためです。

フライパンの底面積が充分でないため、リンゴが重なり合ってしまい、上に乗ったリンゴにはなかなか焦げ目が付かないのです。

ただ、これはこれで良しとしています(量が足らずに人数分行き渡らずに、不満感がつのるよりは良いと思います)

キャンプでは完全は目指さずに妥協して、手早く作ってそこそこ美味しくできれば良いと思います。

おいしい焼きリンゴを作るポイント

リンゴは紅玉

焼きりんご
リンゴは、『紅玉(こうぎょく)』を推奨します

「富士」ではダメなのか?と思うのであれば、自分で「紅玉」と「富士」で作り比べ、実際に食べて確かめてみましょう。

紅玉以外は論外」という人もいるでしょうし、「他のりんごでも作れるじゃない」という方がおられても、おかしくはありません。

個人的は、紅玉の酸味は焼きリンゴに必要不可欠で、無くてはならないものですが、それはあくまでもわたしの場合であって、これを読んでいるあなたにとって正解かどうかまでは判りません。

人が言う事よりも、自分の舌で感じた経験の方が、100倍有益です。
おいしさというものは、人によって大きく感じ方が違って然るべきものですから。

バターはフレッシュなものを

バターの分量が少ないと、香りが立ちません
ケチケチせずに、きっちり入れましょう。

本格版レシピで作る場合は、個人的には15gが下限だと考えます。
16gと20gで試作したところ、16gはやや少なめにも感じました。20gだと香りは言う事ありませんが、「ここまで多くなくても良いのでは?」とも感じました。
(バターの海が波々とできるため、水分が飛ぶのに時間がかかり、カラメル化が遅れるのです)

そのため18gをベストとしていますが、リンゴの大きさにも左右されるため、16~20g程度で大きく外れなければそれでOKです。

(お手軽版の場合は、リンゴ1個に対して10gでOKです)

使いかけの状態で冷蔵庫に入れっぱなしのバターは、香りが飛んで、「ただの乳化した油の塊」となっている事も多いです。

バターの香りは非常に重要です。フレッシュな良い状態のバターを使いましょう。
(エシレバターのような海外製高級バターを使えとは言いません。国産バターで充分おいしいですが、香りの抜けたバターは全くおいしくありません)
一度箱を開けたら、フリーザーバックなどに入れて空気を追い出し、密閉保管するだけでもかなり違います(空気に触れさせない&密閉がポイントです)
15度以下の環境であれば、無理に冷蔵庫に入れる必要はありません。

火力について

火力は必要に応じて調整しましょう。

全体に火が通って水分が飛んできたので、少し火力を弱める」という考え方と、
最後においしい焦げ目(メイラード反応)を付けるため、(短時間だけわずかに)火を強める」という考え方は、どちらも理にかなっています。

火をあやつって、自分の思い描いたイメージの焼き具合に持っていくということは、非常に重要です。

褐色で強めの焦げ目が欲しい場合は、慎重に火を強め、
柔らかで繊細な焦げ目が欲しい場合は、火力一定(もしくは少し落とす)というのが基本ですが、
火力はあまりいじらずに、時間で調整する(フライパン底面に接触させて、動かさない時間で調整する)というのも一つの方法です。



一言でいうと、焼きリンゴは「焼くだけ」で作れます

そういう意味では『簡単』なのですが、どのように火を入れて、焦げ目をどう付けていくか、カラメル化はどこまで進めるかなど、細かな部分で美味しさに違いが出てきます。

年中作ることができれば、わたしもここまで書きません。
いつも作っていれば、身体で覚えて感覚で作れます。

ですが「焼きりんご」は、紅玉が出回っている時期しか作れないのです。

毎年作る度に、「あれ、どんな感じで、どの程度まで火を通せばいいんだっけ?」と、思い出しながら作ることが多いので、このページを作りました。

月寅次郎のレシピページは、やたらと解説が長い」…と思う人もおられるとは思いますが、基本的に自分用の備忘録替わりとして書いていますので、きれいさっぱり忘れても、完全に思い出して再現できるように、細かいところまで書くようにしています。

フライパンとコンロ

フライパンの素材や厚み、ガス火・IHコンロなどの違いによって、火の入れ方の最適解は大きく変わります

このページに書いてある火力の表現は、あくまでも一つの目安でしかありません。

「中火で8分」というような安易な表現もできますが、フライパンやコンロが変わると、火力も時間も大きく変わってくるので、なかなか一律に書けないというのが本当のところです。
昭和の時代はこれでも良かったのですが、IHコンロとテフロンコーティングのフライパンが登場してからは、一律の表現が難しくなってきました。

ちなみにテフロンコートのフライパン(全体はアルミで、底面にステンレス板を組み込んで発熱させている一般的な製品)」ですと、IHコンロではかなり火力を強めにする必要があります。

一方で鉄のフライパンは、IHコンロでの発熱効率が極めて高く、「組み込み発熱体」も必要無く、鍋底全体が発熱しますので、火力の立ち上がりも非常に速いです。
また、テフロン樹脂のような熱伝導を阻害する要素もありませんので、「おいしい焦げ目」も作りやすいです。

それぞれの家庭のよって使用機材はバラバラですので、正確を期すならば「使っているコンロやフライパンに合わせ、その時々で適切な火加減に調整してくださいね」としか言えないのですが、同じコンロと同じフライパンの組み合わせで何度が作れば、おおよその感覚は掴めてくると思います。

テフロンコートのフライパンでも、焼きりんごが作れないことはありません。
作るだけなら問題ありませんが、「本格版」のように、砂糖がびっちりカラメル化するまで加熱させるのは(個人的には)あまりおすすめしません。

砂糖がカラメル化するのは160度以上であり、テフロン被膜の使用上限は260度とされているので、数字だけ見ると問題なさそうにも見えますが、高温域での継続使用は特性劣化が顕著となります。

空焚きしたわけでもなく、普通に使っているのに、テフロンコートが駄目になった経験は、かなりの方がお持ちでしょう。(そんなものです)
テフロンを長く持たせたい場合は、「本格版」ではなく「お手軽版」で作るほうが、フッ素被膜の痛みが少なく済むはずです。

鉄のフライパンの良し悪し

焼きリンゴを作る際、わたしは鉄のフライパンを使っています。

焦げ目を付けたり、カラメル化のコントロールがしやすいというメリットがありますが、鉄ならではのデメリットもあります。
それは、リンゴの酸が鉄表面の油分を落としがちで、洗わずに長時間放置すると、油膜がきれいさっぱり落ちてしまうということです。

このページの掲載画像を比較すると判りますが、「お手軽版」の方はそうでもないですが、「本格版」に掲載しているフライパンの状態は、表面の油膜が剥げ落ちて、あまり褒められた状態ではありません。
(ちなみに、お手軽版の方は2020年に撮りためておいた画像で、本格版の方は2022年に撮影したものです)

実際に、デグラッセして「りんごバタードリンク」を作って飲んだ際には、わずかに鉄味が感じられました。
焼きりんご自体はそこそこ味が強いですので、鉄味が感じられることはありませんが、酸のある食材を鉄のフライパンで使う場合、使用後は速やかに洗いましょう。

もしも油膜が剥がれたとしても、そこは鉄のフライパンです。また油膜を育てていけば良いだけの話です。

テフロンコートのフライパンと違い、「剥げたら終わり」でないのが、鉄パンの良いところです。

ちなみにこのフライパンは、1990年初頭に購入したものですので、もう30年以上経過していますが、いくら使ってもびくともしません。
(決して特別な製品ではありません。ホームセンターで買った、何の変哲もない普通の鉄フライパンです)

さらに個人的備忘録

フライパンをゆすらずに置いた状態のままで焼くと、(重量バランスのせいで)先端側の底面がわずかに浮くため、柄側にバター液が偏ってしまう。
結果として先端側の「バターの海」が干上がってしまい、そこだけ焼き目が極端に付くことがある。

(フライパンが水平になるよう調整したり、箸でつついて焼き目の入り具合を確認しながら焼く必要あり。放置しすぎは良くない)

(ポータブルIHコンロの場合、下から2番めの「2」の火力に設定)

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