電話機の子機バッテリーが持たなくなったので、エネループが使えるように改造しました。
(作業手順は、この下で解説していますが、安易に真似はしないで下さい)
純正バッテリーの劣化状態を確認
まず、
純正バッテリー(互換品・Panasonic製 BK-T405)の電圧を計測してみます。
電圧は、実測値で2.828Vです。
BK-T405の公称スペックは、2.4V 830mAhですので、一見問題ないように見えますが、実際にはかなり劣化が進んでいます。
無負荷の場合は、これだけの電圧が維持できますが、
負荷がかかると一気に電圧が低下し、電池残量低下の警告音が鳴りだします。
満充電の状態で通話テストをしてみましたが、
通話開始から約30秒後に、バッテリー残量低下の警告音が鳴りました。
使い物にならないくらい、バッテリーが劣化しています。
満充電の場合、上の画像のように、バッテリー表示の■が3個出ます。
(電話機本体の型式は「Panasonic VE-GP51-S」、子機の型式は「KX-FKN513-S」)
この、■3個の状態で、何も操作せずに電池蓋を開け、バッテリーを一旦外して電源を落とし、
再度バッテリーを装着するだけで、■が1個になってしまいます(上の画像)
何もしていないようにも見えますが、実際には、「
子機の電源を入れ直す」という負荷がかかっています。
大した負荷ではありませんが、電源を投入するだけで、バッテリー残量をかなり消耗してしまうようです。
(それほどバッテリーが劣化しています。全く持ちません)
電池ケースの底面を見ると、
「専用蓄電池 KX-FAN52をご使用下さい」
…と表示があります。
KX-FAN52は、電話機発売当時の
純正バッテリーです。
(KX-FAN52は既に製造を中止しており、現在では、互換品しか入手できません)
手前の「
BK-T405」は、Panasonic製の互換バッテリーで、
KX-FAN52の代替品です。
なお、バッテリー背面にマジックで書き込んであるのは、使用開始年月と、使用期限予定日です。
これまで、バッテリーを数回交換してきましたが、我が家の使い方では、約3年前後で交換が必要となるケースが多かったです。
今回は、2年7ヶ月で寿命が来たことになります。
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専用バッテリーを止め、単3エネループ仕様に改造
電話子機の純正バッテリーの価格は、はっきり言って安くはありません。
(価格の安い互換バッテリーも販売されてはいますが、それは中国製の無名メーカー品であり、品質もそれなりです)
特にこのような、発売年式の古い電話機は、保守パーツも市場から徐々に姿を消していき、僅かに残った充電池は価格が高騰する場合もあります。
数年毎に、高価な純正互換バッテリーを購入するのも何ですので、抜本的な解決のために、汎用充電池を使って、電池容量を大幅にアップすることにしました。
純正バッテリーは「単4と同形状の充電池 x 2本」を専用ケースに収めたものですが、これを、
エネループの「単3 x 2本」に変更しようという考えです。
品質と性能の担保が取れている日本製エネループを使用するだけでも、
ロングライフは確実ですが、
容量を上げることで、電池が酷使されることが減り、電池寿命も伸びるはずです。
改造作業の手順、詳細
オーム電機の電池ケースを使用
単3エネループ仕様に改造するにあたって、今回使用するのは、
オーム電機の電池ケース(リード線付き)です。
これを外付けにして使います。
「スマートに内部収納できないか?」とも考えましたが、
「
少々不格好でも、機能的に大幅向上し、きちんと使えれば良い」という観点から、見た目のダサさは、目をつぶることにしました。
電池ケースのリード線を、電極に直接はんだ付けします。
ダミーの電池を入れて、電極バネの力で導線を電極に接触・固定させるのも一つの方法ですが、
はんだ付けが最も確実です。
接触圧力不足による抵抗の増加や、経年劣化に伴う導体表面の酸化も無視できるようになります。
「定期的に状態を確認し、銅線の表面が酸化して黒っぽく変色していないか?」といった、確認作業や、酸化被膜の除去などの、メンテナンスをする必要がなくなるのです。
予防保守がほぼ必要なく、メンテナンスフリーで、リード線を少しくらい引っ張っても、接触不良に陥らないというのは、重要なポイントです。
はんだ付け箇所を拡大すると、このようになっています。
電極表面がツルピカなので、はんだが濡れずに弾いてしまうのではないかと心配しましたが、杞憂でした。
画像のように、割りと簡単にはんだが乗ってくれました。
はんだを弾く場合は、溶けたはんだが玉のようになって、濡れて広がらないのですが、「濡れ性」は良かったです。
電極の厚みが薄かったのでしょうか、コテの熱も、あまり持っていかれませんでした。
実際に使ったパーツと工具
ここまでの作業で、実際に使ったパーツと工具類を紹介しておきましょう。
オーム電機の電池ケース KIT-UM32
以前、この電池ケースにLEDを組み合わせ、超軽量のランタンを自作した事があり、この電池ケースを買うのは2回めです。
価格は安いのに作りがしっかりしており、リード線付きなので、作業が楽なのがいいところ。
はんだごて、白光(HAKKO) FX600-02
白光(HAKKO)の「FX600-02」は、温度調節が可能で、実に優秀な製品です(コテ先も変更可能)
はんだこてならハッコー(白光/HAKKO)です!
2015年から愛用して、かなり使い込んでいますが、筆者お気に入りのはんだこてです。
「はんだ」goot SD-62
SD-62は、長年愛用していますが、扱いやすくて良いはんだです。
(精密プリント基板用、太さ0.8mm、スズ60%/鉛40%、ヤニ入)
SD-62は厳密に言うと旧型品で、現行品は
SD-82 です。
ただこれは、プラスチックパッケージが、紙包装に変わっただけであり、線の太さや、はんだの組成は同じです。
(筆者は紙包装のSD-82を購入し、SD-62のプラ容器に詰め替えて使用しています)
なお、電子工作用の、
SD-63でも構いません。
(太さが1.0mmで、SD-62と比べてほんの少し太いだけで、スズと鉛の割合は同じです)
それでは、作業に戻ります。
リード線の引き出し口を作る
リード線を電池ケースから引き出すために、電池蓋をヤスリで削り、切り欠きを作ります。
この
切り欠きの大きさは、重要なポイントです。
切り欠きが大きすぎると、線がゆるゆると動いてしまって、よろしくなく、
切り欠きが小さすぎると、そもそも蓋が閉まりません。
蓋は閉まるものの、リード線が適度に固定されて動かないようにするのがベストです。
(あまりきつくすると、被膜の破損や断線に繋がります)
電池蓋を嵌めてみました。
この状態でリード線を引っ張っても、線が引き出されない程度に固定されています。
いい感じに仕上がりました。
作動テスト・確認
単3エネループをセットして、電話の作動確認をします。
(問題なく使えました)
この単3エネループ(スタンダードタイプ)は、1本あたり1900mAhですので、2本合わせて3800mAh。
交換前に使用していたPanasonic製の純正互換バッテリーは、容量830mAh。
電池容量は、単純計算で4.6倍となりました。
(かなりの長電話にも耐えられます)
電池ケースの改造(スイッチをONに固定)
この電池ケースには、ON/OFFの切り替えスイッチがあります。
今回の場合、このスイッチの機能は必要ありません。
誤ってスイッチを操作し、OFFとならないよう、スイッチをONに固定する改造を施します。
まず、ニッパーを使い、スイッチの出っ張りを切り落とします。
(この出っ張りは、子機に電池ケースを固定する際に邪魔になるので、切り落とすのが良いです)
切り落とした「出っ張り」を、スイッチの溝に嵌め入れます。
こうすると、スイッチを動かせなくなり、OFFにすることが不能となります。
スイッチの上からテープを貼って、「出っ張り」が落ちないようにします。
これで、スイッチは常にON状態です。
(スイッチ機能を殺しました)
電池ケースを子機に固定
電池ケースを輪ゴムで仮固定し、ベストな固定位置を探っているところです。
この状態でも、使えないことはありません。
試行錯誤した結果、子機背面の上の方で固定することにしました。
固定には、3Mのマスキングテープを使用しました。
テープだらけの外観で、見た目はお世辞にも良いとは言えませんが、しっかりと固定され、問題なく使用可能となりました。
これでもう、高価な専用バッテリーを買う必要はありません。
今後、専用バッテリーの製造が終了し、入手できなくなったとしても、全く困らないわけです。
単3のニッケル水素電池があれば良いだけですから。
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3Mのマスキングテープは、個人的に長年愛用しているテープです。
糊の耐久性が優れているため、長期間張りっぱなしにしても、比較的ベトベトになりにくい、良いテープです。
さすがに世界的な定番商品だけのことはあります。
充電スタンドに置いて、満充電にしたところです。
この状態で、一旦エネループを取り出し、電圧を測ってみたところ、約1.5Vでした。
「この手のニッケル水素電池は公称電圧1.2Vですので、1.5Vは、過充電ではないのか?」と思う方もおられるかもしれません。
普段、充電池をテスターで確認している方なら判ると思いますが、エネループに代表されるニッケル水素電池の場合、表示上は1.2Vですが、充電時には1.5V近くまで充電され、デルタピーク検出後に満充電と判断されて、充電が停止します。
(充電による発熱が納まり、冷めてくると、1.42~1.45Vあたりで一旦落ち着き、何日か経過すると1.40V前後となり、その後徐々に下がって1.36~1.38Vあたりで安定し、この状態を長期間維持可能です)
このように、1.5Vであれば、「一時的にすこし多め(強め)に入っている程度」です。過充電という程ではありません。
東芝IMPULSEライトに換装(現在の状態)
当初は
エネループ(スタンダード)を使用していましたが、現在は
東芝のインパルス(ライト)に換装しています。
容量の多い「スタンダード」の方が長時間通話が可能ではありますが、我が家ではそこまでの長電話をすることはありません。
長時間の通話性能よりも、バッテリーそのものが5年、6年と長持ちしてくれる方が、ありがたいのです。
そこでライトタイプのニッケル水素電池に切り替えました。
エネループにもエネループライトがありますが、あれと同様の製品です。
電池容量が少ないかわりに、より多くの充電回数が可能となっています。
(スタンダードは1900mAh、ライトは950mAh)
東芝のインパルス(ライト)は、950mAhですので、これが2本でバッテリー容量は1900mAhとなりました。これまでの830mAhに比べて、約2.3倍の容量です。
(これだけあれば、充分です)
東芝インパルス(単3・ライト)
使用開始年月:2023年12月21日
使用終了年月:20 年 月 日
BK-T405は、中国製の純正互換バッテリーですが、これでも2年7ヶ月持ちました。
今回交換した東芝インパルスは、5~6年程度は、余裕で持ってくれるのではないかと期待しています。
使用終了後は、上の使用終了年月に数字を書き入れる予定です。
(どれくらい持ってくれるのか、楽しみです)
その後の状況
改造後3ヶ月間経過しましたが、充電も通話も不具合もなく、問題なく使用できています。
かなりの長電話をした場合でも、電池もタフに持ってくれます。
大成功です。
(追記:2024年2月)
ニッケル水素電池は、日本製に限ります。
後で後悔したくなければ、日本の工場で生産されているものを購入しましょう。
上の画像の充電池は、すべて日本製で、(誤った使い方をしなければ)信頼して使えます。
用途に合わせ、最適なものを使いましょう。
このような改造は自己責任です。
安易に真似はしないで下さい。推奨はしません。
テスターを持っていない方は、このような改造に手を出さないでください。結線の確認ができません(家が燃えてからでは遅いのです)
このページでは、どの線をどちらの電極につなぐかなど、当たり前と思われる事は解説していません。
ですが、「当たり前の事」とは、その人の知識の有る無しで、大きく変わってきます。
はんだ付けにしても、同様です。
テスターを使いこなせない人は、はんだ付けに不慣れな方は、やらない方が賢明です。