まな板が反ってしまう原因と、曲がったまな板の直し方について、まな板を製造しているメーカーから、正確な情報を教えてもらいました。
(プラスチック製(樹脂)まな板の話です)
まな板が反ったり、曲がったりする原因
まな板が反ってしまう原因は、大きく分けて2種類、『熱』と『置き方』です。
置き方が悪い状態で長時間熱を加えてしまうと、2つの原因が重なって簡単に反ってしまいます。
気を付けましょう!
まな板が反る原因1 - 熱
白いプラスチック製のまな板は、ポリエチレン製であることが多く、
樹脂のために熱可塑性という特性を持ちます。
熱可塑性とは、
熱を加えると柔らかくなり、冷えると固くなる。…というものです。
このため、立てかけて置いた状態で熱を加えると、柔らかくなり、自分の重みで徐々に曲がっていきます。この状態のまま冷えると、曲がった状態のまま固まることになり、結果としてまな板が反ることになります。
家庭でよくあるケースとしては、食洗機のラックに斜めに立てかけて入れ、温水洗浄するケースが該当します。
※ 補足
耐熱温度が高いことが、良いまな板とが限りません。
後述のように、筆者は刃当たりの柔らかさを重視しているため、柔らかめのまな板を使っています。
まな板が反る原因2 - 置き方
樹脂製のまな板は、
斜めに立てかけて置いておくと、徐々にではあるものの、自重で曲がっていきます。
熱を加えたときほど顕著ではありませんが、
常温の状態でも、時間をかけることで反っていきます。
※ エラストマー製のまな板は、樹脂とゴムの特性を併せ持ちますが、エラストマーも熱可塑性を持つため、反りに関しては、ポリエチレン製のまな板と同様に考えてよいでしょう
短時間の熱なら大丈夫か?
熱によるまな板の変形は、局所加熱よりも長時間加熱のほうが、影響が大です。
金属板の片面に熱を加えた場合、熱を持った側が膨張して伸びるため、短時間で反りが生じる場合があります。
(カップ焼きそばのお湯を流しに捨てると、ボコンと音が鳴るのは、ステンレスの板材が急激に反るからです)
一方、まな板に使われている樹脂は、熱膨張性は高くないため、このような局所加熱で反ることはまずありません。
むしろ、
まな板全体が暖まることによって強度が低下してしまい、形状を維持できなくなって結果的に曲がることがほとんどです。
そのため、
殺菌目的でまな板表面にお湯をかける場合は、(耐熱温度を上回る温度であったとしても)
短時間であれば、あまり気にする必要はありません。
平らな場所に置いて、さっとお湯をかける程度であれば、反ることはありません。
まな板全体に熱が回らなければ、冷えている部分が硬度を維持してくれるため、形状を維持できます。
(逆に、まな板全体を内部まで温めでしまうと、比較的低い温度でも曲がることがあります。斜めに置いた場合は特にその傾向が高くなります。注意しましょう)
プラスチック製まな板の耐熱温度とは
樹脂製まな板の耐熱温度とは、「それ以上だと、軟化して強度を保てなくなってしまう温度」を示しています。
要は、「
まな板が柔らかくなる温度」です。
そのため、耐熱温度を少々超えたからといって、まな板の樹脂素材が変質してしまうとか、いきなり溶けだすとか、そういうことはありません。
(メーカーさんが断言しておられました。安心してお使いください)
また、
まな板の硬さと耐熱温度は相関関係にあり、耐熱温度の高いまな板は硬く、耐熱温度の低いまな板は、柔らかい傾向にあります。
(同一メーカーで、同じ厚さで比較した場合です)
右上の画像は、食洗機対応を謳っている、
パール金属 抗菌 まな板 です。
耐熱90℃と大書されており、高温耐性があることが判ります。
※ 補足
耐熱温度の設定値は、製造メーカーによってまちまちであり、業界の統一基準があるわけではありません。
そのため、耐熱温度の高低を、まな板の硬度だと捉えて、一律に比較することはできません。
あくまでもメーカーによる『自社基準』です。参考値として考えましょう。
(ただ、同一メーカーの製品であれば、一定の基準として使えると思います)
反ったまな板を平らにする方法
ここまでは、まな板が曲がる原因を明らかにしてきました
次は、反ってしまったまな板を、元に戻す方法です
-
熱湯に浸けるなどして、まな板全体をよく温める
-
充分に暖まったまな板を、平らな場所に置いて荷重をかける(やけどに注意)
-
そのまま常温になるまで放置する
これは、まな板の熱可塑性を逆手に取った方法です。
ある程度の量の熱湯が必要ですので、火傷に気をつけて行ってください。
耐熱温度が70度のまな板であれば、80度程度まで温めてあげれば効果的です。
逆に、耐熱温度が100度以上のまな板が曲がってしまった場合、お湯では可塑性が生じる温度までなかなか上がらないため、家庭で修正することは難しいかもしれません。
なお、この作業を流し(シンク)で行う場合には、排管のプラ素材を痛めないよう気をつけて行ってください。
シンクの配管部分等に使用されている塩化ビニールは62~72℃で軟化してしまうため、大量の熱湯がそのまま排管に流れ出ないようにするなどの配慮が必要です(だからと言ってすぐに溶けたりはしませんので、過剰に心配する必要はありません)
まな板の反り具合や厚みによって、必要なお湯の量も様々です。
また、冬季などで室温が低い場合などは、まな板の温度が充分に上がらず、反りがなかなか戻らない場合もありえます。
その時その時の状況によって、適切に判断して作業しましょう。
まな板を反らさずに使う、正しい使い方のまとめ
-
収納時は垂直に立てる、もしくは平らな場所に置く
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斜めに立てかけたり、シンクに渡し置きしたままで放置しない
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熱湯消毒する場合は平らな場所で行う、冷えて硬度がでるまで、そのまま放置する
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食洗機のラックに立てかけて温水洗浄すると、耐熱温度が高い製品でも反りが出やすい
-
食洗機にかける場合は、食洗器対応のまな板使うか、平らに置いた状態で洗浄する
-
耐熱温度が高めのまな板は、反りを直すときにも高い温度が必要なので、修正も大変
これらの情報は、複数のまな板製造メーカーに伺って、いろいろと教えていただいた内容をもとにしております(メーカーの皆様、ありがとうございます)
これまで、まな板の耐熱温度は高い方が良いのだろうと考えていましたが、
耐熱温度はやや低めのほうが、まな板としては柔らかく、包丁の刃当たりや刃持ちも良いため、結果として使い心地が良いということもわかりました
柔らかい分だけ、反りやすくもなりますが、「プラスチックのまな板は、熱や自重で曲がる性質がある」ということを理解して正しく使用すれば、全く問題ありません
逆に、耐熱温度が高めのまな板でも、誤った使い方をすると、簡単に反りや曲がりが出てしまいます。正しく使って平らな状態を保ちましょう
筆者が使っているまな板
アサヒ クッキンカット
「
アサヒ クッキンカット」は、
耐熱温度の高さよりも、刃当たりの柔らかさと使い心地を優先させたまな板です。
※ 「食洗機の使用は避けてください。変形する場合があります」との表示が有りますが納得できるところです
包丁を通して
手首に返ってくる感触が柔らかく、木のまな板に近い優しい使い心地です。
耐熱温度の高いまな板は、食洗器対応というメリットがありますが、硬すぎるというデメリットもあります。
包丁を使っていると、「トントン」ではなく「カンカン」という高い音がして、
手に返ってくる反動がきついのです。
耐熱温度よりも使い心地を優先したい場合は、クッキンカットのような柔らかめのまな板を使うと良いです。
(エラストマー、もしくはゴムまな板と表示されていることが多いです)
刃当たりが柔らかい分だけ、包丁の切れ味が長持ちし、研ぐ回数が減る分だけ包丁も長持ちします。
筆者が購入したのは、38cmx21cmのMサイズ、これより大きなLサイズ、LLサイズ、小さなSサイズもあります。
アサヒ クッキンカット を見てみよう
● アサヒ クッキンカット (amazon 商品ページ)
● アサヒ クッキンカット (楽天で検索)
エラストマー製のまな板として、定評があるのがこのクッキンカット。
適度な重量感も、カット作業の安定性に寄与しています。
三洋化成 やわらかシートまな板
エラストマー製の、柔らか~いシートまな板です。
サイズは、33.8cm x 23cm。
前述のクッキンカットより、長編は約4cmほど短いですが、短辺は『やわらかシートまな板』の方が、2cm大きいサイズです。
刃あたりもかなり柔らかめで、前述のクッキンカットよりも、さらに柔らかく感じます。
手で持つと、自重で曲がってしまうくらい柔らかいのです。
京セラ カラーまな板(CC-99)
京セラ カラーまな板(CC-99)は、少し小さめのシートまな板。
サイズは、30.1cm x 21cm。
小物を切る時に、ちょうどよいサイズ感です。
『柔らかい』との表示はありますが、「三洋化成 エラストマー やわらかシートまな板」に比べると、適度な張りのある硬さです。
うちわに使えそうな硬さで、扱いやすい中庸な感じです。
前述の『三洋化成 やわらかシートまな板』は、腰がなさすぎて、うちわになりません(びよんびよん曲がります)
目盛り付きなので、均等にきれいに切りそろえたい時にも重宝します。
(おせち料理のかまぼこなど)
カラーは6色揃っており、食材ごとの使い分けにも助かります。
ちなみに、耐熱温度は100度です。
京セラ カラーまな板 を見てみよう
● 京セラ カラーまな板 (amazonで検索)
● 京セラ カラーまな板 (楽天で検索)
(筆者が使っているのは『グリーン』ですが、『ラテベージュ』も、落ち着いた色合いでいい感じです)
まな板のサイズは、よく確認してから買いましょう。
通販サイトの画像では、大きさのイメージが掴みづらいものです。
『安いと思って買ったら、思っていたより小さかった』というのは、ありがちな話です。
台所のスペースにもよりますが、まな板が小さいと、みじん切りがやりにくいですよ~。
(みじん切りは、まな板の面積がものをいいます。小さなまな板だと、周囲にポロポロ落ちて面倒です)
まな板の耐熱温度(具体例)
耐熱性の高い、食洗機対応まな板
パール金属 抗菌 まな板 は、
耐熱90℃とあり、高温耐性があることが判ります。
リス 耐熱抗菌まな板は、製品名に『耐熱』と入っており、こちらも食洗機OKです。
(こちらも、耐熱温度は90度とされています)
食洗器に使われる温水は、60~80度の設定が多く、
耐熱温度が90度以上のまな板であれば、食洗機に使用可能と考えて良いでしょう。
(後述の、アサヒクッキンカットのように、一部例外もあります)
耐熱性は低いが、それ以外のメリットがあるまな板
三洋化成 エラストマーやわらか抗菌まな板 の耐熱温度は70度。
『
柔らかくて、刃あたりが良い』ことを売りにしているため、逆に熱には弱くなっています。
熱い鍋などを上に置くと、薄い分だけもろに反ります(筆者も実際になったことがあります)
ただ一方で、薄手のシートまな板ですので、元に戻すのも難しくありません。
平らなシンクの上に置いて熱湯をかけ流し、反りが戻ったところで、そのまま常温に戻るのを待てば良いだけです。
アサヒ クッキンカット の耐熱温度は、PROは130度、HOMEは100度となっていますが、これは「30分まで」という限定付きです。
「オーブンから出したての食パン型などを直接乗せることができる」との表示もありますが、同時に「
食洗機の使用は避けて下さい。変形する場合があります」との記載もあるわけです。
この耐熱温度の表示は、あくまでも、
まな板の上に一時的に乗せられる物の温度と考えるのが妥当です。
まな板全体が100度近くまで温まった場合、変形すると考えてよいでしょう。
逆に、極端に高温でなければ、「一時的に、熱を持った鍋を上に置いても大丈夫だよ」…というわけです。
このようにクッキンカットも、刃当たりの良さを売りにしたまな板ですので、食洗機に入れられるだけの耐熱性までは、持ってはいません。
まな板の重量は、切った時の安定感を左右する
トンボまな板 抗菌軽量 ホワイト は、厚さ8mmの薄型まな板で、軽量性が売りですが、ここまで薄いと、
切った時の安定感が欠けるきらいがあります。
軽さは一つのメリットではありますが、安定感とのトレードオフでもあるのです。嘘だと思ったら、上のリンクをタップして、どのようなレビューが書き込まれているか、確認してみて下さい(amazonの商品ページにリンクさせています)
このトンボまな板の耐熱温度は70度で、食洗器非対応ですが、だからといって刃あたりの良いタイプでもありません。
(このまな板の場合は、素材自体が柔らかいために熱に弱くなっているわけではなく、厚みが薄いために、熱に弱いのです)
ちなみに、前述の『アサヒ クッキンカット』は、密度もそこそこあり、Mサイズで1100gとやや重めです。
この
重さと密度が、使用時の滑りにくさや安定感につながるわけですが、同時に、上乗せ温度の高さにも寄与しています。
このように、まな板の重さも要チェックです。シンクの上に差し渡して使う場合は特にですが、ある程度の重さは、切った時の安定感につながります。
ちなみに、パール金属 抗菌まな板の場合、Lサイズで970gです。
まな板は、刃あたり、耐熱性、重量などを、総合的に判断しよう
柔らかい素材を使用し、刃あたりの良さを追求したまな板は、耐熱温度も低い傾向にあります。
一方で、耐熱性が高く、
食洗機対応のまな板は、コツコツと硬いのが
デメリットです。
どちらのまな板が良いとは、一概に言えません。
耐熱性と刃あたりの柔らかさは、トレードオフの関係です。
実際に使う人が、
どちらのメリットを優先させるかにかかってきます。
(自分の用途に合ったまな板を選びましょう)
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