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柄付け - 和包丁のカスタム(薄刃包丁)


和包丁の柄付け

和包丁の柄付け
イワタニ
クッキングバーナー

柄は、七寸の薄刃包丁に合うサイズのものを用意しました

口輪は赤色樹脂浸透の強化木になっており、トラディショナルな水牛柄とは異なりますが、耐久性に富んで年変化に強い素材ですので、長年使用しても欠けが出ることはないでしょう
(これまでの経験では、白水牛の口輪で欠けが生じ、エポキシ樹脂で埋めて補修したことがあります)

形状は「八角」を選びました。左利きですので左で握ることが多いですが、剥き物は右手で握るという変則的な使い方をしていますので、どちらの手で握っても違和感が出ないよう、八角タイプを選びました

木の材質は、チェリーウッド(桜材)です。少し赤みがかった木肌が美しいです
でも焼栗でもなく、水牛柄でもないというやや変わり種の柄ですが、良い意味で現代的でスタイリッシュな柄だと思います(とはいえ、水濡れ時の握り心地を優先させるならば、やはり朴の木がしっくりきて一番だと思います)

バーナーは、イワタニの調理用バーナーです。料理を炙って香ばしさを出す際に使っていますが、今回は中子を熱するために使用しました(家庭用のガスコンロでも充分だと思います)
伝統的なやり方は、火鉢に炭を起こし、熱くなった灰の中に中子を突っ込んで熱を加え、柄付けを行います

和包丁の柄付け作業


郷右馬允義弘
鎌型薄刃
白紙2号
和包丁の柄付けは、中子を熱し、熱で柄の内部を焼き広げてはめ込みます

熱によって木材が炭化し、細胞壁の組織が潰れることで穴が広がり、中子の形に沿った「メス型」ができ上がります

上手に柄付けすればぴったり嵌まり込むので、接着剤等で固定しなくても強度的に充分な状態になります(今回は、後の工程で縁の部分にエポキシ樹脂を盛っていますが、あくまでも防水処理であって固定目的ではありません)

● 関連ページ 和包丁の防水処理(エポキシ充填、中子の防錆)

実際にやってみた感じですが、赤熱化した中子を柄に差し込み、力を加えて押し込むと、煙を上げながらゆっくりと中に入っていきます

ある程度押し込んでそれ以上入らなくなったら、一旦中子を引き抜き、再度加熱して同様の処理を繰り返します
8~9割程度挿入したら柄尻を木槌で叩き、刀身の反動を利用して徐々に穴の奥に入れていきます。 丁度よいところまで中子が収まったら完成です

今回は、わずかながら穴が小さめだったようで、途中から棒ヤスリを併用して穴サイズを微調整しながら作業しています(そのため画像には、落ちた炭の粉が散らばっています)

作業上の注意ですが、中子を柄に差し込む「挿入開始」の時には、神経を集中させて作業しましょう
手元が狂って、赤熱化した中子の先端を口輪の縁に当ててしまうと、その部分が炭化して窪みの跡となって残ります

また、一般的な朴の木の場合は、比重が0.5前後とあまり高くなく、組織の密度が低めのため、比較的焼き広げしやすい素材ですが、比重の高い木材は、硬い分だけなかなか焼き広がりません

和包丁の柄としては、高級な素材として黒檀や紫檀を使ったものもありますが、そういった硬い木材を柄にすげるのは、朴に比べて難易度が増すと考えてよいでしょう(穴と中子のサイズが、ある程度合っていることが望ましいです)

和包丁の柄に使用される、主要な木材の比重
黒檀:1.1  紫檀:1.0  栗(焼栗):0.55  朴:0.5
(ちなみに今回使用した桜材は、比重0.60~0.63です)

柄付けした和包丁(薄刃)

和包丁の柄付け

無事に柄付けすることができました

柄と刃の継ぎ目のあたりが、虹色に変色していますが、これは熱酸化によって生じた薄膜ですので、コンパウンドやクリームクレンザーなどで難なく除去できます(この程度ならば、焼き戻りなどの影響もありません)

まずは、この状態で包丁として使えるようになりました

切れ味も素晴らしく、物自体は非常に良い包丁のようです
鋼材の質が良く、鍛造・鍛接の作業が丁寧なのでしょう

ただ、大まかに錆を落として柄付けしただけですので、見た目が今ひとつパッとしません
少し変わった柄を付けただけの、ただの薄刃の和包丁です

柄付けしたばかりではありますが、問題なく使えることは確認できましたので、この時点で一旦柄を外し、 鏡面化や漆塗りなど、さらなるカスタムの工程へと進みたいと思います

 ● 和包丁の鏡面仕上げ   ● 和包丁の柄を漆で仕上げる

和包丁の柄を選ぶ時の注意

藤次郎
和包丁の柄
薄刃165~180mm用


ARC
和包丁の柄
出刃165mm用

和包丁の柄を選ぶ際は、刃の種類とサイズに合ったものを選択しましょう
種類とサイズが合っていないと、柄付け自体ができません

出刃用、柳刃用、薄刃用、菜切用など、種類によって穴の大きさと奥行きが異なっており、外観形状も微妙に違います
ざっくり言うと、柳刃用は外観が細長く、出刃は太め、薄刃はその中間です
出刃用の柄の穴は厚みが厚く、菜切りは薄い形状になっています、このため、柄付けする包丁と柄の種類が合っていないと、全く入らなかったりスカスカになったりするのです

さらにそれぞれの種類に対して、165mm用(五寸五分)、210mm用(七寸)など、専用のサイズがあります

このあたりをよく調べずに、「和包丁用の柄ならどれでも一緒だろう」と考え、柄付けに失敗する人も多いようです(amazonの和包丁の柄のレビューを確認してみると、合わない柄を購入して失敗した報告が散見されます)