「オピネル」というナイフ
このページ、「オピネルについて」は、オピネル使って30年、野営回数600回超の
月寅次郎が、これまでに書き溜めた、オピネル関連のコンテンツをまとめたものです
コンテンツ量が多いですので、下記目次をご活用下さい
※ お気をつけ下さい!
オピネルに関しては、あまりに稚拙なコンテンツが、ネット上に溢れています
具体的に言ってしまうと、「
オピネルは初心者向きで、キャンプにもぴったりのナイフ!」、もしくは、「
オピネル買ったら『オイル漬け』は定番の儀式!」というたぐいのコンテンツです
「
いくらなんでも、それはないだろう」と思いたったのが、当ページ作成のきっかけとなりました
こちらの、オピネルのナイフは登山にもおすすめ!(YAMA-HACK) …を劣悪な例として挙げておきます。オピネルの良い点だけを取り上げ、デメリットに全く言及がありません(購買誘導型の典型例で、こういうページは実に多いです。読む記事は選びましょう)
上記2点については、反証記事を執筆しましたので、参考にしてください
「オピネルはキャンプにおすすめ!」は本当か?
「オピネルのオイル漬け」は、最悪のカスタム
このページを上梓して以来、アウトドア系ユーチューバーが「オイル漬けは必用ない」と言い出すようになりました
それまでは「オイル漬けは定番の儀式!」としきりに訴えていたのですが、まさに「手のひら返し」の様相を呈しています。(全くもって節操がありません。明言しておきますが、このページが元祖です)
新着・加筆修正した記事
- 「オピネル」とは
オピネルに初めて触れる人のために、「オピネルは、どんなナイフなのか?」を、簡単に解説しました
言ってみれば、「オピネルの早わかり」です。短時間で読めるよう、内容をコンパクトにまとめました
- オピネルのカスタム(ハンドルの漆塗り)
90年代初頭に購入した、古いオピネルをカスタムしました
以前、ブレードを鏡面に仕上げたもので、今回はハンドルを漆で塗って仕上げました
オピネルのオリジナル形状は変更せず、木の質感を活かし、表面仕上の美しさにこだわりました(今回は、動画でも撮影してみました)
- 「オピネルはキャンプにおすすめ!」は本当か?
ネット上には、「オピネルはキャンプにぴったり!」と、声高に訴えるページがあまりに多いです。果たしてそれは本当なのでしょうか?
「ウソはウソであると見抜ける人でないと、難しい」というのは、蓋し名言です
このページでは、結構思い切ったことを書きました。例を挙げれば…、
「フォールディングナイフの中では、世界一水に弱い」 や、
「伝統あるオピネルであるからこそ許されることであって、これがオピネルでなかったら、返品の山」 …などです。(あながち間違ったことではなく、これは事実です)
ページ末尾では、オピネルの輸入販売業者は、不利益事実の不告知(消費者契約法 4条2項)」に抵触しているのではないか?…とか
「CAMP HACK」「YAMA HACK」「BE-PAL」などのアウトドア系総合情報サイトも同様に無責任とも断罪しましたが、あなたはどう思いますか?
- オピネルのサイズ選び - やや大きめが良い4つの理由
オピネルを、キャンプ料理で使う場合は、やや大きめがおすすめです
(ミニマム装備や、ウルトラライト登山を志向する場合は、また別になります)
ナイフマニア目線で解説していますので、「スキナー」や「リカッソ」というナイフ用語も出てきますが、気にせず読み進めてください
個人的に使ってるのは、ノーマルタイプのNo.10と、スリムナイフのNo.15です
ページの末尾には、オピネルの用途に応じた最適なサイズを解説しています
オピネルのサイズとナンバーの対応表も併記していますので、自分に合ったオピネルを選ぶ際の参考にしてください
オピネルの扱い方、使い方、手入れ、用途
オピネルの基本的な扱い方や、オーナーが習得すべきこと、やってはいけないカスタムの例などです
一部にマニア目線できびしく批評した箇所もありますが、オピネルを愛するが故だと捉えていただければ幸いです
- 刃が出ない時の対処法(サヴォワ打ち・コンコンとは?)
オピネルユーザーの基本習得事項です、オピネルを買ったら必ず覚えておきたいスキルです
そんなに難しいことではありませんが、きちんと解説したページがありませんでしたので、改めて作ってみました
そもそも刃を固くなるような使い方をしないことが一番ですが、固くなってしまった場合はコンコンして刃を出しましょう
- 刃の固着を防ぐための、使い方と洗い方
オピネルの基本的な扱い方です
オピネルの使い方と洗い方を理解していれば、コンコンする必要すらありません
オピネルを長年使っている人であれば、意識せずともおのずからこのような使い方をしているものです
果汁の多い果物を剥く場合、洗う際に気を付けること、釣りに使えるか?などなど
オピネルの使い方を知らない人にうっかり貸してしまうと、ハンドル全体をきれいに洗って返してくれたりしますので、よくよく気を付けましょう
- 「オピネルのオイル漬け」は、最悪のカスタム
「乾燥と切削を終えて、寸法微調整済みのハンドル材に、油をどっぷり浸透させる」ということが何を意味するのか、某キャンプ系キュレーションサイトの業界ライターには判らないようです
そしてそれに釣られてしまう、初心者キャンパーの多いこと多いこと…
- オイル漬けがトラブルにつながる理由
ハンドルが水を吸って膨張すると、ブレードが出なくなりますが、それはオイルでも同じことです。
(どうしてこんな簡単なことが分からないのでしょう?)
また、亜麻仁油やクルミ油などの乾性油は、気化して乾燥するのではなく、酸化による重合反応によって固化します
つまり乾性油が乾くには、空気中の酸素に触れる必要があり、深部に浸透したオイルは酸素に触れることができないため、いつまで経っても固化することができません(こうなると、本当に最悪です)
- 海外では「オイル漬け」が流行らないわけ
「オイル漬け」が、日本国内でしか流行っていないのはなぜでしょう?
それは、アクセス数を稼ぐことしか考えていないアウトドア系総合情報サイトが原因です
本来は「ガセネタ」に対して警鐘を鳴らす立場の大手サイトが、こともあろうか、逆に拡散させてしまったのです
また、受け手側のリテラシーが低いことも相まって、「ガセの拡散ループ」ができ上ってしまいました
- オイル漬けとオイルフィニッシュの違い
ナイフ製作の観点から、「オイル漬け」を解説してみました
オイルフィニッシュとはどのような木材表面処理なのか、樹脂浸透積層強化木とはどういうものか、それさえ知っていれば、「乾性油に長時間浸けよう」というおバカな考えは起こらないものです
「何も知らない」とは、本当に恐ろしいものです、ガセネタに簡単に踊らされてしまうのですから
- オピネルの隙間を削るのは、最後の手段
よほどのことがない限り、安易に削るべきではありません。削った結果としてブレードにぐらつきが生じ、わずかでもブレが出るようであれば、フォールディングナイフとしては終わりです
ナイフとしては不良品でしかありません(車で言えば廃車扱いです)
やむを得ず削って調整する必要がある場合は、完全乾燥後にやりましょう(切削加工後の寸法の引けが少なくて済みます)
オピネルの分解
オピネル
ステンレス
上の画像はオピネルを分解したもので、細長い方が
鏡面ブレード・漆塗りカスタムのフィレナイフ、その下がブレードを
鏡面仕上げにした旧タイプのオピネルです
加筆修正を繰り返すうちに、かなりの長文になりましたので、7ページに分割しています
下の解説ページ分解しているのは、
ノーマルタイプのオピネル(旧ロゴの古いもの)ですが、後日
スリムナイフ(オピネルのフィレナイフ)も分解しましたので、双方の相違についても一部解説を加えています(基本的な構造は同じです)
さらに、スリムナイフの方は、
ピンを代用品で自作しましたので、そちらの記事も追加いたしました
オピネルの分解・ピン製作・組立 目次
- オピネル分解の概要、必要な工具
オピネルの分解に必要な工具をすべてリストアップしました
工具を買うのを惜しんで、無理やり何とかしようと試行錯誤する方も多いですが、長時間奮闘した結果どうにもならず、後から工具を用意するのであれば、最初からさっさと最適な工具を用意した方が得策です
オピネルを壊す覚悟で分解するのであればまだしも、余計な傷を付けずに、きれいに分解したいのであれば、精度が高く信頼のおける良質の工具を使用しましょう(それだけの価値があります)
- ロックリングを外す
ペンチでブレードを挟み、ブレードをロックした状態で無理やり引き上げて外すのは非常に危険です
また、弾性限界を超えてしまうと、リングが広がって元に戻らなくなります
何でもそうですが、ロック状態のものを力ずくでこじ開けると、たいてい壊れます
当たり前の事です。分別のある大人の方は真似をしないようにして下さい
- ピンの頭を削って叩き出す
オピネル分解の解説ページにいくつかに目を通しましたが、ピンを叩き出す際、センターポンチを使用している方が多々おられました
きちんと平行ポンチで叩き出しているのは、あまり見つかりませんでした(このページ作成後はかなり増えました)
酷いものになると、穴あけポンチ(皮抜きポンチ)で叩いていたり、釘で打ち込んでいた方もおられました
こんな事を言っては怒られるかもしれませんが、整備や工具に通じた視点から見る限りでは、「ば~っかじゃねえの?」と思います
- ピンを抜いて、ブレードを外す
最後まで叩き出してピンを抜き取るか、ある程度出たところで引き抜くか、どちらでも構いません。ただ、どちらかというと前者の方がおすすめです
ニッパーを使用して、「釘抜き」の要領でピンを抜いている方もおられるようですが、これは絶対にやめたほうが良いです
ピンに斜めに力が加わりますので、垂直に抜きとることができず、ピンを曲げてしまいます。こうなるとピンの再利用は不可能です
- 分解完了 - ピンの外径計測
オピネルの分解が完了しました
適切な工具を使用して正確に作業すれば、オピネルの分解は可能です
とはいえ、オピネルはそもそも分解可能なようには設計されていないことも確かです
分解できない造りの製品を無理やり分解するのですから、壊れて元々という覚悟をもって望みましょう
この分解をするために、わざわざ工具を買う必要がある場合は、特にです
「そのくらいの工具は当然持っています」、「どれも基本的な工具ばかりじゃないですか?」という人であれば、問題なく分解できると思います
- ピンを代用品で作り直す
外径3.0㎜の洋折釘(真鍮製)を使用し、2.65mmまで削り込んでピンを自作しました
手作業で精度良く削り出すのは、そこそこ技量が必要です(時間もかかります)
腕に自信のある方は、チャレンジしてみてください(そうでなければ、止めた方が無難だと思います)
- オピネルの組立(ブレード取付)
オピネルの組み立ては、分解に比べると比較的容易です
とはいえそれは、適正に分解がなされている場合に限ります。抜くときにピンを曲げてしまったとか、ピンの穴を広げてしまった場合は、この限りではありません
組み立ての際は、摺動部にグリスを塗って組み上げてやりましょう。わたしは安全性と安定性の両面からシリコングリスを使用していますが、無ければ普通のリチウムグリスでも構いません (直接口に入れるわけではないので)
※ オピネル分解時の注意
オピネルの分解についてですが、「センターポンチ」でピンを叩き出そうとするのは、根本的に間違っています。抜けなくて当然です
センターポンチは先端が尖っており、穴を穿つための工具です。無理に打ち込むと、楔(くさび)を打ち込んでいるのと同じ状態になり、かえって抜けなくなります
叩き出し用の正しい工具は「ピンポンチ」です
他にも、ロック状態でブレードを無理やり開いてロックリングを外すなど、ネット上にはあまりに危険な方法も散見されます。気を付けてください
上記リンクの分解解説ページには、「間違ったやり方」に対する注意喚起も併記しています。冗長な解説になっている部分もあるかと思いますが、なにぶん分解修理が得意な工具マニアの人による解説ですので、細かいところまで突っ込んだ記事になっているかと思います(ご容赦ください)
ノーマルオピネルの方は現在カスタム中です。ハンドルの研磨と塗装に目処がつきましたので、ブレードをはめて動画にしてみました
このオピネルはブナ材のノーマルタイプですが、丁寧に研磨と塗装を繰り返したおかげか、斑の部分が金色に輝くようになりました
漆は、いつもの「透(スキ)」ではなく、「透明」を使用しています
(重めの色合いにせず、木の地肌を活かしたかったためです。そこそこきれいに仕上がったと思います)
ブレードまで完成したら、改めてページを作って披露の予定です
オピネル 鏡面仕上げカスタム - OPINEL Mirror finish
鏡面仕上げにすることで、ブレードの美しさがぐっと引き立ちます
旧ロゴの古いオピネルを、鏡面にカスタムしました
使い込んでいただけに、
黒サビや
ピンホール状の腐食があり、何度もやり直すはめになりましたが、最終的には極上の輝きに仕上げることができました
ステンレスの鏡面仕上げは、若干黄色っぽい銀色になりますが、炭素鋼の鏡面仕上げはまさに銀白色、白銀の輝きです
- 下地出し1(耐水サンドペーパー)
まずは黒サビ(薄い酸化被膜)を落とし、製造時に付いたグラインダーの目を除去します
240番の耐水ペーパーでかなり磨き込み、グラインダー跡を落とすことができましたが、ピンホール跡はなかなか取り去ることができません…
- 下地出し2(砥石)
800番の中砥石でブレード全体を研磨します。砥石に当てることでブレードの微細な凹凸がよく分かります
耐水ペーパーで磨くだけでは分からないような、わずかな平面の歪みが色の違いとなって浮かび上がりましたた
- 耐水ペーパーの番手上げ磨き
再度耐水ペーパーの240番に戻り、徐々に番手を上げながら2000番までもっていきます
言葉で書くとそれだけですが、地味でしんどい作業です。「こんなことをやって何になるのだろうか?」という疑問が、時折頭の中をよぎります
- コンパウンドで鏡面仕上げ
ラビングコンパウンド(傷取り用の粗目のコンパウンド)を使用して、サンドペーパーの目を除去していきます
この工程を経ずに、いきなりピカールで磨いて「きれいな鏡面になりません」と嘆く人のなんと多いことでしょうか(そりゃあ無理ですよ)
ここまで持ってくると、最終鏡面仕上げ時の、良否の予想がつきます
この段階で瑕疵が見つかるようであれば、この後いくら頑張ってもあまり意味がありません。さあ、どうなったのでしょう?
- 鏡面仕上げの状態確認
鏡面用コンパウンドをかける前の状態ですが、ブレード表面を拡大して確認してみました
すると、なんということでしょう。小さなあばた状の凹みが多量に見受けられます
あれだけ時間をかけてやったというのに、下地出しが不十分だったということです
- 赤棒でバフがけ(下地出しのやり直し)
これ以上やると、腱鞘炎になりそうな予感がしたため(というより手で磨くのがいい加減嫌になったので)、プロクソンのミニルーターを物置から引っ張り出してきました
最初から使えば良かったのかもしれませんが、電動工具での磨きにはそれなりのテクニックも必要です。下手くそが磨くとすぐに磨きむらが出てしまいます
再度ラビングコンパウンドで手磨きを行い、次の工程に進んで大丈夫なことを確認しました
- 最終仕上げ、鏡面状態確認
長い長い下地出しのやり直し工程が続きましたが、ここまで来てようやく鏡面仕上げの工程に入ることができま注す
50ミクロン、5ミクロン、0.5ミクロンと、コンパウンドの番手を上げ、鏡面に仕上げます
かなり日数がかかりましたが、ようやく白銀の輝きを手に入れることができました
- OPINEL Mirror finish(英語)
英語版です。すべてのページを英訳したわけではありませんが、「オピネル鏡面カスタムのページ」を抜粋し、英訳しています
オピネル鏡面仕上げのビフォー・アフター
研磨前のオピネル 筋状のグラインダー跡と、黒錆の腐食があり、あまりきれいな状態ではありません
作業中 最終的な鏡面の仕上がりは、下地のでき如何にかかっています
鏡面加工を施したオピネル 研磨を繰り返し鏡面となった、白く輝く美しいブレード
今回、鏡面仕上げにしたオピネルについて
オピネル
カーボンスチール
今回カスタムしたオピネルは、長年使いこんだ
カーボンスチールのものですが、
ステンレスブレードの場合でも、カーボンスチール(炭素鋼)とやり方は何ら変わりません
ステンレスの場合は、研磨後の錆の発生に気を使う必要がないため、いくぶん楽ですし、炭素鋼よりも硬度が低いため、(わずかではありますが)研磨も容易で作業もやりやすいです
あくまでもステンレスの方が若干軟らかい程度で、どちらも刃物としては十分な硬度があり、決して短時間で研磨作業が終わるという意味ではありません
また、
オピネルのブレードは全鋼ですので、ブレード側面も刃先と同じ硬度が出ており、大きな傷や凸凹、腐食痕等がある場合は、修正にかなり根気が必要な作業になります(気長にやりましょう)
鏡面仕上げの完成後は、ステンならば普通に使用しても大丈夫ですが、カーボンスチール(炭素鋼)の場合は、アクの強い野菜などを切ると、すぐに黒ずみます
黒ずむのは、黒色酸化被膜が生成されたためであり、ナチュラルな黒サビ処理と思ってよいです。もちろん、また磨けば元に戻ります
使用に伴って細かい傷が入ってきた場合は、その傷が取れる程度の粒度で研磨し、また徐々に粒度を上げて研磨すれば、鏡面に戻ります
鏡面のため、ブレード付け根に、柄の断面が映り込みます
美しく磨き上げられたブレードは、自分でカスタムしたということもあってか、眺めていて飽きることがありません
ブレードの美しさだけが強調されがちな鏡面仕上げですが、他にも、表面に汚れや水分が残留しにくくなるため、ブレード表面を清浄に保ちやすく、
結果的に錆に強くなるというメリットがあります
また、水洗いの際に、水分がブレード面に張り付かず、弾くようになるのは、見ていて実に気持ち良いです(研磨直後は特に)
一方では、
吸盤効果が出るため、水分の多い食材を切る場合は、食材がブレード面に張り付いたり、切り抜け時の抵抗が増す場合がありますが、このあたりは致し方なく、必要悪といったところです(気になるほどではありません))
オピネルフィレナイフ 漆塗り + 鏡面カスタム
オピネル フィレナイフ(スリムナイフ)のカスタム
- オピネルフィレナイフ 漆塗り + 鏡面カスタム
オピネル
スリムナイフ
オピネルのフィレナイフは、日本ではスリムナイフという名称で販売されています
(諸外国では、本来の"OPINEL Fillet Knife"という商品名です)
国内では「フィレナイフ」という呼称に馴染みがないため、消費者に分かりやすい商品名にしたのでしょう
このフィレナイフはかなり使い込んでいたため、
ブレード表面は傷だらけで、ハンドルの状態も決して良くはありませんでしたが、根気よく作業することで、極めて美しいナイフに生まれ変わりました
ブレードはいつものように磨き上げて、「
鏡面仕上げ」に加工しました
ハンドルの仕上げは、漆による塗装です
当初は
拭き漆仕上げの予定でしたが、途中から予定を変更して薄塗りを繰り返し、
木地呂塗(きじろぬり)風に仕上げました
深みのある褐色の塗面の下に木目が浮かび上がり、「
杢」の出ている面は非常に美しいです。自画自賛ではありますが、自分でもここまで美しく仕上がるとは思ってもみませんでした
その代わりと言ってはなんですが、平滑な表面に仕上げるまでにかなりの手間がかかっており、
塗った回数は全部で11回となっています
こちらはカスタム前のオピネルの画像です
かなり使い込んでいたため、ブレード面には多数の傷があり、かなり状態の悪い状態からのスタートでした
このフィレナイフに使用されているハンドル木材は、「ブビンガ」になります
他にもオリーブを使用したスリムナイフなども販売されています
ブビンガは紫檀と同じくマメ科の木材になり、比重が高く、銘木の類になりますので、丹念に仕事をして塗り上げると、驚くような美しい仕上げにすることも可能です
オピネルナイフ、分解・改造・カスタム時の注意
オピネル
ピスタチオ
●
ネットの情報を鵜呑みにして、何も考えずに作業すると、たいていうまくいきません。手を下す前によく考えてから作業しましょう
● すべては『
自己責任』のもとに作業しましょう
● そもそもオピネルナイフは、
ブレードを取り外せる構造ではありません
● 設計時の想定していない作業を行うのですから、
壊れて当然だという認識で作業にあたりましょう
● セーフティーリングを開きすぎたり、脱着を繰り返すと、塑性変形を起こしてバカになる可能性があります
● その他様々な理由で、ブレードを破損したり、ナイフを元通りの状態に戻せなくなる可能性があります
● 作業環境を整え、構造を理解し、素材の状態をよく観察し、休憩をはさみながら作業しましょう
● 刃付(オピネルを研いで切れ味を復活させること)に自信の無い方は、そちらを先に習得しましょう
● 必ず
刃引きをしてから作業にあたりましょう
● 怪我、流血に気をつけましょう
こういう事を書いていて言うのもなんですが、「自分でも、あまり守れてないな」と、正直思います。 …と、いうわけで、自戒を込めて書き留めた次第です
オピネルのその他の解説
- オピネルを研ぐ(刃付)
オピネルのブレードに使用されている鋼材は研ぎにくいということもなく、一般的な砥石で難なく研ぐことができます
とはいえ、形状的には決して研ぎやすい方ではなく、むしろ、普通の包丁を研ぐよりも技量や慣れが必要です
なぜかというと、アゴが無いために根元部分が研ぎにくく(リカッソも無い)、また、ブレード先端の反りが大きいため、小刃の幅を均一に仕上げるのに慣れが必要だからです
オピネルのブレードを、先端部分まで均一な幅の小刃に仕上げ、なおかつ確実に刃付ができるようであれば、刃物の研ぎが上手な方だと言えるでしょう。慣れていない人が研ぐと、先端の小刃の幅が広くなりがちです
- オピネルの切れ味
オピネルの切れ味について解説してみました
つまるところ、どれだけ精緻な刃付をすることができるかにかかっているのですが、カーボンブレードはハガネ(炭素鋼)だけあって、かなりのポテンシャルを見せてくれます
ステンレスブレードは、言ってみれば「それなり」ではあるのですが、きちんと研げる人が刃付けすれば、(刃物を研がない人からすると)キレッキレの刃に仕上げることができます
- オピネルのブレード形状を考える
オピネルのブレードは、なぜあのように先端が反り上っているのでしょう?
オピネルの用途を考えると、形状としては一般的なドロップポイントがベストだと思うのですが、これではまな板の上で引き切りする際に先端が浮いてしまい、刃渡り全体を有効に活用できません
ブレード形状についていろいろと考えているうちに、これは「オピネルの弱点」克服するための形状であり、コンコンで刃を出した際に、ブレード先端をつまんで引き出すためのものであると気が付きました
刃物の研ぎ方
刃物を研ぐのは、決して難しいことではありません
最初は思い通りにいかないかもしれませんが、自転車と同じで、一度できるようになれば、その技術は一生役に立ちます
わたしが実際に研いでいる様子は、下の動画で見ることができます
5分少々の時間で、さくっと刃を付けています
後半の「最終仕上げ」は、やらなくても構いません(自己満に近い部分です)
重要なのは、角度をぶらさないことと、砥石を当てたい部分にしっかり指を当てることです
※ 解説は字幕で補足しています。
日本語字幕をONにしてご覧ください
でないと、
単に手を前後に動かしているだけの動画にしか見えません
研ぎ音がよく聴こえる音量で、大きめの画面で視聴すると、「
何をどう研ごうとしてるか?」が判ると思います
月寅次郎チャンネル (YouTube 動画一覧)は、こちらです
(「いいね」をもらえると嬉しいです!)
※ 警告です (コピペで作ったページが蔓延する現状への警鐘)
言うまでもありませんが、当サイトのコンテンツはすべてコピー・無断転載禁止です
URLを貼ってSNSでつぶやくなど、リンクを貼って当ページを紹介するのはOKで、むしろ歓迎です
当ページの内容は、かなりマニア目線での解説となっていますが、それらは何十年にも渡り、様々なナイフや包丁を使い、研いで刃付を行い、修理やカスタムや、分解メンテナンスを経て得た知識に基づいています
内容を一部改変して読み上げ、あたかも自分の経験から得た知識のようにしてYouTubeにアップするのは、止めてください。動画だけでなく、テキストページ(文章)も同様です
以前、「オピネルのオイル漬けは最悪のカスタムというページを作ったところ、類似した内容のページや動画が、雨後の筍のように増えました
それまで「オイル漬けは、買ったらすぐ行うべき定番の儀式」といった、肯定的なページしか存在しなかったのにです(これにはお笑いです)
また、「キャンプにはフィレナイフがおすすめ」と書いたところ、こちらも同様に、コピーページが大量に増えました。フィレナイフは、どちらかというとかなりマイナーなナイフだというのにです(欧米では別ですが)
このように、コンテンツ内容の盗作や、コピペで作った換骨奪胎ページは、実際に多数発生しています
黙って見ているのもなんですので、再発防止の警告として書き記します(目に余る場合は法的措置を取ります)
オピネルと他のナイフを比べると…
オピネルのメリットとデメリットをよく理解するには、異なるタイプのナイフを実際に使ってみることです
オピネルは伝統的でクラシカルな設計のナイフですので、現代的なナイフと比較してみると、メリットやデメリットが浮かび上がってきます
ここでは
わたしが実際に使っている、アウトドア用のナイフ2本(キャンプ用と登山用)を紹介します
(詳しい説明やオピネルとの比較画像等は、下のリンク先解説ページにてご覧ください)
ガーバーのフィレナイフの方は、釣りを兼ねた滞在型キャンプで、数か月間包丁代わりに使用しました
Kershaw Ace 1710は、実測25gという超軽量を生かして、
ウォーカーズ・オートルート の踏破や、大雪山縦走、後立山連峰縦走、表銀座ルートなどで使用しました
キャンプにおすすめは、刃渡り長めのフィレナイフ
水に濡れても滑りにくいゴム引きのグリップ、ベルトループとシャープナーが実装されたシース、非常に実用的で、釣りにキャンプに活躍しました
サイズが大きいので携行性は今ひとつですが、滞在型キャンプでは、それを上回る良さを発揮します(オピネルとの比較画像あり)
登山用ナイフのおすすめは?(日帰り、テント泊、アルパイン)
重量25gの超軽量ナイフ。登山時には必ず携行する愛用品。残念ながら廃番となったがこのような軽量ナイフは実に貴重。惜しむらくは鋼材が柔らかめで刃持ちが今ひとつなのだが、あくまでも軽調理にしか使用せず、ヘビーユースはしないので問題はありません(定期的に砥げばよいだけです)
どちらも現代的なナイフであり、オピネルには無い優れた特性を持っています
その優れた特性というのは、「現代的なナイフとしては当然の事」ではありますが、オピネルが誕生した120年前頃には実現できなかった技術なのです
(オピネルは、良くも悪くもクラシカルなナイフというのは、そういう意味です)
それぞれのナイフの使い勝手、特徴、感想などは、上記リンク先にてご覧ください
アウトドア用とは書きましたが、ブッシュクラフト(バトニングやフェザークラフト用途)という意味ではありません(できないことはありませんが、用途として適性がありません)
オピネル
アウトドア
オピネルは、風情あふれる素敵なナイフで大好きなのですが、「本当に実用的なアウトドア用ナイフとは?」という視点で考えると、わたしの中で上記2本が挙がります。山やキャンプに行くときは、
いつもこのどちらかを持参しています
追記: 漆塗りカスタムのフィレナイフが完成してからは、オピネル フィレナイフの出番が増えました
導管が完全に埋まるまで漆塗りを施し、ハンドルが耐水仕様となったため、オピネルの弱点が克服され、アウトドアやキャンプでも水濡れを気にせずに使えるようになりました
ノーマルのオピネルの方も漆を塗って耐水仕様としましたので、これからは活躍してくれると思います
わたしのオピネル - my OPINEL
わたしのオピネルは、90年代初頭に購入した旧タイプのもので、サイズはNo.10です
オピネル
カーキ
現行タイプとは異なり、
収納時のブレードロック機能がありませんが、柄にプリントされているオピネルの商標やブレードの刻印がクラシカルで、なかなかに趣があります
旧タイプのオピネルは、現状では入手が難しいでしょうし、わたしにとっては昔使った思い出の品です
もう積極的に使う予定もありませんので、化粧直しということで鏡面加工を施し、『永年観賞用・思い出保管用』になっていただきました(とかいいながら、また使うかもしれません)
鏡面仕上げの方法や手順、必要な道具などを知りたい方は、上記リンクの作業手順詳細を御覧ください。ブレードの腐食が予想以上だったため、紆余曲折を経ていますが、失敗した部分も含めて、いろいろと参考になるかと思います
●
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