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オピネルの扱い方と洗い方(刃の固着を防ぐ使い方)

最終更新日: 作者:月寅次郎

「コンコン」もいいけれど、最初から固くしないのが一番

オピネルの扱い方と洗い方(刃の固着を防ぐ使い方)

オピネルのブレードが固くならないよう、正しく使うためには、ハンドルを濡らして吸湿させないことが重要です
特にセーフティリングの周辺、ブレードの付け根のピボット部分に、水分を付着させないことがポイントとなります

それでは、「濡らさずに使うには、どのように扱うとよいのか」「洗う時は、どうすべきか」について、解説してみましょう

オピネルを大切に扱うか、それとも実用品として使い倒すか?

「オピネルのコンコン」を習得していれば、「ガシガシ使ってザブザブ洗い、積極的にコンコンして刃を出す」というダイナミックな使い方も可能です。それはそれで一つのやり方です

オピネルを、箱入り娘のように大切に扱うか、実用品として手荒く扱うかは、人それぞれです

大切に扱えば、刃が固くなることもありませんが、万一固くなっても、コンコンすれば刃は出せますし、油漬けなどによってハンドルを膨張・固着させていない限り、水分に起因する吸湿・膨張は、乾燥させることで元に戻せます

このページでは、「オピネルを大切に扱う場合の使い方」を解説していますが、オピネルを実用品として使い倒す場合でも、参考にすることは可能です(知識として知っておくだけで、不具合の生じる可能性を減らすことが可能です)
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使用時は、果汁などが手元に垂れてこないよう配慮

ソロキャン
レシピ

食材などをまな板の上で切る場合には、さほど注意する必要はありません(普通に使用して大丈夫です)
配慮する必要があるのは、果汁を豊富に含んだフルーツを、手に持って剥く場合などです
切っているそばから、果汁が溢れ出し、ブレードを伝って、柄の接合部(ピボット部分)を濡らすことがあります
果汁は果糖を含んでいるため、乾燥するとベタベタしたガム状の物質に変化し、ブレード固着の原因になります
単に水分のみであれば、乾燥させれば元の状態に戻るのですが、糖分を含んだ水分は、少々やっかいなのです

こういうフルーツを切る時は、刃先を上に向けずに、刃を少し寝かせて水平になるようにして使います
どうしても果汁が多量に出てくる場合は、(少し使いにくいかもしれませんが)刃先をやや下方向に向けて、使います
こうすることで、溢れた果汁が、ブレードの根本方向に流れてくるのを防ぐことができます

狩猟や釣りの場合は?

狩猟生活
技術アップ実践集

果汁より厄介なのが血液ですが、ここでは多くを語る必要はないでしょう
狩猟経験が豊富なハンターさんが、獲物を締めたり解体する場合には、迷わずシースナイフを選択するからです

このような用途にフォールディングナイフを使用するとしたら、「トラウト&バード」くらいでしょうし、そのような場合でもマイカルタなどの耐水性の高いハンドル材を使用したフォールディングナイフを使うと思います(狩猟用途でオピネルを使う方は、あまりおられないと思います)

それでは、「釣り」の場合はどうでしょうか?
釣りにナイフを使用する場合は、「締める、鱗を落とす、内臓を取る、三枚におろす」などの作業をこなすことになります
熟練者なら上手にこなすかもしれませんが、慣れていない場合は、ナイフのハンドルに魚のぬめりや鱗が付くなどして汚れがちです
ハンドルをしっかり洗わないと、後々匂いが残る場合もあります

そのようなわけで、釣りに使用すると、どうしてもハンドルを丁寧に洗う必要性が増します。吸湿の可能性も高くなり、あまりおすすめすることはできません

淡水ならばまだ良いですが、うっかり海水に浸けてしまった場合は塩抜きも必要となり、いろいろと面倒です。最初から使わないほうが良いでしょう

ただ、前述のように・・・
「ガシガシ使ってザブザブ洗い、コンコンで刃を出す。それが俺のオピネルの使い方だ!」 ・・・という場合は、この限りではありません
それはそれで実に素晴らしく、それこそが、「真のオピネルの使い」だと思います

洗う際は、できるだけハンドルを水に浸けない、濡らさない

オピネルを洗う場合は、原則としてハンドル部の木材を水に浸けないようにして洗います
水を張った洗い桶に、オピネルを浸けておくのは最悪の行為です。ハンドルが膨張して、ブレードが固くなり、刃が出なくなってしまいます

ハンドルを洗う時は?

マイクロファイバー
クロス

ハンドルを清掃する際は、固く絞ったふきんなどで拭き取ってキレイにします
どうしても水で洗い流す必要がある場合は、長時間水につけないようにして、サッサッと洗います
洗った後は、できるだけ水気を拭き取って、速やかに乾燥させましょう

温度の高い場所に置いたり、ドライヤーの温風などで急速乾燥させるのは、木材がゆがむ原因になる場合がありますので、避けて下さい
(もしくは自己責任で、程々の加減で、様子を見ながらやりましょう)

ブレードの洗い方

使い捨てクロス
食器洗い

ブレードを洗う時は、刃先を下方向に向けて洗います
上方向に向けると、水や洗剤が、ブレードを伝ってピボット部を濡らしてしまうからです

流水で洗う場合は、特に下方向に向ける必要がありますが、スポンジで洗う場合は、水の勢いがありませんので、水平に近いくらいの状態でもさほど問題ありません

流水の勢いや、ナイフの角度を自分で加減して、「ブレードの付け根を濡らさないようして、ブレードのみを洗う」ということが重要です

ステンレスの場合はまだ良いですが、ブレードがカーボンスチール場合は、特に付け根を濡らさない方が良いでしょう
ハンドルとブレードが接している部分に錆が発生すると、木材の方に錆が食い込む可能性があり、固着の原因となりかねないからです

刃物扱いの心得のない人には、要注意

盲点かもしれませんが、これも頭の隅に入れておきましょう

キャンプ場で大人数で料理する際になどに起こりがちですが、オピネルの扱い方を知らない人に貸してしまうと、ハンドル部分まで台所用洗剤できっちり洗って、びしょびしょに濡らした状態で返してくれる… という事が起こりえます

悪気はないのは判りますが、貸した方は涙目です(せっかく大事に乾燥させた状態で育ててきた場合は、特にです)

オピネルを貸す場合は、扱い方を知っている人にするか、使い方を簡単に説明してからにした方が無難です

保管時は、湿度低めの場所で

オピネル
合皮ケースセット

保管時は、湿度が低めの、乾燥した場所で保管することが望ましいです
湿度が高い場所は、様々な意味でよろしくありません

日本は国土全体に雨が多く、多湿環境ですので、オピネルが生まれたフランスとはかなり異なります。「乾燥した場所に保管する」というのは、なかなか難しい場合があります

大気中の湿度自体が高い時期は、どうしようもありませんが、それほど過敏になる必要もありません
湿度が高い場所や、水がかかるような場所での保管は望ましくないとはいえ、直接水分と接することに比べれば、それほど大きな問題にはならないからです

とはいえ、登山やキャンプなどで、あらかじめ天候が崩れることが予測される場合は、オピネルをジップロックなどの防水袋に入れて持ち運ぶと良いでしょう

剥き出しの状態でザックの雨蓋やポケットに入れ、そのまま行動中に雨に降られてしまうと、いざ使おうとした時に、固くなって刃が出ない場合もありえます

カーボンスチールのオピネルの場合は、防錆対策として、ブレードに刃物用油を塗っておくとよいです。刃物油というと椿油が有名ですが、これは高度な精製技術がなかった前時代の製品です(丁子油も同様です。敢えて酸化する油を使い、打ち粉を使って伝統的な「儀式」をしたい、…というのであれば話は別ですが、そういう人はごく少数でしょう)

現代であれば、酸化も揮発もしない安定性に優れた流動パラフィンの使用が推奨されます
人体への安全性も高いため、刃物用防錆油はもとより、シェーバーオイル、ベビーオイル、さらには食品製造機械の潤滑、化粧品、クッキングシートなどにも使用されています
流動パラフィンは、「ミネラルオイル」とも表記されます。世の中に流通しているベビーオイルやシェーバーオイルの中身は、実質的には流動パラフィンです

流動パラフィン使用の刃物用オイルと代用品の例
AZ(エーゼット)
刃物専用サビ止め油
220ml
Panasonic
シェーバーオイル
50ml
ジョンソン
ベビーオイル
300ml

● 関連ページ : DIYでドライボックスを自作する
このページでは、ドライボックスの自作と、湿度低下の実験をしています
カメラ用に作った防湿庫ですが、オピネルであればNo.10サイズまでは余裕で入ります

ページ内でも言及していますが、ボックス型の容器を使用せずに、ジップロックなどのフリーザーパック(袋型)を使用するのも有効です(むしろ、内部の空気を追い出した状態で封ができるので、乾燥剤が有効に使え、湿度も下がりやすいです

適度に使用して、ブレードの固着を防ぐ

オピネルを全く使用せずに長期間放置していると、ブレードが固着して開きにくくなることがあります
たまには使ったり、また、使わないまでも、刃の開閉を確かめるだけでも、固着を防ぐ効果があります

ハンドルを濡らすような使い方をした後は特に、時々ブレードを開いて、固くなっていないか、乾燥が進むにつれて、徐々に元の状態に戻ってきているか、様子を見てあげて下さい

面倒くさい?オピネルはそういうナイフなのです

シトロエン
2CV
1/24スケール

マナスル
ケロシンストーブ

オピネルは、車で例えるとシトロエンの2CVみたいなものです

登山用のストーブでいうと、プレヒートが必要なケロシンストーブや、ポンピングが必要なガソリンストーブに相当します。どれも「使いこなし」が必要で、慣れていない人が使うと、ジェットにカーボンが詰まったり、天高く黄色い炎を上げたりして、すぐにへそを曲げてしまいます

オピネルは、耐水性やロック機構の設計において、決して現代的なナイフではなく、オールドスタイルのままなのです(そのため、フランスの肥後の守と呼ばれることもあります)

お洒落な外観に惹かれて買う人が多いのですが、そういう方は、オピネルがどういうナイフなのか、全く理解せずに買っていることがほとんどです

これは、ネット上の安易なオピネル紹介記事にも責任の一端があります

「オピネルはキャンプにぴったりのナイフ!」といったような、上辺だけの安直な記事が多く、オピネルの扱いの難しさについては、あまり言及されていません

おそらくオピネルに対する知識が不足したまま記事を書いているのか、もしくは商品を買わせるために、意図的にオピネルの良い部分しか書いていないのか、どちらかなのでしょう
前者ならば「にわかの素人さん」ですし、後者ならば「○そコンテンツ」です

オピネルは、決して初心者に優しいナイフではありません

個人的にはオピネル購入後30年程経ちますが、積極的に使っているかというと、それほどでもありません
どちらかというとカスタムばかりして遊んでいます
とはいえ、それでもよいのではないかと思います

実用性だけで判断するならば、濡れただけで刃が出しにくくなるオピネルは、60・70年代ならいざ知らず、現代の基準で考えると、すでにナイフとして「失格」なのです

ちなみにもっぱら使っているのは、… 登山用ナイフとしてはカーショウ1710を、 キャンプ用ナイフとしてはガーバーのフィレナイフを使っています

この2本は本当に実用的で、これらのナイフを購入してからは、オピネルの出番はめっきり減ってしまいました
追記:フィレナイフのオピネルを漆塗りにして、耐水性を高めるカスタムを行ってからは、再び積極的に使うようになりました

コールマン
ガソリンランタン

オピネルは、温もりと風情があって素敵なナイフですが、実用性を優先させた場合、現代的なハイテク素材が豊富にある中で、SNSでの写真映え効果を狙う以外に、積極的に選択する意味が見出しにくいナイフでもあります
でなければ、前述のクラシックカーやケロシンストーブの例えのように、不便で面倒くさい点を敢えて楽しむかです

ガソリンランタンなどもそうですが、LEDライトが一般的になった現代では、ガソリンランタンを使う意義は薄れています (被災時・非常時を除きます)
にもかかわらず、使う人がいなくならないのは、マントルの空焼きやポンピングカップの潤滑、ジェネレーターの交換など、使いこなしにコツが必要で奥が深いところが、逆に楽しさに通ずるからでもあります

あまりにもイージーで、誰にでもできてしまうことには、何の感動も生まれません
最初は上手にできなかったことが、経験を重ねて難なくできるようになる事こそが、面白いのです

そういう意味でオピネルは、他に類を見ない、面白いナイフなのかもしれません

● 併せて読みたい1:オピネルの刃が出ない時の対処法

● 併せて読みたい2:オピネルのオイル漬けは、最悪のカスタム

● 併せて読みたい3:オピネルの隙間を削るのは、最後の手段

● 人気のページ:オピネルの分解

オピネルのまとめ

オピネル オピネルのまとめページ
当サイトにおける、オピネル解説ページの全インデックスです

オピネルの扱い方、手入れ、カスタム事例、分解手順などなど、おおよそ30ページほどあります


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