自作ドライボックス(防湿庫)

最終更新日: 作者:月寅次郎

ジップロックコンテナーをドライボックスの容器に

湿度計付きのカメラ用小型ドライボックスを、DIYで作りました

カメラが一台すっぽり収まるだけの、小型ドライボックスです

自作ドライボックス(カメラ用)

ドライボックスといっても、ジップロックコンテナーに湿度計を取り付けただけなのですが、湿度計を分解して小型化し、蓋の膨らみ部分に湿度計の針を納めることで、スペース効率を追求しています

また、ギリギリまで小さなサイズの容器を使用することで、乾燥剤の能力を効率的に発揮させるようにしました
(乾燥剤の量にもよりますが、画像のように湿度13%まで乾燥させることも可能です)
ローコストながらも非常に高い乾燥能力をもつドライボックスに仕上がっています

自作カメラ用ドライボックス
自作カメラ用ドライボックス(蓋を開けた状態)

自作カメラ用ドライボックス

制作にあたっては・・・
 ● カメラ一台が収まるだけの、ぴったりサイズの収納庫
 ● 汎用性のある材料を使用し、低コストで自作
・・・を、重視しました

内容積が極小のため、少量の乾燥剤で充分な効果を得ることができ、維持費も低コストで収まります。

軽量でこのまま持ち運ぶことも可能ですので、湿度が高い季節の撮影旅行などでは、宿泊先や移動時の車内などでもカメラを低湿度状態に維持することができ、安心です

収納しているカメラは、Canon PowerShot G1X Mark2です(以前はCanon PowerShot G12を使っていました)
G12もジップロックコンテナーに収めて保管していましたが、G1X Mark2にカメラを変えたことで、サイズ的に収まらなくなってしまい、新しくドライボックスを新調した次第です

湿度計の改造、取り付け

シンワ測定
湿度計

T-3丸形
湿度計は、シンワ測定の「T-3丸形」を使用。分解して内部を取り出し、文字盤をカットして使用しています

湿度計の外寸は、「直径71×21mm」なのですが、コンテナにカメラを収めると、余剰スペースがなさすぎて、そのままでは湿度計が入らなかったため、このような加工を行ないました

ジップロックコンテナの蓋の膨らんでいる部分に、湿度計の針が収まるよう加工することで、より省スペースに配置することができました

こうすることでスペース的な余裕が生じ、収納時にカメラと干渉しなくなりました
改造した湿度計
小型の割には充分な視認性があり、すぐに湿度が判るので使いやすいです

湿度計の改造

SK11
ボンドガン

(グルーガン)

イーグル模型
ボディリーマー


角利
マルチクラフト
多機能はさみ

湿度計の裏側の加工状況、および、蓋との接着の状態です

ジップロックコンテナとの接着は、グルーガン(ホットメルト)を使用しました
接着が完了してもカチカチに硬化せず、ある程度の弾力性を持ちますので、開閉時の蓋の捻れにも追従するのが良いところです

湿度計の裏側には、ペットボトルの蓋を貼り付けて、裏蓋の代用としています

開口部を設けてあるのは、庫内の空気が湿度計測板と充分に接触できるよう、空気孔としての設置です
最初にキリで穴を開け、リーマーを使って穴を適当な大きさまで広げています
ちなみに、中に見えているゼンマイ状のパーツが、湿度によって伸び縮みするバイメタル(湿度計測板)になります

ジップロックコンテナーは、820mlサイズのものを使用しています
このサイズなら、PowerShot G1X Mark2も収まります

具体的な加工手順は…

1.湿度計のケースと風防、裏蓋を取り外す
2.文字盤を金切りはさみでカットし、サイズを小さくする
3.針の先端を切断して短くする
4.ペットボトルの蓋に穴を開け、文字盤の裏側に接着(湿度計測板と接触しないよう注意)
5.ホットメルト(グルーガン)で、ジップロックコンテナーと一体化

 …と、このような感じです
湿度計のケース分解は、それほど難しくありませんでした。(小さなドライバーでこじ開ければ、パカンと外れます)

最初から、サイズの小さな湿度計を使用しておれば、文字盤や針を大幅にカットする必要もなかったと思いますが、実際に入れてみないことにはサイズ感覚が掴みにくかった部分もあり、仕方なかったかなと思います

自作ドライボックス 使用材料 一覧

ジップロック
コンテナ

820ml
【 使用材料 】
  • ジップロックコンテナー 820ml
  • 汎用の湿度計(シンワ測定 T-3丸形)
  • FUJICOLOR カビ防止剤(シリカゲル&BCAゲル)
  • お煎餅に入っていた乾燥剤(生石灰)
【 使用工具 】
  • グルーガン(ホットメルト)
  • キリ、リーマー
  • 金切バサミ

ドライボックスの吸湿テスト

HAKUBA
湿度計

ドライボックスの吸湿テストを実施しました

結果から言いますと、おおよそ1時間以内に、防カビ効果の生じる湿度60%に達し、2時間で安全圏内である55%以下に達しました

5時間以上経過すると、湿度の変化が穏やかになり、それ以上はあまり吸湿しなくなります
最終的には45%前後で落ち着くことが多いですが、庫内の空気量が少なく、乾燥剤の量が多ければ、30%近くまで湿度が落ちることもあります

個人的には、55%以下を「安全湿度」と見なしており、55%以下にならなくなったら乾燥剤の替え時と捉えています

吸湿テストの詳細(時間経過とともに庫内が乾燥)

実際に庫内が乾燥していく様子をテストし、その様子を記録してみました

使用した乾燥剤
  • フジカラー カビ防止剤:1包(ほぼ新品)
  • 生石灰乾燥剤:小型2包(約一ヶ月ほど使用済のもの)
ドライボックスの乾燥テスト(開始時)
テスト開始時点:気温25度、湿度77% (時計は、時間経過表示用です)

時計にも湿度表示がありますが、ドライボックスの湿度計とさほど誤差は無いようで、時計の湿度表示は77%、(開放時の)ドライボックスの湿度計は76%を指していました
(蓋を閉めた後、撮影するわずかの間に74%まで下がってしまいました。ここでは74%をスタート時の庫内湿度としています)
ちなみに、画像の置き時計の湿度計は電気式で、計測用素子の電気抵抗を元に湿度を数値化しています
自作ドライボックスの湿度計はバイメタル式ですので、作動に電気を必要としないタイプです

ドライボックスの乾燥テスト(湿度60%に低下)
湿度74%からスタート、43分経過時点で60%まで乾燥させることができました

ドライボックスの乾燥テスト(6時間経過)
6時間ほど経過すると、湿度が50%以下になり、湿度の低下率も緩やかになってきました
最終的に、10時間後に46%まで低下し、これ以上はほとんど下がらなくなりました

実際のところ、カビを防止するには湿度を60%以下にしておけば良いわけですし、安全マージンを考えても55%以下に保っていれば充分だと思います

どうしても庫内湿度をカリカリに下げたい場合ば別ですが、むやみやたらと乾燥剤を増量しても維持コストがかかるだけですので、光学機器のカビ防止という観点からは、この実験時の乾燥能力(乾燥剤使用量)で充分ではないかと思います

ちなみに、冒頭の画像(庫内湿度13%の状態)は、生石灰乾燥剤を4袋使用して撮影しています(この実験時の倍量です)

自作ドライボックスの乾燥実験 (湿度変化 一覧表)
経過時間庫内湿度備考
開始時点74%吸湿テスト開始
15分66%-
30分62%-
43分60%最低防カビ湿度
1時間58%-
2時間54%安全湿度
4時間51%-
6時間49%安定推移
8時間48%-
10時間46%これ以上はあまり下がらない

クレセル 精密
温湿度計


シンワ測定
小型湿度計

【 補足 】
今回の実験は、あくまでも一例であり、庫内容量や、投入する乾燥剤の量と種類、吸湿余力などによって、湿度の低下スピードや最終的に安定する湿度は変化します

乾燥剤を新品に入れ替えたタイミングで、このような計測を行なってデータ取りをしておくと、その後の乾燥剤の劣化状態を判断する指標にすることができ、維持管理の目安になります

ご自分で防湿庫やドライボックスをお持ちの方は、一度試してみると良いでしょう

ちなみに、庫内の湿度が十分に安定した状態で、室温(庫内の温度)を上下に変動させると、湿度の針も連動して動きます
これは、乾燥剤による水分の吸着によるものではなく、相対湿度の変化によるものです

気温が高くなると飽和水蒸気量が高くなるため、「空気中に蓄えられる水分量」が増し、相対的に湿度が下がります

このように、庫内の絶対的な水分量(絶対湿度)には変化がなくても、気温の上下動によって湿度計の針も変動します。湿度の状態を観察する場合は、このような要素も加味してモニタリングすると良いでしょう

乾燥剤はシリカゲル?それとも生石灰?

HAKUBA
キングドライ

一般的によく使用される乾燥剤は、シリカゲルか生石灰です

カメラのドライボックス用途としては、シリカゲルの方が多用されているようですが、生石灰がダメかと言うと、そうでもありません
実際ハクバのキングドライは、乾燥剤として酸化カルシウムが使用されています。
(酸化カルシウムは生石灰です)

シリカゲルと生石灰、どちらを使っても良いのですが、乾燥剤としての性能を最大限に発揮させるためには、それぞれの特性を把握する必要があります

それでは、シリカゲルと生石灰の特性について解説してみましょう

生石灰

生石灰(酸化カルシウム)は、水分を吸収すると化学反応を起こし、消石灰(水酸化カルシウム)となります
(この化学反応を乾燥に利用しています)

生石灰はシリカゲルと異なり、一旦吸湿すると乾燥剤としての再利用ができません
(いくら乾燥させても、吸湿能力は回復しません)


乾燥剤(生石灰)
上の画像は、左側が「生石灰乾燥剤」、右側はフジカラーのカビ防止剤です。

使用前の吸湿余力がある状態では、(袋の上から触ってみると)粒状のザクザクした触感になっています。
これが吸湿すると粉状になり、袋がパフパフした触感に変わります(この際、袋も若干膨らみます)

【 注意 】
空気中の水分を吸収する場合は、反応が穏やかなので問題ありませんが、水そのものと混ぜ合わせると急激に発熱しますので注意が必要です

食品同梱の生石灰の流用

亀田製菓
4種アソート
キッズボックス

吸湿しやすい食品には、乾燥剤として石灰が封入されていることが多いです。
パッケージ開封直後は吸湿余力が充分残っていますので、ドライボックスの乾燥剤として転用することも可能です

ただ、海苔の場合は、海苔と乾燥剤が直接接触するような形で封入されていることが多いため、再利用は止めた方が良いでしょう
(海苔の小片が、乾燥剤の袋に付着している場合があります)

米菓の場合は、小袋入りの煎餅の商品ですと、乾燥剤と食品が直に接触していませんので転用もしやすいです。
(わたしも実際に使用しています。これだとわざわざお金を出して「乾燥剤」を購入する必要がありません)
※ 年間を通して購入し続けてわかったのですが、梅雨時などの湿度が高い時期以外は、乾燥剤が入っていない商品もあります

シリカゲル

Kenko
ドライフレッシュ

シリカゲルは、多孔質構造を生かした乾燥剤です

ミクロレベルでの表面積の豊かさを利用して水分を吸着させていますので、一旦湿気を吸った状態になっても、天日に当てたり、電子レンジで水分を飛ばして湿気を再放出させることで、再利用することが可能です。

色で吸湿余力が分かるように、塩化コバルトを添加した粒を混ぜていることが多いです

青色は吸湿余力が充分有り、ピンク色の場合は吸湿水分が飽和状態に近くなっており、吸湿余力がほとんど残っていないことを示します

シリカゲルのメリットは、前述のように…
  • 繰り返し使用可能、
  • 万一袋が破れてもカメラが汚れない
  • 水分と接触しても生石灰のように発熱しない
 …という点です

カビ防止剤

フジカラー
カビ防止剤

フジカラーのカビ防止剤は、乾燥剤にシリカゲルが使用されており、防カビ成分としてアルファブロム・シンナムアルデヒド(BCAゲル)が添加されています

内容量は5包で、有効期間は1年。
値段も手頃で、単に乾燥剤を入れておくよりも安心できます
なにより乾燥剤の吸湿力が低下している場合でも、防カビ成分の効果は変わらないというところが良いです。
乾燥剤だけでもカビを防ぐには充分ですが、防カビ成分を併用することで、ダブルの効果が期待でき、カメラを大切に保管したい場合に有効です
とは言え、内包されているシリカゲルの量は決して多くはありませんので、乾燥剤を併用したいところです

HAKUBA
レンズフレンズ

一方、HAKUBAのレンズフレンズは防カビ成分として、シメン系化合物・カルバミン酸系化合物が使用されており、防カビのみで乾燥剤の入ってない製品です

こちらも同様に、乾燥剤を別途用意して使用した方が良いでしょう

フジカラー カビ防止剤
フジカラー カビ防止剤

フジカラー カビ防止剤
フジカラー カビ防止剤

未使用の乾燥剤の保管

未使用の乾燥剤は、厚手のポリ袋等に入れ、空気を抜いて封をし、さらに密閉可能な箱に保管しておくと良いでしょう。
フリージングバックやジップロック(袋)を使うのも良いと思います

重要なことは、大気中に放置しておかないということです。
空気中の水分を吸収し、吸湿能力が失われると意味がありませんので、密閉して保管しましょう。

乾燥剤とカビ防止剤


防湿庫・ドライボックスのサイズ選び

ドライボックスの場合

HAKUBA
ドライボックス
NEO



ナカバヤシ
キャパティ
ドライボックス

防湿庫のサイズは、大きい方が余裕が出ます。『大は小を兼ねる』というやつです

後からレンズを買い足すことを考えると、少しは余裕があって欲しいものです
(出し入れするときも、スムーズに取り出せます)

今回使ったカメラは、Canon PowerShot G1X Mark2で、外寸サイズは・・・
116.3mm x 74.0mm x 66.2mm」です

一方、使用した「ジップロックコンテナ 820ml」は、公式サイズが・・・
156mm x 117mm x 83mm」です
サイズだけを一律に比較すると、かなり余裕があるように思えますが、ここで注意が必要です

両方とも「外寸サイズ」ですので、コンテナ側にある程度の余裕を持たせないと、収納時に収まらない可能性が出てきます
タッパーやラストロウェアなど、食品保管庫をカメラのドライボックスとして流用する場合は、外寸ではなく、内寸で考える必要があります

実際のところ、今回使用したジップロックコンテナ820mlは、PowerShot G1X Mark2が、ぎりぎり収まるサイズで、縦と横はそれぞれ1センチ弱、高さ方向には、5ミリ程度の余裕しかありません

これ以上小さければ、カメラは入っても、乾燥剤を入れるスペースが無かったと思います

自作カメラ用ドライボックス、サイズ比較
カメラを収納した状態での余剰スペースが判るように撮影してみました(横方向)

左側の隙間に、フジカラーの防カビ剤を入れています

自作カメラ用ドライボックス、サイズ比較
同様に、縦方向での余剰スペースです

右側に少しスペースがありますが、この部分に生石灰の乾燥剤を配置しておくと、カメラの収まりがとても良くなって安定します(このカメラサイズの場合です)

自作カメラ用ドライボックス、サイズ比較

HOKUTO
防湿庫

高さ的には、かなりギリギリのサイズで収まっています(言い方を変えると「ぴったりサイズ」とも言えます)
画像では、湿度計の針が70%を指していますが、これはカメラを出し入れした直後で、まだ湿度が下がっていない状態のためです

カメラ保管用の防湿庫は、カメラアクセサリーメーカーから専用品も販売されています

カメラを複数台所有しており、レンズを何本も使い分けているような方は、市販の防湿庫を使用した方が良いですが、小型のミラーレス一眼や高級コンデジを一台のみという場合は、今回のような自作ドライボックスでも充分です

ちなみに最もお手軽なのは、乾燥剤を入れたフリーザーバッグにカメラを収納しておくことです(少し空気を抜いておくと更に良い)

こうなると、もはや「ドライボックス」ですらなく「ドライパック」となりますが、箱ではなく袋であるというメリットを生かし、中の空気を抜いた状態で封をすれば、乾燥剤をより効果的に使用することができますので、これはこれで非常に効果的ではないかと思います


「月寅次郎のなんでもDIY」 目次ページに戻る