月寅次郎のサイト

オピネル分解1 - 必要工具と準備作業

最終更新日: 著者:月寅次郎
オピネル・分解

オピネル分解の概要

オピネルを分解し、ブレードを取り外す事によって、さまざまなカスタム作業が可能となります
鏡面処理の場合は、刃体全面を均一に加工することが可能となり、付け根部分まで丁寧に仕上げることができます

オピネル分解 "OPINEL Disassembling" の目次(1~6)

 オピネル分解 1:必要工具と準備作業 ← 現在のページ!

 オピネル分解 2:ロックリングの取り外し

 オピネル分解 3:ピンの頭を削って叩き出す

 オピネル分解 4:ピンを抜いて、ブレードを外す

 オピネル分解 5:分解完了、ピンの外径と分解時の注意

 オピネル分解 6:ピンを代用品で作り直す


実際の分解作業は、DIYに慣れている方が、適正な工具を使用してあたれば、さほど難しくはないとは思いますが、工具を揃えるところから初めるような場合は、それなりに苦労するかもしれません
圧入パーツの脱着を何度かやったことがあるとか、頭の取れたボルトを抜くためにドリルで揉んで、タップを立ててネジ山を切り直したことがあるとか、そういう整備経験が豊富な方なら、全く問題ないと思います

わたしはシリンダーヘッドのオーバーホールなど、そこそこ整備をやる方ですが、この程度のDIYをこなす技量があれば、(イージーとは申しませんが)ピンを曲げたりすることなく、きれいに分解できるのではないかと思います

注意:もともとオピネルは、分解可能なようには設計されてはいません。そこを無理やりバラすわけですから、実行する際は自己責任で、怪我をしないように気をつけてやりましょう!

また、ここに掲載した分解手法は、あくまでもわたし個人のオピネルを分解して得られた知見を元にしています。そのため、オピネルの製造プロセスに変更等があった場合は、記載の方法では分解できなくなる場合も考えられます(本来分解可能な設計になっていないものを、ユーザーの自己責任において分解しているわけですので致し方ありません)


追記:現行オピネルと旧タイプの分解時の違い(ピンを抜く方向)、ピンの外径実測値、分解に必要な工具についての説明、を追加しました
また、ページ全体のテキスト量が膨大になったため、ページを分割しました
旧タイプとは、ブレード収納時のロックがかからないものです。2000年以降に発売された現行タイプのオピネルは、収納時にロックが可能なように改良されています ツイートボタン

オピネル分解に必要な工具

まずは、オピネル分解に必要となる工具を一通り列挙してみましょう

「このくらいなら全部持ってるし、一通り使った経験もある」という方であれば、分解もさほど苦にならないと思います

サークリッププライヤー

高儀
スナップリング
プライヤー

ロックリングの脱着に使用します。「スナップリングプライヤー」とも呼びます。
「サークリップ」を脱着するための工具で、ハンドルを握ると先端が開くようにできています(プライヤーやペンチとは、反対の作動をします)

わたしが使っているのは、クニペックス製の大型サークリッププライヤーです(冒頭の画像、左上の工具です)
ブランド品だけあって、耐久性の高いクロムメッキ仕上げとなっており、使い心地は非の打ちどころがありません
主にホンダ製バイクの後輪脱着時に使用していました(プロアームという特殊な片持ちスイングアームには、この工具が欠かせませんでした)

オピネルのロックリングを外す場合は、(工具マニアでなければ)クニペックスのような高品質のサークリッププライヤーは必要ありません
サイズも標準的なもので良いですし、黒染め仕様(黒錆仕上げ)の製品で充分です

なお、プライヤーの先端形状ですが、オピネルの場合は、(敢えて言うなら)「先曲がりタイプ」の方が使いやすいと思いますが、「ストレートタイプ」でも脱着は十分可能です

平ヤスリ

ツボサン
平やすり

ピンの頭を削り落とす際に使用します
標準的な平やすりで構いません

オピネルのピンは、「かしめ」用のピンですので、軟鉄相当の材質が使用されています
かしめ」は、圧力をかけた際に変形し「抜け止め」の役割を果たすため、相応の柔らかさと、カシメが維持できるだけの強度の両方が求められます

そのため、オピネルのピンは、適度に柔らかいのです
通常の平やすりで充分と書いたのは、焼き入れしたハガネのような、高硬度金属を削るわけではないからです

どうしても「ダイヤモンドやすり」を使ってみたいというのであれば、使っても構いませんが、あれは使用するに伴って、埋め込まれたダイヤモンド粒子が徐々に剥がれていくものだということを理解しておきましょう

平行ポンチ

PB
平行ポンチ

平行ポンチは、ピンの断面にあてがって、ピンを叩き出すために使います
ピンの頭を削って叩き出すのページに詳しく記載しましたが、「センターポンチ」を使うのは完全に間違いです。
愚かしいを通り越して、呆れるくらいの誤りです
「その工具では、効率よく抜くことができない」くらいだと、まだ良いのですが、センターポンチがピンに食い込むと、食い込んだ分だけピンの断面が広がり、却ってピンが抜けなくなります

考えると判る…、いえ、考えなくてもわかると思うのですが、恐ろしいことに、センターポンチで叩いて抜けないと悩む人が, ネット上に多数散見されます

小型ハンマー

GREAT TOOL
小型ハンマー

ポンチを叩くためのハンマーです
あまり大型ですと、手元が狂いやすいですし、小さすぎると質量が不足して叩き出しにくくなります

ハンマーの種類ですが、ゴムハンマー樹脂ハンマーショックレスハンマーなどは、用途として合いません
ポンチがハンマーヘッドに食い込んで、ハンマー側が痛むだけです。強い衝撃が伝わりませんので、圧入ピンの叩き出しには不向きです

先端が充分固く、振り下ろした衝撃が、「ガンッ!」と伝わるような固い材質の物が良いです(要は、ごく普通の鉄製ハンマーです)

バイスグリップ

KTC
ロッキング
プライヤー

ロッキングプライヤーとも呼びます。(バイスプライヤーとも言います。無理に用意する必要はありません)
ピンを全量叩き出せなかった際に、掴んで抜くために使用します(言い方を変えると、この工具がない場合は、ピンを最後まで叩き出す必要があります)

対象物を加え込んだ状態でロックすることが可能であり、その力は恐ろしく強力です
ネジ山を舐めてしまったネジなども、これで先端を咥えてロックをかければ、くるくる回して外すことが可能です
オピネルの分解に絶対必要な工具ではありませんが、あると便利な工具です

オピネル分解に必要な工具は、以上です
それぞれの工具についての、詳しい説明や選び方のヒントは、分解の各ステップの詳細解説ページでも説明しています(次ページ以降で、改めてご覧ください)

注意! 黒錆処理とオイル漬けについて

黒錆処理やオイル漬け加工をするために、オピネルを分解している方が多いようですので、ここで一度警鐘を鳴らしておきます

黒サビ処理の是非

黒錆化は意図的に酸化皮膜を作る処理です
ある意味わざと腐食させるわけであり、ドブ漬けしてブレード全体に黒錆処理を行うと、刃先も当然腐食して、切れ味が悪くなります
自分で研いで、刃付けをすることが難しい場合は、不用意にやらない方が良いでしょう

土佐打刃物を筆頭に、ハガネの包丁には、黒サビ処理を施したものも多々ありますが、それらの包丁のどの部分を黒サビ処理しているか、よく観察してみると良いでしょう
エッジの周辺は、黒錆びをグラインダーで落とし、刃を付けなおしているはずです(必要だからやっているのです)

小刃まで黒サビ処理を施している刃物など、愚かしいもいいところです

オピネルの分解
また、堺打刃物になると、黒サビ処理などほとんど見受けられません
炭素量の高いカーボンスチールの包丁でも、適正に使用し、手入れすれば、黒サビ処理など全く必要ないというスタンスなのです(わたしもこの立場です)

黒サビは、ハガネのブレードを適正に使用していれば、ある程度は自然に付くものです

上の画像のオピネルは、特に何の処理もせずに使い続けたオピネルを分解したものです。表面にうっすらと自然についた黒サビ(黒色酸化被膜)が見て取れます

使う→放置せずに洗う→拭いて水分を拭う」という当たり前のことを繰り返すだけで、ハガネの刃物は薄い黒色酸化被膜ができるものです
上の画像のオピネルも、たまに磨くくらいで、特殊なメンテナンスもせず20年以上経過していますが、赤錆びとは無縁の状態でここまで来ました(実使用に伴う黒錆被膜が、赤錆びを防いでいるからです)

あまり過保護な使い方はしなかったため、黒点(黒錆びによるピンホール)も生じていますが、ハガネの刃物はそもそもそういうものだと思います

オイル漬け(知識と経験のない人ほど、オイル漬けをしたがる)

また、「油漬け」の場合は、そもそも「分解できないから、そのままドブ漬けしている」わけですので、正常に分解できた場合は、わざわざオイル漬けにする必要がありません
ごく薄くオイルを塗る → しっかり乾燥させる」をワンサイクルにして、それを何度も繰り返せばよいのです
このやり方ですと、オイルの吸わせすぎによる弊害がほぼ出ません(これが、正しいオイルフィニッシュのやり方だからです)

また、吸水対策としては、ハンドルの小口部分やブレードとの合わせ面を中心に、木工用蜜蝋ワックスを塗り込んだ方が、簡易的な撥水効果も期待でき、簡単・確実です(不具合も出にくいです)

オピネルを長年使用しているわたしからすると、オイル漬けは、オピネルをダメにしている愚かな行為にしか見えません (詳しくは、下記リンク先に関連記事をまとめましたので、「併せて読みたい」の項目をご覧ください)
油漬けをする人が後を絶たないようですが、オイルに漬けすぎるとハンドルの木材が膨張して取り返しがつかなくなります。絶対にやめましょう。

準備:刃引きとブレード面の保護

スコッチ 3M
マスキングテープ

先に『刃引き』を行い、刃を潰しておきます
刃引きは、安全に作業するための、必須作業です

砥石の角にブレードの根本を垂直に当て、そのまま引くようにこすって刃を丸めます。こうすることで刃が潰れ、切れなくなります
それまでキレキレだったナイフも、ペーパーナイフのような丸刃になりますので、作業時の怪我を防止することができます

刃引き後は、マスキングテープ等を刃の全面に貼り付けて養生し、作業時の傷を防止します

注意:刃付けに自信がないため、刃引きを省略し、刃が付いたままの状態でカスタムする人も多いようですが、非常に危険な行為です。絶対にやめましょう!


 ● 次のページ:オピネル分解 - ロックリングの取り外し

オピネルのまとめ

オピネル オピネルのまとめページ
当サイトにおける、オピネル解説ページの全インデックスです

オピネルの扱い方、手入れ、カスタム事例、分解手順などなど、おおよそ30ページほどあります