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オピネルのオイル漬けは、木材表面加工として常識はずれ


木材表面加工として、オイル漬けは考えられない施工方法

WATCO
ウッドフィニィシュ用
オイル

木材の表面加工において、乾性油を主体としたワニスを用いてオイルフィニッシュするというのは、定番仕上げの一つです
ですがこれは、原則として、薄く塗った後に拭き取って乾燥させたり、オイルを含ませた布で刷り込んで仕上げるものです

一度に厚塗りするのはもっての外で、薄塗りと乾燥を繰り返して仕上げることが重要です
厚塗りしてしまうと、木材に浸透した深部の状態がなかなか安定せず、塗料の表面だけが乾燥して、ろくな仕上がりにならないのです

「オイル漬け」が、厚塗りよりもさらに悪い、最悪の施工であることは言うまでもないでしょう
なぜにこのような愚行を行うのか? そもそも一体、誰が初めたのか? …と、本当に思います

オイルフィニッシュについては、左上の画像のWATCOが有名で世界的ベストセラーです
わたしも棚を自作する際に使ったことがありますが、様々な色合いが選べ、使いやすいフィニッシングオイルです
ちなみにWATCOの主成分は亜麻仁油であり、乾性油です

● 参考ページ:WATCOオイル 基本の塗り方

WATCOの使い方は、上のリンク先で確認が可能ですが、説明を読むと…
「拭き取りがあまいと乾燥時間が遅くなり、塗料が表面に固まりベタつきが生じる場合があります…(中略)…丹念に拭き取ってください
 …と、書かれています

「拭き取りが不足したらベタつく」と、公式にメーカーが発表しているわけですから、主成分100%の亜麻仁油に「ドブ漬けしたらどうなるか」は、火を見るよりも明らかです

オピネル内部の狭い隙間や摺動部は、(分解しないかぎり)拭き取ることができません。当然ベタつきが発生します
これが酷い状態になると、固着が発生し、刃が出なくなるというわけです

ナイフのハンドル制作工程から見ても、二重の意味でありえない

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

ウッドマイカルタ ウォルナット 10X38X125mm(2枚組)
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ナイフのハンドル材において、耐水性が高い素材としては、マイカルタG10スタビライズドウッドなどが挙げられます

いずれも、基材に樹脂を浸透させて硬化させた素材なのですが、「マイカルタ」は、キャンバス地やリネン布、紙などを基材とし、「G10」はグラスファイバーを基材としています(一種のFRPとも言えます)

スタビライズドウッドは、木材(角材)が基材なのですが、これは深部まで均一に浸透させるため、真空中の容器に入れて、樹脂浸透・硬化させた素材です

包丁の場合ですと、積層強化木がよく使用されます

こちらは、樹脂を浸透させた薄手の板材を重ね、高圧プレスをかけて一体化させた素材です
基材が木材で、樹脂浸透という点では、スタビライズドウッドと同じですが、無垢材を使用せずに薄板を積層して造る点が異なります(ある意味、樹脂浸透させた合板です)

1:浸透させる場合は、二液硬化型である必要がある

Ka-Bar
ドージア
(ザイテル材)

浸透・硬化系のハンドル素材は、いずれも「基材」に対して「樹脂」を浸透させていますが、共通するのは、二液硬化型樹脂を使用しているところです
つまり、硬化の際に大気中の酸素に依存していないのです

これは、深部まで均一に完全硬化させるためには、不可欠な要素です
アマニ油のような、酸化によって硬化する液体を、厚みのある木材に長時間浸透させるというのは、ナイフ制作の見地からすると、ありえないことなのです

表面への塗布と拭き取り、乾燥を繰り返すのであれば、オイルフィニッシュという仕上げになりますが、長時間ドブ漬けにするのは、言語道断としか言いようがありません

【 補足 】
ザイテル」もナイフのハンドル材としてよく使用されますが、こちらは一種のナイロンで、熱可塑性ポリアミド樹脂です。金型に射出成型することで同大量生産可能です(浸透・硬化系のハンドル材ように、一旦板状にしてから削り出す手間が要りません)

2:浸透硬化後の形状加工がセオリー、形状加工後の深部浸透は、ありえない

グリーンウッドワーク
生木で暮らしの道具を作る

浸透硬化タイプのハンドル材は、完全硬化して形状安定後に、切削・研磨工程を経てナイフに組み立てられます

ここで重要なのは、浸透・硬化が先で、切削・研磨等の寸法調整は後工程だということです

工程の順序を逆にすることは、ありえません
浸透によって基材がわずかでも膨張すると、精度良く仕上げたハンドル材に歪が生じ、寸法が狂ってしまうからです
また、摺動部に浸透硬化用の液体が入り込むのもよろしくありません。潤滑用に塗布したオイルと混じりあい、本来の性能が失われてしまいます

当たり前と言えばそれまですが、「オピネルのオイル漬け」は、ここでいう「逆の工程」に他なりません
精度良く寸法調整したハンドル材に、後から液体浸透させているのですから

当然ながら、ナイフ制作に携わる方で、そのような愚かしい行為をする人はおりません
やっているのは、自分が何をやっているのか、解っていない人たちだけなのです

油漬けの一体どこが「買ったらすぐ行うべきオピネルの儀式」で、「定番カスタム」なのでしょうか? 開いた口が塞がりません

「オピネルのオイル漬け(油漬け)」のまとめ

オピネル(鏡面カスタム)
キゾウ
みつろうワックス


Wood Food
蜜蝋ワックス

このように、「オピネルのオイル漬け」は、不具合の元になりかねない、愚かしい行為です

1:発想自体が安易であり、2:そもそも効果が期待できず、3:不具合の原因となりかねず、4:木材の表面仕上げとして間違っており、5:ナイフハンドル制作の観点からも、誤った施工です

オピネルは、良くも悪くも伝統刃物ですので、設計も昔のままになっており、決して耐水性が高いナイフではありません

ですが、 柄の部分に水分がかからないようにして使えば、快適に使用できますし、それでも吸湿してしまい、刃が出にくくなった場合は、 柄の先端を固いものにコンコンと打ち付けて刃先を出し、ブレードを指で摘んで開けば良いだけです

それで充分です。オピネルはそういうものなのです
そうやって100年以上、変わらずにやってきたのです

少なくとも80年代の頃は、オイル漬けなどしている人は皆無でしたし、それでも皆、問題なくオピネルを使っていました

「油漬け」というのは、おそらく近年流行りだしたのだろうとは思いますが、安易なカスタムは、オピネル本来の性能を損ないます
どうしても何か対策をしたいのであれば、上記で説明したように、木工用の蜜蝋ワックスを薄く塗り込んでやればよいのです

オピネルは柄が木製ですので、他にはない風情があり、お洒落で個性的なナイフです
あまり加工しすぎると、木の質感が失われ、却ってチープな感じになってしまうこともあります。できれば、オピネル本来の良さを尊重して、大切に使いましょう

オピネル以外で、おすすめのナイフは?

ビクトリノックス
折り畳みナイフ


ビクトリノックス
センチネルクリップ

ナイフの選択についてですが、もしも水場で使うことが多いようであれば、最初からオピネルではなく、より耐水性が高く、使用後にザブザブ洗えるようなナイフを選択すべきです

実際わたしも、釣りで魚をさばく際や、キャンプの場合はガーバーのフィレナイフ(ゴム引き樹脂ハンドルのシースナイフ)を使っています
追記:オピネルのフィレナイフを漆でカスタムしてからは、耐水性の担保が取れたため、こちらも併用しています

重量の軽さを優先したい場合は、登山用ナイフとしてカーショウ1710を使用しています(実測25gの軽量ナイフです)

また、あまり語られないポイントですが、調理に使う場合は、刃の厚みが2㎜以下の薄手のナイフを使いましょう

外観がゴツいナイフは、ラフな扱いにも耐えられるように、刃厚3mm以上になっています
このような厚手のナイフを調理に使うと、いくら刃を鋭く研いでも、刃の抜けが悪い(食材を左右に押し広げる力が余計にかかる)ため、調理向きではありません

たまに、モーラナイフをキャンプ場に持ち込んで料理をしている人がおられますが、あのような厚手のナイフで人参や大根などを切ろうとすると、切れるより先に割れることもあります(刃が厚すぎるからです)

そういう意味では、ビクトリノックスのナイフは刃厚の薄い製品が多く、「よく分かっているなぁ」と感心します
わたしもビクトリノックスのペティナイフを家で使っていますが、調理用の小さなナイフとして使い勝手が非常に良く、手放せない存在となっています

● 最初のページ >> 「オピネルのオイル漬け」は、最悪のカスタム

● 併せて読みたい1:オピネルの刃が出ない時の対処法(サヴォワ打ちとは?)

● 併せて読みたい2:「オピネルはキャンプにおすすめ!」は本当か?

● 併せて読みたい3:オピネルの扱い方と洗い方(刃の固着を防ぐ使い方)

● 併せて読みたい4:オピネルの隙間を削るのは、最後の手段

● 人気のページ:オピネルの分解

● オピネル総合:オピネルのまとめ (オピネル関連の全ページ目次)


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