オピネルは、少し大きめサイズがおすすめ
オピネルは、ちょっと大きめサイズがおすすめです。
その
根拠は、4つです。
-
ブレード先端の反りが大きい
-
ブレードの付け根に「リカッソ」が無い
-
オピネル特有の弱点のため
-
アゴの無い細身のブレードのため
・・・というものです。
それでは、1番から順番に解説してみましょう。
※ 2と3については、「実質的に根元が使えない」という意味では重複するところであり、二重の意味で根元が使えないということになります。
理由1:刃先が反りあがっており、先端5ミリは使えない
オピネルのブレードは、先端が反り上った形状になっています。
スキナーナイフ(革剥ぎ用ナイフ)でもないのに、なぜこのような形状なのか、ナイフに詳しい方であればあるほど、疑問に感じることでしょう。
この形状の理由については、
オピネルのブレード形状のページを読んでいただくと判りますが、一言で言うと、「
サヴォア打ち」の際に、刃の先端をハンドルの外に出させるためです。
一般的なドロップポイント形状(後述)ですと、
サヴォア打ちをしても、かなり叩き出さないと、刃の先端が出てきません。
結果的に、ネイルマーク付近を掴むしかないため、
ブレードが固くなった場合の対処に困るのです。
なお、この
「反りあがった部分」は、まな板の上ではそれほど有効には機能しません。
刃の先端が浮いてしまい、よほど角度を立てないかぎり、まな板と接触しないからです。
このため、はっきり言ってしまうと、
先端5mmは実質使えないと言って良いほどです(※1)
つまり、このオピネル独特のブレード形状は、切るためのものではなく、刃を引き出しやすくすることを考慮したものです。
そのため、オピネルの刃渡り長を考える場合、刃渡り9cmのNo.9の場合は、5ミリ程差し引いて、実質有効長8.5cm程度だと考える必要があります。
※1(補足)
これは、まな板の上で食材を切り分けたり、切り落とす場合の話です。食材に対し、横向きに切れ込みを入れる場合は、反り上がった切っ先が有効に働きます。
バゲットサンドを作るため、バゲットの横腹に深い切れ込みを入れる場合や、魚を三枚に卸す場合などです。
ドロップポイントとは?(補足)
先の説明で『
ドロップポイント』が出てきましたが、これは、ナイフの先端形状の中で最も一般的なシェイプです。
右の画像は、
VICTORINOX センチネルクリップですが、これも典型的なドロップポイントです。
このセンチネルクリップ、刃渡りは92mmですが、
先端がドロップポイントで、リカッソもあるため、刃渡りをフルに活かすことができます。
(リカッソについては後述)
ネイルマークではなく、
サムホールが設けられているため、手袋装着時でも、比較的ブレードを開きやすくなっており、極めて実用的なナイフです。
現代的なナイフですので、当然ではありますが、ハンドル材の耐水性も高く、オピネルのようにブレードが固着することは皆無です。ロック機構はライナーロックですので、自動でかかります。
(安全対策のため、開閉は気持ち固めの設定すが、上手な人は、これを片手で開閉します)
理由2:刃の根元に、リカッソ(刃の付いていない平面部分)がない
一般的なフォールディングナイフは、ボルスターと刃のエッジの間に、
リカッソと呼ばれる平面の部分が設けられています。
リカッソの有るナイフは、ブレード全体の長さ>刃渡りとなります。全体の長さがリカッソの分だけ長いのです。
ところが、
オピネルの場合はリカッソがありません。ブレードの根元の際の部分まで刃が付いています。
このためオピネルは、ブレードの長さ=刃渡りの長さとなります。
最適な刃渡り長を考える場合、ハンドルを握った部分から、どれだけ刃が離れているかというのも重要な要素です。
全長20センチ以下の小型ナイフの場合は、特に重要な要素になります。
同じ刃渡りを持ったナイフでも、刃の根元が握り手から近すぎてしまうと、その部分は使いにくく、実質的に使えません。
1番目の理由で、先端5mmが使えないと書きましたが、
リカッソが無いことは、根元の5㎜が使えないことを意味します。
このため、刃渡り9cmのNo.9の場合は、先端5mmと根本5mmを差し引いて、実質有効長8.0cm程度だと考えなおす必要があります。
つまり、
実質9cmの刃渡りが欲しい場合は、No.10を選択した方が良いわけです。
これが、オピネルはちょっと大きめがおすすめの、2番目の理由です。
補足:スリムナイフはリカッソ有り
リカッソが設けられていないのは、オピネルのノーマルタイプの製品です。
上の画像は、筆者所有の
オピネル スリムナイフです(カスタム前の使い込んだ状態で撮影)
これには
リカッソが有ります。
カスタム後の様子は、下のリンクをご覧ください。
● 関連ページ:
オピネル スリムナイフ(カスタム後)
理由3:オピネル特有の弱点のため
オピネルの扱い方と洗い方のページでも言及しましたが、オピネルを使う上で気を付けないといけないのは、ハンドルの小口部分を濡らさないということです。
ブレードサイズが小さいからといって、
刃渡り全体をフルに使って切ってしまうと、ハンドルの小口が汚れがちです。
フルーツや野菜、肉類など、水気の多い食材を切る場合は、それだけで小口が濡れてしまい、ハンドルが膨張してブレードの開閉が難しくなる場合があります。
また、ロックリングと柄の隙間に食材の水分が入り込んだり、細かな切りくずが押し込まれてしまうと、ロックリングの動きが渋くなる原因になりかねません。そうなると非常にやっかいです。
このため、オピネルを使う場合は、刃渡り全体をフルに使って切ることをおすすめできません。
つまり、ブレードの根元に近い部分は、実質的に使えないのです(根元の際まで刃がついているというのにです)
ハンドルの小口やブレードの根元など、ロックリング周辺が汚れたとしても、後で
分解洗浄を行い、注油と組み立てをすることができれば良いのですが、構造上フォールディングナイフは、分解できないように作られています。
どうしても分解・洗浄をしたい場合は、
スライド収納型のナイフを買うしかありません。
このように、オピネルを使う場合は、できるだけ
ブレードの根本付近とハンドルの小口周辺を汚さない(濡らさない)ことが重要になります。
ワンサイズ大きめのオピネルを使うことで、食材を楽に(あまり気を遣わずに)切ることができ、ハンドルの固着も防ぐことができます。
これが、ちょっと大きめが良い3番目の理由で、最も重要なポイントでもあります。
理由4:アゴのないナイフは、柄尻を持ち上げて切るしかない
一般的な包丁と異なり、アゴのないナイフは、柄尻を上げて切るしかありません。
ある程度の刃渡りがある場合は、ナイフを(まな板に対して)斜めの角度を付けて使うことで、握った手がまな板がぶつかることなく、スムーズに切り分けることができます。
ところが、
ナイフ自体が小さい場合は、角度を付けても、まな板と手の距離が近くなるため、使っていて非常に窮屈な感じになります。
これを避けるために、ナイフの角度を上げて使うと、今度は最適な角度で切ることができず、実に切りにくいです。
結局のところ、妥協策ということで、
ハンドルをつまむようにして持つはめになります。
ハンドルを両側面からつまむようにホールドするのは、
側面の平らなミニナイフで行う場合には問題ないですが、オピネルはハンドルが円柱形状ですので、指の納まり具合がよろしくありません。
このように、円柱形状のオピネルナイフは、本来ハンドルを手のひら全体で握るようにデザインされており、小型ナイフのように、指でつまんで握るための形状にはなっていません。
そのため、
No.8以下のサイズのオピネルは、まな板の上で使うにはあまり相性が良くないのです。
これが、オピネルは少し大きめサイズの方が良い、4番目の(最後の)理由です。
サイズナンバーと実際の刃の長さ
オピネルには、商品名に「オピネルNo.9」などの番号が振られています。
この番号は、刃渡りの大きさを区別するための番号になっており、製品名のみでも大きさの程度が判ります。
自分の用途にあった、最適なサイズのものを選びましょう。
No.8~No.9が最も人気のあるサイズとなっており、このあたりが最も売れ筋です。
携帯性を優先させたい場合や鉛筆を削るなど、小型のものに使う場合は、No.6やNo.7などの小さいサイズを、
大きめの食材でも楽に切りたいのであれば、No.10やNo.12などの大きめのサイズがおすすめです。
ステンレス刃のオピネル
上の表はamazonの個々の製品にリンクしています。
現在の価格は販売ページにてご確認ください。
カーボンスチール刃のオピネル(炭素鋼)
上の表はamazonの個々の製品にリンクしています。
現在の価格は販売ページにてご確認ください。
用途別、オピネルのサイズ選び - まとめ
それでは改めて、ここまでの要点をまとめてみましょう。
-
刃の先端の反りが大きい
-
リカッソが無い
-
ハンドルを濡らすと後で厄介
-
アゴ無しの細身ブレード
これら4つの理由から、(調理目的で使う場合には)No.10やNo.12など、少し大きめサイズが最適です。
いくらか大きめサイズを選んでおいた方が、ストレスフリーで扱いやすいのです。
ノーマルタイプのオピネルは、No.12が最大サイズですので、それ以上の大きさが必要な場合は、フィレナイフ(スリムナイフ)のNo.15を選択するしかありません。
● ソロキャンプが多いのであれば、「No.10」
● 家族キャンプや仲間とのキャンプで数名以上の料理を作る場合は、「No.12」
● 4人分以上の調理の場合は思い切ってスリムナイフの、「No.15」
…を、おすすめします(包丁マニアとしての意見です)
ただし、
ソロキャンプといっても、切るのはハムかソーセージ程度であれば、「No.9」あたりでも充分でしょう。
包丁に興味のある人ならご存知かと思いますが、ペティナイフの通常サイズは、12㎝と15㎝の2種類です。
三徳包丁であれば、5寸5部の16.5㎝と、6寸の18㎝が主流です
「料理をする」となるとこのくらいのサイズが必要で、12㎝以下になると寸足らずに感じるものなのです。
8㎝のペティナイフも、あるにはあるのですが、そこまで短いと「皮むき専門のナイフ」(シャトーナイフ)という扱いになります。
筆者が家で普段使いしている、
VICTORINOXのペティナイフは、刃渡り10㎝でやや小ぶりですが、この長さが、実使用に足るぎりぎり最短の長さになります。
【 補足 】
このページでは、キャンプでの料理を想定して、オピネルのサイズを解説しています。
美術大学に通う学生さんが、デッサンに使う木炭や鉛筆を削るために使うのであれば、No.7やNo.6でも充分かと思います。
このサイズですと、封筒の開封などのデスクナイフとしても使えます。
筆者が実際に使用しているナイフは?
個人的には、
炭素鋼ブレードのオピネルNo.10と、
フィレナイフ(スリムナイフ)のNo.15を使用しています。
キャンプで実際に使用することが多いのは、
刃渡り14.5㎝のガーバーのフィレナイフです。
このくらいのサイズになると、バーベキューの金網の上でスペアリブを切り分けるのも余裕です。
前述の10㎝のペティナイフを自作の鞘に入れ、キャンプやバーベキューなどで使うことも多いです(小回りが利くので)
所有している包丁に関しては、下記リンクをご覧ください。
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ブライトホルン(4164m)に登る
ブライトホルンはスイスアルプスの山で、標高は4,164m。位置的にはスイスとイタリアの国境付近にあります
西側には
マッターホルン(4478m)、東側には
モンテローザ(4634m)があり、その間に位置します
オートルートを歩き終えた後、帰国予定日まで余裕がありましたので登ってみました
(全9ページ)
ダマスカス包丁について(本当におすすめ?)
ダマスカス包丁は、人気で売れ筋ですが、価格に見合うだけの価値があるのでしょうか?
あれは、
側面に装飾用鋼材をあしらっただけの包丁です
「切刃に●●を使った●●仕立ての包丁と、実質的に一緒じゃないか!(しかも高い)」と思う方、その通りです
このページでは容赦なく
ダマスカス包丁の真実を暴きたいと思います
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内容を一部改変して読み上げ、あたかも自分の経験から得た知識のようにしてYouTubeにアップするのは、止めてください。動画だけでなく、テキストページ(文章)も同様です
以前、「オピネルのオイル漬けは最悪のカスタムというページを作ったところ、類似した内容のページや動画が、雨後の筍のように増えました
それまで「オイル漬けは、買ったらすぐ行うべき定番の儀式」といった、肯定的なページしか存在しなかったのにです(これにはお笑いです)
また、「キャンプにはフィレナイフがおすすめ」と書いたところ、こちらも同様に、コピーページが大量に増えました。フィレナイフは、どちらかというとかなりマイナーなナイフだというのにです(欧米では別ですが)
このように、コンテンツの拝借・コピーは、実際に多数発生しています
黙って見ているのもなんですので、再発防止の警告として書き記します(目に余る場合は法的措置を取ります)
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