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オピネルのカスタム - OPINEL Customize

最終更新日: 著者:月寅次郎
オピネル カスタム opinel custom


90年代初頭に購入した、古いオピネルをカスタムしました
以前、ブレードを 鏡面に仕上たものです。今回はハンドルのカスタマイジングとなります

オピネルのオリジナル形状は変更せず、木の質感を活かし、表面仕上の美しさにこだわりました動画はこちらに掲載しています


作業自体は、こちらのフィレナイフのカスタムとほぼ同様です (使用した漆の色は異なります)


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オピネルのカスタムについて

オピネル カスタム opinel custom
オピネルは、それ自体が完成された美しいフォルムを持っています

オリジナルに対するリスペクトを払い、見た目の「オピネルらしさ」を残した方が、上品で美しい仕上がりになります

オピネルのオリジナリティを残しながら、「特別」で「唯一無二」な感じをいかに出すか、
木材が内包する美しさをどう表現するか、それがオピネルのカスタムの鍵だと思います

カスタムの方向性

木口は違いの出やすい部分ですが、ここに手をかけてしっかり磨き込むことで、市販品では出せない質感を醸し出せます
今回のカスタムでは、柄尻の部分を中心に丁寧に面取りを行い、エッジ部分が滑らかになるように仕上げました

「遠目ではカスタム感があまり感じられないものの、手に取ってよく見ると、工芸品のような美麗な仕上がりになっている」 …という感じを目指しました

オピネル カスタム opinel custom
虎斑と木目の両方が、きれいに浮きあがる右側面(拡大)

オピネル カスタム opinel custom
柄尻の部分には、虎斑が線状に出ています 光の角度によって現れます

ノーマル状態では木口の仕上げが粗いため、このような模様も目立ちませんが、磨き込んで平滑度を上げ、漆を浸透させると、模様の美しさが引き立ってきます

【柄尻の加工について】
取って付けたような金属製のエンドキャップは、(品よく仕上げたものを除き)基本的にブサイクだと思います
あれが格好良いというのがよく判りません。多量のクロムアクセサリーをジャラつかせ、女子にドン引きされている、タンクトップ好きの日焼けサロン常連男性みたいです(スミマセン、あくまでも個人の感想です)


オピネル カスタム opinel custom
同じ右側面です。見る角度を少し変えるだけで、木肌の表情が大きく変わることが判ります

正直言うと、このオピネルはありきたりなブナ材ですので、それほど大きな期待はしていませんでした
ブナは銘木というわけでもなく、比重も低く、価格も安い木材です

ですが、いざ施工してみると、なかなか美しい仕上がりが得られました。ブナの斑が効果的に働き、虎斑や縮杢のような効果を見せてくれました
磨きを入れるにしたがって、年輪も浮き上がってきて、虎斑と木目のダブルの効果で魅力的な表情を見せています

オピネル カスタム opinel custom
ピンノット(葉節)が、黒い点となって現れている下面
これはこれで、いい表情を醸し出しています
このオピネルは、ピンノット(葉節)やガムポケット(樹脂痕)があり、決して良質の個体とは言えないのですが、カスタム後は、それらがバール(瘤)のような効果を醸し出し、良い意味での個性となって現れました

この角度から見ると、全体のフォルムはそのままに、角を丸めて滑らかに仕上げた感じがよく判ります

光の角度によって大きく表情を変える様子は、静止画像では伝わりにくい部分です。ページ後半に動画を掲載していますので、そちらでご覧ください。

漆の塗装について

オピネル カスタム opinel custom
今回は「透明色」の漆を使い、木目を生かした明るめの色に仕上げました
使っているのは、いつものカシュー漆ですが、色が異なります

薄い色を使用したことで、柔らかなブナ材の雰囲気はそのままに、グロッシーな質感を引き出すことができました
光の角度を合わせると、杢(斑)が金色に輝き、美しい表情が出ます

ノーマルのオピネルと同じような色調を目指しましたが、思い描いた通りの色の濃さになったと思います
オピネル フィレナイフの方は、より色の濃い「透(スキ)色」を使用しています)

漆の色の選択

「透色」は、漆らしい感じに仕上がりますが、光の透過率が低いため、厚めに塗ると反射光の美しさが引き立ちにくい場合があります。今回は、変化に富んだきらめき感を演出するため、「透明色」を選択しました

ちなみに、透明色よりもさらに色の薄い「本透明」という色もあります
(色の薄い順に並べると、「本透明 < 透明 < 透(スキ)」となります)

あまり色味を薄くしすぎると、「ウレタンクリア」を吹いたような、味のない仕上がりになる場合もあります
どの色がベストかは、なかなか一概に言えないところがあり、実際に合わせてみないと判りません
使用する木材の種類や、塗膜の厚みにも左右されます

最終仕上がりイメージを事前に把握したい場合は、テストピースに塗ってみるしかありません
予想外の結果になることも多いです

個人的には「これは期待できそうだ」と自信を持って臨んだにも関わらず、美しさの引き立たない残念な仕上がりになったり、逆に予想外に良い仕上がりになったケースもあります

オピネル カスタム opinel custom
右側面は、左面に比べると斑の出方がいくぶん小さめですが、縮み杢のような風合いも出ており、これはこれで美しいです

オピネル カスタム opinel custom
あえて杢や斑が反射しない角度で撮影してみました
金色に輝いていた斑の部分が、濃い茶色に変化します

美しい仕上がりの秘訣

オピネル カスタム opinel custom
ただ単に漆を塗布するだけでは、このような美しい仕上がりは得られにくいものです

下処理(下地の仕上げ)を入念に行い、木の表面の平滑度を上げることが重要です
とはいえ、ブナは柔らかい木材ですので、サンドペーパーの粒子が木部に食い込みやすく、普通に研磨をかけるだけでは、表面が粗くなりがちです

ポイントは、薄めた漆を浸透させ、木材表面が硬化した状態で研磨を施し、表面平滑度を上げることです(さらにそれを、ひたすら繰り返します)
もちろん、塗る前の段階で丁寧にペーパーをかけ、事前に平滑度を引き上げておく事は言うまでもありません(硬化後の研磨作業が楽になるため)

漆が浸透し、表面が硬化した状態で研磨をかけることで、普通に磨いただけでは出せない表面平滑度を出すことができます 磨きすぎて木の地肌が出てしまうと、やりなおしになる場合がありますが、ぎりぎりまで攻める心持ちは必用です

下地のでき具合は、仕上がりの美しさに直結します(塗膜表面の平滑度など、後でどうにでもなるのです。ただ、下地はそうはいきません)

今回のハンドルカスタムでは、下地が出てからは3度塗ったのみですが、その前工程の下地を整えるための塗装と研磨は、約10回ほど施工しています

オピネル カスタム opinel custom
カスタム前(漆塗り前)の状態がこちらです。ブレードのみ鏡面に仕上げています
ノーマルの状態は、表面仕上が量産品レベルですので、光沢の乗りが悪くマットな質感になっています

オピネルの動画(漆塗りカスタム)

オピネルを動画で撮影してみました
光の角度と見る方向によって、杢の質感がさまざまな表情を見せ、美しいです



オピネルの弱点を克服

オピネル カスタム opinel custom
純正のオピネルは、木口の処理が粗く、いかにも「量産品」といった仕上がりになっています
上の画像は、研磨と塗装を施す前の木口面です。ガサガサの質感で目の粗い状態です

オピネル カスタム opinel custom
導管が埋まり、ツルピカに仕上がった木口面
斜めに走っている黄色い細い線は、ブナの「斑」です
ここまできれいに表面を仕上げなくても、表面に漆が充分浸透し、漆が乗るようになれば、一定の防水性は得られます

小口部分やリングの内側、ハンドル溝内部も塗装を施しましたので、ハンドル全体が防水仕様になりました

「オピネル濡らすと、刃が出なくなる問題」を克服することができ、ハンドル全体を、遠慮なくザブザブ洗えるようになりました

これまで、キャンプなどではあまりオピネルを持参せず、実用性を重んじてもっぱらガーバーのフィレナイフを使うことが多かったですが、今回のカスタムで水濡れ対策が完璧になりましたので、これからは積極的に使いたいと考えています

このページでは、カスタム後の画像を主に掲載しています

具体的なカスタム手順については、解説がなおざりになっており、申し訳なく思います

時間のある時に更新しようと、思ってはいるのですが、…ハイ、そのうちガンバリマス

さまざまなオピネルのカスタムについて(個人的に)思うこと

派手な削り込みを入れ、形状を大幅に変更し、原型を留めなくすると、ヤンキーの改造スクーターのように、傍目からはダサく見える、みっともないカスタムになってしまいます
「敢えてそうしたいのだ」と言われると、返す言葉もありませんが、過ぎたるは及ばざるが如しです

「下手なカスタム、やらぬが良し」なのです。整形しすぎて顔が変になっている落ち目タレントのようなもので、一旦そうなると、もう元には戻せません

私見ですが、本当にそう思います。下手にモディファイをかけるくらいなら、オリジナル状態のままできれいに使った方が、よぽど格好が良いものです(少なくとも下品になりません)

カラー塗装などで木質感を消してしまうのもどうかと思います
木材が内包している美しさが消失してしまうからです
木質感があってこそのオピネルです。木の暖かみを消してしまうと、オピネルの良さは半減してしまいます

焦がし加工も流行っているようですが、あれは、腕とセンスが必用です
一歩間違えると、「単に汚いだけのオピネル」のできあがりです
加工直後は自己満足もあるので、それなりに見られるものですが、数年経ってくると「やらなきゃ良かった」となるのではないでしょうか?

オピネルのまとめ

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当サイトにおける、オピネル解説ページの全インデックスです

オピネルの扱い方、手入れ、カスタム事例、分解手順などなど、最も突っ込んて掘り下げた内容になっていると思います

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