SOTO/新富士スライドガストーチ(レビューと分解修理)

最終更新日: 作者:月寅次郎


新富士バーナー(SOTO)スライドガストーチ

新富士バーナー(SOTO)スライドガストーチ
長年愛用している、新富士バーナーの 「スライドガストーチ」です
型番は「RZ-520YL」(イエロー)で、キャップのない旧型品になります

「新富士」ではなく、「SOTOブランド」の同型品もありますが、SOTOは新富士バーナーのアウトドアブランドですので、基本的に同じ製品です(型番や名称、貼付シールが異なるだけです)
「新富士バーナー」が会社名で、「SOTO」がブランド名

購入時は「Shinfuji Burner」とプリントされたシールが貼ってありましたが、分解時にネジを外す必要があったため、現在では剥がしており、上の画像のような状態で使っています

新富士バーナー(SOTO)スライドガストーチ
新富士バーナー
スライドガストーチ

スライド部を伸ばした状態

着火剤などの延焼しやすいものに火を付けるときも、これだけの長さがあれが安心して着火可能です

手元からある程度離れた箇所へ着火できるというのは、優れたメリットです
井桁に組んだ薪の中央に火を付けたり、炭の影に隠れた着火剤に火を点けるのも楽チンです
また、登山用のガスコンロに点火する際、コッヘルを置いたままの状態でも火が付けやすいのが良いところです
ガス点火時に「ボッ!」となるのが怖い人にもおすすめです

同様に、「ボッ!」と火が上がりやすいガソリンストーブや、プレヒートの必要なケロシンストーブ、アルコールストーブなどにも良いでしょう

今どきのストーブ(登山やキャンプ用のコンロ)は、圧電素子による着火装置が標準装備の製品が多いですが、火花で着火させるよりも炎で点けた方が、確実かつ容易です。

先にライターに点火し、コンロにライターの火を近づけて、その状態でガス栓を開けていくと、ガスが出ると同時に火が点きます
これだと未燃焼の生ガスがほぼ出ません。そのため、「ボッ!」と大きな炎になりにくいです
圧電素子による点火は、ガスを出した状態で点火させるしかありませんので、どうしても未燃焼ガスが先に出てしまい、「ボッ!」と音がしたり、着火時の炎が大きくなりやすい傾向があります

SOTO
スライドガスマッチ

このスライドガストーチは、炎のタイプがバーナータイプ(ターボライター型)で耐風性が強いのが特徴です

外観がよく似た「スライドガスマッチ」という製品もありますが、こちらは炎の燃焼がバーナー型ではなく、通常のライターのような「ゆらゆら型の炎」になっています
製品外観がよく似ているため、購入する際は間違わないよう気をつけましょう。

ターボライターの炎
SOTO
スライドガストーチ

バーナー型のため火力が強く、温度の高い青い炎が、勢いよく噴射します
そのため風にも強く、火口を下方向に向けても使えるのが良いところです

ノズルを下に向けても炎は上に向かないので、炭の火起こしや、焚き火、薪ストーブなど、床や地面に置いてあるものにも火を付けやすいです(対象物を手に持っていなくても、着火させやすいということ)

また、手袋をした状態でも使いやすいように、押しボタンには充分な面積があり、握った際に滑りにくいよう、ボディにはリブが設けられています

化繊などの熱に弱い手袋を装着した状態で使用する場合は、積極的に火口をスライドさせ、伸ばした状態で使いましょう(万一の延焼や、熱による生地の穴あきを防ぐことができます)

新富士バーナー(SOTO)スライドガストーチ アウトドア

このように、スライドガストーチは、バーベキューでの火起こしや焚き火、蚊取り線香を素早く着火したい場合など、キャンプやアウトドアなどの屋外使用に、とても有用です

おかげでこの製品はすっかり定番化しており、キャンプなどでは持っている人をよく見かけるようになりました

補足:「アウトドア全般に有用」と書きましたが、これは主にレジャー型のアウトドアの場合です
登山などで2500m以上の高地に登る場合は、フリント式のライターがおすすめです
気圧の低い環境下では、圧電素子のライターは着火性能が低下します(低温が重なるとなおさらです)
フリント式は、火打ち石と同様の仕組みで火花を発生させますので、枝分かれした火花が広範囲に広がり、着火能力が高いのが特徴です(圧電素子の火花は、1本しか飛びません)

上の画像に写っているのは、ここで紹介しているスライドガストーチと、スノーピークのギガパワーデルタポッド(CBタイプとそうでないもの)、そしてキャプテンスタッグのラーメンクッカー(お気に入り)です

ラーメンクッカーのレビューはこちらに記載しています

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耐久性、故障・不具合

UNIFLAME
スティックターボ2

このライター(ガストーチ)は、2015年に購入し、仕事で毎日使っていたため、相当に酷使しました

2020年終盤から、次第に点きが悪くなり、だましだまし使っていましたが、2021年には着火が難しくなってきました
このライターを使う前は、UNIFLAMEのスティックターボ(「2」ではない初期型の方)を使っていたのですが、こちらも酷使しすぎたせいか、火力調節ノブが割れて使えなくなり、それを機にSOTOのスライドガストーチに切り替えました

長年使った感想としては、「あれだけ使って、よく持った」と思います

着火が悪化した原因は、発電素子の寿命と思われます(使いすぎによる劣化です。致し方ありません)

対処として、市販の使い捨てライターから圧電素子の部品を取り外し、換装しました
分解・修理手順は、このページの下の方に記載しています

ライターガス・ガス補充

新富士バーナー(SOTO)スライドガストーチ ガス補充

東京パイプ
高純度ライターガス

ガス補充も幾度となく行いましたが、これまでガス経路の不具合や、ガスの詰まりなどの症状は出ていません

当初は安いという理由から、汎用のガスボンベを使っていました(カセットコンロに使う安いやつです)

ですが、ライター専用ガスを使用してみたところ、着火や炎の安定性が良いことが体感できたため、汎用ガスには戻れなくなり、それ以来高純度ライターガスのみを使用するようになりました
夏季はあまり違いが出ませんが、気温の低い冬季は顕著に違いを感じます

銘柄は、東京パイプ高純度ライターガスを使っています(左上の画像の商品です、実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)

このガスボンベには、さまざまなライターに対応可能なようアダプターが多数付属していますが、スライドガストーチに充填する場合は、アダプターを使用する必要はありません
(上の画像の赤いパーツがアダプターです)

ガズボンベのノズルを、直接ライターのバルブに押し当てるだけで、確実に充填が可能です(ノズルとバルブのサイズがぴったりで、注入しやすいです)

比較検証したわけではありませんが、わたしのガストーチが長年ノントラブルでやって来れたのは、おそらくこの高純度ガスのおかげではないかと思っています
下記のように、圧電素子の寿命から分解修理をしていますが、点火系統以外の不良、つまり、ガス経路の詰まりや燃焼不良などは一度も起こしていません

ライターガスの品質について
安物の低品質ガスを使用すると、気圧や温度等の条件が悪い場合には、炎が上方向に飛ぶ傾向にあります。炎が噴射口から離れた上の方で燃焼し、正常に燃焼しません
場合によっては炎が上方に飛んで、そのまま失火します

一般的な黄色い炎のライターの場合は、ある程度ガスの品質が低くても問題が生じにくいですが、バーナー型(※1)の炎の場合は、ガス品質の影響が大きいです
高純度で良質なガスを使用するに越したことはありません(ライターとしての製品寿命を伸ばしてくれます)
※1:ここで言うバーナー型とは、空気と燃焼ガスを混合させた「混合気」を燃焼させることで、青い炎を勢いよく噴出させるタイプを言います。燃焼温度が高く、耐風性能が強いのが特徴です

今ではあまり呼ばれませんが、昔は「ターボライター」と呼ばれていました(燃焼筒内で完全燃焼させた炎を、筒外に噴出させる構造のため、内燃式とも呼ばれます)

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スライドガストーチの分解・修理

以下に分解手順を示しますが、本来このような修理作業は、推奨できるものではありません
(製造メーカーに依頼するか、買い直すかどちらかにすべきです)

メーカーに依頼する場合は、ページ上部に公式リンク(カスタマーサポートのページ)を貼っていますので、そちらをご利用ください

また、どうしてもDIYで修理したい場合は、自己責任において作業してください
作業としての難易度は、それほど高くありませんが、DIYスキルと安全管理能力は、人によって大きく差があるものです

ちなみに、わたしはDIYスキルは、このくらいです。こちらも参考になるかな?

外装(ボディ)を取り外す

新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 分解・修理
底部にある火力調整つまみを取り外します

新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 分解・修理
精密ドライバーを使い、側面のプラスネジ(2箇所)を外します

新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 分解・修理
シールを剥がし、シール裏側に隠れている長いネジと、ガス注入穴横のネジを外します

新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 分解・修理
ボディ上面を外します
※ この画像は組立時に撮影したものを流用しています。もともと装着されていた圧電素子は黒色です

真鍮製の板状の部品(圧電素子に斜めに嵌っているパーツ)は、ガスのバルブを開く機能を果たしています
組立時に戸惑わないよう、どのように取り付けられているのか、よく観察しておきましょう


新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 分解・修理
押しボタン(着火の際に押下する部分)を外します

新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 分解・修理
ボディ下面を取り外すと、外装パーツの取り外し(内部パーツの取り出し)が完了です

圧電素子の取り外し

新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 分解・修理
反対側の面です

黒色チューブはガス配管で、オレンジ線は電気の配線です
黒色で短く、接続先の無いチューブは、インシュレーター(緩衝材)として、圧電素子の底部を保護しています

3本とも溝に嵌める形で固定されていますが、オレンジの線だけを溝から外し、さらに圧電素子との接続も外します

圧電素子 ライター
接続を外せば、圧電素子は簡単に抜けます(嵌っているだけです)
上の画像が、取り外した圧電素子です

長さはおおよそ3.5cm
同じサイズの圧電素子が見つかると良いのですが・・・

100円ライターから圧電素子を取り出す

ライター 圧電素子 交換
BAIKAL
電子ライター

同形状の圧電素子を探して回りましたが、最終的に100円ライター(使い捨てタイプの電子ライター)を使用することにしました

上の画像は、実際に用意したライターです
内部に圧電素子が透けて見えますが、サイズ的には違いが無いようです
おそらく流用可能だろう」と判断し、使ってみることにしました

ちなみに、この100円ライター(使い捨て電子ライター)はチルチルミチル製です
左の画像の商品はBAIKAL製100円ライターですが、こちらも圧電素子の形状が同じに見えます。(実売価格が表示されない場合は、広告ブロッカーをOFFにしてご覧ください)

どうやら使い捨て電子ライターの圧電素子は、どのメーカーも(わずかな違いこそあれ)基本的に同形状であることが多いようです
とはいえ、圧電素子なら何でも良いかと言うと、そうでもありません

圧電素子
上の画像は、snow peak製の登山・キャンプ用ストーブ(ガスコンロ)の修理に使用した圧電素子です

見て分かる通り、プラグコードが100円ライター用とは異なり、「極太仕様」になっています
このタイプは内部導体も太く、発生電圧が漏れなくスパーク端子に伝わりますが、ライターのような筐体の小さな製品に納めることができません
推測ですが、家庭用ガスコンロの点火等を想定したパーツと思われます
このタイプは、スライドガストーチの修理には使えませんので要注意です


詳しくは、こちらのスノーピーク・ギガパワーデルタポッドの分解・オーバーホール のページをご覧ください

ライター 圧電素子 交換
KEIBA
ラジオペンチ
(先曲がり)
100円ライターを分解し、内部の圧電素子を取り出します

口金部分は薄い金属製ですので、先端の細いラジオペンチを差し込み、口金を曲げて広げれば、押しボタンを外す事ができます
ボタンが外れれば、その下に収められている圧電素子も取り出せます

※ 画像に写っている小型ラジオペンチ(先曲がりタイプ)は、仕事で使っているものですが、先端にヤスリをかけて薄く削り、極細の隙間に差し込んで使えるようにカスタムしています
(そのため、わざと安物の製品を使用してます。メーカー品は材質・焼入れともにしっかりしており、硬度が高くてなかなか削れないためです)

今回の作業では、ここまで工具にこだわる必要はありません
一般的な小型のラジオペンチで事足ります
「ラジペン」を持っていない人は、フジヤかケイバあたりを買いましょう(信頼できるメーカーです)

わたしもブランド品として有名なクニペックス(ドイツ)や、バーコのラジオペンチも持ってはいますが、無理して高い工具を使う必要はありあません
(所有欲は満たされますけどね)

圧電素子
黒色の方が、新富士バーナー(SOTO)に組み込まれていた、古い圧電素子
白色の方が、100円ライターから取り出した、新しい圧電素子です

押しボタン形状の違いはありますが、全長と横幅がほぼ同じなため、流用できそうです

新しい圧電素子を取り付ける

圧電素子 交換
導線を接続します

新しい圧電素子の方が、僅かながらケーブル外経が太いようで、接続用の透明チューブになかなか入っていきません。皮膜の先端を少し剥くことで、なんとか挿入することができました

この状態で圧電素子を押し、火花テストを試みましたが、指先にビリビリと電圧が感じられます
新品の圧電素子だけあって、かなり高めの電圧が出ているもようです

当初は「万全を期してハンダ付けしようかな?」と考えていましたが、「これだけの電圧が出ていれば必要ない」と判断しました

新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 分解・修理
ANEX
ピンセット

先細鷲型
新しい圧電素子をセットし、導線を溝に嵌めます

あとは、分解時と逆の手順で組み立てていきます(組み立て手順は省略します)

上の画像に先端だけ写り込んでいる工具は、ANEX(兼古製作所)の先細鷲型ピンセットです
先端が曲がっており、ピンポイントに近い極小面積で接触するタイプです
樹脂製のグリップがあるおかげで、指先に馴染みやすく、安定してホールドできるのも良いところ

仕事で米粒より小さいチップ抵抗をはんだ付けすることがありますが、その際はいつもこのピンセットを使っています
既に10年以上は使っていますし、他のページでもよく画像の隅に写り込んでいますが、これがあるおかげで細かい作業もあまり苦になりません

着火テストを行い、修理完了

着火テスト ライター
着火性能が極めて良くなり、ライターとして完全復活しました

バリバリに着火します
これが、本来の性能
というものですね

今回は、ダメ元で圧電素子を交換するか、新品の製品を買い直すか、どちらにするか迷いましたが、修理(部品交換)に踏み切って成功でした

圧電素子は、ある程度の耐久性はありますが、決して永久に使用できるものではありません
使用するにつれて、徐々に発生可能な電圧が低くなっていきます

今回のガストーチの場合でも、圧電素子交換前の状態だと、火花が飛ぶのは視認できるのですが、着火には至らないことが多く、火花の弱さを感じました

精密ドライバーについて

アネックス
精密ドライバー


PB
精密ドライバー


Wera
精密ドライバー

今回の分解作業に「精密ドライバー」は必須です
(これが無ければ分解不可能です。普通のドライバーではサイズが大きすぎるため、ネジ溝にビットが入りません)

わたしが使っているのは、アネックスの精密ドライバーです
(左の画像の商品です。表示されない場合は、広告ブロッカーをOFFにしてご覧ください)

樹脂軸を使用しているため、精密ドライバーとしては価格の安い製品ですが、実はこれが意外に使いやすいです

金属軸タイプがダメな理由は2つあり…

1.金属軸タイプは、そもそも外径が細いため、トルクをかけづらい
2.強い力をかけると滑り防止のための細溝が指先に食い込み、痛くてトルクがかけづらい
 …というものです(固着したネジで実際にやってみると、よく判ります)

有名メーカーであるスイスの「PB」や、ドイツの「Wera」(ヴェラ)は、このあたりをよく理解しているので、軸が太めの樹脂グリップを採用しています
ただ、これらの一流メーカーは「工具のブランド品」とも言えますので、それなりに高価です

わたしも実際に、通常サイズのPB製ドライバーや、Weraのラチェットレンチを持っており、その使い心地は言うことがありません(間違いがありません)
とはいえ、このアネックスのドライバーでも(よほどこだわるのでなければ)、クオリティ的には問題なく使用可能です

甲丸スナップを装着(改造・モディファイ)

新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 改造
甲丸スナップ(小型のワイヤーカラビナ)を取り付けて、吊り下げ可能にしています

仕事で毎日使っていた時期は、机横のフックにぶら下げて、取り出しやすいようにしていました

新富士バーナー/SOTO スライドガストーチ 改造
ニッサチェイン
甲丸スナップ

甲丸スナップはライターに直接取り付けるのでなく、手製の「リング」を一段かませています
(ライターの向きを90度ずらすことで、吊り下げ時に机側面に沿うようにする目的です)

甲丸スナップのくびれた部分にも、同様の「リング」を入れてありますが、こちらは、甲丸スナップの小端側が常にライター側に来るようにとの意図で付けたものです

これを付けることで、ピンフックがぐるぐる回らなくなり、とても使いやすくなっています
これを付ける以前は、ピンフックの大端側がライター側に回り込んでしまうことがあったのですが、それが無くなりました

手製のリングは、細い銅線を巻いて、その上からハンダ付けを行い、線の末端がバラけないようにしています

※ 甲丸スナップは約4cmのものを使用しています。あまり小さいと使いにくいですが、大きすぎても邪魔ですので、自分に合ったサイズ感のものを使うと良いです

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甲丸スナップ ニッサチェイン製 42mm(amazon)

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