関孫六 10000CC
「関孫六 10000CC」三徳包丁
刃体・ブレード
刃体は炭素鋼複合材です。
芯材に切れ味に優れたハガネを使用し、側面を錆びにくいステンレス材で覆った利器材です。
(三枚合わせ、クラッド材とも呼びますが、芯材が炭素鋼である点がポイントです)
側面材と芯材の境は、刃文状の波打ち模様が見られますが、これは「叩き」を入れて、鋼材の境界面が直線状にならないようにしているものと思われます。
手法的には、
ダマスカス包丁の「叩き」の工程とよく似ていますが、ブラスト処理や酸蝕処理などで模様を浮き立たせてはいないので、さほど目立つものではありません。
(カメラで撮影するのに苦労するくらいです)
口金とハンドル
口金は、高価格帯の包丁でよく用いられる一体型の口金。
ハンドルは、木目を際立たせた積層強化木です。
細かいところも、高い精度で仕上げられています。
これみよがしな演出はなく、派手さもありません。
質実剛健でクラシカルな『本通し』の包丁ではありますが、安心して長く使える、良いデザインです。
各部の仕上げ
10000CCは、「
関孫六プレミア」に位置づけられるだけあって、各部の仕上げもきれいです。
アゴの内側、峰の角部分、ハンドルと口金の継ぎ目、刃体の表面処理など、実に丁寧に仕上げれられています。
研いだ感触
中砥石で刃付け
中砥石(キングハイパー 1000番)で刃付け
一言でいうと、パリンパリンの良い刃が付きます。
しかもこれが、簡単に付くのです。
鋼材が粘ることなくカリカリしているので、砥石にもよくかかりますし、カエリもスカッと取れやすいです。
ハガネ刃の良さが、ここにあります。
研ぎやすさと、刃の仕上がりの良さは、やはり炭素鋼といったところですね。
細かいことにこだわらないのであれば、関孫六の中価格帯の包丁でも、なんら問題はありませんが、この刃筋のエッジのパリパリ感は、一度味わって頂きたいものです。
筆者は、刃筋のエッジに関しては、「
かかりの良い刃」を重視し、
刃体のスキに関しては、「
刃の抜けの良さ」を重視しています。
「関孫六 10000CC」は、そのような観点から見た場合でも、(工場での大量生産で製造された市販包丁の中では)トップクラスと言えます。
これよりさらに高みを目指すのであれば、炭素鋼の鍛えた鋼材で、クロム含有量がより少ないものを選択するしかありません。
ただそうなると、耐食性が落ちますので、「扱いやすい実用的な包丁」という観点から見た場合、10000CCは、やはり「トップクラス」です。
仕上げ砥石で刃付け
仕上砥石(キングS-1 6000番)で刃付け
仕上げ砥石を当てると、滑らかさが加わって、キレキレになります。
基本的に、言う事はありません。
近年は、高級ステンレス刃物鋼も充分使える域に達していますが、パリパリしたエッジの質感は、炭素鋼ならではです。
今回は、6000番で済ませましたが、この10000CCであれば、8000番や12000番を当てたとしても、刃が滑らずに、しっかりと刃がかりの良い刃に仕上がると思います。
これは研ぎたてのキレキレの状態でのレビューですので、しばらく使っていれば、刃が潰れ、少し切れ味が落ち着いてきます。
ハガネの包丁の面白いのは、この、刃が少し落ち着いた状態の切れ味に、妙があるところです。
「包丁・ナイフ・刃物 」の目次に戻る
月寅次郎の包丁解説(裏話)
月寅次郎の包丁レビュー(使用包丁一覧)
月寅次郎の包丁カスタム(DIY作業手順)
包丁の研ぎ方、砥石、研磨など(砥石のレビュー)
月寅次郎プロフィール