ヘッドライトの黄ばみ取り
このページは、ヘッドライトの黄ばみ取り(くすみ除去)の解説(2ページ目)です
ピカールやブルーマジックは、ヘッドライト磨きに有効なのか? また、研磨後のコーティング剤の必要性、ガセ情報、非効率な磨き方の実例などについて説明しています
ヘッドライトの黄ばみ取り剤のすべて - 目次
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ヘッドライト用黄ばみ取り剤の正体 ページ1
「専用クリーナー」と「液体コンパウンド」は、何が違う?(成分比較)
液体コンパウンドで充分なのに、なぜ「専用クリーナー」が販売されているのか?
ヘッドライト専用クリーナーの弱点と限界
専用品以外で、代用可能なコンパウンド
深く削ってきれいに仕上げる - 3段階磨き
多段階研磨を安く済ませる方法、セット品のコンパウンド
より大きな研磨力が必要な場合は?
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ブルーマジックとピカールはヘッドライト磨きに使えるか? ← 現在のページ
コーティング剤の同梱は決め手になりえるか?
ネットにはびこるレンズ磨きのガセ情報(と悪い磨き方)
ヘッドライト黄ばみ取り剤の「まとめ」
ピカールとブルーマジックは、ヘッドライトの黄ばみ取りに使えるのか?
前のページから順に読んできた方にはもうお分かりだと思いますが、ピカールもブルーマジックもヘッドライトの黄ばみ取りには有効です
ただ、粒度(番手)が専用クリーナーと若干異なりますので、それを意識して適正に使用すればよいだけです
「
ピカール 金属磨き」の研磨粒子は、平均粒径
3ミクロンです
「
ブルー マジック」は、
5ミクロンです
材質はどちらもアルミナ(酸化アルミニウム)、ホワイトアランダムとも呼ばれます
これはつまり、研磨力で比較すると・・・
ブルーマジック>ピカール>ヘッドライト専用クリーナー、となります
一方で、仕上がりの平滑度で比較すると
ヘッドライト専用クリーナー>ピカール>ブルーマジック、となるわけです
「
専用クリーナーの弱点と限界」で述べたように、ヘッドライト専用クリーナーは、かなり安全マージンを取った粒子サイズになっていますので、研磨力よりも傷の付きにくさを優先させた粒子サイズになっています
研磨力を重視したい場合はピカールを、さらに深い研磨力が必要な場合はブルーマジックを使うなど、用途に合わせて最適な粒度(番手)のコンパウンドを使用すればよいのです
また、研磨力と平滑度を両立させたい場合は、前述の
3段階磨きをすればよいのです
コーティング剤の同梱は決め手になりえるか?
ヘッドライトクリーナーには、
「専用コーティング剤の同梱」を全面に押し出して、他社製品との差別化を図っているものも多々あります。
ですが、だからといって専用品に飛びつく必要はありません。
保護効果のある
艶出し剤や、コーティング剤等を使用すれば良いだけだからです。
この手の商品は車を持っている人なら、ほとんどの方が持っているでしょうから、わざわざ買う必要もありません。
プラ素材に使用可能なコーティング剤
「プラスチック素材にも使用可能」な艶出しコーティング剤というと、バリアスコート、ゼロウォーター、プレクサスあたりが有名です。
今どきの車は、ポリカーボネート製のヘッドライトカバーや黒シボの樹脂素材など、多種多様のプラ素材が外装パーツとして多用されているため、自動車用の艶出し剤は、プラスチック素材にも使用できるものがほとんどです。
「プラスチックには使用しないでください」と明記されていれば別ですが、そのような商品はまずありません。
コーティング剤の効果1(表面平滑度は上がる?)
コーティング剤や艶出し剤を使用することで、ヘッドライトの表面を、より艷やかに仕上げることができます。
研磨の仕上がりに多少のムラがあったとしても、コーディングをかければたいてい誤魔化せます。
そういう意味では、研磨後のコーティングは「
充分な効果がある」と言うことができます。
ですが逆に、研磨作業だけでツルピカ表面に仕上げることができた場合は、コーディングをかけても、それほど見た目は変わりません。
つまり、
研磨が下手であれば研磨後のコーティングの体感効果が上がりますが、上手な人であれば「たいして変わらないよね…」ということになります。つまり、施工する人の技術力によって差が出るというのが実際のところです。
コーティング剤の効果2(UV保護効果の実効性は?)
コーティング剤の紫外線防止効果は見逃せないところです。本当に紫外線をシャットアウトしてくれれば、研磨後の状態を長期間維持できるからです。
ですが、
コーティングさえかければ、研磨後のツルピカ状態がずっと続くのでしょうか?
これは気になるところです。
確かに、ヘッドライト表面の劣化は紫外線の暴露が主要因ですので、紫外線さえカットしてしまえば、劣化を防ぐことができます。
そして、市販コーティング剤には、紫外線防止(UVカット)効果を謳ったものが多々あります。
それなら、
紫外線防止効果のあるコーティング剤を使用すれば、ヘッドライトの状態も長持ちという考えが成り立ちますが、これには少々
注意が必要です。
なぜかというと、
紫外線防止効果の実効性については、
有るのか無いのか、分からないレベルと言っても過言ではないからです。
基本的に、コーティング層は極薄の透明膜でしかありません。この極薄層は透明ですので、当然ながら可視光線を透過します。そして、可視光線を通すけれども、紫外線を通さないというのは、ほぼ無理です。
紫外線の波長は可視光線よりも短いからです。
「ふるい」で例えると、「サイズが大きなものは、ふるいの目を通過できるが、小さなものは通れない」というのはあり得ません。それと同じです。
当然ながら、波長の長い可視光線が通過できるのであれば、波長の短い紫外線は楽々通り抜けてしまいます。
改めて考えてみましょう。
市販コーティング剤に紫外線防止効果を謳ったものは多々見られますが、そこには「
紫外線を6ヶ月間シャットアウト!」や「
紫外線反射率85%」といった具体的数値を示した製品は、一切ありません。そこまでウソの表示をしてしまうと「優良誤認」となり、法令違反となるからです。
しかし、ごく僅かでも紫外線防止効果のある成分を配合していれば、「UV吸収剤配合」と表示できます。
たとえそれが、紫外線透過率を2.3%低減させるだけであり、しかもその効果が数日で失われてしまうものであったとしても、実際にUV吸収剤を配合しているのは事実ですので、「紫外線からボディを保護」と表示しても、何らおかしくはないわけです。
(「コーティング塗布によって、紫外線が長期間シャットアウトされるはず!」と、ユーザー側が解釈してしまうことはありがちですが、メーカー側からすると、ユーザーが勝手にそう思い込んでくれることは、非常にありがたいことであり、「狙い通り」というわけです)
というわけで、
コーティング剤の紫外線防止効果については、ほとんど期待しない方が良いです。
(嘘だと思ったら、コーディング剤のメーカーに対して、紫外線透過率が具体的に何%低減するのか尋ねてみてください)
「くもり」の発生したヘッドライトカバー。クリアな印象が無く、全体的にぼやっとした感じになっている
ネットにはびこる、レンズ磨きのガセ情報(と悪い例)
このページを書くにあたって、レンズ磨き(ヘッドライトのくもり除去)について、ネット上ではどのような解説があるのか、念のため確認してみましたが、
根拠の無いいい加減な情報も散見されました
また、「実際にやってみました~!」という感じで、
ただやみくもに磨いているものも見受けられました(かなり非効率な磨き方をしていると感じました)
ここでは実例を挙げて、
なぜ間違っているのか、どこが非効率なのかを解説し、同時に
効率的で正しい磨き方とはどういうものなのかを説明してみたいと思います
ヘッドライトの曇りには「CRC 5-56」 - これはある意味ガセ情報
ヘッドライトカバーのくもりや黄ばみには、「CRC 5-56」が効くというガセ情報を流しているページがありましたが、これは間違った情報です(YouTubeにも同様のガセ情報あり)
CRC5-56は、呉工業の製品で、国内における浸透潤滑剤の定番商品です(米国の場合はWD-40が有名)
浸透力(狭い隙間にしみ込む能力)と、潤滑力(滑動を滑らかにする力)はありますが、研磨力は皆無です
そのため、ヘッドライトカバーの表面層に発生した超微細なひび割れや、黄変した表面層を削り取って除去する力はありません
つまり、
「CRC 5-56」はヘッドライトのくすみ取りには効果がないのです(そもそもメーカー側もそのような効果があるとは謳っていません)
ただ、気をつけて欲しいのは、「CRC 5-56」の塗布によって、一時的にヘッドライトカバーのくすみ感が薄れたように感じることがあります
これは単に、カバー表面の微細なひび割れに5-56が浸透し、光の乱反射を抑えているだけです
すりガラスを水で濡らすと、光の散逸が抑えられるのと同じ仕組みで、表面に油膜が張ることによって、一時的に光の透過率が回復しているだけです
すりガラスの場合も、水が乾くと元通りの不透明に戻るように、5-56の油分が失われてしまうと、元通りのくすんだ状態に戻ります
さらに言うと、5-56の主成分は石油系溶剤と鉱物油ですので揮発しやすく、耐久性がありません
シリコン系やワックス(蝋)系コーティング剤のような定着力はなく、簡単に落ちてしまいます
つまり、5-56を塗っても、ヘッドライトカバーのくすみや黄ばみを落とすことはできません
一時的にくすんだ状態をごまかしているにすぎず、しかもその効果も長続きしません
このように、ヘッドライトカバーのくすみや黄変を、浸透潤滑剤で根本的に解決することは不可能です
一時的に誤魔化すことしかできないのです。「ヘッドライトのくもりには5-56!」と謳っているページを見かけたら、そのサイト全体を眉唾を付けて読んだ方が良いでしょう(何も判っていないのです)
WD-40のロングボトル(400mlの商品)のamazonレビューには、実際にヘッドライトカバーに試してみた実例報告がなされています
「一時的にきれいにはなるものの、耐久性は〇週間で、元の状態に戻った」…とあり、当ページの説明通りになっていることが判ります
非効率な磨き方の例 - 番手を飛ばしすぎると?
とあるミニバン車両(はっきり言うと10系アルファード)を対象に、「荒技!ヘッドライトを紙やすりで削って黄ばみを落としました!」というページがありましたが、かなり非効率な磨き方をしていました
どこが非効率で、どうやれば効率が良くなるのか、改めて解説してみましょう
該当ページの作業内容は、以下の通りです
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耐水ペーパーを使用し、#1000番、#1500番、#2000番の順に磨く
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その後、ピカール(金属磨き用研磨剤)で磨く
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さらに、キイロビン(ガラスの油膜取り用研磨剤)でも磨く
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さらにさらに、ワコーズ「PC2」(塗装面用超微粒子コンパウンド)で磨く
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最後に保護剤を塗る
労力や頑張りについては評価に値しますが、見方を変えると、やっていることが「あまりにも非効率的」です(おそらく、自分のやっていることが判っていないのだと思われます)
それでは、この作業メニューのおかしい点を列挙してみましょう
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スタート時点の番手を下げすぎている
研磨対象の硬度と状態を考慮すると、1000番というのは番手が低すぎます
どうしても耐水ペーパーを使用したい場合は、2000番近くが推奨番手となりますが、はっきり言ってしまうと、爪が引っかかったり、目視で判別可能な傷でも付いていない限り、サンドペーパーを持ち出す必要はありません
サンドペーパーを持ち出すのは、先に50ミクロンのラビングコンパウンド(粗目のコンパウンド)を使用して、それでは研磨能力が不足することが確認されてからでも遅くはないでしょう
実際のところ、15~10ミクロンのコンパウンドでも、(ヘッドライトカバーが対象の場合は)かなり思い切った低い番手なのだと考えるべきです
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2000番の耐水ペーパーの後に、ピカールを使用するのは、番手の間隔が開きすぎ
このため、ペーパーで付いた傷の除去に労力がかかりすぎています
はっきり言ってしまうと、自分でわざわざ傷を付け、その傷が取れなくて苦労しています。(余計なことをして作業量をいたずらに増やしているという、悲しい例です)
この場合の適切な対処としては、中間工程として粗目のコンパウンドを挟むことが推奨されます。間にワンクッション置くことで、番手のつながりが良くなり、前段階で付いた磨き目の除去が楽になります
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ワコーズPC2とキイロビンを使い分ける必然性が無い
キイロビンはガラス用の研磨剤ですので、光学用の酸化セリウムが使用されています
ワコーズPC2は、「塗装面の最終仕上げ用」という位置づけのため、おそらく粒径1.2~0.7ミクロン程度の酸化アルミニウム(ホワイトアランダム)が使用されていると思われます
このため、双方の製品には(わざわざ使い分ける程の)粒度的な違いがありません。さらに言うと研磨粒子の硬度も異なるため、実質的に番手を上げているのか下げているのか全くわかりません(やみくもに磨いていると言ったのは、この部分です)
端的に言ってしまうと、キイロビンを使用する必然性が全く感じられません。この場合は、ピカール→PC2で充分です(それとも、「色々な研磨剤を使い分けてて、凄いでしょ?」という、アピールなのでしょうか?)
このような「非効率な研磨例」は・・・
まず、自分が使用している研磨剤の番手を把握していない
次に、耐水ペーパーとコンパウンドの特性を理解していない(番手の数字を鵜呑みにして、ベース剤の硬軟を考慮していない)ことが要因となっています
ユーチューバーが有名になりだしたころから、「とにかくやってみた」系の動画やページが量産されていますが、自分が何をやっているのかを理解して作業しないと、ただの「子供のお遊び」です(はっきり言うと、「ク●コンテンツの垂れ流し」です)
ヘッドライトカバーをきちんと研磨する場合は…
確実に番手(粒子サイズ)が判明している製品を使う
劣化度が軽微な場合は5ミクロンから初め、番手を上げて、最後は1ミクロン以下に仕上げる
劣化が中程度なら15~10ミクロンからスタート
重症の場合は50ミクロンからスタート
・・・というように、きちんと理詰めで研磨していきましょう
各工程で手を抜かずに仕上げていけば、最後にはピカピカの平滑度に仕上がります
前述に挙げた非効率な例のように、やみくもに研磨剤を乱用するのではなく、効率よく最小のステップで、順を追って確実に仕上げましょう
「くもり」の出ているライトカバー、紫外線とも擦れ傷とも異なる、やや特徴的な曇りの出方をしている。パーツクリーナーなどの溶剤が付着して表面が白化したか、コーティング剤の塗りムラだと思われる
ヘッドライト、黄ばみ除去のまとめ
ヘッドライト、黄ばみ除去のまとめ
軽症(黄ばみが薄く、軽い研磨で済みそうな場合)
専用品の
ヘッドライト黄ばみ取りクリーナー、もしくは
ウイルソン超微粒子などの1ミクロン前後のコンパウンドで磨く
(たいていの場合はこれで充分です。ただし研磨力は決して強くはないので、これで磨き取れなかった場合は、下の方法を試します)
重症(劣化が激しく、深めの研磨が必要な場合)
下記、1→2→3の順に磨く
1のブルーマジックで、劣化した層を深く削り取り、2で表面を整え、3でツルツルにする(簡易的にやる場合は、1と3のみでもOK)
ピカールやブルーマジック単体で磨いても充分効果はある(こだわらなければ、これでもOK)
むしろ、粒度が大きい(番手が小さい)ため、専用製品よりも研磨力が高い
(ブルーマジック(5μ)>ピカール(3μ)>専用クリーナー(1~0.7μ)
これらの製品は、粒度が大きな分だけ仕上がりに関しては分が悪いが、
どこまでの表面平滑度を求めるかは、個人の満足度にもよるので、一概に言えません
むしろ、研磨後にワックス等でトップコートをかけることを考慮すると、(やさしく磨けば)ピカールの3μレベルでもかなり満足いく仕上がりになります
とりあえずピカールでやってみて、さらに表面平滑度を上げたくなった場合は、1ミクロンサイズの液体コンパウンドを使用するのも良いですし
ピカールの研磨力では不足が生じる場合は、ブルーマジック等を使用して一旦番手を下げ、再度磨きなおすというように、
状況に応じて適宜方法を修正するというのも、非常に現実的な方法です
(実際のところ、車の年式や保管環境、紫外線の当たり具合によって劣化度合いは様々なので、一概に「こうすれば良い」というのは、難しいところもあります)
研磨剤の粒度(番手)を変える場合は、必ず磨き布(ウェス)も新しい物に変えましょう
同じクロスを使いまわずと、粒度の異なる研磨剤が布の上で混在してしまい、番手を変える意味がありません
磨き用の布(ウエス)については、こちらのページで解説しています
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