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包丁の選び方(誰も言わないマニアな話)


研ぎ方によって変わる、最適な包丁の選択

包丁の選び方
今回選定した おすすめ包丁ランキングは、「関孫六プレミアシリーズの中で、どの包丁がおすすめか?」という観点から選んでいます

どちらかというと、砥石で研いで、包丁のポテンシャルをフルに引き出し、高度な切れ味を出せる人を想定したランキングです
自分で包丁を研がないという方でも、信頼できる研ぎ師に定期的に包丁研ぎを依頼しているのであれば、このランキングをそのまま適応して問題ありません

ですが、シャープナーで刃を研いでいる場合は、ベストな包丁もまた変わってきます
後述のように、中程度の硬度で刃の付きやすい包丁を選んだほうが良いでしょう

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高級包丁をシャープナーで研ぐのが、おすすめできないわけ

グローバル
専用シャープナー

そもそも、プレミアシリーズのような高級包丁を、簡易シャープナーで研ぐのはおすすめできません
刃が付かないわけではないのですが、このような包丁は鋼材グレードが高く、ブレードの硬度も高くなっています
そのため、シャープナーの研磨面にかかる負荷も高く、研磨粒子の角が短期間で丸くなり、消耗が早まってしまうのです

砥石の場合は、そもそも研磨面積が桁違いに広いですし、研ぐ毎に古い粒子が砥泥となって剥がれていき、下から角の立った新しい粒子が顔を出しますので、研磨力が全く低下しません
左上の画像は、グローバルのシャープナーです
このモデルは透明ボディですので、内蔵されている回転砥石の大きさがよく判ります
シャープナーの研磨面というのは、あんなに小さいのです

ですがシャープナーの場合は、粒子の角が落ちてしまうとそれで終わりです。切削能力が如実に落ちて、なかなか研げなくなってしまうのです
さらに言うと、シャープナー側の製品寿命も短くなってしまいます

中庸な硬度の包丁ですと、こういった研磨力の低下が起こりにくくなります。研ぐ研磨粒子と、研がれる鋼材との硬度差が充分なため、比較的少ないストローク回数で確実に刃を付けることができるのです

中途半端に刃の付いた高級包丁より、低価格でも確実に研ぎあがった包丁の方が、良く切れるのは言うまでもありません

【 まとめ 】
● 高級包丁をシャープナーで研ぐと、シャープナー側の研磨粒子が比較的早く摩耗する
● 研磨粒子が劣化したシャープナーでは、硬度の高い包丁はうまく研げず、刃の仕上がりも今ひとつとなる
● 普及価格帯の包丁は硬度が中庸なため、シャープナーが長持ちするだけでなく、早く確実に刃が付く
● 中途半端な研ぎあがりの高級包丁より、価格は低くてもしっかりと刃付された包丁の方が、よく切れる
● これらのことを総合的に考えると、シャープナーで研ぐ場合は、普及価格帯の包丁を使った方が、賢い選択と言える

都合の悪いことは、消費者には知らされない

上の「まとめ」に書いたことは、考えてみれば自明のことではありますが、この事を口にする人はほとんどいません(こんな事をわざわざ書くのは、包丁マニアのわたしくらいです)

なぜかというと、メーカーも販売業者も、高くて立派な包丁を買って欲しいからです

「高くていい包丁を買ったら、硬度が高い分だけシャープナーが早くダメになりますよ」なんてことは、売る方からしたら、口が裂けても言えないわけです

さらに言うと、シャープナーの買い替え頻度が増加するため、商売的にはおいしいことこの上ありません

冒頭に、「誰も言わないマニアな話」と書いた訳が、お判りいただけましたでしょうか?

砥石で研ぐのが苦手な方のための、包丁選び

それでは改めて、シャープナーで研ぐ際にはどんな包丁が向いているのか、整理してみましょう

シャープナーで研ぐ場合は、あえて高級な包丁を選ばずに、普及価格帯の包丁を使うと良いです(関孫六の包丁でいうと、実売価格2500~5000円クラスの包丁です)

この価格帯の包丁は、刃物用鋼材として中庸な硬度のものが使用されており、硬すぎない分だけシャープナーの研磨面が硬度負けしにくいです。そのため、少ないストローク回数で確実に刃付けすることができ、シャープナー自体も長持ちします

またそのような鋼材は、ぎりぎりまで炭素含有量を高めていない分だけ錆びにくく、靭性もありますので、ラフな取り扱いにも耐えてくれます。つまり刃こぼれもしにくいのです

つまり、家庭用の包丁として考えると、ベストバランスに近いのです
硬度が中庸な分だけ、刃持ちもほどほどになりますが、家で使うには必要にして充分です

プロの調理人のように、一日に段ボール数箱分の玉ねぎを処理するわけではないのですから、無理に高硬度の包丁を使う必要もありません(それよりも、シャープナーでも刃が付きやすい包丁を選ぶことの方が重要です)

【 普及価格帯で、中庸な硬度の包丁は、具体的にどれが良い? 】

● 「使用後の包丁は拭かずに自然乾燥、研ぐのはシャープナー」という場合は、関孫六のおすすめ包丁のページをご覧ください(中庸な硬度のステンレス包丁のなかから、ベストの一本を紹介しています)

● 「シャープナーで研ぐけれども、切れ味には妥協したくない」という欲張りな方は、こちらで紹介している 炭素鋼複合材の包丁を選んでみてください

切刃のみが炭素鋼になっているため切れ味が優秀で、なおかつ、ステンレス系の鋼材と比較すると刃が付きやすいのが特徴です
エッジ部分のみ若干耐蝕性が劣りますが、そのデメリットを上回る総合的な性能を持っています

普及価格帯の包丁、おすすめの2本

家庭で使うには、普及価格帯の中庸な硬度の包丁が良い」と、書きましたが、具体的にはどのような包丁が挙げられるのでしょうか?

ここでは、関孫六の包丁の中から、2本を取り上げてみましょう

関孫六のおすすめ包丁のページで、12本の中から最終的に残ったのが、この2本です)

関孫六 いまよう (中価格帯・ロークラスのおすすめ)

関孫六
いまよう

中価格帯の中でもロークラスで一本挙げるとすると、「関孫六 いまよう」がおすすめです

口金付き積層強化木ですので、樹脂ハンドル包丁のような安物臭さがありません(安いのに)
本通しではなく、今どき珍しい背通しの包丁ですが、本通しと比較して、強度や耐久性に劣るのかというとそんなことはありません
鋼材コストが節約できる分だけ、商品価格を低く抑えれられるというメリットの方が大きいでしょう
「背通し」については、こちらのページで解説しています

口金の種類は、低コストで製作可能な「合わせ口金」となっています
高級包丁に採用される「一体口金」ではありませんが、一体型にすると数千円も価格が跳ね上がってしまいます

ステンレス刃物鋼と積層強化木の組み合わせなら、合わせ口金でも充分な耐久性を持ちえます
コスパ重視であれば、なおさら合わせ口金がおすすめです(口金なしの「わかたけ」になると、さらにコスパが高くなりますが、プラスチックハンドルですので見た目がしょぼいですし、鋼材のグレードも少々心もとないです)

「いまよう」のブレードは単層の一枚ものであり、三枚合わせではありませんが、この価格帯の包丁はさほど高硬度の鋼材ではありませんので、単層材で充分です

三枚合わせ構造は、高硬度鋼材を芯材に挟んでこそメリットが生きるので、いまようのような包丁に採用しても、製品価格が上がるだけで、さほど大きなメリットとはなり得ません
(ヘンケルスやビクトリノックスなどの西洋包丁メーカーは、最初から単層ものばかりですしね)

ちなみに、「ほのか」と「」は、「なんちゃって口金」ですので、あまりお勧めいたしません
あれは、プレスした板金をプラスチックのハンドルに口輪状にかぶせ、口金に見せているだけです
店頭で実物を見るとよく分かりますが、刃と口金の隙間からプラスチック素材が見え隠れしているのが判ります。これでは口金の意味がありません

関孫六 べにふじ (中価格帯・ミドルクラスのおすすめ)

関孫六
べにふじ

もう少し予算が出せるようであれば、「関孫六 べにふじ」もおすすめの一本です
背通しではなく、本通し構造になっており、刃体の鋼材グレードも若干ですがアップしています

他の部分は、基本的に「いまよう」と同じ構成となっており、合わせ口金、積層強化木ハンドル、単層の一枚刃物ですが、ハンドル木材の色が異なっており、木質感のある茶系の色を上手に残しています(温かみと重厚感の共存した、良い色だと思います)
価格と性能、耐久性など、全体的にバランスが取れた、優等生的な良い包丁です

貝印の公式価格では、べにふじが6,050円、いまようが4,840円となっています(2021年4月調べ)
価格差は1,210円となっており、べにふじの方が若干グレードが高い分だけ、価格が上げられています
しかしこれはあくまでも標準小売価格の話であり、実売価格とは異なります
(実売価格は随時変動しますので、その時々でお確かめください)

もしも、「べにふじ」が、「いまよう」と変わらない価格まで値下がりしていたら、その時は迷わず「べにふじ」を買いましょう(かなりお買い得です)

このページでは、「家庭の主婦におすすめの包丁」として、「いまよう」と「べにふじ」を挙げました

関孫六の洋包丁には、他にも(単層ブレードの)「わかたけ」「ほのか」「くじゃく
3枚合わせの「萌黄」「」「青藤」「木蓮」があり
オールステンレスの「匠創」、さらには、炭素鋼複合材の「安土」「桃山」と、多数のラインナップがあります

これら全12種類の関孫六をすべて取り上げて解説したページは、こちらになります

なぜ他の包丁は「おすすめ」として挙げなかったのか、それを知るだけでも面白いですよ


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