刃物研ぎ機 ホームスカッター STD-180E

最終更新日: 作者:月寅次郎

ホームスカッター STD-180E 使用レビュー

刃物研ぎ機 ホームスカッター

新興製作所 刃物研ぎ機 ホームスカッター STD-180Eの解説ページです(1/4ページ)

2ページ目は、実際の使用例

3ページは、使いこなし、コツと注意点

4ページは、競合製品との比較 になっています。

(文章量が多くなったため、4ページに分割しました。目次は統一していますので、どのページからでもジャンプ可能です。)

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ホームスカッター STD-180E の特徴

刃物研ぎ機 ホームスカッター
こちらが、筆者が購入した「ホームスカッター STD-180E」です。

「刃物ガイド」を取り外した状態です。
ガイド差し込み穴に砥泥が入ると、事後の掃除が面倒なので、黄色のマスキングテームで覆っています。

回転方向を左右に切替可能

刃物研ぎ機 ホームスカッター
STD-180E、正面パネルとスイッチ。

新興製作所
ホームスカッター

STD-180E
砥石の回転方向を、スイッチ操作で左右に切り替え可能です。
これは新興製作所の研ぎ機の特徴の一つで、最大のメリットです。
Hikoki GK 21S2(日立)やmakita 9820など、他メーカーの機種にはこの機能がありません)

この手の電動研ぎ機に慣れてしまえば、単一の回転方向でも問題なく研ぐことができますが、それでも順方向に押し付けて研ぐ方が、研ぎやすいものです。

単一方向に回転が固定されていると、片面は順研ぎ、反対面は逆研ぎで研ぐしかありません。
(柄を逆の手に持ち替えたとしても、そうなります)

回転方向が変更できるのは、代えがたいメリットです

【 注意 】
回転方向を逆にする場合、一旦電源をOFFにして、砥石の回転が停止するのを待ちます。

回転状態でスイッチを反対操作しても、何も変わりません。従来方向のままで回り続けます。

交流電源を利用したシンプルな単相モーターですので、慣性負荷が大きな状態で、瞬間的に正逆回転させると、回転が切り替わらないのです。

回転が切り替わらないだけだと良いのですが、回転速度によっては、モーターに想定外の負荷がかかる場合も考えられます。回転方向を反対にする場合は、砥石が一旦停止してからスイッチを入れましょう。

【 柄はどちらの手で握る? 】
柄は、自分が研ぎやすいと思われる方の手で握って下さい。

前述のように、柄を握る手を変えても、順研ぎと逆研ぎを切り替えることはできません。
円盤型回転砥石ですので、構造上そうなります。

ちなみに手研ぎの場合、柄を左右の手に持ち替えて研げる人は、それほど多くありません。
左右に持ち替えて研ぐ方が、砥石の片減りが抑えられるのですが、これができる人は少ないです。

なお、頻繁に持ち手を変えて研ぐと、柄に砥泥が付着します

積層強化木やプラ柄の包丁でしたら、気にする必要はありませんが、天然木柄の和包丁の場合は、朴材の木肌に砥泥が付くと、洗ってもなかなか取れません。要注意です。

水飛散防止クッション(スポンジ)

刃物研ぎ機 ホームスカッター

ホームスカッターの特徴の一つが、水跳ね防止のスポンジ「水飛散防止クッション」です。
(上の画像は、スポンジを外したところ)

スポンジは溝に嵌まっているだけですので、摘んで引き上げたり押し込んだりして、高さの微調整が可能です。

スポンジがあるおかげで、砥石から飛び散る水滴の、周囲への飛散が抑えられます。

この『水飛散防止クッション』は、『回転方向の左右切り替え』と並んで、ホームスカッターの2大メリットです。

Hikokiやマキタなど、競合他社にはこの特徴がありません。
無いことは無いのですが、樹脂製であったりするため、包丁の側面を研ぎ抜く時に干渉してしまいます(スポンジだと、柄に当たってもそこだけ柔軟に凹むため、邪魔になりません)


他社でこれと同じ機能を持っている場合、それは新興製作所が供給しているOEM品です。
京セラ(旧リョービ)などがその代表例ですが、製品外観もそっくり同じです。

刃物研ぎ機 ホームスカッター
スポンジの継ぎ目は、このようになっています(接着でつながっています)

なお、刃物を研いでいると、スポンジに刃が当たって切れ目が入ることがありますが、さほど気にすることはありません。

スポンジは別売パーツとして供給がありますので、経年劣化や使用過多でボロボロになった場合、買い直すことも可能です。

透明で見やすい給水容器

刃物研ぎ機 ホームスカッター
給水容器は先代モデルと異なり、透明な樹脂素材に変更されています。

上から覗き込まなくても、水の残量が一目で判るように改善されています。

刃物研ぎ機 ホームスカッター
給水容器から水滴が落ちる様子。

黒い棒状のダイヤルを回すことで、水の落ちる量を加減することができます。
(棒に刻まれている溝と、容器の穴がぴったり重なると、「だだ漏れ」になります)

取説によると、「1秒間に1滴落ちるくらいが目安」とされていますが、これはあくまでも目安です。

ちなみに筆者の場合、水量は「やや多め」で使用することが多いです。
砥泥が乗りすぎると、面で当てる場合に刃が暴れやすく、切削効率も落ちるためです。

適正水量は、荒砥、中砥、仕上砥など、使う砥石にもよりますが、電動研ぎ機の場合は「砥泥を活かして柔らかい当たりで研ぐ」よりも「砥粒にしっかり当てる、効率を優先した研ぎ」が重要です(そのための電動パワーなので)

その分、水の飛散も多めになりますが、風呂場で防水エプロンを使って作業することで対処しています。

【 補足 】
滴下水量は、容器内の水量にも左右されます。

水量が少なくなると、充分な水圧がかからず、水の出るスピードが遅くなったり、水滴が出なくなくなったりします。

容器内にある程度の水量がある方が、水圧がしっかりかかり、滴下量も安定するため、水量が1/4以下になった場合は、面倒くさがらずに水を足して下さい。

また、「電動研ぎ機は効率優先」と書きましたが、それは大まかに大体の刃の形状を整える場合の話です。

刃付け時の最後の仕上げや、『カエリ取り』など、繊細な研ぎが必要な場合は、砥石の回転を止め、「手研ぎ」で作業しています。

1.3Aのハイパワー

刃物研ぎ機 ホームスカッター
STD-180Eは、1.3A(アンペア)のハイパワーです。

製品重量は5kgあり、これだけの重量があれば充分です。
重い分だけ、モーターコイルと磁石が大きいということです)

電動研ぎ機は、刃を押し付けても回転が遅くならないだけの、トルクの強さが重要です。

Hikoki
GK21S2

両刃の洋包丁を研ぐ場合、線接触か点接触になりますので、ローパワーでもさほど影響はありません。
ですが、カンナなどの面で研ぐ刃物となると、それなりに接触面積が大きくなり、摩擦力も大きくなってきます。
そのため、トルクの大小は重要なポイントです

包丁の側面を研ぎ抜くような、負荷のかかる作業も試してみましたが、少々強めに押し付けても回転は微動だにしませんでした(これだけのトルクがあれば充分です)

日常的に大型の刃物を整形したり、仕事として刃物研ぎを行う場合は、日立のHikoki GK 21S2 の方が、2.0A+205cm砥石で心強いですが、
STD-180Eの1.3Aと180cm砥石でも、必要にして充分です。

ちなみに、回転数は400/470回転となっていますが、これは電力周波数の違いにより、
東日本は50hzで、400回転
西日本は60hzで、470回転
…で作動するようになっています。

昭和の扇風機と同じで、交流電源をそのまま単相モーターで駆動しているため、電源周波数の違いで回転数も変わります。

簡易刃物ガイド

刃物研ぎ機 ホームスカッター
こちらは、刃物の角度を安定させるための簡易ガイドです。

主にノミやカンナ刃などの、片刃でなおかつ、刃筋が直線的な刃物を研ぐ場合に、補助的に使用するものです。

両刃の洋包丁を研ぐ場合は、あまり必要ない、…というよりむしろ邪魔になるかもしれません。
使用しない場合は、抜き取って外しておけばOKです。

なお、STD-180Fに付属の刃物ガイドは、あくまでも簡易的なものです。

しっかりと刃物を固定し、より精密な角度で安定した研ぎを行いたい場合は、「精密刃物支えガイド」付きで、出力も砥石サイズもより大型の上位機種、STD-205Fを使うと良いです。

抜いた後の穴に砥泥などが入ると、作業後の清掃に余計な手間がかかります。
個人的にはマスキングテープを貼って穴を塞ぎ、砥泥が入らないようにしています。

荒砥石と仕上砥石(別売)

ホームスカッター 交換用砥石

ホームスカッター
荒砥石

#180(純正)
赤茶色の砥石が、標準装着されている#1000番の中砥石です。
砥粒は、中砥石によく使用される、一般的なアランダム(A)です。

青色の砥石は、#180番の荒砥石です(純正交換用砥石)
こちらの砥粒は、荒砥によく使用されるグリーンカーボランダム(GC)が使用されています。

個人的には未購入で所有していませんが、#6000番の仕上げ砥石もラインナップされています。
#1000番中砥石(赤茶色)は、最初から製品に付属していますが、荒砥石と仕上砥石は、『別売品』の交換用砥石です。

※ 追記(2023年10月)
#6000番の仕上砥石を購入しました。
(純正品ではなくキングの機械研磨用替砥石。この後に解説あり)

ホームスカッター 仕上砥石 #6000

ホームスカッター 荒砥石
「荒砥石」の本体とパッケージ

Made in Japanと書かれていますが、砥石は日本製が一番です。
(焼結型の湿式砥石は特にです)

ホームスカッター 荒砥石

実際に荒砥石を使ってみましたが、切削力は充分で、ゴリゴリと削ってくれます。

上の画像は、荒砥で付いた研ぎ目です。
#180番という粗粒子ですので、研ぎ目も盛大に付きます。

ホームスカッター 荒砥石
同じく荒砥での研ぎ目です(やや拡大)

この研ぎ目についてですが…、
圧を強めにかけると、相対的に研ぎ目は深くなります

ただそれだけではなく、研ぐ対象の硬度にも左右されます

3枚合わせ鋼材の側面を研ぐ場合ですと、硬度が低いですので、研ぎ目が深く入ります。
1枚ものの単層の場合は、側面まで硬度が出ていますので、それほど深くは食い込みません。

また、砥石との接触面積の大小によっても、目の深さは大きく変わってきます。

上の画像の包丁は、単層ステンレス鋼材ですが、硬度圧力、当たる面積の大小の3要素の組み合わせ次第で、研ぎ目の深さはいかようにも変化します。
(一律にこのような研ぎ目が入るというわけではありません)

ホームスカッター 荒砥石

こちらは、荒砥でブレードの側面を研ぎおろしている最中の画像です。

研ぎおろしの途中のため、まだ側面のカーブがあまり取れておらず、多面体のような感じで削れています

結果的に、当たる面積も狭くなっており、その分研ぎ目も深めに入っています。

ホームスカッター 荒砥石

こちらは、荒砥での研ぎおろしの最終段階の画像。

一旦スイッチを止め、砥石の回転をフリーにして、手研ぎで仕上げています
力を入れる度に砥石がくるくる回ってしまいますが、コツを掴むと、それを逆に利用して研げるようになります。

電動器具は切削力が高いため、なだらかなカーブ曲面をつけようと思っても、多面体のようになることもありますが、手研ぎで仕上げると、うまい具合に『角』が取れます

ここでは、荒砥から中砥石へつなげるために、荒砥の研ぎ目を薄くするイメージで研いでいます。

ブレードに対し直角に入っているのが、電動研ぎによる研ぎ目、斜めに入っているのが、それを薄めるための、手研ぎの研ぎ目です。

うまい具合に、電動で付いた角を落としながら、研ぎ目を薄くすることができました。
(目視による推測ですが、#300~400番程度の研ぎ目に仕上がっていると思います)

同じ荒砥でも、技量次第で研ぎ目をここまで薄く仕上げることが可能です。
一本の砥石で、どれだけワイドレンジに研ぐことができるかというのは、研ぎの技術の一つでもあります。


ホームスカッター 仕上砥石 #6000

ホームスカッター 仕上砥石
ホームスカッター
仕上砥石

#6000(純正)
キングの仕上用砥石(#6000番)

この#6000番の仕上砥石は、純正品ではなく、キングの交換用砥石です。

個人的には、もっぱら刃体の鏡面仕上げ作業のために使用しています。

1000番で付いた研ぎ目を、短時間でスピーディーに消せるのが良いところ。これで仕上げれば、あとはコンパウンドで手磨きするだけで済み、鏡面仕上げが楽なのです。

購入前までは、キングS-1 を円盤形状に固めた砥石かと思っていましたが、さにあらず、6000番の焼結砥石でした。

焼結タイプですので、砥粒の隙間が効果的に働いて目詰りしにくく、レジノイドによく見られる『ごく僅かな沈み込み』もありません

使いかたが判ってくると、作業効率がぐっと上がる良い砥石です。これと同じ材質の角砥石があれば入手したいと思いました(無いだろうけど)

ホームスカッター STD-180E 交換用砥石の入手先

STD-180用 荒砥 #180 (amazon)
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STD-180用 中砥 #1000 (amazon)
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STD-180用 仕上砥 #6000 (amazon)
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外箱の画像

刃物研ぎ機 ホームスカッター
側面の画像(1)

箱の側面には、仕様(スペック)の記載があります。
(下に転記しておきます)

メーカー名新興製作所
品名ホームスカッター
品番STD-180E
電圧AC100V
周波数50/60Hz
消費電力125W
消費電流1.3A
回転数400/470min
砥石寸法180φx70φx20mm
砥石粒度#1000
定格時間20分
重量5.0kg

刃物研ぎ機 ホームスカッター
反対側の外箱側面。

こちらには、製品特徴の記載があります。
  • 水量調整ダイヤルで、適量の注水が可能
  • 水飛散防止クッションカバー付
  • 角度、上下調節の出来る刃物ガイド
  • 左回転、右回転のスイッチ付
刃物研ぎ機 ホームスカッター
現行製品であるSTD-180Eの本体は、「台湾製」です。

以前は日本で製造していましたが、1999年発売のSTD-180D以降は、台湾での製造に変更されました。

STD-180E」の前モデルは「STD-180D」、さらにその先代モデルは「ST-180C」となっており、マイナーチェンジを繰り返して熟成された、ロングセラーモデルです。

STD-180Eのモデルチェンジの具体的内容・歴史については、歴代のホームスカッターの項目をご覧ください(整理しました)

刃物研ぎ機 ホームスカッター
外箱上面の画像


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