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剛研輝(かがやき) - #1000番(中砥)

最終更新日: 作者:月寅次郎

剛研輝

「剛研輝(かがやき)#1000番」
  • 分類:中砥石
  • 粒度:#1000番
  • 砥材:WA(ホワイトアランダム、表示上は溶融アルミナ質)
  • 結合:マグネシアセメント
  • ブランド:剛研シリーズ(輝・かがやき)
  • 製造会社:ナニワ研磨工業
  • 寸法:210 x 70 x 20

剛研輝(かがやき)#1000番のインプレ
  • オールラウンドに使える中砥石、硬度も中庸で扱いやすい

  • 砥泥が適度に出て滑らかなグライド感。目詰りも発生しにくい。

  • キングデラックス等の焼成砥石に慣れた人でも違和感なく使える研ぎ感

  • 同番手のライバル砥石である「刃の黒幕オレンジ」よりも、明らかに目が細かい(※ 顕微鏡解析の別ページ参照)

  • 中砥石にもかかわらず、研ぎ方向を揃えると(光の角度によっては)鏡面すこし手前に仕上る。

  • 溶融アルミナ砥粒で切削性も良好、研ぎにくい鋼材もよく下ろす。

  • 平面維持度は刃の黒幕よりも一歩劣るが、充分許容範囲内(その分目詰まりに強く、常に角の立った新しい砥粒で研げるというメリットも)

  • 長時間研いでいると、マグネシア砥石特有の『角立ち』が感じられることも(後述)

  • 全体的に整っているため、評価されづらい優等生タイプ(実は良い子)

  • 売れ筋の人気砥石ではなく、使っている人も多くはない。知名度は今ひとつだが、もっと評価されてしかるべき砥石。
剛研輝の特徴
  • 研ぎたい時にすぐ研げる、吸水不要のマグネシア砥石

  • 研ぎ台としても使える、透明プラケース付属

  • メーカー曰く「本職の仕事に輝きを生む 天然砥石の研ぎ味」

剛研輝#1000番 vs 刃の黒幕オレンジ

剛研輝(ごうけん かがやき)は、ナニワ研磨工業が製造しているマグネシア砥石です。

砥石台を兼ねたプラケースが付属しているところなど、シャプトン社製造の「刃の黒幕」を意識した作りになっています。

『剛研輝』は『刃の黒幕』よりも後発製品で、後から出た分だけ先行商品を研究・分析し、デメリットを潰してきた感があります。

顕著に異なるのは、粒度(番手)と研ぎ味(硬さと砥泥の出具合)です。
刃の黒幕オレンジは、同じ1000番の中砥石なのですが、実際にはかなり目の粗い砥粒が使用されています。

研ぎ上がりの傷目の粗さの比較や、砥粒の拡大画像については、
中砥石で研ぐ - 顕微鏡解析2」のページをご覧ください。
(剛研輝#1000番の方が、刃の黒幕#1000番(オレンジ)よりも、明らかに研ぎ目が細かいことが判ります)

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超セラミック砥石と比べると…

実際のところ、「刃の黒幕」に近い性能を持っているのは、この「剛研輝」よりもナニワの「超セラミックス砥石」の方になります。

「超セラミックス砥石」は「刃の黒幕」と同じマグネシア砥石であり、高いプレス圧をかけて内部気孔を極小に仕上げ、密度を上げてカチカチに仕上げているところなどは、製品コンセプトが良く似ています。
(超セラミック砥石は、現場の職人さん向けに「台付」にしているという点が大きく異なります。マグネシア砥石は反ったり割れたりしやすく、高さも稼げるので台付の方が良いのですが、台を付けると職人さん以外の一般使用者からの評判が悪くなるのが辛いところです)

「剛研輝」は、「超セラミックス砥石」ほど高密度ではありませんので、適度に内部気孔が残っており、目詰りや目潰れもしにくく、扱いやすい砥石となっています。(カンナやノミよりも、包丁に合った硬さです)

適度に研ぎ減る分だけ、経年変化(白化)も生じにくくなっています。(あまりにも減りが少ないマグネシア砥石は、劣化した表面層が削られて未劣化層が表に出ることが少ないため、経年劣化にも弱いものです(実体験です)

ただ、剛研輝は(高密度に仕上げた製品に比べると)比較的「角立ち」が出やすい傾向にあり、この部分はデメリットとして上げざるを得ません。
とはいえ、角立ちが出てくるのは、何時間も連続して研いでいる時の話ですので、短時間で刃物研ぎが終了する家庭内使用においては、そのデメリットもほとんど感じられないことでしょう。
刃の黒幕は、かなり高密度の砥石ですので、剛研輝に比べると、相対的に「角立ち」も起こりにくい傾向にありますが、研ぎ減りが少ないことが裏目に出ると、経年劣化となって現れます。
「角立ち現象」や劣化の詳細については、下の書籍をご覧ください。


セラミック砥石を使っている方や、購入を検討されている方は、拙著「セラミック砥石の嘘」をお読み下さい。

セラミック砥石はメリットばかりが声高に強調されていますが、これまであまり語られてこなかったデメリットについて、長期間使用した実体験に基づいて解説しています。

メーカー非公表の、経年劣化を防ぐ使い方や、性能を維持する保管方法なども併載しました。

特に「刃の黒幕」については、近年製造品はカラーリングが薄くなったため、外観からは白化現象の判別が難しくなっていますが、これを見極める独自の方法についても解説しています。

公言が憚られるような赤裸々暴露系の内容になりましたので、ネット上での公開を取りやめ、電子書籍化いたしました。

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番手と粒子サイズ、切り抜けの滑らかさ

刃の黒幕オレンジ1000番は、表示番手よりも目が粗いというのは、一部の人の間で囁かれていました。

これは、人参のような目の詰まった根菜類を切ると、手にかかる抵抗感で目の粗さが判ります。(柔らかいトマトなどでは、差がわかりにくいです)

念のため、中砥石で研ぐ 顕微鏡解析画像のページで比較検証しましたが、研ぎ目と砥粒の両方で、剛研輝よりもかなり目が粗めです(さらに言うと、キングデラックス800番よりも粗く感じます)

剛研輝の方は、(一般的な認識としての)表示通りの番手の粗さ感です。

そのため、剛研輝1000番と刃の黒幕1000番では、切り抜け時の滑らか感では剛研輝の方が上回っています。

研ぎ味の良否

刃の黒幕は研ぎ減りが少なく、平面維持度が高いことから、カンナやノミを研ぐ人の間での評判が良い傾向です。

しかしながら包丁を研ぐ場合では、「少し硬ぎないか?」と疑問に思うことも、無きにしもあらずです。

剛研輝は、このあたりのデメリットをしっかり対策してきたようで、砥泥が適度に出て、研ぎ味が良好な感じに仕上がっています。

刃の黒幕オレンジは、目が粗い分だけシャリシャリと砥粒が噛み込むため、そこまでの滑り感は出ませんが、 #5000番のエンジになると、"Like a piece of glazed ceramic tile"という声も聞かれます。
和訳すると、「釉薬のかかった陶製タイルの(上で研いでいる)ような使用感だ」と、なります。

カチカチに硬い砥石というのは、平面維持度の面ではメリットとなり得ますが、逆に研ぎ味という点ではデメリットとなる場合も多いものです。

研ぎ味という言葉は、具体的に表すことが難しく、これを的確に表現している人をあまり見かけません。
筆者の言葉で「研ぎ味が良い状態」とはどういうものかを表現すると…、
  • 砥石の表面から指先に伝わってくるインフォメーションが多様であり、なおかつ的確である
  • 圧のかけ具合や、面の状態の違いが手に取るように判る
  • 適度に砥ぎ減ることで、砥面が常に新鮮であり、フレッシュで切れの良い砥粒が表面に露出している
  • つっかったり噛み込んだりしない、目詰まりも起こらない、空走もしない
  • 強く力を入れると、砥粒の食い込み感がしっかり指先に伝わり、良く研げている感覚が伝わってくる
  • 弱い力では弱い力なりの『砥面にかかっている感じ』が伝わってくる。浅い食い込みで、きめ細やかに研げてくれる
  • 結果として、意のままに、気持ち良く研げる
 …というものです。
逆にこれが劣悪な状態だと、噛み込んだり突っ張ったり、空滑りが生じたりしてスムーズに研げず、ぎくしゃくした研ぎになりがちです。

英語圏では、この研ぎ味が良好であることを、"Great feedback"とか、"Feedback is amazing" という言い回しで表現したりもします。(指先に返ってくる感覚が秀逸、という意味合いです)

研ぎ味が良好の砥石は、指先にすべてのインフォメーションが伝わってきますので、極論すると目を閉じていても研げるような気がします。

実際、研ぎというのは指先の感覚に頼っている部分が大きいですので、どれだけの情報量が伝わってくるかというのは、非常に重要なわけです。

天然砥石の研ぎ味?

剛研輝の製品パッケージには…、
「本職の仕事に輝きを生む、天然砥石の研ぎ味」
 …というコピーが表示されています。

個人的には、この「天然砥石の研ぎ味」というキャッチコピーに惹かれて購入に至ったわけですが、砥泥が適度に出る分だけ、(マグネシア砥石としては)なかなか良い研ぎ感だなと思います。

研いでいてクリティカルな感じがしません。水切れしかかっても、砥泥の水分で研げてしまうマージンの広さも持っています。

あまり神経質になる必要がなく、何も考えなくてもフツーに研ぐことができます。名倉砥石を使う必要性も感じません

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剛研輝は、よく輝く?

剛研輝
中砥石としては、研ぎ面の光り具合も優秀です。

方向を一定に揃えて研ぐと、均一な研ぎ目が揃いますので、光の方向によってはきれいな反射が出ます。

焼成タイプのキングデラックスだと、同程度の番手でもマットな艶消し質感に仕上がるところが、鏡面少し手前のような仕上がりになることもあります。

砥泥を活かして番手以上の仕上がりに持っていけば、後で仕上げ砥石を使う場合も傷目が消えやすく、また、そのまま使っても充分に滑らかな切れ感です。

剛研輝(かがやき)#1000番
上の画像は、実際の砥泥の出具合です。

灰色の砥泥となっていますが、白色の砥材と黒い鉄微粒子の色が混ざり合うことで、灰色となっています。

剛研輝(かがやき)#1000番
刃の鋼材が削れると同時に、砥石の砥材(研磨粒子)も、適度に剥離していることが判ります。

刃の黒幕の砥泥は、これに比べるかなり黒い傾向です。
比較のために、刃の黒幕の砥泥の画像を載せてみましょう。

刃の黒幕
このように、「シャプトン 刃の黒幕」の砥泥は、かなり黒い感じです。

これは砥材の剥離が少なく、鉄の微粒子(刃の鋼材)ばかりが水中に分散しているためです(固めているセメント剤の溶融、研磨粒子の剥離も少ないということ)
そういう意味ではあまり砥泥という感じがしません。

シャプトン 刃の黒幕については、こちらのページ で詳しく解説しています

剛研輝(かがやき)#1000番
厚みは約2cm

剛研輝(かがやき)#1000番
外装パッケージの様子。

剛研輝(かがやき)#1000番
ケース底面には湿気抜き用の穴が開けられており、足にはゴムが埋め込まれています。
このあたりは刃の黒幕と同じです。

剛研輝(かがやき)#1000番
砥材は「溶融アルミナ」とあり、ホワイトアランダムであることが判ります。

キレが良く、高い切削能力を持った砥粒です。

剛研輝(かがやき)#1000番
パッケージ裏面です。

簡単な研ぎ方や使用上の注意が書いてあります。


砥石 月寅次郎が使っている砥石

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