CPUグリスの塗布
CPUグリスの塗り方についての解説です
CPUグリスの塗り方
Halnziye
HY510 3g
Halnziye
HY883 2g
Halnziye
HY-P13 0.5g
今回使用するCPUグリスは、「Halnziye HY510」です
「使い切りの小分けパッケージ」タイプを使っていますが、シリンジタイプ(注射器型)の方が使いやすく、おすすめです
Halnziye HY510の熱伝導率は公称で1.9Wとされており、決して高性能タイプではありません。どちらかというと低価格・高コスパタイプです
ローエンドの廉価品になると、熱伝導率1.0W以下のものもあり、0.9Wや0.55Wといった製品もあります。ここまでいくとさすがに少し低すぎかなとも思います
amazonで
「CPUグリス」を検索した際に、真っ先に上がってくるのが、細いシリンジに入った3g入の「Halnziye HY510」です
(左上の画像の商品です、実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてご覧ください)
ちなみにこの3g入の製品は、メーカー名が「AKEIE」となっていますが、これは表記ミスです
商品をよく見ると「Halnziye HY510」と書かれているのが判ります。(
販売者が「AKEIE」、製造メーカーは「Halnziye」というのが正しい表記です)
左中央の
HY883になると、熱伝導率6.5Wと、ミドルクラスの性能になります。ただその分、重量あたりの単価も高くなります
左下の
HY-P13になると、熱伝導率13.4Wとかなり高性能です
高性能のグラフィックボードを積んだハイスペックゲーミングマシンであれば、このくらいの製品を使ったほうが無難かなとは思います
ただ、高性能な製品を長期間使用するよりも、程々の性能のものを定期的に塗り直して使った方が、長期スパンで考えた場合は良いというのも一つの考え方です
これは個人的な考えですが「
効率の良い放熱を維持するために、定期的なヒートシンク清掃は必須の作業」と考えています
わたしの場合、ヒートシンクを取り外して全面洗浄しますので、CPUグリスも必ず塗り直しになります。そのため、「程々の性能の品を、こまめに塗り直して使う」という方針にしています
このあたりは、自分のPCメンテの作業頻度にもよりけりです。CPU負荷や発熱状況、メンテ頻度などの諸条件に合わせ、最適なCPUグリスを選びましょう
※ Halnziyeについて
Halnziyeは、中国の深セン市に所在のある、サーマルコンパウンドの専業メーカーです
(位置的には香港のすぐそばです)
他社向けにOEM供給品も製造しており、パッケージの違いこそありますが、「中身はHalnziye」の製品も多々あるようです
halnziye 公式サイト(英語)
パッケージの先端をカットして、CPU上面に、
CPUグリスを少量絞り出します
ヒートシンク側の面にも同様に出します
量的には、米粒~小豆大程度で充分です
塗布量が多すぎた場合、ヒートシンクを固定する際にCPUの横に押し出され、はみ出します
はみ出した量が少量であれば、問題ありません
確かめたい場合は、一度塗布して組付けを行った後、再度取り外して塗布面を確認すると良いです
CPUの横にはみ出した量が多ければ、少し拭き取って表面をならし、再度組み付けましょう
指先でCPUグリス(サーマルコンパウンド)を伸ばします
完全に均一に伸ばせなくても、気にすることはありません
塗り方のムラの大小で
CPU冷却能力に変化が出ることは、まずありません
ヒートシンクを乗せて固定用のネジで締めれば、結果的に
薄く平らに伸びてフラットになるものです
ただ、グリスを少量乗せたのみで、塗り伸ばさずにヒートシンクを上から乗せ、締結力で押し伸ばすのは、あまりおすすめできません
なぜなら、グリスは円形に近い形状で伸び広がっていくため、CPUの角の部分までグリスが行き届かない可能性があるからです
これを防止するためにグリスを多めに使用すると、角には届いても横からはみ出してしまいます
また、
グリスが厚めに介在して放熱が阻害される場合も考えられます
こちらのページの比較一覧を見ると分かりますが、
CPUグリスの熱伝導率は、ヒートシンクに比べると著しく低いです
(ヒートシンクがアルミ製の場合は、高性能品でも1/20程度、普及タイプの製品なら1/200あたりにまで落ちます)
グリスが介在する影響を少なくしたい場合は、丁寧に薄く塗り伸ばしてからヒートシンクを乗せる方が良いでしょう
ヒートシンク側も、グリスを塗り広げます
ほんの少し多かったかな?
CPUの上にヒートシンクを乗せ、
トルクが均一になるように、
適正な順番(この場合は対角線上)でネジを締め、
適切なトルクで固定します
CPUグリス、使い方のポイント
CPUグリスのポイントは、以下のとおりです
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CPUグリスの影響をいかに小さく抑えるかがポイント(できるだけ少なく使う)。
ヒートシンクの材質(アルミ・銅)に比べると、高性能CPUグリスでも熱伝導率はかなり悪い
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CPUグリスの性能(熱伝導率)はさほど重要ではない。ネジ締めを丁寧に行ない、ヒートシンクを隙間なく密着させることで、グリスの性能差は無視できるほど小さくなる(クリアランスが生じた場合はこの限りではない)
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経年劣化が進み、粘度の大きくなったCPUグリスを再利用しないこと。CPUグリスが適切に広がらず、厚い膜状となって介在するため、ヒートシンクに直接熱が伝わらず、放熱の阻害要因となりうる
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締結時の歪み量が大きくなると、局所的にクリアランスが生じ、熱伝導に悪影響を与えてしまう。この場合はグリスの性能差の違いがコア温度の差異となって観測される場合がある(ネジ締結は適切に行う)
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ヒートシンク(放熱フィン)を定期的に清掃し、通風を保つのは重要
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放熱効率が上がるとCPU温度が下がり、ファン回転数が下がるために、結果的に静音性が向上する
ヒートシンク締結時のネジ締めについて
プラスチゲージ
クリアランス測定用
0.025-0.076mm
自動車整備に詳しい人なら、クランクシャフトのメタルの厚み選定に使用する「プラスチゲージ」をイメージすると良いかもしれません
判りにくい例えでスミマセン。そのくらい「慎重かつ丁寧に」という意味です
プラスチゲージは、糸状のプラスチックを潰し、潰れた幅の広さを計ることでクリアランスを計測する原始的な計測器具です
左の画像の商品です、実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)
測定範囲は、狭いものでは0.05~0.15mmまで計測可能です。
(原始的と書きましたが、これが最も正確に測れるので、今でも使われています)
クランクシャフトは潤滑が必要ですので、油膜を維持するためにクリアランスを確保する必要がありますが、CPUとヒートシンクの場合は、可能な限り密着させて大丈夫です
ですが、密着させたいからといって、闇雲にトルクを強めると、CPUが物理的に破損します
重要なのは、CPUとヒートシンクの双方の面に歪みを生じさせることなく、
平行な状態を保ちながら締結することです(各ネジを均等に締め込み、均等にトルクをかけていくということ)
CPU背面の金属板は薄手ですので、任意のネジを一つだけ強くねじ込むと、簡単に歪む恐れがあります。そうなると、後で他のネジをいくら締め込んでも隙間が消えません
あまり極端にこだわる必要はありませんが、適切な締結を行わないと歪が生じ、局所的にクリアランスが大きくなり、グリスが厚く介在することで熱伝導に悪影響を及ぼす恐れがあります。気をつけましょう
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CPUグリスの塗リなおし(作業前後の比較)
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