ハガネの妙味、炭素鋼の切れ味
ハガネ(炭素鋼)のおすすめ包丁も挙げておきましょう
ステンレスでは、どうしても満足できない玄人の方におすすめです
おすすめ包丁(月寅次郎決定版) - 目次
- プロ用高級包丁 (刃渡りの長い牛刀で、華麗に切り分けよう)
- 料理好き玄人用包丁 (玄人はだしの人のために)
- 家庭用・三徳包丁 (1本で済ませるならコレ!)
- 低価格で高い切れ味の包丁 (予算が少ないが、切れ味に妥協したくない場合)
- 炭素鋼の包丁(究極の切れ味) (現在のページ)
- 2本目の包丁(買い足すと便利) (靭性の高い鋼材の妙味!)
- 「選外」の理由 (人気ありますが、おすすめはしません)
- 「選定」の理由 (なぜ良いのか?)
MISONO EUカーボン鋼
上の画像は、わたしが使用している日本橋木屋のスウェーデン鋼牛刀で、個人でレストア・カスタムしたものです
上の画像をクリックすると、カスタム詳細ページにジャンプします
現在の名称は「EUカーボン鋼」に変わっていますが、中身は同じです
鋼材会社が国際化したため、「スウェーデン」という表現が正確とは言えなくなり、名称が変更されています
この包丁は
ミソノが製造しているため、実質的に
Misonoの「EUカーボン鋼」と同じ製品です
(左の画像の商品です。実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)
なお、この件についてはミソノと日本橋木屋の両方から確認が取れています。両製品の相違点は刻印くらいです
この包丁は「ハガネ」ですので、「洗う・拭く」を怠らない人でなければ、おすすめしにくい包丁でもあります
今となっては、こういったハガネの包丁を使う人はめっきり減りましたが、結局のところ、
ステンレス鋼材の包丁は、「
ハガネの切れ味にどれだけ近づけるか」でしかありません
三徳包丁も良いですが、この包丁は21cm以上の牛刀を使い、(真上から押し切るのではなく)刃渡りの長さを存分に活かして、華麗に切って欲しいと思います
ミソノ EUカーボン鋼 を見てみよう
Misonoの包丁は、Misonoの熟練職人さんが作っています
杉本の「SHM(Sスペシャル Hハンド Mメイド)」や「梅治」の包丁など、職人によるハンドメイド製造を売りにしている包丁は多々ありますが、Misonoにしても、社内で「人」が作っていることには変わりありません
このレベルになると、つまるところ「個人」として、表に出るか出ないかの違いでしかありません
個人名が「銘」となって表に出ているブランドでも、「なんだこんなものか…」というようなものもあれば、表には名の出ない職人が作った包丁でも、刃のスキ具合に感動するような、素晴らしい刃体の包丁もあったりします
わたしも個人的に「梅治作 牛刀」を使っており、その良さはよく判っているつもりですが、
Misonoの「中の人」、つまり、表には出ることのない社内の職人さんも、同様に素晴らしい仕事をしていると感じます。それは、包丁を通して伝わってくるものです。「いい仕事してますねぇ~」と言いたくなります
※ 「梅治作 牛刀」の詳細については、以下のページで紹介しています
● 梅治作 牛刀
動画で見る
このカスタムした包丁は、YouTubeでも見ることができます
よかったら見てやってください。
(他の包丁や研ぎ方もアップしています)
月寅次郎チャンネル (YouTube 動画一覧)は、こちらです
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堺孝行 青二鋼
堺孝行の「青二鋼」は、その名の通り「青紙2号」を使用しており、鋼材的には申し分ありません
ミソノのEUカーボン(旧スウェーデン鋼)より、ほんの少し硬く、ほんの少し靭性の低い鋼材です
ミソノのEUカーボンは、しなやかな使い心地と、スパッと刃の付く研ぎやすさがありますが、青紙2号は、より鋭いエッジ形成が可能です
あくまでも理論上の話です。腕の良い人が研げば差異は生じないレベルの違いでしかありません
EUカーボンと比較すると、よりカチッとした使い心地になるでしょう
青木刃物製作所の「堺孝行」ですので、物は良いです(安心して使えます)
わたしが使っている包丁の中では、武生のV1鋼材を使用している梅治の牛刀(下の画像、現在分解カスタム中)と、硬度や靭性が似た感じです
補足しておきますが、青紙スーパーを使用した包丁も多数出回っており、硬度が出せる分だけ鋭いエッジ形成が可能です
ですが
包丁は、エッジの鋭さだけで良否が決まるものではありません
刃筋をごく薄くできるのは、それなりに靭性が高く、しなやかさを持った鋼材でなければ実現できません
(刃こぼれしやすくなるため)
高硬度の鋼材を使ってはいるものの、
刃のスキ具合が凡庸で切り抜けの悪い包丁などは、「不細工の役立たず」でしかありません
「MISONO」や「堺孝行」は、そのあたりをよく判っており、玄人が好むバランスというのを実現しています
「玄人好みのバランス」と書きましたが、これは言い換えれば日本人の繊細な包丁使いに合っているという意味です。
西洋の料理文化においては、チョッピングといって叩くような切り方を多用するケースもあり、このような「和の極み」のような包丁を使わせると、大きな刃欠けを簡単に生じさせることがあります(※1)
「玄人好みのバランス」というのは、裏を返せば、「扱いを心得た人のために、ぎりぎりまで刃を薄く抜いている」とも言えるのです。
刃をこじるような使い方には、逆に弱いです。適切に扱いましょう
ちなみに、「重みで切る感覚」が好きな方は、このような包丁は「自分の感覚に合わない」と感じる場合があります
既に自分の好みの感覚が確立しているプロの方は、専門店に赴いて、重量感とバランスを確かめてから購入すると良いでしょう。大抵のことは使っているうちに慣れてくるものですが、細かいことまで突き詰める方は、そうした方が賢明です
※1
これは一つの例ですが、貝印の高級海外向けモデルである「旬」シリーズは、"Chippy and brittle"(硬度は高いが靭性が低く、刃欠けしやすい)と評される場合もあります。
しかしながらこれは、あくまでも評価の一面でしかありません。
裏を返せば、「簡単にチップするほど薄く刃を抜いており、硬度も高く仕上がっている」ということでもあります。
その点を理解している人からは、高い評価を受けています。
(ただ、価格面で「オーバープライス」だと言われがちでもあります。それは仕方がありません。実際その通りです)
西欧での(いささか荒い感じの)家庭での包丁使いを考えると、ヘンケルスやビクトリノックスが出しているような「高靭性・中硬度」の包丁の方が、汎用性があって扱いやすく感じるようです
堺孝行 青二鋼 を見てみよう
杉本 ツバ付最上級品
杉本の「ツバ付最上級品」です
杉本には、さらに上位の「
SHM (スペシャルハンドメイド)」という包丁もありますが、価格に見合う価値というのを考えると、「ツバ付最上級品」の方がおすすめです
SHMは、少々高すぎるのです
このあたりは、日本橋木屋の「EUカーボン鋼」と、「梅治」とのグレード差によく似ています
木屋の「EUカーボン鋼」グレードが、杉本の「ツバ付最上級品」に相当し、木屋の「梅治」が、杉本の「SHM」に相当すると考えて良いでしょう
ここでは取り上げませんでしたが、
かね惣の
鋼製ツバ付洋包丁や、
築地正本(丸秀)の
特上鋼牛刀鍔付なども甲乙つけがたく、素晴らしいと思います
杉本 ツバ付最上級品 を見てみよう
包丁の研ぎ方
包丁を研ぐのは、決して難しいことではありません
最初は思い通りにいかないかもしれませんが、自転車と同じで、一度できるようになれば、その技術は一生役に立ちます
わたしが実際に研いでいる様子は、下の動画で見ることができます
5分少々の時間で、さくっと刃を付けています
後半の「最終仕上げ」は、やらなくても構いません(自己満に近い部分です)
重要なのは、角度をぶらさないことと、砥石を当てたい部分にしっかり指を当てることです
※ 解説は字幕で補足しています。
日本語字幕をONにしてご覧ください
でないと、
単に手を前後に動かしているだけの動画にしか見えません
研ぎ音がよく聴こえる音量で、大きめの画面で視聴すると、「
何をどう研ごうとしてるか?」が判ると思います
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おすすめ包丁決定版(役に立つ・2本目の包丁部門)
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