2本目の包丁(買い足すと便利)
パーティ用のドレスや、オーダーメイドのスーツ姿で庭仕事をする人はいないと思いますが、それと同じことは、包丁の選択にも当てはまります
2本目に持つ「サブの包丁」としては、「荒い扱いにも耐えられる、丈夫な服」のような包丁があると便利です
おすすめ包丁(月寅次郎決定版) - 目次
- プロ用高級包丁 (刃渡りの長い牛刀で、華麗に切り分けよう)
- 料理好き玄人用包丁 (玄人はだしの人のために)
- 家庭用・三徳包丁 (1本で済ませるならコレ!)
- 低価格で高い切れ味の包丁 (予算が少ないが、切れ味に妥協したくない場合)
- 炭素鋼の包丁(究極の切れ味) (突き詰めると、ここに行き着く)
- 2本目の包丁(買い足すと便利) (現在のページ)
- 「選外」の理由 (人気ありますが、おすすめはしません)
- 「選定」の理由 (なぜ良いのか?)
靭性が高く、刃こぼれしにくい包丁は、2本目に最適
高級包丁では賄えない領域を補う、それが「控えの一本」です
「控えの一本」(2本目の包丁)としておすすめしたいのは、
ほどほどに靭性があり、荒い使い方をしても刃こぼれしにくい包丁です
一般的に、高級な包丁はその分硬度が高く、靭性が低い傾向にあります
靭性が低いというのは、刃が(硬くて)脆いということです
包丁販売業者は、こういうことを言うと高い包丁が売れなくなるので、わざわざ教えてはくれませんが、
はっきり言ってしまうと、高級な包丁ほど刃こぼれしやすいです
鋼材の特性の問題だけではなく、高級な包丁は刃をぎりぎりまで薄くして、切り抜けを良くしているため、よけいに欠けやすいのです
100円均一の包丁は硬度が低いため、大きな衝撃を与えると、刃が欠けずに曲がることがあります
ホントの話しです。少しわかりにくいですが、こちらのページに画像を掲載しています
ここまで高靭性・低硬度になりますと、刃持ちや切れ味の点でのデメリットも大きくなるため、
「ほどほどの靭性の包丁」がおすすめです
(ただ単に、靭性が高ければそれで良いというものでもありません)
逆に、
硬すぎて靭性が低い包丁のデメリットについては、こちらの
高硬度の包丁は、家庭では扱いづらい のページで解説しています
併わせてお読み下さい(理解が深まります)
小包丁という選択
この「サブの包丁」は、牛刀や三徳包丁ではなく、意外にも
「小包丁」がおすすめです
刃渡りが短い分だけ、刃元付近で力を入れやすく、カボチャを切る際にも重宝します
刃が挟まって抜けなくなり、引き抜こうと力を込める際にも、刃体の靭性が高いため、刃がしなって折れにくいのです
高級包丁でこれをやると、大きく刃欠けすることがあり、気をつけたいところです
冷凍にした挽き肉をカットする際も同様です
高級包丁で凍った食材を切ると、低靭性が裏目に出て、いとも簡単に刃こぼれが生じることがあります
「低温脆性」と呼ばれる現象です。氷点下の温度になると、金属はポキンと折れやすくなるのです
サブの包丁は、高級包丁を大切に扱うための、重要な一本です
また、メインの包丁を研ぎに出す際のピンチヒッターとしても活躍してくれます
刃持ちはそこそこでも、その分
靭性が高いというのは一つのメリットです。そういった特性の包丁を一本揃えておくと、多用途に使えて便利です
前述の「
家庭用・三徳包丁」で挙げた包丁を使うのであれば、このようなサブの包丁を用意する必用はありません。靭性と硬度のバランスが取れていて、一本ですべてまかなえるからです
ですが、冒頭で挙げた
プロ用高級包丁や
料理好き玄人用包丁のような、硬度の高い包丁を使う場合は、この後で紹介する「ヘンケルス ロストフライ」や「ヴィクトリノックス スイスクラシック」を「汚れ役」として、使ってあげると良いでしょう(意外なところで役に立ちます)
上の画像は、筆者の家人が使っている包丁です。
(家人は使い方が荒く、包丁を洗ったり拭いたりしないタイプの人なので、高価な包丁ではなく、お手頃価格の包丁を使ってもらっています)
大きい方が通常サイズの三徳包丁(刃渡り165cm)、小さい方が小包丁(小三徳)です。
「大小2本」を1セットとして、交互に使いまわしています。
予備の包丁があると、研ぐ方も楽で良いです。
「ご飯支度の時間までに研ぎ上げなければ」と考える必要が無いので、時間的余裕のある時に、ゆっくり研ぐことができます。
包丁を使う方も、「
好きな時に、研ぎたての包丁と交換して使える」というのは、
大きなメリットがあります。
筆者の家のように、わざわざ4本も用意する必要はありませんが、通常サイズの三徳包丁と、小三徳包丁を1本づつ持っておけば、さまざまな使い方ができて、幅が広がります。
このページでは、小包丁(小三徳)を汚れ役に使うことを勧めていますが、逆に、
高い切れ味が必要な場合にのみ、小包丁を使うといった使い分けも可能です。
三徳包丁を『
打ちもの』に使い、小包丁は『
剥きもの』に使って、鈍い刃と冴えた刃を上手に使い分けるのも、刃を持たせるための賢い方法です。
(ただその場合は、そこそこ良い小包丁を使うのがおすすめです)
※ 打ち物:まな板の上に乗せて切る切り方。
※ 剥きもの:まな板を使わずに皮を剥く切り方。
補足:上の画像の『ヘンケルス セーフグリップ』は、小包丁ですが、実はかぼちゃを割るにはあまり向いていません。これはハンドルの素材と構造に起因するものです。
一般的な包丁のように、左右のハンドル素材が中子を挟んで支える構造ではないため、ブレード根本付近の剛性が、高荷重向きではないためです(通常のカット作業には全く問題ありません。敢えて言うならの話です)
ヘンケルス ロストフライ 小包丁
ヘンケルスのロストフライは、決して高硬度の高級包丁ではありません
ですがその分、
靱性が高く、しなりのある刃体が特徴です
ハンドル素材もPOM樹脂で、少々手荒に使ってもへこたれません
前述のような、カボチャや冷凍食品、硬くて刃こぼれが懸念される食品は、ロストフライのような高靱性の包丁で対応するのがおすすめです
絶対に刃こぼれしないとは言いませんが、非常に刃こぼれしにくいブレードです。刃こぼれしたとしても、硬度が高くないので、砥石での修整も比較的容易です。万一買い替えとなった場合でもお財布ダメージが最小で済みます
サブ用の包丁として使う場合、「小包丁」がおすすめです
三徳包丁に慣れている日本人にとって、「小包丁」はとても扱いやすい包丁です
リンゴや梨、柿、じゃがいもなど、サイズの小さな野菜や果物をカットをする場合など、三徳包丁よりも使いやすく感じるほどです
ヘンケルス ロストフライ(小包丁) を見てみよう
詳しい解説は、こちらの
ヘンケルス ロストフライ のページをご覧ください。
なお、ロストフライと似た特性を持つ国産包丁としては、「関孫六 ほのか」が挙げられます
ただ、国産の包丁にありがちな傾向として、「包丁は曲がってはダメ、しなってもダメ」というものがあります
関孫六のキャッチコピーも「折れず曲がらず、よく切れる」で、剛性の高い刃体を良しとしがちなところがあります
「良くしなるが、きちんと切れる」という包丁を求める場合は、ヘンケルスなどの西洋の包丁に分がありますので、ここはヘンケルスのロストフライをおすすめしたいと思います
ビクトリノックス スイスクラシック ペティナイフ
このペティナイフは、わたしも実際に使っているのですが、
台所での補助作業にとても重宝します
日本の生鮮食品は、はっきり言って過剰包装であり、きっちりビニールに包まれていたり、やたらとテープで巻かれていたりと、取り出すまでが一苦労です
そのようなビニール袋の切り開きなどに大活躍するのが、このペティナイフです
先端が鋭く、刃幅が狭いという特徴的なブレード形状が、三徳包丁には真似ができないことを、軽々とやってのけるのです
もちろん、本来のペティナイフの用途(皮剥き)も、きちんとこなしてくれます
三徳包丁は一本持っているけど、2本目の包丁が欲しい、というときには、真っ先に検討すべきでしょう
こういった包丁を日常的に使っていると、硬度がほどほどで靭性が高く、よくしなるブレードの良さというものが判ってきます。
刃物好きの方は、往々にして高硬度の包丁を高く評価する傾向にありますが、
中硬度で高靱性のブレードには、別の良さがあるのです
靭性の高い鋼材は、刃厚を極端に薄くすることも可能です。厚みが薄いと、その分だけ刃の抜け具合が良くなります。これはこれで、非常に素晴らしいことなのです。
(根菜類を切る時に違いが出ます。紙の試し切りでは違いが判りにくく、実際の調理作業で体感できるものです)
VICTORINOX スイスクラシック ペティナイフ を見てみよう
詳しい解説は、こちらの
ビクトリノックス スイスクラシック ペティナイフ のページをご覧ください
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