低価格で高い切れ味 部門
硬度の高さに裏打ちされたシャープな切れ味は欲しいものの、予算が限定されている」という方に、おすすめの包丁です
このページでは「
関孫六 桃山」と、下村工業の「
村斗 Fine」を取り上げます
おすすめ包丁(月寅次郎決定版) - 目次
- プロ用高級包丁 (刃渡りの長い牛刀で、華麗に切り分けよう)
- 料理好き玄人用包丁 (玄人はだしの人のために)
- 家庭用・三徳包丁 (1本で済ませるならコレ!)
- 低価格で高い切れ味の包丁 (現在のページ)
- 炭素鋼の包丁(究極の切れ味) (突き詰めると、ここに行き着く)
- 2本目の包丁(買い足すと便利) (靭性の高い鋼材の妙味!)
- 「選外」の理由 (人気ありますが、おすすめはしません)
- 「選定」の理由 (なぜ良いのか?)
関孫六 桃山
「関孫六 桃山」は、関孫六 10000CCと同様に、切刃に炭素鋼、側面にステンレスをあしらった包丁です
言ってみれば、
10000CCから一体口金を取り払い、その分価格を安くした包丁と言っても、あながち間違いではありません
各部の研磨、面取り、刃のスキ具合などは微妙に異なりますが、
鋼材自体は同じものが使用されています
箱出し時でも充分な切れ味ですが、研ぎの腕に覚えのある方でしたら、より追い込んだ刃付けや「研ぎ抜き」などを行って、切れ味を追求するのも一興でしょう
関孫六 桃山 を見てみよう
補足
このモデルは、若干クロム含有のある炭素鋼を採用しているようで、青紙鋼や白紙鋼と比べると、耐蝕性が高いです
そのため、あまり気を使わずに日常使用することが可能です
ナスのようなタンニン分を含んだ野菜を切ると、(クロム分をほぼ添加していない)純粋な炭素鋼の場合は、切ったそばから表面に酸化被膜ができ、色が変わることがありますが、そのような心配はほとんどありません
もちろん、刃先は炭素鋼が露出しているため、濡れたまま長時間放置しているとそこだけサビが浮いてきますが、そういう使い方をしなければ良いだけです
クロム含有量は5~7%、炭素量は1%前後と推定します(研いだ感触や使用した感じから個人的に推定したもので、試験片を分析したものではありませんが、それほど外れてはいないと思います)
「
関孫六 桃山」に代表される炭素鋼複合材包丁に関しては、こちらの
家庭用のおすすめ包丁(安い価格で最良の切れ味を) のページでも解説しています
個人的には、前モデルに相当する「
関孫六 4000CL」を2本使用しています(三徳包丁とペティナイフ)
「桃山」よりもさらに低価格の「
関孫六 安土」という選択肢もありますが、こちらは
ハンドル素材がPP樹脂ですので、「おすすめ」とはしていません
「
関孫六 安土」がPP樹脂ハンドルではなくPOM樹脂(ポリアセタール)であれば、「おすすめ包丁」に加えても良かったのですが、このあたりは少々残念です
PP樹脂とPOM樹脂の特性の違いについては、
包丁の樹脂ハンドルはどれも同じではない をご覧ください。
包丁の解説で、このようなプラスチック素材の解説までするのは、わたしくらいだと思います。そのため、かなりマニアックで独自性のあるコンテンツとなっています(ややこしい科学用語ばかり登場しますので、要旨のみかいつまんで、適宜読み飛ばして下さい。もちろん転載禁止です)
追記:関孫六 4000CL
関孫六4000CLは、わたしが実際に使用しているモデルであり、本当はこのページの筆頭に挙げたいところです。
ですが、
残念ながら製造終了となっており、入手も困難ですので、このランキングに加えることができません(そのため代替モデルとして、『桃山』を挙げています)
『桃山』『4000CL』の違いは、
『合わせ口金』の有無しかありません。
口金が無くとも、
桃山のハンドルは積層強化木ですので、
充分な耐水性と耐久性を有しており、(普通の使い方をする限り)実使用上での差異はほぼ無いと言っても過言ではありません。
(ただ、価格優位性という点を重視するならば、口金を省いた『桃山』の方に軍配が上がります)
4000CLも桃山も低価格な包丁ですが、上下の画像のように市販の高級包丁を上回る、美しい包丁に仕立てることも可能です(それなりのDIY技量は必要ですが)
ここでは4000CLペティナイフのカスタム後の画像を掲載していますが、興味のある方は、
月寅次郎寅次郎の包丁カスタム(一覧)をご覧ください。
※ ブレードの鏡面化やハンドルの漆塗り加工など、カスタムにはかなりの時間がかかっています。
ここまで包丁に手を加えるのも、包丁を愛すればこそなのです。
村斗 Fine(下村工業)
下村工業は、「ヴェルダン」の包丁を作っている会社です
「ヴェルダン」は低価格系オールステンレス包丁で人気も高いですが、わたしとしては
「村斗 Fine」を推したいと思います
(左の画像の商品です。実売価格が表示されない場合は広告ブロッカーをOFFにしてみてください)
こちらの
包丁ブランドの解説ページ(下村工業)でも述べましたが、
村斗 Fineは低価格にも関わらず、ブレード鋼材にAUS10を奢った包丁です
低価格であるのは、ブレード以外のコストを抑えているためですが、ハンドル素材にはポリプロピレン樹脂ではなく、
高級なPOM樹脂(ポリアセタール)を使用するなど、実用性と耐久性は充分なものとなっています
冒頭で挙げた「堺孝行グランドシェフ」も、ハンドル素材はPOM樹脂製です
国内の包丁メーカーは、高級鋼材を採用した包丁には、ハンドル素材や口金も贅を尽くした仕立てにすることがほとんどです
実際に、AUS10やVG10などの高級鋼材を使用した包丁は、ほとんどが「
本通し、一体口金、積層強化木」の仕立てになっています(関孫六は、特にその傾向が顕著に見られます)
このような常識にとらわれず、
ブレードは硬度の高い高級鋼材を使用し、
それ以外の部分はコストを抑えて低価格に仕立てたのが「
村斗 Fine」です
口金は、「
関孫六 茜」と同様に、ステンレスパイプ材の「被せ仕立て」となっています
ハンドル素材がPOM樹脂ですので、「被せ口輪」は機能的には無くても充分ですが、このあたりは「村斗 Sharp」と同じ外観にならないよう配慮したのでしょう(ハンドル素材が異なるだけで、外観が同じの包丁になることを避けるためだと思われます)
「村斗 Fine」の下位モデルとして、「村斗 Sharp」という製品がありますが、こちらも「Fine」と同様に愛知製鋼のAUS10を採用しており、同じブレードの包丁です
「Sharp」と「Fine」の違いは、「口輪」の有無と、ハンドル素材の違いです
「村斗 Sharp」は、ハンドル素材にPP樹脂(ポリプロピレン)を使用しています。これは、比較的柔らかい樹脂であり、耐久性や耐候性の面でPOM樹脂に劣るため、わたしとしては「村斗 Fine」の方をおすすめしたいと思います
この点は、「関孫六 安土」を推さずに、「関孫六 桃山」をおすすめしたのと、全く同じ理由です
村斗 Fine を見てみよう
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