刻印を漆で埋めて、手入れを楽に、外観も美しく
「包丁の刻印部分を漆で埋める」という独自カスタムです
見た目の美しさを引き立てながらも、普段の
手入れを楽にして機能性を高めるという、一石二鳥のカスタムです
作業前の刻印
作業前の状態です
保管状態が良かったのでしょう。刻印部に錆や孔食は見られません
わずかに黒っぽく見えるのは、酸化皮膜によるものと思われます
塗装前の洗浄(足付け)
カネヨの粉末クレンザー(研磨粒子はシリカ)を使い、刻印をよく磨きます
「塗装前の下処理」です、いわゆる「足付け」と言っても良いかもしれません
脱脂を確実にすることで、塗膜の密着度を高める処理です
カネヨ
クレンザー赤函
反対側の刻印も同様に処理します
使用している
カネヨのクレンザーは、昔ながらの粉末タイプです
今どき使っている家庭はほとんど無いと思いますが、現代的な液体クレンザーとは違って研磨効果がマイルドではなく、「
しっかり研磨できるタイプ」です
薪で煮炊きをしていた時代は、釜や鍋の外側に固着した煤を落とす用途に使われていましたが、ガスコンロの普及で煤が付かなくなったため、あまり使われなくなったという経緯があります
個人的には、
包丁を研ぐ前に、全体をピカピカにするのによく使っています。使い方次第ではとても役立つ、お掃除用研磨剤です
洗浄完了、塗装前の状態
洗浄後の刻印の様子です
酸化被膜が除去されたため、刻印の底が黒っぽい灰色から、銀白色に変わりました
刻印に漆を乗せる
漆を塗布します
削って尖らせた割り箸の先端に漆を付け、刻印をなぞるようにして漆を盛っています
普段漆を塗る場合は希釈して使っていますが、この場合は無希釈で、原液の漆をそのまま乗せています
色は、透色(すきいろ)を使用しました
本漆は価格も高く、硬化に専用の室(むろ)が必要です。ここでは安くて使いやすい東邦産業の漆(カシュー漆)を使用しています
東邦産業
うるし(透)
一度に盛りすぎると「縮み」が出る可能性があるため、なるだけ薄めに盛って、必要に応じて繰り返すのが良いと思います
この包丁の刻印は、溝が浅かったため、一度の塗布で埋めることができました
はみ出した部分を削り落とす
漆が完全硬化するのを待って、水研ぎの工程に入ります
2000番の耐水ペーパーで水研ぎを行い、はみ出している漆を削り落とします
金属部分と漆の部分は硬度が大きく異なりますので、圧をかけないよう優しく研ぎます
表面を磨いて完成
はみ出した部分を削り落としたら、表面を
ブルーマジック(細目のコンパウンド)で磨き、平滑度を上げて完成です
「刻印の漆埋め」が、美しく決まりました
Akuoly
紙やすり
11種33枚セット
表面もきれいに仕上がりました
もう少し刻印の溝が深ければ、
独特の艶と色の深みが出て、さらに美しく仕上がったと思います
刻印の漆埋めは、梅治の牛刀とオピネルナイフにも処理しましたが、オピネルの刻印は溝が深く、結果的に最も美しく仕上がりました
(現状では画像未掲載です。アップしたらここにもリンクを貼る予定です)
この「刻印の漆埋め」は、自分で考えついたものです(同様の処理は目にしたことがありません)
恐らく、完全オリジナルのカスタムではないかと自負しています
違ってたらゴメンなさい
市販品では真似のできないカスタムですので、「一点物」という特別感が出て、見た目の高級感がぐっと上がります
刻印部分は汚れや水分が残りやすく、時々ブラシで清掃が必要ですが、このように埋めてしまうと普段の洗浄がとても楽になります(ごく普通に洗い流して拭き上げるだけで良くなります)
使い勝手や手入れが非常に楽になりましたので、機能性と美しさを兼ね備えた、実に良いカスタムです
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