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鏡面仕上げ - 和包丁のカスタム(薄刃包丁)


和包丁の鏡面仕上げ

平(ひら)を鏡面に仕上げる

鏡面仕上げ(和包丁)
錆を落としただけの状態から、画像のように鏡面に仕上げました
それでは、鏡面に至るまでの各工程を、順を追って見ていきましょう

 ● 峰とアゴの鏡面化はこちらのページ

 ● 裏すき面の半鏡面ヘアライン仕上げはこちら です

鏡面の下地を出す

和包丁の鏡面仕上げ
まず、下地を出します(下地とは、大きな傷や腐食跡を取り去った均一な面を指します)

前の工程で、おおまかに表面の錆は除去しましたが、錆の根とでもいうようなピンホール状の腐食痕がまだ残っています
これを、自作のミニ砥石で研磨して除去し、鏡面のベースとなる下地を作ります
砥石は剛体ですので、サンドペーパーと比較するとかなり強い力をかけることができ、面を思い切って深く削りたいときには重宝します

サンドペーパーは、すり減って研磨効率が落ちたペーパーを、何度も交換しながら研磨する必要がありますが、砥石の場合は、下からフレッシュな研磨粒子が自然と出てきますので、手間いらずなのが良いところです
ただ、角をゴリッと当ててしまうと、そこだけ深く掘れてしまうので、必要に応じて繊細に研いだり、砥石の面取りを行うなど、状況に合わせた作業が必要です(そもそも砥石に慣れていない人には、あまりおすすめできません)

このミニ砥石の番手は800番です。 サビ取りの工程で使用していた赤レンガ色の砥石を割った後に、修整砥石で整形し、作ったものです。 裏すき面の研磨でも活躍します

同様の作業をサンドペーパーで行う場合は、300~400番程度の低い番手で行うのが良いでしょう
「800番の砥石と同じ作業なのだから、サンドペーパーも800番でいいんじゃないの?」と思われる方も多いでしょう
ですが、同じ粒度でも研磨粒子をどれだけ深く食い込ませられるかで、仕上がる目の粗さが全く異なります
この場合は、基材となる「紙」と「石」の違いです。紙の方が柔らかいので、砥材が深く食い込みにくいのです

※ これは研磨粒子の硬度が同程度という前提での話です
硬度の違いまで考慮に入れて説明すると、話がややこしくなるので割愛しています
ちなみにサンドペーパーの研磨粒子ですが、黒色の耐水ペーパーの研磨粒子は炭化珪素(カーボランダム)、高番手の白色乾式サンドペーパーは溶融アルミナ(ホワイトアランダム)、目の荒い赤褐色の乾式サンドーペーパーは、ガーネットかエメリーが使用されており、硬さ(キレの良さ)は、溶融アルミナ>炭化珪素>エメリー・ガーネットとなります

和包丁・鏡面下地出し
下地出しを終えたところです
砥石の目が深く残っていますので、この粗めの研ぎ跡を消していきます
600番の耐水ペーパー、さらに800番、1000番と番手を上げて掛けていき、徐々に目を細かくしていきます

Randon
耐水ペーパーセット(大判)
#400 #1000 #1500 #2000
ホルツ
耐水ペーパーセット
#400 #800 #1200 #2000
デイトナ
サンドペーパーセット
#800 #1200 #1500

ヘアライン仕上げ

和包丁を磨く(ヘアライン)
1200番のサンドペーパー(耐水ペーパー)で、一旦ヘアライン仕上げにしてみました

一面に錆が浮いていた包丁とは思えません
しのぎ筋も、ピシリと張った直線が出ており、言うことがありません

「一旦ヘアライン仕上げにした」と書いていますが、鏡面仕上げにするのに、一度ヘアライン仕上げのステップを踏む必要があるわけではありません。 この包丁は最終的には鏡面仕上げにしましたが、そこに至るまでの間、どのような表面仕上げにするか迷ったり試行錯誤していますので、結果としてさまざまな表面仕上げを試しています

いぶし銀仕上げ(仮称)

和包丁を磨く(いぶし銀仕上げ)
堺一文字光秀
薄刃包丁

青鋼 紋鍛錬
サンドペーパーの目を2000番まで上げ、その状態からわざと番手を飛ばし、いきなり細目のコンパウンド(ブルーマジック)を使って軽く磨きました

このような処理をすると、ペーパーで付いた目はそのままに、角だけが取れて光沢感が増し、何とも言えない深みのある「いぶし銀の光沢」が出ます
(あくまでも和包丁の軟鉄部分の話です。ステンレスに同様の処理をしても、「ただの中途半端な鏡面のなりそこない」にしかなりません)

あまりにきれいな面が出たため、この状態で「完成」にしてしまおうかと、心が揺らいでしまいました

ここでは「いぶし銀仕上げ」と呼んでいますが、一般的にそのような名称があるわけではありません
試行錯誤しているうちに、面の状態がとても恰好良く決まったので、仮称として勝手にそう呼んでいます

最終的にこの包丁は鏡面に仕上げていますが、正直言うと、(和包丁に関しては)上記の「いぶし銀仕上げ」の方が、鏡面よりも好きだったりします

和包丁をテッカテカの鏡面仕上げにしてしまうと、和包丁特有の重みのあるハガネの感じが失われ、安っぽいスレンレスの洋包丁のような雰囲気になりかねないからです

とはいえ、鏡面の状態から「いぶし銀」に戻すのは簡単ですので、飽きたらまたこの状態に戻そうと思っています

鏡面仕上げ

鏡面仕上げ(和包丁)
最終的にはこのように鏡面仕上げにしました

具体的には、耐水ペーパー2000番の目の状態からコンパウンドを使用して・・・
  1. ホルツのラビングコンパウンド(50ミクロン)
  2. ブルーマジック(5ミクロン)
  3. ウィルソンの超微粒子コンパウンド(0.5ミクロン)
 ・・・と、番手を上げて研磨しています

ホルツ
ラビングコンパウンド

50ミクロン
ブルーマジック
メタルポリッシュクリーム

5ミクロン
ウィルソン
超微粒子
コンパウンド

0.5ミクロン

切刃までピカピカにしているのは、ただの「勢い」です、気の迷いです
後で刃付けする際に、砥石が当たって光沢が失われてしまう部分ですので、意味はありません
ブルーマジックの粒度で充分鏡面になります。0.5ミクロンのコンパウンドを掛けているのは、ダメ押しみたいなものです

柄を分離した状態で、刃体だけにして研磨していますので、マチより手前の根本まできっちり磨き上げることができました

画像は、峰やマチ、アゴの内側まで磨いた段階のものです
アゴの内側などはやや磨きにくい部分ですが、どのように仕上げたかは、次のページの
「 峰とアゴの内側も、同様に鏡面化 」で紹介しています

鏡面仕上げの手順について

鏡面仕上げの方法に関しては、サンドペーパーの番手を徐々に上げながらシコシコかけ続けるとか、手っ取り早く電動工具で赤棒→白棒→緑棒をかけるとか、サンドペーパーである程度番手を上げてからコンパウンドに移行するとか、色々ありますが、ここでは解説を端折りたいと思います
(長くなりますし、他のページで散々やりましたので)

包丁の鏡面仕上げについてのより詳しい解説は、下記ページに設けています

3番めのフィレナイフのカスタムは、解説ページでなくギャラリーページですが、見た目は最もキレイに仕上がっていますので、参考までにご覧ください

光陽社
コンパウンド用みがきクロス
サンワサプライ
ハイテククロス
フェルナンデス
ポリッシングクロス