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本刃付け - 和包丁のカスタム(薄刃包丁)

最終更新日: 作者:月寅次郎

本刃付けとは?

本刃付けとは、刃付前の状態で販売店に陳列してある包丁を、改めて使えるように刃付けすることを指します
お客様が商品を購入し、商品を渡す前に行うことが多いです(サービスとして無料で行う場合もあれば、有料で作業する場合もあります)

(精密かつ入念に刃付けする場合や、研ぎおろしや刃角の調整を含んだ刃付など、積極的に切れ味を上げるための刃付を指す場合もあります)

本刃付け
本刃付けは、主に和包丁の世界で使われる言葉で、洋包丁の場合は、メーカーによって「本刃付け済」の状態にして販売されています(単に刃付済みとも言いますので、どちらかというと曖昧に使われている言葉です)

なぜ刃付前の状態で売られているのか?

有次
鎌薄刃
青鋼2号 別打
それでは、包丁専門店の店頭に並んでいる、銘の入った高級和包丁は、なぜ本刃付け前なのかというと、様々な理由があって・・・

まず、梱包・配送・陳列がしやすいということです
本刃付けしてしまうと刃が鋭利になりすぎて、梱包材すら切れてしまう場合がありますし、梱包作業員の怪我も防止できます、また販売時にお客さんが包丁の握り具合を確認する際にも、刃は付いていないので怪我をしにくくなります
このように、本刃付け前の商品を陳列することで、製造側も販売側もいろいろな意味で楽になるのです(結果的にコストも抑えられます)

また、本刃付けは有料の場合も多いですので、和食の職人さんなどは自ら本刃付けする人も多いです
この場合、購入価格を抑えることができ、買う方にも都合が良いのです

さらに細かいことを言うと、霞の包丁(合わせ)は、製造後に応力歪が出てきて、包丁に「そり」が生じやすいものです
製造時に本刃付けしてしまうと、実際に販売される間に(たとえ微細であっても)反りが出てしまうと、せっかくの本刃付けの意味がなくなってしまい、刃筋や切刃の面を、手間ひまかけて出し直さなければなりません
販売時に本刃付けすることで、このような二度手間を防ぎ、不必要な研ぎ減りを抑えているのです

また、店頭陳列時に生じた微細な酸化皮膜なども、この時点で落とすことができますので、最終仕上げ的な意味合いもあります

実際に本刃付けをしてみる

このページで紹介している包丁は、店頭保管品の放出在庫であり、そういう意味では本刃付けされていません
これまで、 表面の錆落としから始まって、 鏡面仕上げ漆塗り防水・防錆処理と、段階的に仕上げてきました

この「本刃付け」によって、薄刃の和包丁のカスタムも完成します
さまざまな砥石を使い分けて、切れ味が良くて美しい包丁に仕上げたいと思います

刃付け - 片刃の和包丁

最初に柄付けした際、軽く刃付けして状態を確認していますが、改めてしっかりと砥石に当て、自分なりに本刃付けしてみました

先にカエリを出してしまう

堺孝行
鎌型薄刃
銀三鋼

先に中砥で刃筋のカエリを出してしまいます(切刃の面を整えるのを、後回しにする)
通常、片刃の和包丁は、切刃の面を砥石に当て、切刃全体を「面で研ぐ」のがセオリーなのですが、ここでは違うやり方を取りました

しのぎ筋が砥石に触れない程度に角度を付けて、刃先だけを砥石に当て、刃筋を一気に研いで先に仕上げてしまいます

刃筋全体に返り(かえり)が出ているのを確認したら、次の工程です
実際に使用した砥石は、キングデラックスの#800番です(この工程の画像はありません)

切刃の面を作る

カエリが出るまで刃筋をおろしたら、刃筋に合わせて面を引き上げます

今回は、表面の皮一枚剥ぐ程度の軽い面調整で済む感じでしたので、中砥でさらっと撫でる程度に、切刃を全体的に研ぎました

片刃の和包丁は、面を研ぐ過程を通して刃筋を出すのが普通ですが、ここでは刃を先に作り、刃に合わせて面を作っています
このやり方は実用的な面もあり、「とりあえず時間がないので刃だけ付ける」という時にも応用が効きますが、面の調整をおろそかにし続けると、酷い二段刃ができあがります
ですので、あまりおすすめの方法ではありません

意味を理解せずに、刃を早く付けたいからという理由でこのようなやり方をやっていると、せっかくの切刃の面が崩れてしまい、和包丁をダメにすることがあります(後々の修整が大変です)

中砥の傷取り - 仕上げ砥へのつなぎ

刃付け
シャプトン
刃の黒幕
#2000番
グリーン


次に、シャプトン刃の黒幕#2000番を使って、800番で付いた目を細かくします
次の工程の、6000番に繋げるための「つなぎ」として使っています

2000番を飛ばして、中砥からいきなり6000番に持っていっても問題ありませんが、今回は切刃の面をより美しく仕上げようと考え、いつもよりも丁寧に、「傷消し」の工程を挟んでいます(普段はいきなり6000番に飛ばしています)

今回は、800番→2000番→6000番という上げ方をしていますが、どちらかというと、1000番→3000番→6000番、もしくは1000番→4000番→8000番といった番手の上げ方が普通ではないかと思います

また、この段階では裏面(裏押し)には手を出さす、カエリの出たままの状態にしています(カエリは面が仕上がってから、最後の工程で取るようにしています)

仕上げ砥で研ぎ上げる

本刃付け
キング
トイシの王様
PB-04


キング S-1
仕上砥 #6000番

ここからは仕上げ砥石を使って、さらに目を細かくしていきます
使っているのは「キング トイシの王様 PB-04」の仕上げ面(6000番)です

この包丁は7寸5分(切っ先からマチまで225mm)ですので、砥石サイズがやや小さめですが不自由を感じるほどではありません(ただ、キング S-1嵐山 6000番のような、フルサイズの砥石の方が楽に作業できるとは思います)

軽い力で滑らかに面を当て、砥泥を活かして研いでいきます
それにしても、 砥泥の出具合がいいですね

最初に付けた刃筋も、細い糸のように白く浮かび上がり「糸刃」となって仕上がっていることが判ります(どうやら、うまい具合に仕上がっているようです)
砥泥で濡れた軟鉄の部分は、黒々と曇っており、和包丁らしさを感じさせます

こういうのを、「霞の包丁を研ぐ醍醐味」とでも言うのでしょうか? 洋包丁では決して味わえない、一つの素晴らしい世界です

仕事でやると大変なことこの上ないと思いますが、趣味でやる分には、奥行きの深い味わいのある世界です

「トイシの王様 PB-04」の仕上げ面は、実質「キング S-1」ではないのかと思い、松永砥石に確認したところ「その通り」とのことでした
ちなみに、裏面の中砥石の方は、キングデラックスの#800番でできているとのことでした

つまり、コンビ砥石の「PB-04」は、キングS-1とキンデラ800番を貼り付けて両面砥石に仕立て、サイズを小さくしたものです(お買い得ですねぇ~)

霞を出す- 切刃の研ぎムラを消す

霞出しの作業

切刃に付いた砥石の跡(研ぎムラ)を、小さな砥石で消していきます

研ぎムラというのは、前工程で付いた「軟鉄部分に仕上げ砥が強めに当たって光沢が出た部分」のことです
研ぎムラを消すことで、切刃全体にいぶし銀のようなマット感を、まんべんなく出す事ができます。刃境もきれいな霞に仕上がり、ハガネ部分は傷が細かくなって鏡面の光沢がより引き立ちます

この砥石を面に沿って滑らせていると判ることがあるのですが、面に凹み(エクボ)が有る部分は、そこに抵抗がかかって吸い付くような感触になります

大きな砥石を使っている時には、決して感じ取れない感覚ですが、小さな砥石を指先だけで動かしていると実によく判ります
この包丁では、ちょうど砥石が貼り付いているあたりにエクボがありました

この工程は、切れ味とは関係ない外観を良くするための処理です。 面倒な時はやりませんが、今回は包丁を仕上げるための「本刃付け」ですので、研ぎムラも取ってきれいに仕上げようと思い、やってみました

砥石自体は、前述のコンビ砥石「PB-04」を加工したものです。 両面砥石の「2つの面」を剥がしてばらばらにし、仕上げ砥石の方を小さく割り、角を面取りしています

「6000番の仕上げ砥を、切刃に当てて研ぐ」という意味では、前の工程と何ら変わらないのですが、小さく加工した砥石を使うことで、繊細なタッチで刃に当てる事ができます

理想を言えば、この砥石をさらに小さく割って、押せばたわむ程度に薄く削り、指の腹で押し付けて磨くのが最良だと思いますが、この大きさの砥石でも(面さえ出ていれば)かなりいい状態に仕上げることができます

霞出し
研ぎムラを消した状態です

「裏押し」してカエリを取る

裏押し・糸裏

切刃の面処理が終わったら、仕上げ砥を使って「裏押し」をします(裏面に出たカエリを取ります)
表面には3種類の砥石を使いましたが、裏面は仕上げ砥のみで仕上げています
裏押しの部分は、砥石に当たる面積が小さいため、弱い力で当てても単位面積あたりの圧が強くかかります
そのため、裏押しを広げないように、普段は仕上げ砥のみでカエリを取って裏面を仕上げるようにしています

画像は「裏押し」の拡大画像ですが、太さが1ミリを切るぐらいですので、「糸裏」と言ってよいでしょう
裏すきのサビを落とす際は、裏押しを広げないよう気を使いながら裏面修整を行いましたが、どうやら努力が報われたようです

小刃付けを行い、刃付けが完了

「裏押し」して刃ができ上がった後は、「小刃付け」を行います(糸刃を付けて二段刃にする)

紙で微細な「バリ」を落とし、包丁全体をきれいに洗い直せば、刃付けの完了です

洋包丁の場合、(人によっては)砥石の角を使って糸刃を付ける場合もありますが、わたしは角を使わず、砥石の面を使って糸刃を付けるようにしています

一度角でやったこともあるのですが、力加減が難しく、結果的に微細な刃欠けを生じさせてしまったことがあります
それ以来、角を使うことは止めて、面で糸刃を付けています

和包丁・霞出し

刃付が終わりました

切れ味は申し分ありませんし、切刃の面が完全に出きっていない(エクボが残っている)ことに目をつぶれば、それ以外の部分は(自己使用の包丁としては)合格点ではないかと思います

※ この時使用したものを含め、わたしが使っている砥石は、こちらのページで紹介しています
(修整砥石や名倉砥石も、合わせて解説しています)解説

和包丁の刃付け

先端の半分を拡大して撮影してみました
このあたりは、おおよそきれいに仕上がったと思います
切刃の面がほぼ均一に出ており、研ぎムラの少ないきれいな仕上がりになったと思います

プロの研ぎ師の方は、このような霞出しの作業を、内曇砥などの天然砥石で作業されると思いますが、キング S-1や嵐山6000番などの人造砥石でも、(和包丁との相性が良ければ)ここまでの状態に仕上げることができます

和包丁・えくぼ

アゴに近い部分を拡大してみました

切刃にわずかに凹んでいる部分があり、エクボになっています。 そのため砥石が均一に当たらず、研ぎ傷を取り切ることができませんでした
また、刃筋にも、ごくごく微細な歪みがあるようです

このエクボは、刃を整形した職人さんの不備ではなく、鍛接時の応力歪が、年月経過とともに顕在化したものかもしれません(片刃の和包丁は、使わずに放置すると、年月とともに反りが出ることも多いです)

逆に言うと、歪が出切った状態で、これだけ状態が良いということは、元々の製造完成度の高さが伺えます

刃筋の直線度と切刃の面は、現在の状態でもほぼ問題なく使えますが、使用に伴って1~2回程度研ぎ直すことで、完全な「線」と「面」ができあがることでしょう
ゴリゴリと削り出して、ピシリとした面と線を出すこともできますが、わざわざ研ぎ減らすのがもったいないないのでやっていません
しばらくの間、使用と研ぎを繰り返し、切刃がしっかりした平面に仕上がってきたら、改めて画像を撮影して掲載してみたいと思います

以上で、和包丁の本刃付けの解説は終わりです

自己流の部分も多少あり、教科書的な作業とは言えない部分もあると思います
ですので、なぜそうやっているかを理解せずに、やり方だけを真似るのはあまりお勧めしません

ここに書いたのは簡単なさわりだけであって、それぞれの項目を深く掘り下げてはいません

和包丁のカスタム・完成状態

刃付を終えた和包丁
完成した薄刃包丁です(七寸・左用)

市販品で、最初からこれだけのクオリティを備えた包丁を求めると、かなり高額なものになることでしょう
自分でコツコツ仕上げていくと、材料費のみで済みますので、廉価で仕上げることが可能です

仕事の合間の空き時間を見て少しづつ作業し、おおよそ2ヶ月ほどかけて仕上げましたが、総作業時間は24~48時間くらいだと思います(計ったわけではありませんが、おそらくこのくらいだと思います)

オリジナルの素晴らしい包丁に仕上がりました
これから大切に扱っていきたいと思います

カスタム前の状態

最初はこのような状態でした

カスタム前・錆の出た和包丁
初期状態(購入時・サビ取り前)です
この薄刃は刀身のみで柄も付いておらず、全面にサビが浮いていましたので、安価にて入手することができました

 ● サビ取りの様子はこちらのページ で紹介しています

シャプトン
刃の黒幕
#1000番
シャプトン
刃の黒幕
#5000番
ナニワ研磨
剛研 隼
#4000番

切れ味について

「切れ味」と一言で済ましてしまうのは、あまり好きではありませんが、実際に使ってみると非常に高いポテンシャルが感じられました
番手を上げて研いでも、刃のかかりが良好で、鋭くてよく「かかる」いい刃が付きます

「刃は鋭いけど、ちと滑るかも」というのは、耐摩耗性を強化したステンレス系刃物にありがちですが
「刃は鋭くて、滑らずに容赦なく刃が入っていく」のがハガネの良さです(クロム含有が少なめの鋼は、特にです)

「これぞ鋼(ハガネ)の切れ味」という感じで、久々に感銘を受けました

これまで、家にある刃物の中で最も切れるのは、「 水野鍛錬所の薄刃包丁(本鍛錬) 」だったのですが、負けず劣らず、同等の切れ味を持っています

裏押しが広がっておらず、糸裏に近い状態ですので、それが功を奏しているのかもしれません。また、こちらの包丁の方がサイズが大きいため「重みで切っている」感覚があり、重量の重さが感覚的な切れ味の良さにつながっている感もあります
公正には判断が難しく、そもそも甲乙をつけるべきではありませんが、「ここまで切れるのか!?」と改めて感じ入ったのは、久しぶりでありました

 素晴らしい包丁です

刃の見立て

改めてこの刀身について、判ることを書きとめておきたいと思います

和包丁の裏すき

刃・鋼材・保管状態

表面に赤錆が浮いていましたが、深部までは達しておらず表層に留まっており、削り落としてしまえは問題なく使用可能でした
中子の中心線に沿って線状に錆が浮いていることから、元々は柄の付いていた商品であった事が判ります(柄を付けて保管していた際に、錆が発生したもようです)

刃には使用された形跡が認められず、本刃付け前の未使用品のようです。中子の状態も非常に良好で、柄付けはされたものの、販売されずに結果的に長期保管となった商品なのでしょう

表面酸化膜の出具合などから、鋼材は「青紙」と思われます(おそらく青紙2号)
カイサキの先端に、わずかながら「アイケ」(鍛接不良)が出ていますが、実用上は全く支障なく、むしろぎりぎりまで攻めて低温で鍛接した証だと思われます

産地・製造場所・販売店舗

マチの切り方とアゴ内側の面取りの様子などを見るに、堺で鍛造され、刃付けされた和包丁で間違いないでしょう
左利き用の和包丁で(柄を握ると、平が左側に、裏すきが右側になる)
サイズは7寸5分(刃の先端からマチまで22.5cm、実質的な刃渡りは21.0cm)、本職(プロ)の料理人向けの包丁のようです

平には銘がありませんが、裏すきには「登録商標 高砂屋」という刻印があります。刻印がカイサキ(鋼と軟鉄の境目)に跨るように打ってあるところからも、出どころのしっかりした包丁であることが判ります

おそらく、広島の本通商店街に在った刃物店「高砂屋金物店」が、店舗で販売するために、堺の鍛冶職人に委託して製造した包丁だと思われます

製造時期は、昭和末期~平成初期あたりではないでしょうか? 鍛えてから年月が経過しているため、良い意味で鍛造時の応力歪が取れており、一度きれいに刃筋や面を出せば、その後に歪が出てくる事もないでしょう
(そういう意味では、最近製造された新品の和包丁よりも、価値があると思われます)

包丁のサイズと重量

 全長:365mm、重量:270g(刃体189g、柄81g)
 刃体:刃渡り210mm、刀身全長331mm、刃幅50mm、峰厚4~5mm
 中子:厚み4.2mm x 幅13mm、マチから尻先まで108mm、先端からマチまで224mm、

刃付に使用した砥石について

刃付けに使用した砥石は、「キング トイシの王様 PB-04」と、シャプトン刃の黒幕 #2000番です
PB-04は、数十年前に購入したもので、厚みがかなり薄くなりましたが、安定した使用感のある使い勝手の良い砥石ですし、未だに使い終わらないので使い続けています

キング トイシの王様
#800 + #6000

PB-04
キングデラックス
#800番砥石  
キング S-1
超仕上用#6000番

PB-04の中砥面はキングデラックスの#800番ですし、超仕上面とされている6000番の方は、実質「キング超仕上用 S-1 6000番」です。クリーム色の表面に、褐色のごま状模様が点在しているところなど、S-1そのものです(サイズは異なりますが中身は同じです、松永砥石の人に聞いたところ「そのとおりです」とのことでした)

ちなみにPB-04を使い終わったら、中砥石はキングデラックス、もしくは剛研デラックスを考えています(800番でも1000番でもよい)

キングデラックス
#1000番
剛研デラックス
#1000番

より高性能を求める場合は、ちと値段が張りますが、キングハイパーもしくは、剛研 玄人も食指が動くところです。(とりあえず中砥石に関しては、信頼できる焼結製法の砥石ならどれでも良いと思っています。その時安くなっているものを買う予定です)
仕上げ砥石は、キングS-1(サイズ違いのS-2,S-3でも良い)か、嵐山#6000番を使おうと思っています(ハガネとの相性も良いので)

「シャプトン 刃の黒幕」や、「ナニワ(エビ印)の剛研 輝」も使ってみましたが、中砥石に関しては、吸水性を持つ焼結砥石(ビトリファイド製法)の方が使いやすいと感じました

マグネシア製法でできた不吸水性の砥石は、乾いてきた際に水切れに繋がりやすいですし、砥泥が多めに乗っている際、気を抜いて適当に研いでいると、ハイドロプレーン現象のように浮くことがあり、にゅるっと滑って危なく感じます。(あくまでも個人の感想ですが、面で研ぐ和包丁の場合は特にそう感じます。)

マグネシア系は砥石本体が水を吸わないため、こうなりやすい傾向がありますが、砥材の結着剤(セメント系の物質)が砥泥に混入し、砥泥の粘度がむっちり感が出てしまうことも要因の一つだと思います。
焼結砥石の砥泥は基本的にサラサラ・ザラザラとした感触ですが、マグネシア製法の砥石は、僅かながら「むちっ・にゅるっ」とした、乳液状の感触があるのです
この砥泥の感触の違いが、個人的にマグネシアの中砥石が好きになれない要因です

研磨力と平面維持能力のみを追い求めるなら、「刃の黒幕」も良いと思うのですが、個人的にはストロークを返した時の滑り出しのコントロール感を重要視していますので、砥泥の質感は重要です

中砥石に関してはビトリファイド砥石一択という感じになりました (仕上げ砥に関してはレジノイド系で良いと思います。こちらも水は吸いませんが圧をかけずに優しく研ぎますので影響ありません)
(「刃の黒幕」は、amazonのレビューなどで絶賛されているので、期待したんですけどね。でもまあ、硬度が高くて砥石乗りのよろしくないステンレス系の包丁に合わせるなら、使う価値は有ると思います)

キングハイパー
#1000番
剛研 玄人
#1000番
大谷砥石
嵐山#6000番