ダマスカス模様は、消えることもある
3.ダマスカス模様の耐久性
ツヴィリング
ボブ・クレーマー
メイジ シェフ
ダマスカス
ガンブルー
黒染剤
塩化第二鉄液
ダマスカス鋼材の模様は、薄い黒色酸化皮膜によって形成されています。
模様のコントラストが強いものは、この酸洗処理によるものであることがほとんどです。
(コントラストが弱いものは、サンドブラスト処理によるものです)
この酸化被膜は、金属表面に設けられた「薄膜」でしかありませんので、鋼材本来の色ではありません。当然ながら、硬いものに当ててしまうと、酸化皮膜が削り取られ、下から地金の銀白色が露出します。
硬度差を利用してブラスト処理で模様を出している場合は、表面の微細な凹凸の違いによって積層模様を浮き立たせているため、ある程度の耐久性はありますが、あくまでも程度の差であり、砥石を当てるなどして表面の凹凸を削り取ったり、傷が入ってきたりすると、模様がわかリにくくなります。
「
ダマスカス包丁の側面に錆が浮いたので、研磨材で磨いたら模様も消えた。」とか、「
砥石で研いだら研ぎ傷が付いたので、サンドペーパーで磨いたら模様がわからなくなった。」ということは、ダマスカス包丁購入者には結構ありがちです。
「自分でダマスカス模様を復活させようとして、酸洗処理(エッチング)をするため、強酸性の液体に包丁ごと放り込んだ結果、柄の木材が侵されてしまい、包丁として使いなくなった。」という
笑えない話もあったりします。
ダマスカス模様が薄くなってしまった場合、ダメ元で
ガンブルーなどの黒染薬品や、
塩化第二鉄液を使ってみるのもありかもしれませんが、薬品の取り扱いや、使用後の廃液処分も含めて、エッチング処理に習熟している方でなければ、おすすめできるものではありません。
そもそも、高価なダマスカス包丁に対して、経験のない個人が、ダメ元で酸蝕処理をかけるというのは、リスクが大きすぎます。
包丁は実用品ですので、使用に伴って刃は丸くなりますし、側面にも傷が入ってくるものです。
ダマスカス模様自体は、主に装飾目的で施されているのものですが、
傷の入りやすい部分に装飾があるというのはどういうことなのか、よく
理解した上で購入しなければ、後々後悔することになりかねません。
このように、
ダマスカス模様は、美麗な外観が最大のセールスポイントであるにもかかわらず、模様の耐久性が脆弱で、取り扱いに気を使う
…という点が、3つ目のデメリットです。
製造メーカーが「ダマスカス模様出し」を有償で行う理由
【 お知らせ 】
この項目は、「
ダマスカス包丁の真実」の
書籍化にともない、非公開としています。
有料版のリリースにともない、無料ネット版の方を一部非公開としました。
ご理解のほど、何卒よろしくお願いいたします。
(Kindle Unlimitedなら無料で読み放題です。未加入の方でも無料体験期間が使えます)
和包丁における「墨流し」と、ダマスカス模様
ダマスカス模様に似た外観を持つものとして、和包丁の技法のひとつである『
墨流し』が挙げられます。
ただここで、墨流しをダマスカスと呼ぶのは、和の伝統打刃物を作っている方々に失礼だと思いますので、ここでは別物として考えます。
墨流しも積層構造を持つため、近似した部分もあるのですが、
「ダマスカス模様の鋼材」は、工場生産によるクラッド鋼です。
一方の
墨流しは、炭素鋼と軟鉄を何層にも重ねて鍛接した片刃の和包丁であり、
伝統的な打ち刃物の技で作られています。
この二つを同列に扱うのは、利器材と手打ち鍛造品を同一視するようなもので、あまり好ましいとはいえません。
とはいえ包丁販売の現場では、これらの用語が混同されて用いられつつあるのも事実です。
墨流しの包丁は、研ぐ際に砥石が当たる切刃面に積層模様が露出しています。
もちろん、砥石を当てても模様が消えることはありませんが、美しいコントラストを引き出すためには、「
内曇り系の天然砥石」など、砥石の選択と研ぎの技術の両方が必要になります。これはこれで、かなり専門的な領域です。
墨流しの包丁を使うというのであれば、「霞の包丁を美しく研ぎあげられる」というのは大前提になりますので、腕に自信のある人以外は手を出さないのが無難でしょう。
もしくはコレクション用として使わずに飾っておくかです。
(そもそも墨流しの和包丁を実用品として使う人はあまりいないと思います)
ちなみに、わたしが
霞の和包丁を美しく仕上る場合は、コッパ砥石での磨き処理を加えています。
▼ 次ページ:
ダマスカス包丁のデメリット 4
おすすめの包丁(外観より切れ味重視でランキング)
家庭用のおすすめ包丁(安い価格で、最良の切れ味を)
おすすめの包丁ブランド(個人の意見です)
ダマスカス包丁について に戻る
包丁のトップページ に戻る